山形県南部・置賜(おきたま)地域は豪雪地帯かつ山深く、暮らしの中に人々の知恵や工夫により独特の文化が花開いたエリア。ここは明治初期、英国人女性旅行家として活躍したイザベラ・バードが旅し、のどかな景観や農村の暮らしを目にして"東洋のアルカディア(桃源郷)"という最高の賛辞を贈った場所でもあります。日本のあるべき姿が今に生きる置賜の魅力に迫ります。

未来に残していきたい置賜の大切な風景を切り取る

田園の中をのどかに走るローカル線は、旅情をかき立ててくれるもの。
軽便鉄道として大正時代に開通、国鉄民営化を経て今まで多くの人々を運び、今も置賜の穏やかな景観の一部として私たちを楽しませてくれるのがフラワー長井線(山形鉄道)です。現役の車両は6種類。沿線4市町の花が描かれたラッピング車両や、最近は「人気漫画ラーメン大好き小泉さん」とコラボした車両も登場し、全国の鉄道ファンと漫画原作ファンから好評を博しています。
フラワー長井線沿線には、登録有形文化財に指定されている2つの駅舎「西大塚駅舎」「羽前成田駅舎」があります。大正11年に建てられた羽前成田駅舎を管理するのは、地元住民で結成した「羽前成田駅前おらだの会」の皆さん。利用客をきれいな駅で迎えたいと清掃活動や草取り、駅周辺の花植え、イベント開催などを行っています。
忙しい合間を縫って駅舎内でイベントを行う理由は、ローカル線ならではの待ち時間を苦痛なく楽しく過ごしてほしいから。旧事務室をギャラリーとして季節折々の花々とフラワー長井線の写真展、その他地域の文化や歴史に関する展示、お花見イベントなどの次々と催し、全国に羽前成田駅とおらだの会のファンを増やしています。
時代が移り、駅舎から石炭ストーブのにおいがなくなり、乗降客数の減少からかつての活気が失われても、この駅舎と路線は地元にとっての宝であり無くなってほしくないもの。おらだの会を通して、使い続けることの大切さを次世代に語りかける地域愛に触れることができました。
"古い良さ"を改めて体感したローカル線の旅でした。

米どころである山形・置賜は酒どころでもあります。この日、長井市で田植えが行われていました。
東日本大震災後に福島・浪江から避難してきた鈴木酒造店 長井蔵が醸す純米吟醸「甦る(よみがえる)」を作る原料米「さわのはな」の植え付けです。
全国から集まった鈴木酒造のファンは約50名。「甦る」は、かつて長井で造り酒屋を営んでいた「東洋酒造」が、山形県の推奨品種だった幻の米「さわのはな」を使用し販売していた酒。震災で山形に避難してきた鈴木酒造店は廃業を考えていた東洋酒造を譲り受け、長井市民や長井への避難者から再び「さわのはな」を使った酒造りを依頼され、醸されたのが現在の新「甦る」です。
鈴木酒造店の鈴木大介さんは震災被災者である自分自身と復活したさわのはな、そして「甦る」のストーリを重ね合わせ、長井の地で新たな酒造りに着手したのです。
水を張った田んぼがリフレクションする美しい季節から緑の風吹く田んぼに変わり、稲が黄金色に輝く9月には刈り取りが行われます。
強い日差しの好天の中、にぎやかに田植えが行われていました。

飯豊町中津川地区にたった2か月だけ見られる幻想的な風景があります。
白川ダムの周囲に大量の雪解け水が流れ込むことにより、周囲のシロヤナギの木々が水没することで神秘的な光景が生み出される「白川湖の水没林」です。
この水もやがては田植えの季節の用水として抜けてしまうので、短い期間にだけ見られる風景です。
今回はちょうどシロヤナギの花が水面に落ち、新緑とホワイトの水面とのコントラストが美しい季節を迎えていました。人気が高まっているスポットで、水没林の森をカヌーで渡るツアーも開催されています。

山形鉄道フラワー長井線

住所山形県長井市栄町1-10
電話0238-88-2002
URLhttps://flower-liner.jp/

羽前成田駅

住所山形県長井市成田1882-2
URLhttps://kankou-nagai.jp/log/?l=327240

羽前成田駅前おらだの会

住所山形県長井市成田1882-2
URLhttps://samidare.jp/orada3/

鈴木酒造店 長井蔵

住所山形県長井市四ツ谷1-2-21
電話0238-88-2224
URLhttp://www.iw-kotobuki.co.jp/

白川湖の水没林(毎年3月下旬から5月中旬まで)

住所山形県西置賜郡飯豊町数馬218-1付近
電話0238-86-2411
URLhttps://www.iikanjini.info/suibotsurin

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