公共交通機関を使って巡る街歩き。歴史や文化に触れながらその街を楽しむ旅をお送りしていきます。今回は石川県の南加賀と呼ばれる小松市、加賀市からスタートし、福井県へと進み、福井市、鯖江市、越前市まで南下します!
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西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
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今年開創1300年!北陸の古刹、那谷寺
小松空港までは羽田空港から1時間ほど。あっという間のフライトの終盤には真っ白な雪をかぶった「白山」も見ることが出来ました。白山は信仰の山として富士山、立山と並び、日本三霊山にも数えられている山岳信仰の拠点です。北陸を旅していると、よく「立山」と「白山」という言葉が出てきます。北陸の皆さんのふるさとの象徴なんですね。
さて、最初の到着地は「那谷寺」です。最初はこれが読めなくて…。「なたでら」と読みます。不思議な読み方ですがなぜこんな名前になったのか、ということについては後ほど。
小松空港からは那谷寺までは小松駅前のバス停から那谷寺行のバスで行くことができます。いやーぁこれは便利!市民の方にも使われているバスのようで、病院や町なかを通って那谷寺へと向かいます。途中、赤い瓦屋根の家がたくさん!しかも重厚な屋根瓦を持つ立派なおうちが多く、赤瓦生産地で育った私の瓦アンテナが反応します。
小松空港到着前に見えた美しい山々。(スマホで撮影)
小松空港から小松駅までは10分程度。そこから那谷寺行バスに乗り換え、いざ向かいます那谷寺へゴー。
那谷寺の散策スタート!山門には「開創一千三百年」のための五色幕がかかっていました。松尾芭蕉も訪れたお寺です。
金堂華王殿。煌びやかな朱塗りの建物です。平成2年に建立。このお寺のご本尊と同じ「十一面千手観音」が収められています。内部は撮影禁止。
観音様は触れられませんが、観音様の御手からつながる赤い綱が表の角塔婆まで続いています。この塔婆を触れば観音様に触れたと同じご利益あり。触るどころか、抱きついておきました(笑)
特別拝観・書院と庫裏庭園。別途200円かかりますがここは見た方がいいです。建立したのは加賀藩第二代藩主の前田利常で、那谷寺の再建を指揮するための拠点として建立しました。国の重要文化財(以下重文)です。
書院から見た、灯篭、庭石などを使い、苔を配置した庭。ここでSNSでもしながらぼーっとしていたい気分。
書院から奥へと続く庭園。春はあせび、シャクナゲ、桜、つつじと次々と咲く花に迎えられます。初夏には新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と一年中楽しめるお庭です。
自然の岩が魅せる不思議な景色「三尊石」は、阿弥陀三尊に似ているとして崇められています。これは拝む価値ありです!
山水豊富で清らかな川が庭の中を流れます。4月には水芭蕉が美しく咲き誇ります。
琉美園からは先ほどの金堂華王殿も見えます。ちょうど裏側を通り反対側まで抜けます。ここまでが特別拝観内のお庭です。
普門閣と名付けられた古民家。白山の麓にあった春木家の民家を移築。雪深い場所の構造らしく太い梁が何本も使われています。隠れ見どころは、伊能忠敬が作った日本地図。びっくりするくらい正確です。
参道を通って本殿まで
岩屋寺が「那谷寺」になった理由も、那谷寺の霊場としての重々しさを物語っています。それはこの那谷寺が、日本で最も古い巡礼の形であった岐阜・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の各所の観音菩薩がある札所を参拝する「西国三十三箇所巡り」を全てやり遂げたに値するほどの霊場である、という意味を持つ名前なのです。西国三十三箇所の第一札所である「那智山(和歌山)」青岸渡寺と、第三十三番札所の「谷汲山(岐阜)」華厳寺の頭文字を取って「那谷寺」と名付けられたのでした。
つまり、那谷寺を訪れた人は西国三十三箇所全てをまわったことになり、しかも今なら開創1300年に合わせたご開帳まで見ることが出来る♪ということなのです。
これはもう今年行くしかない!そんな那谷寺です。急げ!10月31日まで。
朝羽田を経ってから数時間、午前中のうちに那谷寺観光が済んでしまいました(じっくり見たい方は那谷寺だけで1時間半くらい、滞在時間を準備しておいてくださいね。)
ここからは加賀地方をぐるっと周りますよ~。
いよいよ本殿の方へと向かいます。まっすぐ続く参道脇の新緑と苔。空気がきれいで癒されます…!
那谷寺は地元の方のデートスポットにもなっているということ。もみじが多く、秋は赤く燃える紅葉と苔のコントラストが素晴らしいことでしょう。
左手に「奇岩遊仙境」が見えてきました。その壮大さに圧倒されます。直接階段を掘って作った稲荷社も。雨の日は滑りやすいとのことです。「那谷寺」と呼ばれる前の「岩屋寺」との過去の名前通り、岩山そのものをそのままお寺にした霊気溢れる場所です。
大悲閣。このお寺の本殿へとたどり着きました。375年前に建立された国の重文。後ろには岩山がせり出しており、その洞になった部分にご本尊を設置。その高さに合わせ前にある拝殿部分を高床にしているのですね。
面白いなと思ったのは、ここはお寺なのに入口に狛犬がいることです。また、ここはお寺風に「本堂」とは呼ばず「本殿」。神仏習合していた名残なのでしょうね。
本殿に上がるとこんな景色。加賀の地はもともと白山信仰が根付いていた場所。宗教を超えて自然に対する畏敬の念や、自然との共生などを感じながら営みを行っていた人々の根源を見たような気がします。(2017年10月末まで本殿のご本尊が御開帳しています)
建物は拝殿から唐門、本殿と続きます。やっぱり神社みたいな造りです(中は撮影禁止です)。外の欄間も見どころのひとつ。表からと裏からの2重になっていて見え方が違います。
360度、緑に包まれながら山の細道を歩くように境内をまわります。
三重塔、国の重文。重文のデパート状態。大日如来を安置しています。
護摩堂。国の重文。流麗なカーブを描く屋根を持つ建築物。こちらも前田利常時代に建設されたもの。
鐘楼。国の重文。足元が石造りとなっておりそれを覆うように台形に腰板を敷いている。建物の中に鐘が安置してあります。全景を見るとなかなかすごいバランスで建っています。
新設された展望台へ登ると奇岩遊仙境が一望できます。那谷寺の岩山の中には沢山の洞窟があり、特に本殿では母親の胎内からの生まれ変わりと捉え、「胎内くぐり」をすることで清い自分に生まれ変わるとも言われています。
ぐるりとまわって山門近くの参道へ戻ってきました。不思議な霊気があるお寺、那谷寺でした。じっくりまわると1時間ちょっとはかかります。山道や階段が多いので、歩きやすい靴をオススメします。
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