JALでは、さまざまなオリジナル食品をご用意しています。なかでもお酒は、ご好評をいただいているジャンルです。新たに2023年にはオリジナルクラフトジン「Re FLY(リフライ)」を発売。また2024年2月にはクラフトビール「Japan Arigato Lager」を発表しました。相次いでリリースされたふたつの新しいお酒、実はまったく違う経緯から誕生しました。
ふたつの違うアプローチが、「フードロス削減のためのお酒」という同じ結果に
吉田「JALグループがESG戦略を経営戦略の軸に添えるなか、私が所属するコマース事業でも何かできないかということで、プロジェクトがスタートしました。最初からお酒を造ろうと思っていたわけではありません。JALがご提供するサービスで廃棄処分するものを活かした取り組みを模索するなかで、羽田空港国内線JALラウンジで使用済みコーヒー粉が年間1.8tも出ていることに着目しました。それをうまく活かす方法として、クラフトジンに辿り着いたのです。サステナブルを基軸に未活用素材を使ったジンを作るエシカル・スピリッツさんと出会い、コーヒーの粉でもジンを作れるということがわかったのです」
エシカル・スピリッツ
こう語るのが、マイレージ・ライフスタイル事業本部の吉田結です。ラウンジで抽出後のコーヒー粉に加え、原酒として秋田県の地酒 飛良泉の吟醸「粕取り焼酎」を使用。対してビールは、非航空領域の事業開発のアプローチでした。事業開発部の岡田千咲が続けます。
岡田「2023年度から、オープンイノベーションのために社外ビジネスコンテストを実施しています。そこで最優秀賞に選ばれたのが、アップサイクルビールを造るBeer the Firstさんでした。麦芽の割合の一部を別の炭水化物に代替することでアップサイクルビールを醸造するベンチャー企業さんです。ジンと同じように廃棄品も検討しましたが、醸造のためには原料が他のものと混じっていないきれいな状態で残っている必要があり、検討を重ねた結果、炊飯済みのお米に辿り着きました。ラウンジでカレーなどをお楽しみいただくために切らしてはいけないものですから、提供量のコントロールにさまざまな工夫をしていても、営業終了時にはどうしても余剰が出てしまうのです」
Beer the First
かたやサステナブルへのアプローチ、かたや新規事業開発パートナーの募集。まったく違うふたつのプロジェクトは、「食品廃棄物の削減という課題を解決するためのお酒」という同じ企画に至ったのです。
香り高く芳純なジンと、さっぱりと飲みやすいビール
吉田「当初ジンは、しっかりコーヒーの味わいにすることもできましたが、JALらしい味わいはどんなものかを検討することにしました。議論のなかで、ラウンジの入り口で焚くアロマにヒントを得ました。洗練された深みのある香りのオリジナルアロマ『EVENING』をイメージしたことで、ビターなコーヒーの特徴にもよく合います。香りがよく、ジンの新しい楽しみ方を知る商品のひとつになったとの声もいただきます」
「Re FLY」をストレートで口に含めば、まずヒバの格調高いトップノートが主張します。追いかけてくるように、柚子や山椒、生姜といった個性が顔を出し、柔らかな甘みとコク深いコーヒーのフレーバーが訪れるという複層的な風味。 味わいそのものはすっきりとしていて、「Re FLY」ならではの香りの世界観を楽しむためには、ソーダ割りがオススメの飲み方のひとつです。
岡田「クラフトジンとは違って、ビールは香料を使わない方向で決めました。クラフトビールは重たくて濃いめのイメージがあるかもしれませんが、幅広い世代の方や、初心者の方にも楽しんでいただきたい。そこで、フルーティな香りを持つ、さっぱりとしたテイストを目指しました。お米を使うことで甘くなりそうと思われるかもしれませんが、実はすっきりとした味わいになるんです。開発はスピード感を重視していたので、この効果は願ったり叶ったりでした」
召し上がっていただければそのおいしさは瞭然。黄みがかった淡泊なビジュアルに、小麦らしく香ばしさと酸味の乗った柑橘のフルーティな香りが広がります。飲み口はライトで、ファーストインプレッションはビター。すっきりと後引く味わいで、全体的にはドライな印象です。後味にほんのりとホップらしいフルーティな余韻が残ります。
上質さと感謝の思い。パッケージにもメッセージが込められています
廃棄品が生まれ変わり、再び飛び立つことをイメージし、ジンは「Re FLY」と名付けられました。また食材や生産者への感謝を込め、食材を余すことなく使う日本の食文化になぞらえ、ビールは「Japan Arigato Lager」と名付けられました。そのパッケージデザインにもこだわりがあります。
吉田「ジンは、ラウンジの上質なイメージにこだわり、『洗練された和』というテーマで開発しました。ここに至るまで複数のパターンが出ていて、チーム内での投票で決めました」
岡田「ネーミングは食べ物と人への感謝を込め、またギフトとしてもご活用いただきたいので、世界でも通じる『ありがとう』という言葉を使いました。デザインはベージュと紺色の2色展開。ネーミングの世界観をイラスト化して、ギフトとして贈りたくなるようなポップで可愛らしいデザインにしています」
JALのサービスのみならず、店頭やWebでもご購入いただけます
「Re FLY」は、ファーストクラスラウンジにあるバー・JAL’s SALONで提供していたほか、羽田‐ニューヨーク路線の機内でもミニボトル(写真左)を提供しています。在庫がなくなり次第ご提供は終了しますが、JAL Mallサイト内にあるJALショッピングのほか、台東区にあるエシカル・スピリッツの店頭やWebサイトでも購入可能です。
Re FLY
対して「Japan Arigato Lager」は、小売り大手のオリンピック、デパートなら大丸・松坂屋や髙島屋、六本木のゴリゴリバーガーなどで販売中です(現在のお取り扱い店舗は下記リンクの公式サイトをご確認ください)。生産数約9,000本の限定商品という位置づけです。
Japan Arigato Lager
吉田「おかげさまでジンはとても好評で、海外の方からも面白い取り組みだとご評価いただけています。ソーダ割りなど、カクテルベースとしても優秀なんです。今後、更に多くの方へもお楽しみいただきたいと思っています」
岡田「ビールは新規事業という位置づけですが、目標通りの販売本数を記録しています。このビールのきっかけとなったビジネスコンテストは今年も開催予定ですので、これからも外部の知見を取り込んで、JALの新しい事業を開発していければと考えています」
JALではほかにも、千葉県産のさつまいも「紅はるか」と「紅あずま」を原料にした、フルーティで芳醇な焼酎「鶴空」をご提供中です。JALは酒造メーカーではありませんが、お客さまに喜んでいただけるサービスの一環として、事業の領域を超えてさまざまなアイデアを実現しています。
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