JALは、新型コロナウイルス感染症対策において、SKYTRAXとAPEXという2つの機関から最高評価を獲得しました。両機関から最高評価に認定されたのは、アジア初で現在日本では唯一です。地上から客室まで、セクションの垣根を越えた取り組みが、世界最高評価につながりました。評価につながった対策を振り返りながら、最新の取り組みを、担当者の声を交えてご紹介します。
画像1: 航空会社の感染症対策で、JALが世界最高評価を獲得できた舞台裏

英国のSKYTRAXと米国のAPEXは、いずれも航空会社の格付けを行う機関です。JALでは、2020年までに3年連続でSKYTRAXの最高峰である5スターエアラインに認定されました。またAPEXにおいても、JALの高品質のサービスが認められてきました。しかし昨年より新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響から、航空会社を取り巻く環境とともに、求められる品質基準が大きく変わりました。

感染症対策が品質そのものへ。航空会社に求められるサービスの変化

朴「コロナ前は、いずれの評価機関も空港や機内でのサービス(機内食や座席の品質等)といったお客さま向けの商品・サービスが評価対象でしたが、コロナ禍後はお客さまの価値観も変わり、感染症対策そのものがお客さまの求める品質になりました」

画像: 感染症対策が品質そのものへ。航空会社に求められるサービスの変化

こう語るのが、カスタマー・エクスペリエンス本部の朴 娜慧です。社会の変化を受けて、SKYTRAXとAPEXも2021年は新たな評価として感染症対策の監査を実施したのです。

朴「空港、ラウンジ、機内、お客さまが利用されるすべての場所で、マスク着用とソーシャルディスタンスのご案内を行っているか、衛生・清潔性が保たれているかなどをチェックしてもらいました。またコロナ対策は各社模索しながらサービスを再構築しており、当時は『5スタースタンダード』といった基準がなく、徹底した取り組みを実施していたため、自信をもって審査に臨みました」

2つの国際的な評価機関から、最高ランクを獲得

その結果、JALの徹底した安全・安心の取り組みは高く評価され、SKYTRAXの「COVID-19 Airline Safety Rating」では5スターを、APEXの「Health Safety Powered by SimpliFlying Audit」で、最高評価のダイアモンドを獲得しました。

朴「SKYTRAXもAPEXも評価基準はおおむね共通していましたが、APEXでは他企業との連携も重視されました。たとえばPCR検査機関との連携を講じている取り組みも評価されたのです」

画像: 2つの国際的な評価機関から、最高ランクを獲得

JALでは、早い段階で複数の検査機関と連携し、ご旅行やご出張前にPCR検査を受けられるサービスをご提供しているほか、Allianz Travel(アリアンツトラベル)と提携し、国際線をご利用されるお客さまで、渡航時に万が一陽性判定時が出た場合、医療費や滞在費がカバーされるサービス「JALコロナカバー」を展開しています。JAL社内のみならず、他企業とも連携を図りました。2021年3月からは国内線ご利用のお客さまは2,000円(マイルでは2,500マイル)でPCR検査が受けられるサービスも開始しており、さらに充実しています。

空港では完全タッチレスのご搭乗体験を実現

お客さまが飛行機をご利用される動線に沿って、これまでの取り組みと最新の施策をご紹介していきましょう。フライト前に必ず足をお運びいただくのが、空港です。JALでは自動手荷物預け機の導入をはじめ、シームレスなご搭乗手続きを実現する「JAL SMART AIRPORT」を推進してきました。空港本部の大西康晴は、2021年から新たに加わった機能を解説します。

画像1: 空港では完全タッチレスのご搭乗体験を実現

大西「3月から、自動チェックイン機にタッチレスセンサを取り付け、指を画面に近づけるだけで、触ることなく操作できるようにしました。羽田および千歳、伊丹、福岡、沖縄といった主要空港にも今年4月に設置が完了しました。またこれらの空港では2021年度中には自動手荷物預け機を導入し、『JAL SMART AIRPORT』でお客さまによりスムーズで快適、な搭乗体験をご提供いたします。おかげさまで、久しぶりに空港を訪れるお客さまから『知らない間に先進的になった!』という声をいただいています」

画像2: 空港では完全タッチレスのご搭乗体験を実現

「JAL SMART AIRPORT」はコロナ禍以前にスタートした取り組みです。今回のタッチレス化で、飛行機に搭乗されるまでのすべての動線で非接触化を実現できたのです。

朴「SKYTRAXの監査員も、非接触センサに興味を示していました!」

さらに空港内では、サービスのレベルを維持しながら、グランドスタッフがお客さまと直接接することなく、サービスをご提供する取り組みも進めています。

画像3: 空港では完全タッチレスのご搭乗体験を実現

大西「羽田空港では2020年から、グランドスタッフが遠隔操作するお客さまご案内ロボット『JET』が稼働しています。また空港ビルと共同で導入した自動運転車いす『WHILL(ウィル)』もあります。これはお客さまを目的のゲートまでお乗せし、自動で拠点に帰る無人ロボットです。現在は2台稼働していて、今後さらに増やす予定です」

画像4: 空港では完全タッチレスのご搭乗体験を実現

JALではコロナ禍を受けて、一連の取り組みをより加速させてきました。このような非接触化の試みは、空港内のラウンジでも同様に行っています。

サービスの質を落とさず、非接触になったラウンジサービス

岡本「ラウンジでも、受付で消毒のお願いをしているほか、パーティションの設置やスタッフのマスクと手袋の着用など基本的な感染症対策を徹底していますが、非接触の取り組みも強化しています」

画像1: サービスの質を落とさず、非接触になったラウンジサービス

こう語るのが、カスタマー・エクスペリエンス本部の岡本有生です。ラウンジ内ではお食事などの各種サービスを提供していますが、それらをひとつひとつ見直しました。

画像2: サービスの質を落とさず、非接触になったラウンジサービス

岡本「ダイニングルームは、今までビュッフェ形式でしたが、どうしてもフタやトングを触っていただくことになり、交換や清掃頻度を上げても気にされるお客さまは多くいらっしゃいます。そこで当初は、すべてを個包装でご提供する形にしていました。しかし、よくご搭乗されるお客さまが多くご利用されるため、質感を損なうわけにはいきません。そこで外資系高級ホテルの取り組みなどを参考に、モバイルオーダー制も導入しました。これはテーブル上のQRコードをスマホなどで読み取ることで、ブラウザからお食事をオーダーで、スタッフがお席まで直接お食事をお持ちするというレストランのようなサービスです。モバイルオーダー方式は以前から導入したいと考えてきました」

画像3: サービスの質を落とさず、非接触になったラウンジサービス

またラウンジ内では、自由にご覧いただける雑誌や新聞もありますが、これを電子化する取り組みも始めました。

「つい先日から、羽田空港国内線ラウンジにおいて、お客さまご自身のスマホなどでご覧いただけるようにしました。ラウンジのWi-Fiに端末を接続すると、自動的に電子書籍のページにジャンプできます。紙媒体の雑誌を大量に破棄していましたので、デジタル化はSDGsの観点でもメリットがあります。今後は羽田空港のみならず、全世界に展開していきたい考えです」

手作業で拭き上げる、クリーニングスタッフの清掃・消毒

感染症対策を徹底した空港をご利用いただいたお客さまには、搭乗ゲートから機内にご搭乗いただきます。機内でも、感染症対策は徹底しています。要となるのが、清掃と消毒です。JALエンジニアリング羽田航空機整備センターの松山隆太が、新型コロナウイルス感染症拡大時の対応を振り返ります。

画像1: 手作業で拭き上げる、クリーニングスタッフの清掃・消毒

松山「2020年2月から、まず中国路線の客室の消毒を始めました。そこからどんどん対象路線を広げ、4月末には全機内の消毒実施がスタンダードになりました。清掃・消毒作業の難しいところは、限られた便の合間に対応する必要があることです。そこで、便の合間が長い国際線はしっかり消毒し、便の合間が短い国内線ではピンポイントで清掃、夜間にさらにしっかり清掃・消毒を行うサイクルを確立しました」

航空会社ごとに、清掃や消毒の方法は違いますが、JALではクリーニングスタッフにより、WHOが推奨する手拭きで隅々まで丁寧に清掃・消毒をしています。

画像2: 手作業で拭き上げる、クリーニングスタッフの清掃・消毒

「私たちが求めるのは、本当の安全と安心です。清掃チームが一斉に機内で清掃・消毒作業に取りかかり、お客さまが手を触れられる箇所を重点的に、隅々まで薬剤が行き渡るよう、人の目で確認しながらひとつひとつ丁寧に拭いています。これまでなかった工程が追加されましたが、私たちの仕事は定時運航を妨げないことが求められるため、清掃と消毒が同時にできる薬剤を導入するなど、限られた便の合間でもしっかり消毒できるような工夫をしています」

世界一の美しさを目指す、機内の化粧室

クリーニングスタッフによって清潔に保たれた機内では、客室乗務員にバトンが渡されます。コロナ前から、JALはSKYTRAXより衛生・清潔性の観点の高い評価を得てきました。

画像1: 世界一の美しさを目指す、機内の化粧室

松本「日本は世界的に見ても衛生観念が高いとされ、JALをご利用くださるお客さまは日本やJALに対して『清潔な国・機内が綺麗な航空会社』という印象を持ってくださっていることが多いです。そのご期待に応えるべく、客室乗務員は入社後の訓練から機内空間の演出やサービス方法を徹底的に学びます。特に化粧室はお客さまにとって衛生面や清潔性が最も気になる場所ですので、先輩から代々受け継がれる『JALの化粧室は世界一美しい』を合言葉に、航行中もこまめな清掃を実施しています。コロナ禍以降は清掃ツールの導入に加え、専門的な知見をもつ外部機関にアドバイスをいただきながら、清掃手順をマニュアル化しました」

画像2: 世界一の美しさを目指す、機内の化粧室

客室本部の松本夕佳が語ります。機内では、お食事やお飲み物、エンターテインメントなどサービスは多岐にわたりますが、お客さまと直に接する客室乗務員は、最大限の注意を払っているのです。

機内サービスは非接触でも最高の満足度を追求

松本「コロナ禍で機内の状況も大きく変わりました。客室乗務員はマスクに手袋、セーフティグラスのほか、清掃時には防護服やフェイスシールドを着用しています。また、機内食の提供スタイルや手順を見直したり、電子端末を用いたご案内方法を導入したりと新しいサービスの形を作っています」

衛生面への配慮が必要になるなかでも、“JALに求められるサービスの質を落とさない”ことを第一に考えています。

松本「フルサービスキャリアとして、お客さまと乗務員との関わりあいのなかで生まれるサービスを大事にしてきました。しかし、非接触化が配慮のひとつになったいま、お客さまとのコミュニケーションにも大きな変化が生まれました。機内アナウンスを用いたご案内に変更したり、会話せずともご希望を伺うことのできるドリンクカードやメニューカードを活用したりと、ベストなサービスを模索しています」

一方で、これまで通りのサービスを求めるお客さまもいらっしゃいます。感染拡大から1年以上を経て、多様化するニーズを柔軟にくみ取りながら最高のサービスをご提供するために、今後はデジタル化も活用しながら適正なサービスを検討していきます。

今後はフライトの前後でもさまざまな施策を展開

一連のコロナ禍における対策は、お客さまの安全・安心に配慮した施策でしたが、今後はその枠組みを大きく広げていきたいと考えています。

朴「JAL全体の安全・安心の取り組みを統括してきた部署として、カスタマー・エクスペリエンス本部は現在、新たな取り組みにチャレンジしています。最初のフェーズである感染拡大時は、とにかく清掃・消毒を徹底していました。それから、状況を先回りして、業界に先駆けデジタル技術を活用した非接触・自動化を推進したり、PCR検査サービスなど安心してご旅行いただけるサポートを充実させるのが現在のフェーズです。さらに次のフェーズとして、安全に加えて安心感と快適さもご提供する仕組み作りを始めています。旅行に際して不安感を取り除くサポートや、マイレージを健康促進に活用できる方法を、日常生活を含めて安心感と疲れを感じさせない快適な移動を提供していきたい。コロナ禍を経験した社会では、これまで以上に健康的な生活が求められます。そのためのお手伝いをしたいと考えています」

画像: 今後はフライトの前後でもさまざまな施策を展開

それはフライトの前後も含めたアプローチです。コロナ禍における取り組みで培われたノウハウを、広く活かす準備を進めています。

大西「空港においてお客さまにさらに安全・安心を提供するため、今後お客さまが手を触れる箇所に抗ウイルス・抗菌コーティングを施す予定です。この作業はJALグループスタッフが実施します。今できることのひとつとして、この取り組みを公共施設や公共交通機関にも展開することで、社会貢献に加えて、お客さまへの包括的な旅全体の安全・安心をご提供していきたいのです」

さらに磨きを掛ける安心と安全のアプローチ

一方、“広げる”ことのみならず、“深化させる”アプローチも続けていきます。JALがお客さまに提供する衛生品質についても、より磨きをかけています。

松山「今後は機内に抗ウイルス・抗菌コーティングを施すなど、予防フェーズに主眼を置いていきます。地上で使えるものと比べると、機体に使える薬剤はさらに基準が厳しくなりますので、昨年から数カ月にわたり機体に影響を及ぼさないか等の検証を進め、安全性と長期間の持続効果が認められた特殊な薬剤がようやく見つかりました。このコーティング作業は4月より開始し、7月中には完了する予定です(一部のグループ航空会社は年内)。日本の航空会社としては初めての取り組みで、お客さまに今まで以上に安心してご利用いただきたいという想いで取り組んだ施策です」

画像: さらに磨きを掛ける安心と安全のアプローチ

一連の取り組みにおいて、安全や安心の品質を向上させても、サービスの質を疎かにしないことは、この先も大前提となります。

岡本「JALのポリシーとして、コロナ対策でお食事のグレードを下げたり、サービスを廃止したりすることはありません。安全・安心を担保しながら、どうすれば継続できるかをまず考えます。そのためのキーワードがデジタル化です。ラウンジではモバイルオーダーのみならず、シャワールームの予約システムも今後ご提供したいと考えています。専用アプリを使わずブラウザだけで完結する。より多くのお客さまに手軽にご利用いただけることを重視しています」

もちろん地上だけでなく、機内でも高品質なサービスの継続的な提供のために、議論を尽くしています。

松本「お客さまと直に接する部門として、今まで培ってきたJALならではのサービスをあきらめたくない気持ちが強くあります。全客室乗務員が新たな知識習得や教育を受けるためのテレワーク体制も整えていますし、『コロナだから』は言い訳にはなりません。教育や運用を徹底し、安全・安心な機内環境とサービス品質を維持管理していくことが今後の課題です」

お客さまにご協力を仰ぎながら、サービスの品質向上を続けます

コロナ禍におけるさまざまな取り組みを継続的に行う姿勢が、SKYTRAXとAPEXの高評価につながりました。その一方で、お客さまのご協力があればこその高評価でもあります。

大西「自分たちの取り組みを中心にお話ししましたが、お客さまのご協力を仰ぐ部分も大きくあります。検温やマスク着用、手荷物の極小化など、お客さま一人ひとりのご協力を得ながら対策を進めてきました。お客さまのご協力には、心から感謝しています」

朴「SKYTRAXの審査員からは、JALをご利用になるお客さまは清潔に対する意識が高く、JALの機内が清潔なのは、乗務員のこまめな清掃に加え、お客さまのご協力も大きいというコメントもいただきました。私たちの努力以上に、お客さまのご協力もあってこそ、受賞することができたと考えています」

画像: お客さまにご協力を仰ぎながら、サービスの品質向上を続けます

JALは、これからも旅前のサポート体制や、空港や機内などあらゆるシーンにおいて、衛生的で清潔な環境でお客さまをお迎えするための取り組みを強化し、より安全・安心なサービスの提供とその品質の向上に努めてまいります。

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