日本全国にはおいしい魚とともに、おいしい貝が豊富に存在しています。そして多くの貝類が、4月から6月にかけて旬を迎えるのです。ーー貝と旅。大人として粋な選択肢といえるに違いありません。築地・豊洲のなかでも貝類に強い仲卸のプロに聞き、春から初夏に食べるべき貝と、訪れるべき旅先をご提案します。

築地場外市場にある「築地わたなべ」には、お馴染みのものから聞いたことのないものまで、大小さまざまな貝が並んでいます。気泡を浮かべたり、海水を張ったトロ箱の外にまで水を飛ばしたりと、新鮮で元気に生きていることがよくわかります。これらは全国の産地から集まった、おいしい貝たち。

築地場外市場では一般向けに小売りしていますが、豊洲市場ではプロ向けの仲卸をしているそう。引き合いは世界中から届くといいます。

画像1: ご存じでしたか?春は貝の季節。プロに聞いた全国の貝と、おいしい旅

「夏は二枚貝の産卵期だから、春からどんどん栄養を蓄えておいしくなるんです。シジミにアサリ、ホタテにアワビも。貝の旬は春なんですよ」

こう教えてくれたのが、渡辺商店3代目の渡辺幸雄さん。築地市場が開場した昭和10年(1935年)から大衆魚を扱ってきたそうですが、貝に力を入れたのは当代になってからだとか。

画像2: ご存じでしたか?春は貝の季節。プロに聞いた全国の貝と、おいしい旅

「自分の代からです。だって貝が好きだからね」

貝好きの3代目は、今や貝の目利きとして名を馳せます。そんな渡辺さんに、食べるべき春の貝とオススメの産地を聞きました。北から順に、旅先としての魅力も添えてご紹介します。

春の貝その1 「ホッキ」× 長万部(北海道)

画像: 春の貝その1 「ホッキ」× 長万部(北海道)

「春のホッキは黄みがかっているんです。それは栄養をたっぷり蓄えている証拠。さっと湯通しして、黄色と紫のコントラストを演出するのがプロの技です。その身は本当に甘くて出汁も濃厚だから、強い風味と合わせても負けません。地元ではカレーに入れる定番の具材なんですよ」

長万部の旅先としての魅力

画像: Adobe Stock/ktktmik

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ホッキのみならず、毛ガニやホタテも特産品として知られるグルメスポットでもあります。そして長万部(おしゃまんべ)を訪れたなら、温泉は外せません。海辺に位置する長万部温泉は、ナトリウム塩化物泉。肌に優しいことで知られる泉質です。温泉でゆったりと体を休め、海の幸を満喫するリトリートの旅はいかがでしょうか?

春の貝その2 「アカガイ」× 閖上(宮城県)

画像: 春の貝その2 「アカガイ」× 閖上(宮城県)

「最近は中国産や韓国産も出回っていますが、やはり一番有名でおいしいのは宮城の閖上(ゆりあげ)です。これは間違いない。コリコリして鉄臭いんですが、これが独特のアカガイならではの風味であり、たまらないおいしさ。黒くて丸い二枚貝で、お土産に買うのは少し勇気がいります。とにかく剥くのが大変で、たたき割って剥くしかないんですよ。できれば現地で味わってほしいですね」

閖上の旅先としての魅力

画像: iStock/Seiko

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アカガイの産地として有名なのが、現在は合併して名取市となっている閖上(ゆりあげ)です。城下町として知られる名取市は歴史的な見どころが豊富。名取城址に加え、古代の暮らしをしのぶ飯野坂古墳群もあります。またクルマで1時間圏内には、仙台市のほか、日本三景のひとつとして知られる松島があります。仙台を巡る旅で、アカガイを求めてぜひお立ち寄りください。

春の貝その3 「ハマグリ」× 九十九里浜(千葉県)

画像: 春の貝その3 「ハマグリ」× 九十九里浜(千葉県)

「ハマグリの一番は、なんといっても九十九里です。個人的な好みもありますが、5月から『マメはま』と呼ばれる小さいものが出てくるんですね。小さいくせにものすごく香りが強くて、めちゃくちゃうまい。わりと浅場にいるから、潮干狩りなんかもいいですね。マメはまはたくさん湧くから安く買える。お土産にも最適といえるでしょう」

九十九里浜の旅先としての魅力

画像: iStock/Moarave

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日本列島最大級の長さを誇る、広大な砂浜海岸はビーチリゾートとして楽しむのがオススメです。サーフィンスポットとしても人気です。あまたの海の家や料理店があり、名物のひとつは、なんといっても焼きハマグリ。地引き網や潮干狩りも楽しめます。

春の貝その4 「アワビ」× 鴨川(千葉県)

画像: 春の貝その4 「アワビ」× 鴨川(千葉県)

「貝の王様、アワビも春です。というのも、5月に解禁になる浜が多いから。なかでも千葉が解禁になる。千葉のアワビは世界的に有名で、香港や中国から指名買いされます。大半は干しアワビの需要なのですが、千葉県産は身がほとんど縮まない。それくらいぎゅっと詰まった身質で、香りがよくて味と甘みが強いんです。千葉県産しか買わないプロもいるくらい、料理人も垂涎のおいしさです」

鴨川の旅先としての魅力

画像: iStock/show999

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アワビが獲れる鴨川市は、千葉県のなかでも魅力的な旅先のひとつです。イルカショーや多彩な海洋生物を見学できる鴨川シーワールドや、東京から一番近い棚田として知られる大山千枚田など、見どころも豊富にあります。鴨川・小湊温泉もあり、起伏に富んだ旅が楽しめそうです。

春の貝その5 「アサリ」× 浜名湖(静岡県)

画像: 春の貝その5 「アサリ」× 浜名湖(静岡県)

「もともと江戸前が有名でしたが、今はほとんど採れなくなってしまいました。全国に産地はありますが、なかでも浜名湖のアサリはブランドですね。この時期は身がぷっくりと大きくなります。プリプリでおいしいんですよ。パスタや酒蒸し、シンプルに焼いてもいいですね」

浜名湖の旅先としての魅力

画像: iStock/RYUYA HORIGUCHI

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静岡県西部に広がる浜名湖には、さまざまな魅力が備わります。うなぎの一大養殖地としてあまりにも有名ですが、マリンアクティビティもオススメです。フルーツの産地としても知られ、近隣には舘山寺温泉もあります。

春の貝その6 「タイラガイ」× 知多半島(愛知県)

画像: 春の貝その6 「タイラガイ」× 知多半島(愛知県)

「昔は瀬戸内海がいいとされてきましたが、今は知多半島など愛知がいいですね。タイラガイ(タイラギガイ)はうちわのようにデカいサイズで、大きければ大きいほどうまいんです。身の色が真っ黄色になっていると、熟してうまみを蓄えている証拠です。さっと醤油を塗って焼き、海苔を巻いて磯辺焼きみたいにして食べるとおいしいですよ。ちなみにコスパがよくて、1個の柱の値段がホタテとほぼ同じなんです」

知多半島の旅先としての魅力

画像: iStock/Kimichan

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愛知県は全国でも有数の漁獲高を誇る貝の宝庫。なかでもタイラガイが採れる知多半島は、旅先としても優秀です。美しい海岸線は海水浴やマリンスポーツを楽しむのに最適。また徳川家康公が生まれた土地として知られる岡崎市には、岡崎城をはじめとする歴史的な見どころが豊富です。

春の貝その7 「シジミ」× 宍道湖(島根県)

画像: 春の貝その7 「シジミ」× 宍道湖(島根県)

「島根県の宍道湖はシジミの産地の代名詞。小粒が多いのですが、ここのシジミは出汁がすごく出るんですよ。濃厚でうまみたっぷり。みそ汁に入れたら最高ですね。お土産としてもたくさん売っていますが、砂抜きが大事です。たっぷりの塩水に半日入れて、水から出して2~3時間置けば、さらにうまみが強くなります」

宍道湖の旅先としての魅力

画像: iStock/Wirestock

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宍道湖は島根県北東部に位置する自然豊かな湖です。四季折々の景色が楽しめる自然豊かな湖ですが、湖岸部にある玉造温泉は、ぜひ訪れたいスポット。古来から続く名湯として知られています。また松江城を有する松江市にも面しています。歴史とグルメを堪能する温泉旅行はいかがでしょうか。

食の旅の目的地として、貝はお土産にもオススメです

このように、全国各地にあるおいしい貝の産地。旅先のグルメとして目指しても、お土産にするのもいいでしょう。とくにご自宅に持って帰るのならポイントがある、と渡辺さんはいいます。
「運ぶ途中で貝が死んでしまっては台無しです。海水に入れるのがベストですが、なかなか難しいので、海水を染みこませた新聞紙にくるんで持ち帰りましょう。そして切り方で味が変わるのが貝の特徴です。できるだけ大ぶりに、可能なら賽(さい)の目に切ること。一級品じゃなくても、味も甘みも伝わり方がまるで違う。ケチケチせずにどーんと食べてください」

画像: 食の旅の目的地として、貝はお土産にもオススメです

今回ご紹介した旅先には、おいしい貝料理を出すお店が豊富にあります。また地元の市場や鮮魚店、道の駅では、獲れたての貝がお買い求めいただけるはずです。この記事をご覧になったタイミングが、6月までであれば幸運です。旅の目的地では、おいしい貝が手ぐすねを引くように貝殻を開閉して待っています。さあ、お腹を空かせて、新聞紙を携えて、出かけてみましょう。

築地わたなべ

住所東京都中央区築地6丁目26番1号小田原橋棟
電話03-6264-7760
営業時間6:30~15:00
定休日日曜、祝日、市場休市日
web築地わたなべ(築地場外市場 公式サイト)

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