飛行機雑学File 1 お客さまの安全のため、機長と副操縦士は別々の食事を取ります
多くの場合機体を操縦するのは、機長と副操縦士の2名体制です。もちろん彼らもお客さまと同じように食事を取りますが、どんなものを食べているのか、気になったことはありませんか?
国際線の場合は、機体が自動操縦中で安全が確認された状態に限り、お客さまにお出しするのと同じ機内食を中心に食事を取ります。また駐機中など空港内での業務中は、あらかじめ用意された軽食などを食べることになります。
しかしそこには、操縦士ならではの食事の注意点があります。同じ機体に搭乗する機長と副操縦士は、原則的に別々のメニューを食べるのです。これは、万が一の食中毒などで業務に支障を生じさせないための工夫。食事ひとつとっても、お客さまの安全とリスクに対して常に配慮しているのです。
飛行機雑学File 2 飛行機の乗降が左側からなのには理由があります
飛行機は、機首に向かって左側にあるドアから乗り降りします。そもそもなぜ左側からなのか、疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。
飛行機のことを、“シップ”ということがありますが、これは飛行機よりはるかに古い歴史を持つ客船の文化から来ています。飛行機の左側から乗降するのは、客船をはじめとする船が、ポートサイドと呼ばれる左舷から着岸していたことの名残なのです。
ちなみに左にしかドアが付いていないかというと、そんなことはありません。実は右側にも付いていて、駐機中に機内食などの物資を運び入れるほか、緊急時の脱出用にも利用されます。またJALが採用している比較的小型なボーイング767やボーイング737は右側のドアが小さく設計されています。これは機体が小さいとドアが相対的に大きくなってしまうため、機体の強度を保つための工夫です。ご搭乗の際には、注意してご覧になってみてください。
飛行機雑学File 3 ノットにマイルにキャビン。飛行機には船旅文化の名残が、数多くあります
客船の文化の名残はほかにもあります。たとえばターミナルビルではなく、少し離れた場所に駐機し、お客さまをバスで到着ロビーまでご案内するケースがあります。機体をターミナルビルから離れた駐機場に駐めることを“沖止め”といいます。これはもともと、港に入れないなどの理由で船が港外に停泊している状態のことを指す船舶用語です。
また飛行機の航行速度を“ノット”、飛行距離を“マイル”で表しますが、いずれも、もともと船舶で用いられてきた単位です。さらに、機内のことを“キャビン”と呼びますが、この言葉も船舶用語から採っています。
このように、同じように大勢のお客さまを一度にお乗せする乗り物として、飛行機と船は親戚のような関係にあるといえるかもしれませんね。
飛行機雑学File 4 機内は絶えず外気を取り入れながら循環させ、新鮮な空気で満たされています
飛行機のエアコンや空気循環システムにより、機内の空気は2~3分程度で新鮮なものに入れ替わります。飛行機が到達する上空1万mの低い気圧では、人間は生命活動に支障が生じます。そこで機内を地上に近い気圧にするために、高い気密性が求められるのです。
JALが採用している機体の多くは、外の空気をジェットエンジンから取り込み、温度と圧力を調整しながら循環させています。しかしエンジンの燃焼に使用する空気の一部を使うことで飛行機が前に進む力を削ぐことになり、燃費効率が下がってしまいます。そこで外気を取り込む一方で機内の空気もそのまま循環させるのです。また循環時に空気の清潔さを保つため、ウィルスなどを除去する高性能HEPAフィルターを通しています。
ちなみに最新鋭機のボーイング787は、「軽い飛行機を高出力で飛ばす」というコンセプトで設計されており、エンジンの出力を無駄なく推力に充てるため、胴体中央部分に独自の吸気口を持っています。このように外の空気を絶えず取り入れながら、フィルターを通して循環させることで、機内は常に清潔な空気で満たされているのです。
飛行機雑学File 5 トイレを勢いよく流すために、実は“気圧”を利用しています
機内のラバトリーで用を済ませると、トイレは「ゴオッ」という音ともに勢いよく流れますが、これも気圧と密接に関係した飛行機ならではの仕組みがあります。
重量がかさむ水を多く搭載すると、その分機体の重量が増えてしまいます。そこで洗浄水を最小限にし、気圧が高いところから低いところへ流れる空気の力を利用します。機内の気圧は高く、上空の機外の気圧は低いので、一瞬だけ弁を開け、大きな気流を少しだけ発生させ、一気に汚物をタンクへと押し流すのです。
地上ではその差圧がないので、バキュームブロワーという機械を利用し、上空と同じ仕組みを作り出しています。ちなみに汚物はすべてタンクに収められ、駐機時に専用の車両で機外へと運び出されています。
飛行機雑学File 6 機内でもっとも揺れを感じにくいのは、実は翼付近です
大型バスなどは一般的に車両の前のほうが揺れを感じにくいとされていますが、飛行機の場合は少し事情が違います。飛行機は重量バランスが大事な乗り物です。お客さまのご搭乗位置にあわせて下層にある貨物の配置を調整するなど、常に重心に気を遣っているのです。その重心が、まさに翼が付いている部分です。そのため翼から近いほど揺れを感じにくいのです。
しかし、大型機であっても体感できるほどの揺れの差はありません。飛行中の機体が揺れる原因は上空にある空気の渦で、機体全体で受け止めるものだからです。
翼に近いほど揺れの影響が少なくなるのは事実ですが、一方でエンジンのある機体中央付近では、エンジン音が大きく感じることでしょう。そのため、ファーストクラスやビジネスクラスといったお座席は前方に設置されているのです。
飛行機雑学File 7 地上の飛行機、実はジェットエンジンで動いています
地上に戻った飛行機はターミナルビルへと移動します。また離陸前には自走して滑走路へと向かいます。これは、クルマと同じようにエンジンの動力をタイヤに伝えて進んでいるわけではありません。両翼に付いたジェットエンジンの推力を利用して機体を動かしているのです。
また物理的にはバックすることもできますが、“ギア”と呼ばれるタイヤを持つ足が前方に1脚、後方に2脚と計3脚しかない飛行機は、バックすることで重心が尾翼側に行ってしまい、後方から尻餅をついてしまう可能性があります。そのため後退時にはトーイングトラクターと呼ばれる機体移動のための特殊車両が牽引します。また飛行機は地上の移動がそこまで得意ではありません。そのため、雪で滑りやすい状態になっているなど天候不順時にもトーイングトラクターの力を借りて移動する場合もあります。
ちなみに滑走路へ向かう際など、エンジンの推力を使った地上走行では、飛行機の速度は最高時速50kmにも及びます。お客さまが窓から見る高い位置では、近くに建築物が少ないこともあり、あまり速度を感じることはないかもしれませんが、ジェットエンジンの推力はとても力強いものなのです。
快適で安全なフライトは数多くの“雑学”に支えられています
離陸前からフライト中、着陸後に至るまで、飛行機にはいろいろな工夫やエピソードがあることがおわかりいただけたと思います。とはいえ、これはほんの一部に過ぎません。飛行機には最新の技術が注ぎ込まれ、現在も絶えず改良が加えられています。
お客さまにとって安全で快適なフライトをお楽しみいただくため、さまざまな工夫が重ねられているなか、あっと驚く雑学はこの先もどんどん増えていくことでしょう。次のフライトでは今回学んだ雑学を少しだけ思い出してみませんか?空の旅がいつもより楽しくなるかもしれません。
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