豊洲市場のルーツは古く、江戸幕府開府の1603(慶長8)年に開場した、日本橋魚河岸までさかのぼります。その後1923(大正12)年の関東大震災により焼失しますが、1935(昭和10)年に築地で復活。2018年に規模拡大などのために長年親しまれてきた築地から移転。今も変わらず活気あふれる競りが行われています。
なお、市場では歩きながら飲食するいわゆる“歩き食べ”ではなく、店舗の中で着席するスタイルが一般的。一軒ごとにじっくりと、美食めぐりを楽しみましょう。
※価格は税込み表記です
市場ではやっぱり外せない! 新鮮魚介グルメ
市場と聞いて真っ先にイメージするのは、新鮮な魚介を使ったご馳走ではないでしょうか。寿司や海鮮丼はもちろん、フライや煮付けといった人気メニューが味わえる人気のお店をご紹介します。
確かな目利きの絶品寿司が味わえる「大和寿司」
実力派がしのぎを削る豊洲市場にあって、屈指の行列を誇るのが「大和(だいわ)寿司」。その光景は築地時代から有名で、「Yelp」などグローバルの口コミサイトでも上位の常連であることから、近年ではインバウンドでも人気のスポットとなっています。
創業は1962(昭和37)年。人気の理由は、第一に寿司ダネにあります。
たとえば、寿司店の顔ともいえるマグロは、予約困難なハイクラス寿司店御用達の仲卸「やま幸(ゆき)」と提携。そうした高級店と同じタネを腕利きの職人さんが握り、リーズナブルに味わわせてくれるのです。
定番は、握り7貫に巻物2種と玉子、味噌汁からなる「おまかせ」(5,500円)。この日は長崎産の大トロと中トロに、鹿児島のカンパチ、博多の白イカ、愛媛のクルマエビ、根室のバフンウニ、対馬のアナゴ、北海道イクラの塩漬け巻きなどが提供されました。
もちろん1貫ずつの注文も大歓迎で、その場合の価格は目安として550円から。職人さんはにこやかで話しやすく、緊張することもないはずです。その日のおすすめを聞いてみるのもいいかもしれません。店内はカウンター26席と広く、開放感も十分。狙い目は火曜日の6~8時とのことで、ぜひ覚えておきましょう。
大和寿司
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-3-1 豊洲市場 5街区 青果棟 1F |
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電話 | : | 03-6633-0220 |
営業時間 | : | 6:00~13:00 |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
: | https://www.instagram.com/daiwazushi/ |
種類豊富な海鮮丼専門店の草分け「大江戸」
築地時代から続く、海鮮丼専門店の草分けとして知られるのが「築地 海鮮丼 大江戸 豊洲市場内店」です。
その歴史は古く、1909(明治42)年に日本橋魚河岸で定食屋として開業し、築地での市場再開とともに屋号を「大江戸」に一新。その後時代の流れとともに海鮮丼専門店となり、豊洲でもその名をとどろかせています。
さすがに専門店だけあって、海鮮丼は約30種類と圧巻。迷ってしまうほどある中、取材では部位の食べ比べが楽しい「大とろ入りまぐろ5点丼」(2,800円)を注文しました。なお、ほかにオーダー率が高いのは中トロ、ウニ、エビ、カニ、ホタテなど高級魚介が満載の「いいとこどり丼」(3,700円)や、人気海鮮を組み合わせた「中とろ・サーモン4点丼」(2,600円)。
市場内なので鮮度がいいのはもちろんのこと、目利きのプロが厳選した天然マグロを使っているのでおいしさも格別。部位は大トロ、中トロ、赤身、中おち、ネギトロの5種で、あしらいに玉子が付きます。
丼を覆うかのようにマグロがぎっしり盛り付けられているうえ、一つひとつが大ぶりで食べごたえ十分。また、酢飯に使っている白米は季節や天候にあわせて炊き方やお酢の配合を調整しており、海鮮との相性が抜群です。「豊洲市場に来たらまずは海鮮丼」という人は、同店をおさえておけば間違いありません。
築地 海鮮丼 大江戸 豊洲市場内店
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-5-1 豊洲市場 6街区 水産仲卸売場棟 3F |
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電話 | : | 03-6633-8012 |
営業時間 | : | 8:00~14:30(L.O.)、土8:00~15:00(L.O.) ※状況により変更する可能性がございます |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
web | : | https://www.tsukiji-ooedo.com/ |
市場ならではの希少種も見逃せない「天房」
伝統的な江戸前料理のひとつ、天ぷらの人気店が「天房(てんふさ)」。場所は前述「大和寿司」の2軒隣にあります。創業は、築地に市場ができた1935(昭和10)年ごろで、90年近くも市場で働く目利きのプロに愛されてきました。
自慢の天ぷらは1品300円からで、日替わりの盛り合わせはお得な1,100円。この日は2尾のエビにホタテ、キス、ナス、カボチャ、玉ネギ、モロッコインゲンという全8品でした。ご飯、味噌汁、お新香が付く定食は+400円で、ご飯単品は+200円。また「天丼」は1,500円、「えび穴子天丼」は2,100円です。
市場ならではの魅力が、旬の素材や珍しい魚介類が食べられること。取材時は初冬の時季で、カキ(700円)、ギンポウ(600円)、メヒカリ(550円)、マンボウ(400円)、ワカサギ(300円)などを天ぷらで提供していました。
さらに同店では年間を通してクジラの刺身を提供しているのも特徴で、こちらは仲卸に人気なのだとか。この日は「ニタリクジラ刺身」が700円。天ぷら好きの人はもちろん、仲卸がうなるクジラが気になる人も、ぜひ同店へ。
天房
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-3-1 豊洲市場 5街区 青果棟 1F |
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電話 | : | 03-6633-0222 |
営業時間 | : | 7:00~13:00(材料がなくなり次第終了) |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
旬の食材を使った揚げ物と洋食が絶品の「小田保」
豊洲市場はもちろん、東京を代表する揚げ物の名店が、1935(昭和10)年創業の「小田保(おだやす) 豊洲本店」です。名物のフライメニューのほかにバターソテーやカレーなどもあり、料理はバラエティ豊富。洋食の顔をもった揚げ物食堂といえるでしょう。
数ある中から選んだのは、単品の「カキフライ」(450円)と「ホタテフライ」(400円)。前者は10~4月の限定で、同時期の大人気メニューとして有名です。
そして後者はかなりの肉厚で、一見豚のヒレカツでは?と思えるほどの迫力。どちらも衣はザクザクで、身はプリッと甘くてジューシー。自家製タルタルソースのほか、付け合わせのポテトサラダと千切りキャベツも絶品です。
ここではもう一品、洋食メニューから「メカジキバター焼き」(1,050円)も注文。こちらもみずみずしくハリのある弾力で、香り高くも重すぎないバターの味付けが絶妙です。
筆者のように単品で味わうほか、「ごはんセット」(300円)を付けてしっかり食べるのもよし。セットメニューも豊富で、定番の「とんかつ定食」(1,350円)や「チャーシューエッグ定食」(1,400円)などのほか、黒板メニューには日替わりのおすすめも。好みのスタイルで楽しみましょう。
小田保 豊洲本店
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-5-1 豊洲市場 6街区 水産仲卸売場棟 3F |
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電話 | : | 03-6633-0182 |
営業時間 | : | 6:00~14:00 |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
web | : | https://odayasu.net/ |
幻の味を継承した魚定食の新星「粋のや」
朝食には焼き魚や煮魚が食べたいという人は少なくないはず。そこでおすすめなのが「魚がし料理 粋のや」です。
同店は築地で長年愛されながらも2016年末に閉店し、幻となっていた「和食かとう」のDNAを継承。2018年の豊洲開場とともに新たなスタートを切りました。
看板メニューのひとつが、「和食かとう」時代にマンガ『いつかティファニーで朝食を』の第2話で登場した「銀だら西京焼き」(2,200円)。極厚の銀ダラを自家製西京味噌で約2日間漬け込み、身はふっくら、濃いめの味付けに仕上げた逸品です。
もうひとつが、「金目鯛煮付け」(2,400円)。こちらもきわめて大ぶりの切り身を使い、じっくり煮込んだ奥深い味がたまりません。加えて、豆腐と大根の煮付けも秀逸です。
食べ比べて気付かされるのが、銀ダラは強めな一方金目鯛はやさしめにと、素材の魅力を生かした味付けにしていること。なお、どちらも+200円で定食、+700円でミニ海鮮丼の定食にできます。
そんな同店は、前述「大江戸」の姉妹店であり、名物の海鮮丼を「魚がし料理 粋のや」流に仕立てた「頂 いただき丼」(2,300円~)が味わえます。内容は、数種の刻み海鮮をメインの魚介類とともに山盛りにし、途中で魚介ダシをかけ茶漬けとして楽しむというもの。こちらも見逃せない一品です。
魚がし料理 粋のや
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-5-1 豊洲市場 6街区 水産仲卸売場棟 3F |
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電話 | : | 03-6633-8011 |
営業時間 | : | 8:00~14:30(L.O.)、土8:00〜15:00(L.O.) ※状況により変更する可能性がございます |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
web | : | https://www.ikinoya.com/ |
築地時代から愛される名物グルメ
豊洲市場のお店はほとんどが築地から移転した老舗ですが、ここでは長年愛される人気店や市場関係者もよく訪れる店舗をセレクト。さまざまなカテゴリーからご紹介します。
独自性が光るウナギと鶏の美食処「福せん」
前述「小田保 豊洲本店」の左隣にある「うなぎ やきとり 福せん」は、その名の通りウナギと焼き鳥の有名店。愛知出身の創業者が1962(昭和37)年に築地で始め、現在は2代目がその味を守っています。
ルーツが愛知のため、ウナギは名産地の愛知一色産。また、タレにはたまり醤油、味噌汁には愛知の八丁味噌と京都の赤味噌を調合しているのも特徴です。一方で焼きのスタイルは、蒸してから香ばしく炙る江戸前式。この独自の手法が、同店ならではのおいしさを生み出しています。
おすすめは、二大名物を一度に味わえる「ハーフセット(うなぎ丼+焼き鳥丼)」(2,600円)。
ウナギと焼き鳥はどちらもふっくらしていて香ばしく、タレの味も素材と調和した見事な塩梅。聞けば脂のうまみを生かして焼いており、ウナギのほうが、若干甘みを抑えた味付けに仕上げているのだとか。
ハーフ丼の組み合わせながらボリュームは十分で、焼き鳥はモモと皮を使った1串80gのビッグサイズ。なお「ハーフセット」は「うなぎ丼」と「焼き鳥丼」に「鰻まぶし丼」と「うなぎ茶漬」を加えた計4種から2つを自由に選べる(うなぎ+うなぎの組み合わせは3,000円)ので、お好みでどうぞ。ウナギを気軽に味わうなら、納豆とトロロなどを組み合わせた「ヘルシー丼」や「うなぎ茶漬」(各2,300円)もおすすめです。
うなぎ やきとり 福せん
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-5-1 豊洲市場 6街区 水産仲卸売場棟 3F |
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電話 | : | 03-6633-0128 |
営業時間 | : | 6:30~13:30 |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
web | : | https://gdnw101.gorp.jp/ |
空間も味もあったかい町中華「やじ満」
戦後すぐの1948(昭和23)年に築地で創業した「やじ満」は、町中華の老舗として豊洲移転後も大人気。
店内の壁には、手書きのメニューや小さな子が書いたイラストなどがところ狭しと貼られており、あたたかな雰囲気に包まれています。
名物はあまたあり、点心では「焼売」が絶対的エース。こちらは1人前720円で1個180円から注文できますが、常連客の定番は「半個」(360円)となっています。それは2個でも十分満足できるジャンボサイズであることと、一緒に麺やご飯もののメニューをオーダーするのがお決まりだから。また、ソースをかけて味わうのもツウ好みの食べ方です。
麺メニューの一番人気は、とろとろフワフワの卵がのった「ニラ玉麺」(1,100円)。力強さとやさしさが同居した、あたたかな味わいが身に沁みます。
そして市場ならではのメニューが、10~3月限定の「牡蠣ラーメン」(1,400円)。ぷっくりと大きなカキをたっぷり楽しめる贅沢なおいしさで、毎シーズンこの一杯を楽しみにしているファンもたくさんいます。カキ好きの人はぜひご賞味あれ。
やじ満
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-6-1 豊洲市場 7街区 管理施設棟 3F |
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電話 | : | 03-6633-4560 |
営業時間 | : | 5:00~13:00 ※不定期で5:30開店の日もあり |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
: | https://twitter.com/toyosu_yajima |
大正から続くハイカラ喫茶「センリ軒」
憩いの場として愛され続ける喫茶、「センリ軒」。
1914(大正3)年にミルクホール「千里軒」として日本橋魚河岸に創業したのがはじまりで、築地~豊洲と場所は変わりながらもハイカラな味を届けて今に至ります。
同店も名物は多く、料理では「半熟入りクリームシチュー」(630円/半個530円)が大定番。あえて肉は使わず野菜のダシをベースにした、やさしく家庭的なおいしさが特徴です。具材はジャガイモとニンジンで、とろとろ半熟卵のコク深さが生きる飽きのこない味わいに。この一皿に厚切りトーストとサラダ、ドリンクが付く「スペシャルセット」(1,230円)も人気です。
スイーツも名作がずらり。さっぱり楽しむなら、ビターなアイスコーヒーを使った「ミルコーソフトクリーム」(460円)がおすすめです。その味わいは、ミルクとあわさることでどこか懐かしいコーヒー牛乳のようなテイスト。コーヒーのキレによって、余韻がすっきりしている点も絶妙です。
ほかに「チーズケーキ」(350円)や「アップルチーズタルト」(350円)、「プリン」(300円)などもそれぞれのおいしさがあり、どこか懐かしさを感じます。まったりくつろぐなら、コーヒーなどのドリンクとセットになった「ケーキセット」(680円)もおすすめです。
センリ軒
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-5-1 豊洲市場 6街区 水産仲卸売場棟 3F |
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電話 | : | 03-6633-0050 |
営業時間 | : | 5:00~13:00 |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
: | https://www.instagram.com/toyosu_senriken/ |
手土産にもおすすめな市場唯一の甘味処「茂助だんご」
本稿で紹介している店舗の中で、最も長い歴史をもつ老舗が「茂助だんご」です。創業は、なんと1898(明治31)年。
日本橋時代から、魚河岸で働く旦那衆の粋な手土産として愛され、その後も築地・豊洲の銘菓として重宝されています。
名物は「こし餡」(190円)、「つぶ餡」(190円)、「醤油」(170円)のお団子3種。福島産の特上コシヒカリをうるち米の状態で仕入れた自家製の上新粉に、北海道十勝産の小豆と高精製でキレのある甘さの「鬼ザラ糖」を使ったあんこで作った団子は、素材のうまみを生かした飽きのこない味に仕上げています。醤油も有機丸大豆を使い、提供時には直前で追い醤油をするこだわりよう。
最近は豊洲名物として開発した「おかさな最中」(261円)が大好評。
「おかさな最中」は粒あんと求肥入りの最中で、4個1,042円、8個2,083円の箱入りも人気。賞味期限が約20日間と長いのもうれしいポイントです。また同店は2023年1月に開業する「羽田エアポートガーデン」への出店が決定。空港を利用する際のちょっとした腹ごしらえやお土産購入に立ち寄ってみてはいかがでしょう。
茂助だんご 豊洲市場本店
住所 | : | 東京都江東区豊洲6-6-1 豊洲市場 7街区 管理施設棟 3F |
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電話 | : | 03-6633-0873 |
営業時間 | : | 6:00~15:00、喫茶7:30~14:30 |
定休⽇ | : | 日祝、休市日 |
web | : | https://www.mosukedango.com/ |
旅の楽しみのひとつがホテルや旅館の朝食ではありますが、あえて素泊まりにして早朝から市場で食事をとるのも乙なもの。最寄りの「市場前駅」に向かう列車・ゆりかもめからは海も眺められ、時間によっては夜明け前のベイエリアやマジックアワーのグラデーションなども楽しめます。ぜひ早起きして、市場で“三文の徳”を体験しませんか。
取材・文:中山秀明
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