本記事では、全国各地の魅力的なうつわをご紹介。工房の皆さんに、うつわに込めたこだわりや手に取った際の注目ポイント、自宅での楽しみ方なども聞きました。
【沖縄・やちむん】サンゴ礁の鮮やかな海を作品で表現した「うるま陶器」
沖縄の言葉で「焼き物」をあらわす「やちむん」。どっしりとしたダイナミックさ、ぽってりとした風合いなど、南国らしいおおらかな印象をもつ工芸品ですが、なかでも独特の作品を生み出している工房が「うるま陶器」です。
魅力は、サンゴ礁の海を彷彿(ほうふつ)とさせる鮮やかなマリンブルー。それもそのはずで、この色は作り手である陶芸家の佐藤慎児さんが、飛行機の窓から見た沖縄の海をイメージしたもの。その佐藤さんは「やちむん」の魅力を、「沖縄の豊かな自然と、島人の温かみが宿るところ」といいます。
「当工房は伝統の技を生かしながら新たなニーズを取り込み、斬新な手法や発想を加えて進化させています。そのうえで作品のなかに、沖縄の原風景を閉じ込めました。お客さまにも、うつわを通じて一期一会の沖縄を感じていただけたらうれしいです」(佐藤さん)
うるま陶器では通販はあえて実施していません。その理由は、手に取って選ぶ楽しさを工房自身が発信しているからです。
「一つひとつ手作りで表情が異なるため、事前のご注文やご予約は一切受け付けておりません。ぜひ店頭のギャラリーでお買い求めください」(佐藤さん)
見た目が美しいのはもちろん、特殊加工を施しているので染みにくく、使い勝手がいいのも魅力。日常的な食事シーンにも、特別な会食にも。そしてプレゼントに喜ばれることもうけあいです。工房は那覇空港から車で約1時間、うるま市の海中道路近くにあるのでぜひ現地へ。
うるま陶器
住所 | : | 沖縄県うるま市与那城屋慶名405 |
---|---|---|
電話 | : | 090-7274-0565 |
営業時間 | : | 11:00~18:00 |
定休日 | : | 不定休 |
: | https://www.instagram.com/urumatouki/ |
【佐賀・有田焼】国産磁器のふるさと・有田の品格が宿る「李荘窯」
400年以上の歴史をもつ有田焼は、長崎の波佐見焼などとともに「伊万里焼」として有名です。なかでも有田焼は国産磁器発祥の地。ここで紹介する有田焼窯元の「李荘窯(りそうがま)」四代目の寺内信二さんは、その魅力を「芸術性と多様性」だといいます。
「江戸期より、先達は時代に合わせて必要とされるものづくりをしてきました。伝統と革新の振り子運動を繰り返し、単に作るだけではなくそこに最高の技術がプラスされていまに至ります」(寺内さん)
「李荘窯」の名は、有田焼の陶祖とされる李参平(りさんぺい)の住居跡に創業したことに由来。寺内さん自身も有田焼の原点である初期伊万里の陶片に魅了され、一から有田の伝統や技術を学んだそう。ものには表と裏があり、焼き物の場合は縁づくりや高台づくりに職人のセンスが問われる、と寺内さん。そのうえで「李荘窯」のこだわりを聞くと、「意識的には“うつわに宿る品格”みたいなところを、すべてのプロダクトにのせて作っています」と教えてくれました。
「注目していただきたいポイントは、手に持ったときの感触のよさ。飲み物であれば口当たりのよさですね。作品のなかに、心地よさを感じていただけたらうれしいです。当社のうつわには染付(青手)のものが多数あり、料理の盛り付けと喧嘩すると思われるかもしれません。しかし食材に青色はあまりないので、どんな料理も引き立ててくれるのです。まずは使ってみてください」(寺内さん)
食器棚の一番手前に置かれるような、手に取りやすくて使いやすいうつわを作っていきたいと寺内さん。普段使いからおもてなしまで用途別に幅広く、デザインも多彩な「李荘窯」の作品は、有田焼の事始めにもおすすめです。
李荘窯
住所 | : | 佐賀県西松浦郡有田町白川1-4-20 |
---|---|---|
電話 | : | 0955-42-2438 |
営業時間 | : | 8:30~17:00 |
定休日 | : | 土日祝(お問い合わせください) |
web | : | http://www.risogama.jp/ |
【岡山・備前焼】現代の暮らしに寄り添う意匠と機能美「森本 仁」
岡山を代表する伝統工芸品が、日本六古窯(ろっこよう)のひとつに数えられる備前焼です。ここで紹介するのはその備前市で生まれ、修業後に地元でアトリエを構えた陶芸家・森本 仁さんの作品。その特徴は、現代のライフスタイルに寄り添った、日常的に使いやすい意匠と機能美です。
森本さんが考える備前焼の魅力は、焼き締めならではの土の質感。作品ごとに素材の生かし方やデザインのアプローチを模索し、生活のなかに自然と馴染むものづくりをモットーとしています。
自らが作ったうつわを手に取った際、注目してほしいポイントを聞くと、「そのうつわを使うシーンがイメージできるものを選んでいただけたらうれしいです」と森本さん。
「個人的にはあらゆるシーンに使えるデザイン、どんな料理も受け入れてくれる質感が特徴だと思っています。お客さま自身で想像いただき、購入後もいろいろと試すなかで満足いただけることが一番ですよね。僕の作品が、日々の生活を楽しむ一助になれば幸いです」(森本さん)
なお、森本 仁さんの作品は直接販売されていません。手に取ったり、購入したりするには、取り扱いのある店舗に行く必要があります。たとえば岡山の倉敷美観地区にある、町家の宿とギャラリーを併設した施設「滔々(とうとう)」。同店には森本 仁さんの備前焼のほか、さまざまな作家の作品が展示販売されているので、こちらを訪れるといいでしょう。
滔々
住所 | : | 岡山県倉敷市中央1-6-8 |
---|---|---|
電話 | : | 086-422-7406 |
営業時間 | : | 12:00~17:00 |
定休日 | : | 月曜 |
web | : | https://toutou-kurashiki.jp/ |
【愛知・常滑焼】観て触れて味わえるお洒落な倉庫「TOKONAME STORE」
愛知県常滑市を中心に、知多半島で焼かれている常滑焼(とこなめやき)も、日本六古窯のひとつ。そのなかからご紹介するのが、1967年に創業した窯元「山源陶苑」が手掛けるお店「TOKONAME STORE」です。
倉庫を改装した店内には小屋が3棟あり、自社ブランドのうつわを販売する「STORE」のほか、お子さんでも楽しめる陶芸体験を行う「WORKSHOP小屋」、軽食やコーヒーなどを味わえる「STAND」にわかれています。
常滑焼といえば、急須と甕(かめ)が有名。TOKONAME STOREの一色亜弓さんによると、定番の朱泥(しゅでい)急須は朱泥の原料に含まれる酸化鉄とお茶の成分であるタンニンが反応し、お茶の渋みや苦みがちょうどよく取れ、まろやかな味を作ることができるのだとか。また、白泥(はくでい)で作る焼き締めの急須も同様。
自社ブランドの「TEA FAMILY」は伝統的な常滑焼の技術を継承しつつ、優しいパステルカラーを採用。
「若い世代にも親しみやすく、常滑焼を知っていただく機会となるブランドとなっています。経年変化によって艶や味わいが増すのもポイントで、お客さまのオリジナルになるのが特徴です」(一色さん)
運営元の「山源陶苑」は、甕を50年以上作り続けている窯元。窯元の減少傾向により、常滑で甕を製造している窯元は山源陶苑のみだそうです。
「最近は季節の手仕事を楽しむ方や自家栽培をする方が増えています。そこで、いまの暮らしに溶け込むような配色と形状を考え、昔ながらの製法と同じやり方で『TOKONAME CROCK』というスタイリッシュな甕を開発しました。こちらは自家製の味噌や梅の仕込みに最適。小さい甕なら食卓の調味料入れに活用できますし、漬物を入れてそのまま食卓に1品として出せるのもいいところだと思います」(一色さん)
土本来の色合いとなめらかな手触りを肌で感じられるのは、常滑焼の焼き締めの特徴です。また、常滑焼はうつわだけでなく、保存容器やふだんの暮らしに使用できる日用品が豊富なのも魅力。「TOKONAME STORE」で観て、触れて、味わって。思いおもいの時間を楽しみましょう。
TOKONAME STORE
住所 | : | 愛知県常滑市原松町6-70-2 |
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電話 | : | 0569-36-0655 |
営業時間 | : | 10:00~18:00 |
定休日 | : | 水曜 |
web | : | http://tokonamestore.com/ |
旅先で買ったうつわは、使うたびに購入時の思い出がよみがえるもの。作り手との触れ合いがあればその記憶はより濃くなり、作品への愛着も増すでしょう。うつわを巡る旅で、日本のクラフトを探訪してみませんか。
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