「やきものの町」というイメージが強く持たれている、波佐見町。近年、新たな魅力を発信するために、自然豊かな環境を活かした「クラフトツーリズム+アウトドア」という取り組みを始めています。この記事では、その仕掛け人の三名に、話を聞きました。
画像: 一般社団法人波佐見町観光協会の三浦裕介事務局長(右)、 西海陶器株式会社の小林善輝取締役(中)、 イデアパートナーズ株式会社の今井走ディレクター(左)

一般社団法人波佐見町観光協会の三浦裕介事務局長(右)、
西海陶器株式会社の小林善輝取締役(中)、
イデアパートナーズ株式会社の今井走ディレクター(左)

きっかけは、波佐見の自然の魅力を伝えたいという想い

「自然という面での魅力において、波佐見が他のエリアと違うのは、里山という素朴な田舎の風景が残っていることです。棚田が広がる鬼木郷地区をはじめ、川内郷地区に流れる小さな川では、毎年6月にホタルの光が広がります。夕方になればヒグラシが鳴き、目にも耳にもやさしいひと時を過ごすことができるんです」と語るのは、波佐見観光協会の三浦事務局長(以下、三浦さん)。

もともとキャンプやアウトドアが好きだった三浦さんは、波佐見の四季を感じるアウトドアコンテンツの形成を考えていたそうです。さらに、その想いに賛同する関係者が多かったことも、後押ししました。地域活性事業のディレクターを長年務めるイデアパートナーズの今井ディレクター(以下、今井さん)とタッグを組み、目玉となるイベントを考案。2021年の2月に、波佐見では初めてとなる「クラフトツーリズム+アウトドア」をテーマにしたイベントが企画されました。それが、「HASAMI Camping & Outdoor FESTA」です。

画像: 「波佐見は空気が美味しく、温泉もある。アウトドアとの相性の良さを感じています」(三浦さん)

「波佐見は空気が美味しく、温泉もある。アウトドアとの相性の良さを感じています」(三浦さん)

「クラフトツーリズム+アウトドア」は波佐見の魅力をより広く届けるための仕掛け

やきものの町という知名度が高い、波佐見町。もちろん、アウトドアを目的とした集客の試みは、これが初めてです。

「波佐見と言えば、オシャレなうつわが手に入る、もしくは陶芸体験ができる町というイメージがあります。ですが今、20~30代の若い方は、やきものそのものを目指してというよりは、雑貨やカフェが立ち並ぶオシャレなエリアで過ごすことを楽しむという傾向が強いんです」と語るのは、西海陶器の小林善輝取締役(以下、小林さん)。

近年、波佐見で若者たちからの人気を集めるスポット「西の原」。ここにあるのは、波佐見焼で食事を提供するカフェ・レストランや輸入雑貨を取り扱うショップなど、スタイリッシュなお店ばかり。実は、この「西の原」を運営するのが、小林さんが取締役を務める西海陶器です。

画像: 「波佐見焼の知名度をさらに高めて、直接買いに来てもらえるようにしたいんです」(小林さん)

「波佐見焼の知名度をさらに高めて、直接買いに来てもらえるようにしたいんです」(小林さん)

いろんな世代がそれぞれの目的で波佐見を訪れている、と小林さんは語ります。「クラフトツーリズム+アウトドア」のイベントを開催する大きな目的は、ここにありました。例えば、キャンプ目的で波佐見を訪れた方に「波佐見焼ってこんなにオシャレなんだ」と知ってもらい、一方で、うつわを買いに来た方には「波佐見町は意外とキャンプにも向いているんだ」と興味を持ってもらう。そうすることで、世代や興味の範囲を超えて波佐見の魅力を知ってもらうことができるのです。

「アウトドアの要素を追加することで、今まで日帰り観光だった人にキャンプをして泊まって帰ろうと思ってもらえたらという、相乗効果も狙っています」(三浦さん)

「波佐見には残念ながら、ホテルなどの宿泊施設があまり多くありません。このため、福岡などを拠点とした日帰り観光客が多く滞在時間が短い、というのが課題でした。しかし、波佐見にはキャンプに適した場所が多くあります。キャンプ泊の需要を高めることで、新たな観光客を呼び込むことができると考えたのです。さらに、コロナ禍において密を避けることができる新しい旅のカタチとしても、時代が求めるものにマッチしていました。」(小林さん)

画像: 「少しでも滞在時間を延ばして、もっとディープな波佐見を見てもらいたいですね」(今井さん)

「少しでも滞在時間を延ばして、もっとディープな波佐見を見てもらいたいですね」(今井さん)

まちづくりのコンサルタントとして波佐見町を担当して10年ほどという今井さんは、「クラフトツーリズム+アウトドア」の掛け合わせの妙を語ります。

「キャンプなどアウトドアを楽しんでいる方は、苦労を楽しめる、手間暇かけて作り上げる工程を楽しめる方。手仕事のもの、つまりクラフトにも関心が深いはずです。逆もしかり、かもしれません」(今井さん)

こうしたアウトドアとクラフトとの相性のよさも、発見のひとつでした。波佐見の魅力である里山の自然とやきものは、組み合わさることによって大きな可能性を秘めるコンテンツとなり得るのです。

宿泊をメインとした新しいイベント「HASAMI Camping&Outdoor FESTA」

ここからは、イベントの詳細を聞いていきます。

「HASAMI Camping & Outdoor FESTAは、やきものの町・波佐見町ならではの、新しいスタイルのアウトドアイベントです。キャンピングカーを5台とグランピングテントを5組設置し、実際に宿泊してもらうことができます。テントサイトも用意され、自分のテントを持ち込んでの宿泊体験も可能(限定12組)にしました」(今井さん)

会場は、長崎空港から車で1時間ほどの「やきもの公園」です。こちらは毎年開催されている「波佐見陶器まつり」(2020年、2021年は開催見送り)の会場でもあります。イベントでの、波佐見焼との接点づくりも、しっかりとされていました。

「キャンピングカーとグランピングテントは、寝具だけ持参していただければ食事などはこちらで準備するスタイル。夕食には波佐見の野菜や長崎和牛、波佐見でとれたイノシシのお肉を使ったBBQを用意し、波佐見焼を取り皿として使ってもらいます」(今井さん)

キャンピングカーとグランピングテントはファミリー利用を、テントサイトはソロキャンプ利用を意識し、ターゲットをイメージした受け皿を用意。他にも、子ども向けのボルダリングの会場や、絵付けや生地鋳込みなどの陶芸体験の場を設けるなど、メインターゲットとなるファミリー層向けに、家族の思い出となるコンテンツも盛り込みました。

「今回のイベントをきっかけに、やきものだけにとどまらない波佐見町の魅力に注目してもらいたいですね。波佐見町でのアウトドアの可能性を感じていただく絶好の機会だと思っています」(三浦さん)

画像: 夜はグランピングとキャンピングカー合わせて10もの宿泊施設が整いました

夜はグランピングとキャンピングカー合わせて10もの宿泊施設が整いました

波佐見が次に挑戦するのは「宿泊自体をレジャーに変える」アウトドアの新たな形

2021年春には、田園を中心とした里山の景観が美しい「ミナミ田園」地区に、RVパークがオープンする予定です。

RVパークとは、キャンピングカーオーナーや車中泊ファンの方に向けて「快適に安心して車中泊が出来る場所」を提供するため、日本RV協会が推進しているシステムのこと。ミナミ田園エリアのRVパークは、電源やお手洗いの整備はもちろん、すぐ近くには波佐見温泉もあるというロケーションが魅力。便利で手軽な利点はそのままに、さらに温泉を活かしたことで旅気分の高まる宿泊体験が可能になります。

「宿泊自体がレジャーにもなり、さらに、翌日には陶芸体験や窯元めぐりで観光を楽しんでもらうことで、滞在時間を延ばすことが可能になります。この取り組みが成功すれば、夜のコンテンツをもっと増やしたい。波佐見の魅力は、このアウトドアから広がっていくのだと思っています」(三浦さん)

波佐見町の挑戦は、これからも続いていきます。

画像: 波佐見が次に挑戦するのは「宿泊自体をレジャーに変える」アウトドアの新たな形

波佐見の窯業という文化と、里山の豊かな自然を組み合わせた「クラフトツーリズム+アウトドア」。きれいな空気に清らかな川など、飽きることのない田舎の風景と、波佐見焼の食器で楽しむ地元の食材を使った料理。まさに波佐見のすべてを知ることができる新しい宿泊体験は、密を避けられるという点からも注目すべき新しい旅のカタチです。自由に旅に出られる日がきたら、新しい旅のスタイルを実践しながら、新しい波佐見の魅力を体感しに行ってみませんか。

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