澄み渡る秋晴れの種子島は、晩秋とは思えぬほどおだやかな温かさに包まれていました。かつては鉄砲伝来の島として戦国史にその名を刻み、近年ではロケット打ち上げの拠点のほか、 サーフィンの人気スポット、さらには日本初のヨガの聖地®としても知られています。
そして実は、黒毛和牛の一大繁殖地として注目を集めていることは、あまり知られていない事実かもしれません。温暖で自然豊かな島に、おいしさの秘密を探しに訪れたのは、鹿児島県でJALふるさとアンバサダーをつとめる吉村さんです。
客室乗務員でもある吉村さんは、鹿児島生まれの鹿児島育ち。種子島にはしばしば訪れるものの、黒毛和牛の仔牛が生まれる場所だとは知らなかったのだそう。
「種子島には安納地区という場所があり、甘くておいしい安納芋が採れます。ほかにも芋焼酎の蔵元が数多くあり、サトウキビの産地としても有名なんです」と、さすがに詳しい吉村さん。
そんな島の北部に位置し、和牛繁殖農家が多く拠点を構えているのが、西之表市。聞けば、仔牛たちはのどかな牧場で育つのだそう。西之表市和牛振興会会長をつとめる杉 直樹さんが営む、杉牧場を訪れました。
海を望む丘の草原で、伸び伸びと暮らす黒毛和牛たち
安納地区のとなりの伊関地区。2ヘクタールもの広大な放牧場は丘の斜面で起伏に富んでおり、牛草が繁っています。吉村さんのもとに、母牛たちが集まってきます。人なつっこいのは、ストレスなく伸び伸びと暮らしている証といえそうです。
「牛草はもう30年以上このままで、自然に生えているんです。牛が食べてフンを出し、その養分で草が育つ。循環農法のようなものです。土には海風が運んでくるミネラルがたっぷり含まれていて、それを食べる牛の体は本当に健康なんですよ」
杉さんがこう語る牧場には、現在200頭の母牛と130頭の仔牛がおり、この規模は島内屈指だといいます。牛舎で仔牛にミルクをあげると、愛らしさに思わず目を細めずにはいられません。
「すごくかわいいですね!みんな優しい目をしています」と吉村さん。
「すっきりとした伸びのある発育をした仔牛」。島育ちならではの高い評価
西之表市で生まれた仔牛は、育成環境のよさが特徴のひとつといえそうです。島の特産品である安納芋は、牛にとってもご馳走です。またサトウキビで砂糖を作ったときに出る搾りかす「バガス」も余さず使い、寝床になります。
穏やかな気候と離島の食材に育まれた仔牛たちは、島のめぐみを余さず使った“申し子”のような存在といえるかもしれません。島を離れた仔牛がどう育っていくのか、JA種子屋久で理事をつとめる宮脇幸喜さんからお話を伺いました。
「私たちは牛たちの健康を第一に、我が子のように育てています。種子島育ちの仔牛は島外の肥育農家からすごく人気があります。穏やかで飼いやすく、よく食べます。島はイタリアン、ローズと呼ばれる高級銘柄の草が豊富に採れる場所。枝肉の品評会でいい成績を残していますね。伸びる力があるんです」
伸びやかな体躯で将来のポテンシャルを秘めたこの仔牛たちを、西之表市では「すっきりとした伸びのある発育をした仔牛」と評しているのだとか。西之表市からは年間1600頭ほど出荷されていて、丁寧に育てられた牛たちは、宮崎牛や佐賀牛、神戸牛、松阪牛といった名だたるブランド牛になっていきます。
宮脇さんによると、品評会に出すような牛は、種子島から求めたいという肥育農家が多いのだとか。「プロは仔牛を見たら、20カ月の出荷できる月齢を想像できるそうです。種子島の仔牛は体重的には小さいのですが、育ち方がよく、大人になるとどこよりも立派で大きくなる。これは子どものころに濃厚飼料ではなく、粗飼料を与えているから。とにかく元気なんですよ」。
美しいサシの霜降り牛。脂のうまさと食べやすさを両立した極上サーロイン
サシが美しく、また何枚でも食べられることが、西之表市生まれの和牛が持つ実力なのだそう。はたしてどんな味か、気になりませんか? 旅の締めくくりに訪れたのは浦田海水浴場。種子島の北端に位置するこのビーチは、 日本の水浴場88選のひとつに数えらるほか、ヨガの聖地®でもあります。砂丘の白砂がまぶしく輝き、透明度バツグンの海がきらめきます。
しっかりとサシが入った端正で分厚いサーロインを、潮風が心地よく吹き抜ける海辺の芝生で焼き上げます。炭火で鉄板をよく熱し、牛脂をしっかりと鉄板に馴染ませて肉を滑り込ませます。
ジュワッという音とともに油が跳ね、ナッツを思わせる豊香が漂い、喉が鳴ります。しっかりと両面に焼き色を付け、アルミホイルにくるむのは余熱で火を通すテクニック。待つこと5分。現れたステーキの断面は、薄紅色に色づいています。
カリッとした食感の表面に、とろけるような肉質が隠されています。上質な和牛の指針とされる脂の融点の低さがひとくち食べただけで伝わりますが、さっぱりとしていることも特徴です。口の中でほどけサラリと喉を通りながら、うまみの余韻でたっぷりと楽しませてくれるのです。
「本当においしいですね! 普段はあまりたくさんお肉を食べられないのですが、これならいくらでも食べられます。それにこのソースもとてもよく合います。人工的な甘さじゃなくて、優しい味です」と、吉村さんの頬も緩みます。
このソースは、西之表市・安納で作られたオリジナルの焼肉のタレ(小300円、大550円)。安納地区の安納農産加工室で購入できます。野菜やりんご、黒糖由来のコク深くしっとりとした甘さと、優しい塩気のバランスが絶妙です。添加物不使用かつ尖った辛みもないため、お子さまから年配の方まで安心して食べることができます。
安納農産加工室
住所 | : | 西之表市安納299-4 |
---|---|---|
電話 | : | 090-1875-0546(中園由美子さん・集落支援員/安納校区) |
営業時間 | : | 不定 |
定休日 | : | 土日のほか不定休(要事前連絡) |
あえて銘柄を冠せずお求めやすい、「西之表市生まれの黒毛和牛」
島に生まれ、すくすくと育った9カ月後、島外の肥育農家に渡った牛は、全国各地へ。島で生まれた仔牛の9割は島外に渡り、全国各地で手塩に掛けて育てられ、産地の名などが付けられたブランド牛となるのです。その一方で、契約肥育農家から西之表市に“里帰り”し、「西之表市生まれの黒毛和牛」としてふるさと納税の返礼品になるものもあります。
誰もが知る銘柄という付加価値が与えられ高額になるブランド牛がある一方、あえて銘柄を与えないことで極上の霜降り牛にもかかわらず、価格を抑えることができるのだそう。味わいは折り紙付きで、実は今しがた食べたサーロインがまさにそれ。同クラスの和牛の返礼品のなかでも、お求めやすい寄付金額です。
JALのマイルがたまる ふるさと納税サイト「JALふるさと納税」でも西之表市生まれの黒毛和牛をご紹介していますので、ぜひご覧ください。
ひとり旅が好きな吉村さんにとって、自然に触れ、グルメを満喫する旅は、“味わい深い”ひとときになったようです。「生産者さんから話を聞くなかで、家族のように愛情を込めて育てていることが伝わってきました。愛情を込めると、本当においしくなるんですね。美しい自然のなか、とても学びに溢れた旅になりました」と、振り返ります。
おいしさを楽しみたければふるさと納税で、おいしさの秘密に触れたいなら、種子島の西之表市へ。仔牛たちを育む豊かな自然は、旅路も豊かに演出してくれることでしょう。
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