江戸時代、海外貿易の窓口だった長崎の出島と、九州の玄関口である福岡県の小倉をつなぐ各所に、砂糖や外国菓子を由来とする独特の食文化が今も残ります。これは長崎街道。「シュガーロード」と呼ばれる日本遺産です。400年の長きにわたる歴史を、味覚で触れられる約200km。甘くておいしい学びの旅路へとご案内します。
画像1: おいしく楽しく学べる旅路。九州の日本遺産、シュガーロードへ

※価格は税込み表記です。

初夏の長崎。この日は肌に心地良い湿気を感じながら、見上げれば足早に流れる雲がたなびきます。長崎空港から40kmほどに位置する長崎市街の中心地が、今回の旅路の出発地です。

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江戸時代の長きにわたり、交易の窓口として栄えた長崎の出島には、さまざまな文化がもたらされました。そのひとつが、砂糖。長崎といえばカステラが有名で、九州各地で南蛮由来のお菓子が作られています。これらのお菓子や砂糖にまつわる文化は本州へと向かう長崎街道、通称「シュガーロード」を彩り、2020年に日本遺産に認定されました。

南蛮西欧のお菓子も砂糖も、江戸に伝わったのは長崎の「出島」から

画像1: 南蛮西欧のお菓子も砂糖も、江戸に伝わったのは長崎の「出島」から

旅の始まりは、シュガーロードの始点である長崎の「出島」です。江戸時代につくられた約4,500坪の扇形の人工島です。近代に入って周囲は埋め立てられていますが、現在では復元が進み19世紀初頭の景色がよみがえっています。

画像2: 南蛮西欧のお菓子も砂糖も、江戸に伝わったのは長崎の「出島」から

出島は、江戸幕府の鎖国政策のなか、唯一西欧との交易が許されていた場所です。

画像3: 南蛮西欧のお菓子も砂糖も、江戸に伝わったのは長崎の「出島」から

オランダを通じて輸入された砂糖は、出島内の蔵に収められました。土蔵づくりの一番蔵をはじめ、当時の建物が復元されています。

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最盛期とされる宝暦9年(1759年)には、白砂糖と氷砂糖の輸入量は1,200トン以上に及んだとか。三番蔵のなかは砂糖が詰まった麻袋(レプリカ)が積んであるほか、シュガーロードに伝わる砂糖文化を窺い知ることができます。

出島和蘭商館跡

住所長崎県長崎市出島町6-1
電話095-821-7200(出島総合案内所)
営業時間8:00~21:00(最終入場20:40)
定休⽇無休
入場料大人520円/高校生200円/小中学生100円
webhttps://nagasakidejima.jp

福砂屋のコウモリ紋の由来となった国宝の寺「崇福寺」

画像1: 福砂屋のコウモリ紋の由来となった国宝の寺「崇福寺」

長崎四福寺のひとつに数えられ、唐寺様式の伽藍を誇る黄檗宗(おうばくしゅう)寺院です。福州出身の唐人が等の僧侶、超然(ちょうねん)を招いて建立されました。ここでは砂糖の寄進がたびたび行われたといわれています。国宝に指定されているのが、第一峰門(だいいっぽうもん)と大雄宝殿(だいゆうほうでん)です。

画像2: 福砂屋のコウモリ紋の由来となった国宝の寺「崇福寺」

中国様式の寺院建築が立ち並び、極彩色で荘厳。日本の寺院建築とはまた違った趣があります。なかでも珍しいのが、唐船主たちが航海安全を祈願して祀った媽祖堂(まそどう)です。

画像3: 福砂屋のコウモリ紋の由来となった国宝の寺「崇福寺」

また、境内には巨大な鋳物の釜があります。これは、1682年(天和2年)に起きた大飢饉の際に、住職が炊き出しに使ったもの。当時、お米を扱っていた福砂屋は32俵もの米を寄進したとか。

画像4: 福砂屋のコウモリ紋の由来となった国宝の寺「崇福寺」

その返礼に「崇福寺(そうふくじ)」から送られたのが、コウモリの紋。福砂屋はカステラ発祥の老舗として有名ですが、そのコウモリのロゴマークはこの逸話に基づいているのです。

崇福寺

住所長崎県長崎市鍛冶屋町7-5
電話095-823-2645
営業時間8:00~17:00
定休⽇無休
拝観料大人300円

江戸期の菓子作りの様子が刻まれた、職人尽(菓子製造の図)

長崎は、古くから菓子作りが盛んに行われていました。当時の職人の仕事を偲ぶなら、「松森天満宮」へ。本殿の瑞籬(みずがき)の欄間には、「職人尽(しょくにんづくし)」と呼ばれ、職人の仕事を彫り込んだ鏡板が30枚あり、その中の1枚が「菓子製造の図」です。県指定有形文化財に認定されたこの見事な指物は、歴史的な資料としてだけでなく、美術品としても高く評価されています。

長崎天神 松森天満宮

住所長崎県長崎市上西山町4-3
電話095-822-7079
webhttps://www.matsunomori.com/index.html

さっぱり濃厚!散策のお供に「長崎南山手プリン」

画像1: さっぱり濃厚!散策のお供に「長崎南山手プリン」

長崎は坂の町です。散策に疲れたなら、シュガーロードらしくスイーツとともにひと休み。「長崎南山手プリン本店」は、大浦天主堂へと向かうグラバー通り沿いにある、プリンの専門店です。九州産の厳選された素材を使い、丁寧に手作りされています。

画像2: さっぱり濃厚!散策のお供に「長崎南山手プリン」

常時10種類ほどのプリンがラインナップされていて、なかでも定番は「南山手ステンドグラスプリン」(450円)。大浦天主堂の鮮やかなステンドグラスの美しさを、ジュレで表した逸品です。食感豊かなジュレのさわやかさと、濃厚なカスタードクリームの滑らかさが織りなすコントラストをお楽しみください。

長崎南山手プリン本店

住所長崎県長崎市南山手町2-11
電話095-895-8886
営業時間10:00~18:00
定休⽇無休
webhttps://nagasaki-pudding.com

諫早市にある、シュガーロードの古道

画像: 諫早市にある、シュガーロードの古道

シュガーロードには、随所に拠点となる町があります。長崎のお次は、諫早市。江戸時代の道の姿を今に残す「大村街道」は、文化庁指定「歴史の道百選」に選ばれています。諫早市破籠井町(わりごいまち)から大村市との境界にある硯石までは諫早市の指定史跡にもなっています。その道中には通行人や荷物を検分する番所の石垣もあります。ハイキングコースにおすすめです。

大村街道(諫早市)

住所長崎県諫早市破籠井町
アクセス県営バス「破籠井」徒歩5分

永久不壊の願いを込めて作られた堅牢な「眼鏡橋」

画像: 永久不壊の願いを込めて作られた堅牢な「眼鏡橋」

諫早市を訪れたなら、「眼鏡橋」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。国の重要文化財に指定された日本で最初の石橋。橋がある諫早公園は、市内中心部の高城跡を緑地化したエリア。緑豊かで、夏にはホタルが舞う場所です。天保10年(1839年)に、永久不壊の願いを込めて作られた堅牢な橋は、自然と調和した静かなたたずまいで、今も地元の暮らしに寄り添います。

眼鏡橋(諫早公園)

住所長崎県諫早市高城町770-2
電話0957-22-1500(諫早市緑化公園課)

甘くて風味豊か。素朴でおいしい「梅ヶ枝荘」の大村寿し

画像1: 甘くて風味豊か。素朴でおいしい「梅ヶ枝荘」の大村寿し

錦糸卵ののった角寿司の歴史は古く、はるか戦国時代に遡ります。この地を治めていた大村家当主・大村純伊(すみこれ)が、領地を奪還した家臣らをねぎらう目的で作ったのが、「大村寿し」のはじまりだとか。以来、地元の祝いの席には欠かせない郷土料理になったそう。

画像2: 甘くて風味豊か。素朴でおいしい「梅ヶ枝荘」の大村寿し

大村藩の台所番が明治27年に、玖島(くしま)城内に創業した「梅ヶ枝荘」でいただくのが、大村寿し定食(1,500円)。ミルフィーユ状に甘辛く煮染めた野菜などが入って彩り豊か。ほのかな甘さが感じられ、懐かしさとともにほっこりするようなおいしさです。

画像3: 甘くて風味豊か。素朴でおいしい「梅ヶ枝荘」の大村寿し

テイクアウトのお土産に、名物の梅ヶ枝焼(130円)もどうぞ。こしあんを薄皮で包み、鉄板で焼き上げるパリッとアツアツのお餅です。お花見のお供に大人気なのだとか。

梅ヶ枝荘

住所長崎県大村市玖島1-36
電話0120-52-1389
営業時間平日10:00~16:00
土日祝10:00~17:00
定休⽇7月〜2月の水曜
webhttps://umegaesou.site

シュガーロードの旅で一泊するなら、嬉野温泉へ

画像: シュガーロードの旅で一泊するなら、嬉野温泉へ

シュガーロードの途中で一泊するなら、「嬉野温泉」はいかがでしょうか。西九州のなかでも一大温泉地として知られています。実は日本三大美肌の湯のひとつに数えられているのだとか。トロっとした泉質は、ナトリウムを多く含む重曹泉です。

嬉野温泉

住所佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿

九州における羊羹作りの名門、村岡総本舗

画像1: 九州における羊羹作りの名門、村岡総本舗

シュガーロードの道中では、和の定番スイーツも押さえておきたいところです。名水百選にも選ばれる祇園川が流れ、水質の良さから羊羹づくりが広がった小城市へ足を向けましょう。

画像2: 九州における羊羹作りの名門、村岡総本舗

「村岡総本舗」には、1941年に建てられた砂糖蔵を改装した「村岡総本舗羊羹資料館」があります。

画像3: 九州における羊羹作りの名門、村岡総本舗

館内では羊羹の歴史と文化を学べる展示のほか、伝統製法の小城羊羹も試食できます。小豆色の本煉りと、大手亡豆(おおてぼうまめ)の紅煉りは優しい味わい。いずれも表面に砂糖の膜が浮き出し、シャリシャリとトロトロのコントラストが楽しい伝統製法の小城羊羹を、ぜひお土産にどうぞ。

画像4: 九州における羊羹作りの名門、村岡総本舗

売店にはさまざまな菓子が並んでいます。伝統的な製法で作られた菓子たちは、いずれもレトロなパッケージでかわいらしいものばかりです。

村岡総本舗 本店

住所佐賀県小城市小城町861
電話0952-72-2131
営業時間9:00~18:00(資料館は17:00まで)
定休⽇無休
webhttps://muraoka-sohonpo.co.jp

風情に溢れた「柳町」の街並み

画像: 風情に溢れた「柳町」の街並み

佐賀県佐賀市、「柳町」の街並みは風情に溢れています。江戸時代には舟による物流の拠点として、明治、大正にかけて発達しました。歴史的な建造物が多く立ち並び、商人の町の風情を今に伝えます。

柳町

住所佐賀県佐賀市柳町

色とりどりのフレーバーが人気。「Cream Design」

画像1: 色とりどりのフレーバーが人気。「Cream Design」

旅の最後の目的地は、北九州市です。ちょっとここで、シュガーブレイク。「Cream Design」は、古式ゆかしき砂糖の文化において、もっとも新しいスタイルのひとつといえるかもしれません。

画像2: 色とりどりのフレーバーが人気。「Cream Design」

彩り豊かなジェラートにアイスケーキ、アイスバーなど、豊かなセンスで“クリームをデザイン”。

画像: ジェラートはシングル(420円)、ダブル(540円)、トリプル(600円)から選べ、プレミアムフレーバーは1種類につきプラス70円で注文可能

ジェラートはシングル(420円)、ダブル(540円)、トリプル(600円)から選べ、プレミアムフレーバーは1種類につきプラス70円で注文可能

一番人気はプレミアムフレーバーのピスタチオで、フランボワーズとの組み合わせ(ダブルとプレミアムフレーバーで610円)が好評だとか。見た目のみならず、味わいも秀逸です。

Cream Design

住所福岡県北九州市小倉南区上曽根新町11-22 sweet shop FAVORI PLUS内
電話093-473-0023
営業時間11:00~17:00
定休⽇sweet shop FAVORI PLUSに準ずる
webhttps://www.cream.design

シュガーロードの終着点「常盤橋」

画像: シュガーロードの終着点「常盤橋」

シュガーロードの終点にして、このたびの到達点が、「常盤橋」です。北九州は本州との往来の拠点。長崎街道を通った砂糖は、ここから下関行きの船に乗ったとされます。常盤橋は江戸初期に作られ、武士と町民の居住区を結ぶ橋として架けられました。現在の橋は平成7年にかけられた木造のもので、レトロな景観とマッチしています。

常盤橋

住所福岡県北九州市小倉北区室町2

江戸時代を経て、砂糖は日本各地の食文化に広く波及しました。一説によると、日本は世界のなかでももっとも砂糖を料理に使う国のひとつだとか。それほどまでに私たちの生活に文字通り“溶け込んだ”砂糖の源流を辿ることができるのが、今回の旅路です。そしてシュガーロードに関連する見どころやグルメは、他にも豊富にあります。彩り豊かなおいしい旅に、出かけてみませんか?

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