日本には、地域に根付いたさまざまなお祭りがあり、その数は約30万件に上るとも言われています。お神輿を担いで練り歩くものや盆踊り、火祭りなど内容もさまざまです。
そんなお祭り大国の日本だからこそ、名前は聞いたことがあっても、由来や見どころまでは詳しく知らないお祭りばかり……という方も多いかもしれません。そこで本記事では、「日本三大祭り」をはじめ、「東北三大祭り」「日本三大喧嘩祭り」「三大くんち(九州三大秋祭り)」といった各地の個性豊かな三大祭りもピックアップしてご紹介します。気になるお祭りを見つけたら、ぜひ実際に訪れて体感してみてください。
画像: 日本三大祭りとは? 見どころや歴史を知って、各地のお祭りへでかけよう

日本の伝統文化「お祭り」はどのようにして生まれた?

そもそも、日本のお祭りはどのように始まったのでしょうか。諸説ありますが「祭り」はもともと、神様にお伺いをたてる「祀る(まつる)」が語源になっていると言われており、主に春夏秋冬、季節の変わり目となる時期に実施されてきました。これは生活の営みのサイクルと深く関わっており、農村であれば「お米がたくさんとれますように」、漁村であれば「お魚がたくさんとれますように」など、その土地の神様に祈りを捧げるために実施されてきたのです。

また、お祭りのうち重要な神事のほとんどは、見物人のいない夜に行われ、祈りを捧げることが非常に大事とされてきました。そこから徐々に開催時間帯が昼に移り、江戸時代以降に大衆化。娯楽や地域交流のため、祭りを大勢で楽しみ盛り上がろうという意識が芽生えたのです。経済的に裕福な町では、祭りの衣装や道具の豪華絢爛さを競うようになり、それが近年では観光客を惹きつける魅力にもつながっています。(参考:柳田國男 『日本の祭』 角川ソフィア文庫 2013年)

画像: iStock/kanzilyou

iStock/kanzilyou

日本三大祭りとは

日本各地の祭りの中でも特に有名なものが「日本三大祭り」です。日本三大祭りは祇園祭(京都)、天神祭(大阪)、神田祭(東京)で、いずれも非常に規模が大きく、歴史が古いという特徴があります。

祇園祭(京都府・八坂神社)

画像: 祇園祭(京都府・八坂神社)

長い間、都が置かれ、伝統文化が色濃い京都で行われる「祇園祭(ぎおんまつり)」。千年以上の歴史がある八坂神社の祭礼です。「京都祇園祭の山鉾行事」として、ユネスコ無形文化遺産にも登録されました。

祇園祭は「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」と呼ばれており、869年(貞観11年)に京の都をはじめ日本各地に疫病が流行したとき、災厄の除去を祈ったことに始まります。その疫病が流行った大昔に想いを馳せながら、歴史の重みを感じられるお祭りです。

画像: iStock/Alexander Vow

iStock/Alexander Vow

7月17日の山鉾巡行(前祭)が行われた後の夕刻、八坂神社の石段下で祭りの主役となる3基の神輿、「素戔嗚尊(すさのをのみこと)」「櫛稲田姫命(くしいなだひめのみこと)」「八柱御子神(やはしらのみこがみ)」の差上げが行われ、出発の儀「神輿渡御(みこしとぎょ)」を執り行います。「ほいっと!ほいっと!」という掛け声の中、それぞれの神輿が高々と担ぎ上げられる様子は圧巻です。

そして、祇園祭の見どころのひとつ、山鉾巡行(やまほこじゅんこう)は祭りの間に2回(前祭と後祭)行われ、“動く美術館”と称されるほど豪華絢爛な山鉾(山車)34基が京都の町を巡行します。

祇園祭では、毎年7月1日~5日に行われる祭の無事を祈願するための「吉符入(きっぷいり)」に始まり、7月31日の「疫神社夏越祭(えきじんじゃなごしさい)」で幕を閉じるまでの約1カ月間、各種の神事や行事が繰り広げられ、約180万人もの来場者が訪れます。

祇園祭

開催日時7月1日~31日
場所八坂神社とその周辺地域(四条通など)
webhttps://www.yasaka-jinja.or.jp/event/gion/

天神祭(大阪府・大阪天満宮)

画像1: 天神祭(大阪府・大阪天満宮)

熱くて人情味あふれる大阪において最大規模の祭り、「天神祭(てんじんまつり)」。毎年7月24日と25日に行われる大阪天満宮の祭礼です。

大阪の天神祭の始まりは今から約1,000年前に遡ります。菅原道真公の御霊を鎮めるために川に白木の神鉾(かみほこ)を流し、それを、神社の領地内で生活する住民、神領民(しんりょうみん)が船を仕立てて奉迎するとともに、斎場では祓い清めの儀式が行われたのが始まり。以来、長い伝統が受け継がれており、全国の天満宮で行われる天神祭とともに、信仰を集めてきました。

画像2: 天神祭(大阪府・大阪天満宮)

天神祭の見どころは、祭りの最終日に大量の船が大川に勢ぞろいし、大川~堂島川で繰り広げられる船渡御(ふなとぎょ)です。周辺にはかがり火や屋台が並び、例年100万人近い見物客でにぎわいます。祭りの最後を飾る「天神祭奉納花火」では、天神様にちなんで梅鉢の形に開く“紅梅”というオリジナル花火が打ち上げられます。水面に映る明かりと夜空に浮かぶ花火が美しく、“火と水の祭典”とも呼ばれています。

2023年の天神祭は4年ぶりの通常開催となり、奉納花火が行われるとのことなので、復活の瞬間を見届けてはいかがでしょうか。

天神祭

開催日時毎年7月24日・25日
場所大阪天満宮及び大川(旧淀川)など
webhttps://osakatemmangu.or.jp/saijireki/tjm

神田祭(東京都・神田明神)

画像1: 神田祭(東京都・神田明神)

神田明神は730年(天平2年)に現在の大手町に創建され、1616年(元和2年)に江戸城の表鬼門の守り神として今の場所に遷座しました。江戸に暮らす人々の守り神として今日に至る信仰を集めています。そんな大都市東京(江戸)の総鎮守である神田明神。ここを中心として、「神田祭(かんだまつり)」が2年に1度開催され、毎回約30万人がこの祭りを訪れます。

神田明神は、神田をはじめとした日本橋や秋葉原、大手町など108町会の氏神様です。神田祭の最大の見どころである「神幸祭(しんこうさい)」では、ご祭神を乗せた鳳輦(ほうれん:屋根に鳳凰を飾り付けた神輿)と平安時代の衣装を着た人々が大行列を作り、108町会・約30kmという長い距離を練り歩きます。“天下祭”の呼び名にふさわしく、祭礼絵巻のような絢爛豪華な巡行は圧巻です。

画像2: 神田祭(東京都・神田明神)

そして、もうひとつの見どころ「神輿宮入」では、大小200基の神輿が江戸っ子たちの元気な掛け声とともに次々と神田明神に到着します。

2023年は4年ぶりとなる神田祭が開催され、熱気あふれる江戸っ子たちの姿を見ようと多くの人でにぎわいました。次回は2年後の2025年5月上旬頃に開催予定です。

神田祭

開催日時2年に1回、5月15日周辺の数日間
場所神田明神、日本橋、秋葉原など
webhttps://www.kandamyoujin.or.jp/kandamatsuri/

個性豊か! 地域やコンセプトごとにも存在する三大祭り

日本には他にも地域やコンセプトごとに分類された「三大祭り」が存在します。個性豊かな三大祭りが並ぶ中から、3つをピックアップしてご紹介しましょう。

東北三大祭り

東北三大祭りとは「青森ねぶた祭(青森県)」「秋田竿燈(かんとう)まつり(秋田県)」「仙台七夕まつり(宮城県)」を指します。その中でも特に全国的に有名なお祭りと言えば、青森ねぶた祭(青森県)でしょう。

青森ねぶた祭(青森県・青森市内)

画像1: 東北三大祭り

青森県青森市で毎年8月2~7日に開催される青森ねぶた祭は、例年300万人近い人々が集結することから、日本の中でも特に来場者数が多い祭りのひとつと言われています。

青森ねぶた祭は、1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されており、奈良時代に中国から伝わった七夕祭の灯籠流しが地域の習俗(虫送りなど)と一体化して生まれたとされますが、はっきりとした起源は定かではありません。

画像2: 東北三大祭り

このお祭りの見どころは、ねぶた師によって制作される巨大な灯篭“ねぶた”の造形です。夜に光り輝く、その芸術的な作品たちは多くの人々の心を惹きつけます。また、ねぶたの周りでは、「ラッセーラー」という掛け声が上がり、踊り子(ハネト)たちが威勢よく踊る様子も圧巻です。

青森ねぶた祭

開催日時毎年8月2~7日
場所青森県青森市内(新町通り、八甲通り、国道、平和公園通り、本町寺町通りなど)
webhttps://www.nebuta.jp

三大くんち(九州三大秋祭り)

くんち(おくんち)とは九州北部における秋祭りのことで、収穫感謝の意味が込められています。中国では9月9日を重陽(五節句のひとつ)として祝う風習があり、その9日の読み方に由来するとも言われています。三大くんちといえば、「長崎くんち(長崎県)」「博多おくんち(福岡県)」「唐津くんち(佐賀県)」。注目は、異国情緒も感じる長崎くんち。

長崎くんち(長崎県・諏訪神社)

画像1: 三大くんち(九州三大秋祭り)

約400年の歴史を持つ長崎くんちは、長崎の氏神「諏訪神社」の秋祭りで、毎年10月7~9日に地域一丸となって開催されます。1634年(寛永11年)に、二人の遊女が諏訪神社神前に謡曲「小舞」を奉納したのが祭りの始まりと言われています。現在、奉納踊を披露するのは町ごとになっており、7年に一度の当番の町は「踊町」と呼ばれます。

画像2: 三大くんち(九州三大秋祭り)

この祭りの見どころは、貿易港として栄えた長崎らしい異国情緒あふれる演し物(だしもの)です。龍踊(じゃおどり)や鯨の潮吹き、太鼓山(コッコデショ)など、当番町ごとに出し物が違います。中国や西洋の文化が交じり合い、独自の発展を遂げました。これらの奉納踊は国指定重要無形民俗文化財となっています。

長崎くんち

開催日時毎年10月7~9日
場所長崎県長崎市、諏訪神社周辺
webhttps://nagasaki-kunchi.com

日本三大喧嘩祭り

祭りの醍醐味といえば、喧嘩にも見えるほどの激しい競い合いや荒々しさという人も少なくないでしょう。日本三大喧嘩祭りは、主に「岸和田のだんじり祭(大阪府)」「角館のお祭り(秋田県)」「飯坂けんか祭り(福島県)」を指します(富山県の「伏木曳山祭(ふしきひきやままつり)」を入れる場合もあります)。その迫力を体感するなら、まずは岸和田だんじり祭(大阪府)へ。

岸和田だんじり祭(大阪府・岸和田市内)

そのスピード感と迫力で有名な岸和田だんじり祭は、毎年9月と10月に大阪府岸和田市で行われるお祭りです。江戸時代中期行われた、米や麦、豆、あわやひえなどの5つの穀物の収穫を祈願した稲荷祭が、岸和田だんじり祭の始まりです。それ以来300年以上、伝統がつながれてきました。だんじりが市内を疾走するようになったのは戦後からで、道路の舗装工事が進んだことなどが背景に挙げられます。

画像: 日本三大喧嘩祭り

重さ4t、高さ4mという非常に大きくて重い「だんじり(山車)」が豪快に市内を疾走します。また、だんじりが勢いよく街角を曲がる「やりまわし」では、祭りの花形である大工方がだんじりの屋根に乗ってリズミカルに舞います。汗しぶきが飛ぶような荒々しさと繊細さが魅力です。

岸和田だんじり祭

開催日時毎年9月の敬老の日前の土日、毎年10月上旬
場所大阪府岸和田市、岸和田城周辺
webhttps://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/danjiri

改めて日本各地のお祭りの由来や歴史、見どころなどを知ってからお祭りに出かけてみると、いつも以上にお祭りを楽しむことができます。この記事との出合いをきっかけに、お祭りを目的にして日本各地へと旅へ出てみてはいかがでしょうか。

関連記事

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

This article is a sponsored article by
''.