空の旅を彩る機内食は、フライトにおける楽しみのひとつです。JALでは季節や路線などにあわせて、さまざまなメニューをご提供していますが、緻密な作業を経て、お客さまにお届けしていることをご存じでしたか。安全とおいしさを両立させるための妥協なきこだわりの数々をレポートします。

早朝。成田空港からほど近いJALロイヤルケータリング(以下JRC)の機内食工場には、ひっきりなしにトラックが到着します。これらは機内食で使われる食材などです。これらがいかなる過程を経て、調理が施され機内食となり、お客さまの元に届けられるかをご覧いただきましょう。

衛生管理を徹底した搬入作業と、異物の混入を防ぐ食材保管

画像1: 衛生管理を徹底した搬入作業と、異物の混入を防ぐ食材保管

機内食の衛生管理は極めて重要です。搬入口は2重の扉になっており、片方の扉が開いているときはもう片方が閉まっている構造。常に片方が閉じた状態を保つことで虫やホコリの侵入を防ぎ、衛生管理を徹底しています。肉や野菜といった生鮮食品のほか、調味料や菓子類などの加工品に加えて、機内でご提供するアメニティや機内販売品に至るまで、飛行機に搭載する食品や商品がこの工場で一堂に会するのです。

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松尾「野菜はおもに周辺の取引先から仕入れ、肉・魚介類はそれぞれ専門の取引先を使い分けています。サステナビリティの観点から、継続的に環境配慮の取り組みを実施しています」

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こう語るのが、調達部の松尾貴由です。生鮮食材は鮮度が命。すみやかに冷蔵庫や冷凍庫など、種類ごとに適切に温度管理された保管庫へ運び込まれます。

こだわりの下処理と丁寧な調理

厨房エリアは2フロアにわたる広大な面積が確保されています。和食部門と洋食部門、スペシャルミール部門などに分かれており、ビジネスクラスやファーストクラスの調理もこの厨房で行われます。

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野菜、精肉、魚介と分けられたエリアで下処理の工程を行います。和食調理部門の渡邊浩仁が案内してくれました。

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渡邊「衛生管理のため、持ち手が木材の包丁は使いません。すべてステンレス包丁です。一つ一つの食材に定規などを使って精密にカットしていきますが、これは火の通りを均一にしたり、見た目の美しさを保つためです」

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火入れから盛り付け、すべての工程を人の手によって行います。火入れのためのオーブンや大口コンロがずらりと並んでいます。

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盛り付けも一品、一品、丁寧に手作業。ビジネスクラスやファーストクラスになると工程はさらに複雑になり、調理現場で食器ごとに丁寧に盛り付けします。

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ファーストクラスでは、機内に搭載した後、客室乗務員が盛り付けて提供するメニューもあり、最高のバトンタッチでお客さまへお届けいたします。

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なかでも印象的なのが、ハラル認証スペシャルミール。ほかの禁止食材の混入を防ぐため、区画を切り分けて管理され、調理道具や調理の時間帯も分けられます。

機内食独自の世界。仕上げを意識した火入れと、上空1万メートルならではの味付け

機内食の調理において特徴的なのが、火入れと行程だと渡邊はいいます。工場で行われるのは、機内でお客さまにベストな状態でお届けできるように調理することです。機内オーブンにはスチームオーブンとマイクロウェーブ(電子レンジ)の2種類があり、機内での加熱時間・温度を逆算してレシピが設計されているのです。

画像1: 機内食独自の世界。仕上げを意識した火入れと、上空1万メートルならではの味付け

渡邊「飛行機内で温める温度と時間は全て決まっています。たとえば機内の130度のオーブンで30分調整することで、ほどよい感じになるように、事前に火入れを調整しているのです。機内での加熱条件はメニューごとに異なります。提供までにかかる時間を踏まえてメニューを構成する必要があります」

画像2: 機内食独自の世界。仕上げを意識した火入れと、上空1万メートルならではの味付け

また上空1万メートルに達する高度では気圧の影響で味や香りの感じ方が変わるとされているため、その味付けを工夫しています。

画像3: 機内食独自の世界。仕上げを意識した火入れと、上空1万メートルならではの味付け

渡邊「しっかりとメリハリをつけたメニューを提供することで、上空で食べたときにも地上と変わらないようにしています」

さらに、盛り付けのときも15度以下で45分以内に行うルールがあります。調理後すぐに強力な冷蔵庫で冷却し、菌の繁殖を防ぎます。4時間以内に中心温度を10度以下に冷却しなければなりません。そのような厳格なルールが常に遵守されています。

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こうして調理を終えたお食事はトレーに乗せられ、機内に搭載するカートに重ねて入れられます。つまり客室乗務員が機内食をお届けするカートは、すでに工場内にある段階で一通りのセッティングが済んでいるわけです。

ソムリエさながらの検品と、すべて手作業によるカトラリーセッティング

画像1: ソムリエさながらの検品と、すべて手作業によるカトラリーセッティング

膨大な数のカートが移動する傍ら、組み込みエリアの一角に大勢のスタッフが黙々と作業する姿が目に留まります。ビジネスクラス以上でご提供するウェルカムシャンパンカップの検品は、ソムリエの作業さながら。水垢や汚れ、曇りがないか、欠損がないか、1個ずつ目視と手触りで検品します。

画像2: ソムリエさながらの検品と、すべて手作業によるカトラリーセッティング

一方では、カトラリーのセッティングが行われています。エコノミークラスのカトラリーは機械を使いながら流れ作業でカトラリーセットをビニール袋に詰めていきます。ビジネスクラスのカトラリーは、ナプキンで1組ずつ手作業で巻いたのち、カトラリー自体にもライトを使用してサイズや傷みを確認します。

画像3: ソムリエさながらの検品と、すべて手作業によるカトラリーセッティング

温度管理を徹底し、迅速に飛行機へ搭載

画像1: 温度管理を徹底し、迅速に飛行機へ搭載

機内食のカートには、機内で提供するドリンク類などもセットされ、さらに別エリアで保管されていたアメニティなどの商品群と合流し、冷やされたトラックの荷室に積み込まれます。

画像2: 温度管理を徹底し、迅速に飛行機へ搭載

搬出エリアの奥には、巨大なモニターを見つめるドライバーの姿があります。モニターには機材の運航状況や離着陸状況がリアルタイムに反映されています。

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ギャレーでも客室乗務員が再度チェック。ご提供前の品質確認

画像1: ギャレーでも客室乗務員が再度チェック。ご提供前の品質確認

工場を出発したカートは、飛行機が並ぶ駐機場へと進みます。機内食会社の搭載スタッフの誘導で機材の脇に駐めると、荷台部分が上昇します。実はこのトラック、ハイリフトトラックと呼ばれる特殊車両で、昇降機能があるのです。JRCのスタッフによりカートが手早く機内に運び込まれると、舞台は客室後方などに設けられたギャレーへと移ります。搭載された食事の数や内容が確認され、それぞれのカートが所定の位置に収められます。

中塚「工場を出発したトラックが空港内に入るまでには約30分を要します」

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こう教えてくれたのが、運営部の中塚有紀。1便につき責任者とドライバー、積み込みスタッフの3名が担当し、準備から機内への積み込み完了まで全工程を一貫して行います。成田空港では、到着した飛行機を出発便に切り替えるスピードが速い傾向があります。運航の定時性向上のための工夫があるといいます。

中塚「機側での乗務員への引継ぎ時間を短縮するようにしています。以前は機内のキッチンで数を照合したり、客室乗務員にオーブンの設定を事細かに説明していたりした時代もありましたが、飛行機の出発時間を守るため、あらかじめキッチンに引継ぎ書を置いて、引き継ぐ方法で時間短縮を実現しています」

バトンを渡されるのが、客室乗務員です。限られたスペースと時間のなかで、安全と衛生、品質のすべてを守りながら作業を進めていきます。また、上空では予期せぬ揺れが発生することもあるため、運航状況にも気を付けながら作業します。

画像3: ギャレーでも客室乗務員が再度チェック。ご提供前の品質確認

提供前には、衛生面と品質面からさまざまな確認が行われます。作業の前後には手洗いや手指消毒を徹底し、機内で盛り付けや取り分けが必要な場合には、清潔なトングやスプーンを使い、料理に直接触れないようにします。

同時に注意を払うのが異物の混入です。髪の毛や包装材の切れ端などが入っていないかを確認し、盛り付けを終えた後にも一品ずつ目を配ります。料理の向きや見た目を整えることも、重要な仕上げのひとつです。

また、さまざまな理由から特別食をご予約されているお客さまもいらっしゃるため、確実に提供するため管理を徹底しています。

最後に、トレー全体を見渡し、料理や飲み物だけでなく、カトラリー、ナプキン、調味料などに不足がないかを確認します。工場で幾重ものチェックを通過した機内食は、客室乗務員により機内で最終チェックが行われ、お客さまに提供されます。

いざ、お食事のお時間。エコノミーからファーストクラスまで

画像1: いざ、お食事のお時間。エコノミーからファーストクラスまで

飛行機が離陸し、お待ちかねのお食事の時間が迫ってきました。ギャレーでの準備が整うと、いよいよお客さまへのサービスが始まります。サービス方法は路線やクラスによって大きく異なります。

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長距離国際線のエコノミークラスやプレミアムエコノミークラスでは、一般的におしぼりに続いてお飲み物とおつまみを提供し、お食事を載せたトレーをカートでお届けします。その後、路線によってはアイスクリームや温かいお飲み物を提供し、食事を終えたトレーを下げていきます。

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ビジネスクラスでは、お食事はコース仕立てで進みます。おしぼりをお渡しした後、飲み物や食事の注文を伺い、テーブルクロスを敷いて、アミューズ、オードブル、メインディッシュへとサービスを進めます。

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ファーストクラスでは、お客さまそれぞれの異なるお過ごしプランに合わせたサービスとなります。アペリティフや食事のご希望を伺い、和食・洋食それぞれの内容に応じてテーブルを整え、料理を順番にご提供します。食事の進み具合を見ながら、ペアリングのワインやドリンクをご提案し、料理をお出しするタイミングやテーブル上を整えるタイミングをこまやかに判断します。

画像5: いざ、お食事のお時間。エコノミーからファーストクラスまで

提供する料理の数や方法は違っても、食事を終えるまでの時間には、クラスによる大きな差はありません。より多くの工程を必要とするファーストクラスやビジネスクラスでは、限られた時間のなかで個別のサービスを実現するため、客室乗務員同士の連携が欠かせないのです。

遡ること約1年。メニュー選定の舞台裏

このように、お客さまのお手元に機内食が届くまでの流れには、実に数多くの工程があります。鮮度とおいしさを保つためにスピードが求められる一方、その準備は召し上がる約1年前から始まっているのです。

渡邊「2026年の現在、すでに2027年のメニュー検討を進めています。メニューは路線ごとに変わりますので、適宜試食会を行っています」

通常、メニューの考案は、和食・洋食担当の若手スタッフがメニュー、価格、料理の内容を考案するところから始まります。グループ長が内容を確認・精査し、JRCでの試食会を経て、JALが審査を行います。

画像: 遡ること約1年。メニュー選定の舞台裏

一方、著名シェフによる監修メニューは、JALの商品開発部門が担当します。名だたるシェフにオファーを行い、季節ごとのレシピが提供されます。それを機内食の製造工程・安全基準にあわせてJRCがアレンジします。というのも、レストランでの調理を前提としたレシピを、そのまま機内食として出すわけにはいかないのです。温度管理の問題、安全性の確保、効率性の要件など、機内食ならではの制約を前提に、レシピのアレンジが求められるのです。

渡邊「食材にも制約があります。たとえばイカは温度管理がすごく大変で、機内食に落とし込むのが難しい食材です。品質管理担当者と連携しながら、実現可能なレシピにアレンジしていきます」

スタッフが抱く品質への誇りと、JALの機内食に対する揺るぎない自信

著名なシェフとの監修メニューを通じて技術や知識を学べる環境は、料理人として刺激に溢れているといいます。

画像1: スタッフが抱く品質への誇りと、JALの機内食に対する揺るぎない自信

渡邊「そこで得た知識を、自分なりに新しい料理へ落とし込めます。良い知識を取り入れたメニューを提案できるからこそ、おいしいものを提供できるのだと思います」

その技術は、監修メニューを現場で再現してきた先輩から若手へと受け継がれています。今の若手が成長すれば、学んだ経験を生かした新たなメニューが生まれていくはずだと渡邊は期待を寄せます。一方、調達部門の松尾が重視するのは「安全」です。仕入れ先の工場監査や異物混入の防止、品質基準の徹底に取り組み、安全な食材を次の工程へ引き渡します。

画像2: スタッフが抱く品質への誇りと、JALの機内食に対する揺るぎない自信

松尾「おいしさもさることながら、品質は重要な大前提です。取引先ともJRCの指針を共有し、最終的にお客さまに喜んでいただくところまでをひとつの流れとして考えています」

完成した機内食を機内まで運ぶオペレーション部門の中塚は、そのおいしさを損なうことなく届けることが使命だと語ります。その一環として、準備担当者が機内食を勉強する機会を設ける取り組みも進めています。

画像3: スタッフが抱く品質への誇りと、JALの機内食に対する揺るぎない自信

中塚「調理部門が作った味をすべてのスタッフが認識することで、最高の状態に保ちたいというモチベーションが生まれます。お客さまのもとに届くまで、おいしい状態を保つことにベストを尽くしたいですね」

JRCだけでも、スタッフはゆうに900人を超えます。料理の技術を磨く人、安全な食材を届ける人、完成した料理の品質を守る人。一人一人が役割を全うし、次の工程へとつなぐ『最高のバトンタッチ』。その積み重ねが、JALの機内食のおいしさと品質を支えているのです。

選ぶ時間もお楽しみに。JALが目指す最上級の「食体験」

おかげさまでJALは英国の航空サービス格付け会社SKYTRAX社の「ワールド・エアライン・スター・レイティング」で、2026年に9年連続となる最高評価「5スター」に認定され、機内食や飲み物のご提案を含む「食の体験」も評価されました。JALでは、メニューの内容だけでなく、料理を選び味わう時間そのものを楽しんでいただくため、サービス方法の見直しも続けています。

2026年3月以降、国際線ビジネスクラスの一部では、コース料理を締めくくるデザートサービスを刷新。あらかじめ決められた一品をお届けするのではなく、デザートやフルーツ、チーズ、アイスクリームをワゴンに並べ、お客さまが好みにあわせて選べるようになりました。

画像1: 選ぶ時間もお楽しみに。JALが目指す最上級の「食体験」

また、到着前の食事は、複数のアラカルトメニューから好きな時間に注文する方式から、しっかりと食事を楽しめるセットプレートを提供する方式へと変更。食事と食事の間には、ゆっくり休める時間を確保しつつ、希望するお客さまにはサンドイッチやラーメンなどの軽食をご用意します。

画像2: 選ぶ時間もお楽しみに。JALが目指す最上級の「食体験」

メニューが変わり、サービスが変われば、食材も準備も客室乗務員の作業も変わります。そして機内食に携わるスタッフたちは、食の安全に気を配りながら丁寧な手仕事を全うし、お客さまが思い思いに過ごせる時間を作っています。次に飛行機に乗って機内食を口にするとき、その一皿に込められた物語を思い出していただけたら幸いです。

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