空港で活躍するクルマは、非常に多彩です。公道ではまずお目にかかることができない特殊な車両に出会うことができます。この記事では、空港ではたらくJALのクルマをご紹介します。なかでも珍しいものを“希少度”が高いものとして3つ星で評価していきます。まず初めに大きな飛行機やコンテナを力強く引っ張る牽引車両たちからご紹介しましょう。
JALのはたらくクルマ1(希少度★☆☆)
お客さまにとっても比較的身近な「トーイングトラクター」
空港内にあるクルマでもっとも台数が多いのが、この「トーイングトラクター」です。お客さまのお手荷物を空港ターミナルから機体へ運んだり、貨物を運んだり、空港中を走り回る働きもの。グランドハンドリングスタッフが最初に取る資格のひとつがトーイングトラクターの操作資格なのです。
JALのはたらくクルマ2(希少度★★★)
3年の月日をかけて導入を実現した「自動運転トーイングトラクター」
トーイングトラクターのなかでも成田空港に2台しかない「自動運転トーイングトラクター」は、その名の通り自動運転を実現したクルマです。GNSSなどの自己位置推定機能とLiDAR(ライダー)と呼ばれるセンサーを組み合わせ、人や建物、他の車両などを特定し、自動で走行することができます。
導入の背景には、生産年齢人口の減少により、グランドハンドリングスタッフが近い将来足りなくなる心配がありました。こうした状況に対し、JALでは自動運転のような先端技術の活用を積極的に推進し、生産性の向上を目指していくこととなりました。
「こうして始まった『自動運転トーイングトラクター』の準備と実証実験ですが、多くの航空機や車両・人が混在する空間を想定しての準備は、思いどおりにいかないことが多く、センサーが障害物と誤認識してしまう雑草の除去や障害物に見立てたコンテナを設置して試験走行を繰り返すなど、地道な作業が続きました」
こう語るのが、グランドハンドリング企画部の鎌田紘司です。さらに、実験を進めていくのに必要なデータを取るため、彼らスタッフは飛行機の離着陸がない深夜時間帯に、データ収集を重ね、メーカーとともに性能向上に取り組んできました。
実験の開始決定から約3年。加えて管轄する国土交通相省や関連事業者の承認プロセスなどを経て、「自動運転トーイングトラクター」が本格的に導入されたのは2021年3月のこと。現在は、人の目による補助的な外部監視と緊急時の停止操作を可能にするため、運転者を乗せた状態で走行していますが、将来的には無人運転の実現を目指しています。
JALのはたらくクルマ3(希少度★★★)
コロナ禍終息への祈りを込めた特別塗装のトーイングカー
飛行機にご搭乗いただいた際には、機体前方にあるため機内の窓からはほとんど目にすることはできませんが、飛行機を押したり引っ張ったりするクルマは実に力強いもの。トーバーと呼ばれる鉄製の棒を機体に接続して引っ張るのが、「在来型トーイングカー」です。そのなかにも珍しい1台が。成田空港には、疫病をおさめるといわれる妖怪・アマビエの特別塗装が施されたものがあります。
これは、コロナ禍の1日も早い終息への願いと、成田空港をご利用いただくお客さまに安全・安心をお届けしたいとの想いから、現場スタッフが発案、実現した企画。その導入数はわずか1台。成田空港をご利用の際にはぜひ探してみてください。
JALのはたらくクルマ4(希少度★★☆)
空港イチの力持ち! 飛行機を引っ張る「トーバーレストーイングカー」
トーイングカーのなかでも力持ちなのが、「トーバーレストーイングカー」というクルマです。
機体の下に潜り込んで飛行機を持ち上げ、出発の際に駐機場から押し出したりもします。空港にあるクルマのなかでは一番馬力があり、パワフルです。
ちなみに航空機を牽引する運転操作は繊細なものです。もちろん実際の飛行機を牽引してトレーニングを実施しますが、JALではVR技術を取り入れたトレーニングプログラムを導入。本物の飛行機を牽引している運転感覚を、仮想空間で再現しました。
JALのはたらくクルマ5(希少度★☆☆)
階段に見えて実はクルマ!「パッセンジャーステップ」
さて、“引っ張る”クルマのみならず、空港には他にもさまざまな用途で使用される特殊なクルマがあります。なかでもお客さまが利用されるクルマといえば、「パッセンジャーステップ」です。通常、ターミナルからであれば「パッセンジャーボーディングブリッジ(PBB)」で飛行機に向かいます。しかしターミナルから離れた場所に駐機している飛行機に乗る際にはバスを使って移動し、さらに階段を上って機内にご搭乗いただきますが、実はこの階段もはたらくクルマの仲間なのです。
雨天時にはクロージャーカーテンという仕切りが雨風をしっかり防ぐほか、コロナ禍以降、お客さまが触れる可能性がある手すりなどは抗ウイルスコーティングを施し、お客さまに安全と安心をお届けできるよう努めています。
JALのはたらくクルマ6(希少度★☆☆)
巨大なコンテナを効率よく機体に積み込む力持ち。「ハイリフトローダー」
バスなどで空港を移動される際、駐機中の機体にリフトからコンテナが運び込まれている様子をご覧になったことはありませんか? これは「ハイリフトローダー」と呼ばれるクルマです。荷物や貨物を積み付けたコンテナを、機体に効率よく搭載する役割を担っています。飛行機はお客さまの人数や貨物の重量によって機体の高さが変わるため、機体に合わせて車両の高さをその都度変更しています。
ちなみに、作業中は飛行機にくっついているように見えるかもしれませんが、機体に接触させないよう実は少しだけ離れています。非常に大きな車両ですが、繊細な操作が求められます。また最新のハイリフトローダーには、飛行機との接触防止センサーが備えられているものもあります。
JALのはたらくクルマ7(希少度★☆☆)
機内への搭載はお任せ!「ハイリフトトラック」
荷台部分が昇降し、機内食や機内用品を運び込む際に活躍するクルマは「ハイリフトトラック」です。内部には機内食を搭載するためのワゴンや座席のポケットにセットするための雑誌などを載せています。
JALのはたらくクルマ8(希少度★☆☆)
小型機のみならず大型機の荷積みでも活躍する「ベルトローダー」
飛行機には、お手荷物や貨物を一つずつバラで搭載できる貨物室があります。
そうした貨物室にお手荷物や貨物を安全かつ丁寧に積み込むために、ベルトコンベアを活用します。その機能を持つクルマが、「ベルトローダー」です。
雨の日は車体後方に装備された屋根を展開しお客さまの大切なお荷物を濡らさないようにしているのです。
JALのはたらくクルマ9(希少度★★☆)
平たいボディに3,000リットル以上も搭載する「給水車」
機内のお手洗いなどで使用する水を搭載するための車両が「給水車」です。
低くフラットな車体ですが、これは機体の下に潜り込ませるため。内部タンクには3,000~3,500リットルもの水を搭載することができ、車体後部からホースを使って機内に送り込みます。
JALのはたらくクルマ10(希少度★★☆)
冬だけの季節限定特殊車両「ディアイシングカー」
四季がある日本において冬場に登場するクルマがこの「ディアイシングカー」です。長いアームの先端にあるゴンドラに乗った作業員が機体に付いた霜や雪を取り除くだけでなく、雪や氷が付着することを防ぐ特殊な薬剤を散布します。冬場の安全運航を守るとても重要な仕事です。ちなみに雪があまり降らない地域でも早朝の霜取りのために活躍します。
空飛ぶ飛行機のみならず、はたらくクルマにもご注目ください
空港では大きな飛行機ばかりに目が行くかもしれませんが、今回ご紹介したような特殊なクルマたちが空港内を縦横無尽に走り回り活躍しています。
そして飛行機と同じように、安全に作業を実施するための最新技術や工夫が詰め込まれています。またこれらを安全かつ効率的に運用するスタッフの働きにも、ぜひご注目下さい。フライト前に窓の外をご覧いただければ、空港の景色がいつもと違って見えるかもしれませんよ。
A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。
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