この秋、食プロデューサーで「RED U-35」の審査員長でもある狐野扶実子さんと「RED U-35」に入賞したシェフが、「未来に残す機内食」をテーマに監修しました。JALのコラボレーションを仕掛けた小山薫堂さんを交えて、テーマの狙いとおいしさを紐解きます。
JALの国際線機内食のメインディッシュのトップシールには、監修シェフの写真がプリントされています。彼らは、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」の入賞者。2017年より、CLUB REDのシェフとコラボレーションした企画がスタートし、JAL国際線エコノミークラスでご提供する、四季折々の機内食を監修しています。総合プロデューサーであり発起人のひとりである小山薫堂さんは、コラボレーションの経緯をこう振り返ります。
“RED”といえばJAL。6年目を迎えた、機内食のコラボレーション
小山さん「もともと『RED U-35』は、ぐるなび創業者の滝 久雄さんからの相談がきっかけでした。2005年からぐるなびが開催していた『ぐるなびシェフ』というコンテストはあったのですが、もっと大きな枠組みにしたいと。そこで料理に明確な考え方を持ち、これからの料理界を牽引できる原石を発掘する取り組みとしてスタートしたのが2013年です。広く親しんでいただける語彙にしたいと思い、直感的に『RED』と名付けました。赤といえばJALですから、コラボレーションを思い立ったのです」
こうして始まったJALとの取り組みは、2022年で6年目になります。入賞を果たしたシェフの方々に、国際線エコノミークラスの機内食として「和食」「洋食」「サイドディッシュ」を監修していただいています。
宇城さん「上位入賞者で構成されるCLUB REDメンバーは現在約350人おります。彼らは料理を通して社会課題の解決を目指しているのですが、その活動の一環としてJALの機内食監修を位置付けています。メンバーのなかから、毎回JALの担当者と相談を重ねながら最適なCLUB REDメンバーにオファーして決めています」
こう語るのが、「RED U-35」の運営を担当する、ぐるなびの宇城安都美さん。今回のテーマは「RED à table ~未来に残す機内食~」です。SDGsの実現が世界的な潮流になるなかで、機内食もフードロス削減や食文化の継承などに取り組み、持続可能で安全・安心のうえに成り立つおいしさを求めることになりました。
小山さん「『RED U-35』も最初のうちは、どれだけおいしいものが作れるか、新しい挑戦ができるかという点に重きを置いていましたが、2~3年取り組みを続けるなかで、食によって社会課題を解決したいという熱量が参加シェフの中で急激に高まってきたのです。時代が変わってきたのでしょうね。審査する側も、社会性と食を考える方が増えていきました」
機内食のテーマは「LOVE FOR THE PLANET」「LOVE FOR THE SOCIETY」「LOVE FOR OURSELVES」
株式会社FOOD LOSS BANK 代表取締役社⻑で、2022年から「RED U-35」のアドバイザーを務める山田早輝子さんも、この傾向は「時代の必然」だと語ります。世界各地での慈善活動などを経て、現在は東京を拠点に持続可能な食のプロジェクトを推進しています。
山田さん「料理人の役割も変わりつつあります。産地のブランドではなく、ローカルで採れた食材をどこまでおいしくするか、といった傾向に変わってきました。もともと日本には、『もったいない』と考える文化があって、食事前に『いただきます』と、準備に対して感謝を示す希有な国ですから、素地は整っていると感じています。2050年に向けて持続可能な社会を目指すなかで、継続的に行うことが求められます」
これまで機内食は、高い安全基準を遵守しながら、味わいや見た目を追求してきました。その基準を大切にしながら、社会的な意義を踏まえたプレゼンテーションが求められるようになったのです。
JAL商品・サービス開発部客室でオペレーション部門の企画を担当する上村日登美は続けます。
上村「まずは食プロデューサーで『RED U-35』の審査員長でもある狐野扶実子さんが
『LOVE FOR THE PLANET』『LOVE FOR THE SOCIETY』『LOVE FOR OURSELVES』という3つのお題を決められ、各シェフはそれぞれお題に沿ったメニューを考案していきます。その枠組みを引き継いでJALの機内食のメニュー開発が進みました」
かくして現在提供中のメニューが、食プロデューサー・狐野扶実子さんによるサイドディッシュ。「nôl」の野田達也シェフによる和食、「natuRe waikiki」の小川苗シェフによる洋食です。
A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。