この秋、食プロデューサーで「RED U-35」の審査員長でもある狐野扶実子さんと「RED U-35」に入賞したシェフが、「未来に残す機内食」をテーマに監修しました。JALのコラボレーションを仕掛けた小山薫堂さんを交えて、テーマの狙いとおいしさを紐解きます。
気鋭の若手シェフふたりが手掛ける「和食」と「洋食」
東京・馬喰町のDDD HOTELにある先進的なキッチンスペース「nôl」で腕を振るう野田達也シェフが手掛けたのが、「ハンバーグ竹炭入り照り焼きソースと十六穀ご飯」です。フレンチのシェフですが、和食を手掛けたのはその腕を見込まれてのこと。“挑戦”のエッセンスを取り入れました。
上村「『海外経験が豊富で食材の扱いに精通している野田シェフが適任』ということでご指名がありました。シェフには、和食ではあるものの洋食のエッセンスを取り入れたいというご意向があったようです。いわば、ネオ和食。竹炭ソースやサツマイモのマッシュポテトで彩り豊かに仕上がっています」
吉田「機内食にSDGs要素を取り入れる一方、やはりワクワクしていただきたいという想いがあります。おいしいのは勿論ですが、野田シェフがいつも大切にしておられるのが、心の食事。心の栄養というものも意識しながら今回のメニューをご考案くださったと伺ったときは、企画側としても嬉しかったですね。さらに今回は機内食への挑戦のエッセンスも加えられており、炭火焼きの風味を取り入れた竹炭の照り焼きソースは、おすすめポイントのひとつですね」
JAL商品・サービス開発部で企画開発を担当する吉田佳織は振り返ります。
竹炭が調合されたソースは、目を引く黒色。シャープなテイストかと思いきや、国境を越え、どんな世代も笑顔にしてくれるような、甘く優しい照り焼きソース。空の上では炭火焼というのが難しいので、何とかそういったニュアンスをソースに持たせることができないかということで、ご考案いただきました。
肉汁溢れるハンバーグは、シャキシャキとした玉ねぎのアクセントが印象的です。フワッとした半熟の玉子を添えて食べれば、オムライスのようにもお楽しみいただけます。付け合わせのサツマイモのマッシュポテトとその上にのった擦り胡麻も秀逸で、コクと甘みのバランスが絶妙です。
続いては「スパイス香るチキンオーバーライス」。手掛ける小川苗シェフは、グローバルな経歴の持ち主です。東京の「NARISAWA」を経て渡米し「Bouley」で腕を磨きます。その後、パリの「La bourse et la vie」を経て、再び渡米。ハワイの「Paris.Hawaii」の門戸を叩き、現在はサステナブルアイランドフレンチを標榜する「natuRe waikiki」で料理長を務めます。
上村「シェフが初めて修業に出たニューヨーク時代に、思い入れのあるメニューがチキンオーバーライスでした」
地元の野菜や食材を使うのはもちろんのこと、そのもう一歩先、食材が生まれる場所や自然環境のことを考えて料理人として何ができるのかを考えているという小川シェフ。地球環境への愛を表現するため、さまざまな国の文化を取り入れたひと皿は、鮮やかなサフランライスのイエローにハッとさせられる洋食プレートです。
ターメリックやクミンなどで丁寧にマリネされたチキンは、やわらかく濃厚に焼き上げられています。そして見た目とは裏腹に、辛さは控えめ。添えられたキャベツの瑞々しい食感も楽しみながら、グローバルな丼スタイルをご堪能ください。
吉田「メインディッシュのトップシールを開けるときの香りがポイントなのですが、周囲にいらっしゃるお客さまへの影響を考慮し、ガーリックの風味を微調整いただきました」
サイドディッシュは、審査員長自ら手掛けた3品
最後はRED U-35 2022の審査員長であり、食プロデューサーである狐野扶実子さんが手掛けるサイドディッシュ。JAL機内食のドリームチームにも選任された実力派だけに、味わいは折り紙付きといえます。狐野さんは「食べる喜び、そしてそれが私たちの未来の幸せ・ウェルビーイングにもつながっているというメッセージをより多くのみなさんとシェアしたいという想いを込めました」と語ります。
「キャロット・ラペ」の基本的なレシピはにんじんに火を通しませんが、今回の RED à Tableで提供した「オレンジキャロットラペ」は、広い年齢層の方々にとって食べやすいよう絶妙に加熱されています。生のにんじんの硬さはないのですが、フレッシュさが感じられるよう、火入れ加減と食感にこだわりを持ちました。また柑橘が加わることで、自然なフルーツの甘みと柔らかい酸味がより食べやすさを増し、ツナが入ることで動物性たんぱく質も加わっただけでなくお子さまにも親しみやすいものになると考えました。
また「グリーンパスタサラダ」は、「グリーン」というネーミングからもうかがえるように、ブロッコリーの食材としての廃棄部分をなるべく少なくするようできるだけ茎の部分なども利用しています。食べることが「美味しさ」と同時に私たちの食の将来を支えるものにつながるということを意識しました。
最後は「とうもろこしのパンナコッタ風」。国籍を問わず世界で広く消費されているとうもろこしは、国際線の機内食において多くのお客さまにも好まれるのではないかと考えました。日本ではおなじみのコーンポタージュスープをパンナコッタ風にアレンジしたものですが、ジェネレーションを問わず食べやすく、口の中でスッと溶ける柔らかさにも幸せを感じてもらえると考えました。
A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。
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