2日目は海陽町。保護者の方々が驚いた、新しい学び
阿南市から海陽町に移動した翌朝。朝9時からプログラムが始まります。養護施設を改装した海陽町サテライト・コワーキングセンター 城山荘が会場。
ホームルームでは海陽町在住の外国出身の先生も参加し、子どもたちの授業が始まります。それぞれのiPadが校舎のある相模原の教室につながり、各学年の授業をリモートで受講します。
一方、保護者の方々はコワーキングスペース内でリモートワークをしたり、デンマークの電動アシスト自転車「Mate」で周囲を散策したりと、思い思いの時間を過ごします。
同行した保護者の方々は、新しい学びの体験を評価しています。
川副さんご夫婦「息子のリクエストもあり、今回は2回目の参加です。共通の体験から家族の会話がすごく増えて、距離が縮まりました。もともとオーストラリアに住んでいたこともあり、日本人のアイデンティティをもって世界で楽しんでほしいと思っています。この教育から多様性と自己肯定力を磨いてほしいですね。自分たちの仕事はインフラが整っていればどこでもできるのですが、これでさらに自由度が高まりました。見たことのない場所で学ぶことで、絶対にいい影響が出ると思います。一度きりの人生ですから、やれる可能性は絶対試したほうがいいと考えています」
百瀬さんご夫婦「小学生の兄妹が参加しています。夫婦ともに教育関係の仕事をしていまして、最新の教育を視察するという名目で、リモートワークしながらの参加です(笑)。コロナ禍のリモート授業から対面授業に戻りつつあるなか、せっかく培ったリモート環境をさらに発展させていることを実感しています。地域にいる熱い大人と交われるって、子どもにとってもすごく刺激になるんですよね。社会への見方が変わりますし、やりたいことを探したくなると思うんです」
倉田さん「ふたりの子どもはとにかく楽しく伸びのびとやっています。子どもに親に先生に、みんなで協力して一緒に教育環境を作ろうという空気が気に入っています。今回はあえてパソコンは持たず、スマホでできることだけしようというスタンスで来ました。なぜなら子どもの成長につれて一緒に過ごす機会は減るため、家族の有意義な時間にしたいと考えているからです。同じ価値観を共有できる保護者と、学年を超えて仲良くなれるのもいいですよね」
お子さんの教育の機会に加えて、サテライトスクールは保護者世代にとっても刺激が大きいようです。
学校が預かった子育ての時間を、より有意義なものにしたい
今井先生「海陽町との出会いは偶然だったのですが、知れば知るほど海陽町は可能性がすごくある場所。農家、漁業、林業などなど、すべてのリソースが奇跡的に融合している場所です」
こう語るのが、サテライトスクールの取り組みを実現したLCA国際小学校の今井洋介先生(LCA国際小学校 参与)です。最初の気付きは、リモート授業だったと振り返ります。
今井先生「コロナ禍でICTの改革を一気にすすめて、ハイフレックスという教室でも自宅でも受講できる形式にしました。その状況を活用することをひらめきました。学校は子育ての時間を預かっていますが、ある意味(子どもや家族との時間を)奪ってもいます。さらにできることがあると思いました」
実施には困難を極めたといいますが、そこを乗り越えたのは教育に対する思いでした。
「学びたい」という意志を育む、サテライトスクールはまだ始まったばかり
今井先生「教師の仕事は種まきとつなぐことです。没入感のなかでいろんな体験をしてもらうことは、今回の一番の目的です。『こんな経験はなかなかできない』という実感のなかでのリモート授業は、きっと前向きになれます。そして、授業の合間に子どもたちが手を繋いで山を登る。これも素晴らしい体験になるはずです。学びとは、自ら学ぼうとした瞬間にしか始まりません。一番大事なことは、子どもたち自身の姿勢です。またJALと一緒に取り組めたことも大きくて、子どもたちに貴重な体験をさせられたと思いますし、この先も一緒にできることは多いと思います」
話を伺っているうちに、子どもたちの午前中の授業が終わりそうです。昼食を挟んで午後には藍染め体験を行い、日本の滝百選のひとつに数えられる名瀑・轟の滝を見て、轟神社を参拝します。
サテライトスクールのプログラムは1週間。保護者の方々の温かいまなざしに見守られた子どもたちの、たくさんの笑顔に彩られながら、新しい教育のカタチがさらに進んでいきそうです。
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