2022年6月に徳島県海陽町を中心にLCA国際小学校と一般社団法人ミライの学校が連携して行われたサテライトスクールという取り組みは、多様なライフスタイルにおける「新しい教育のカタチ」と呼べる可能性を秘めています。オンライン授業と地域ならではの課外活動を組み合わせ、第2のふるさとづくりにもつながる学びの模様をレポートします。
※撮影時のみマスクを外しています
梅雨の合間だというのに太陽が顔を出し、子どもたちの笑顔を照らしています。この日、徳島阿波おどり空港に降り立った13組の家族連れの方々が臨むのは、サテライトスクールという新しい教育のカタチです。
在籍校の授業を遠隔で受けながら、地方ならではの学び体験を
JALが協力するこの取り組みは、教育の多様性が求められるなかで、注目を集めています。住民票は移さず、区域外就学制度を活用することで全国の好きな学校に通うことができるデュアルスクールという考え方を応用。オンラインで授業を受けながら、地方ならではの体験活動や、地域の方々との交流を行うのがサテライトスクールです。居住地でなくともしっかりと教育が受けられる枠組みです。
その足がかりとも呼べるのが、今回の「サテライトスクール2022シーズン1」。それはJALが提供する特別プログラムからスタートします。徳島阿波おどり空港のバックヤードで、空港の仕事を見学、体験していただくのです。
最初のプログラムは、JALが協力する空港の特別授業
まずは、手荷物仕分け場でお客さまの預入手荷物がコンテナに搭載される様子を見学。ちょうど参加者が乗ってきたボーイング767の歴史や大きさなどの解説もされました。
「飛行機はなんで飛ぶの?」「有名なパイロットは?」「飛行機を発明したのは?」と、子どもならではの質問が飛びだし、和気あいあいとした雰囲気に。
貨物の搭載出発作業を見学後、駐機場で横断幕をかかげ、羽田空港へと向かうJAL456便のお見送り。見渡す限りアスファルトと青い空が広がる広い滑走路で、巨大な飛行機がゆっくりと動き出します。
「すごい!」。保護者の方々も合流し、大きな歓声とともに手を振って見送ります。飛行機の窓からお客さまも、コックピットの操縦士も手を振ってくれました。ほどなく、轟音とともに大空に飛び立っていきました。
続いてはマーシャリング体験。マーシャリングとは、飛行機を駐機場エリアで誘導する仕事のことです。
パドルというしゃもじ状の道具を両手に持って行います。両手を上に上げると「まっすぐ進む」、両手を広げて右手を上げると「左旋回」、頭の上で×印に交差すると「停止」。子どもたちは飛行機の誘導ができるようになりました。
牡蠣の養殖施設で、親子揃って共通の学びを
続いて訪れたのが、阿南市にある株式会社リブルの牡蠣の種苗生産施設です。入り江に面した施設では、牡蠣の幼生から沖出しできる大きさになるまで、それぞれの生け簀に分けて育てられています。
初めて目にする生きた牡蠣の様子に子どもたちも大興奮。一生で200リットルも水を吸うという生態や、山の恵みで牡蠣が育つという事実に、大人たちも驚きました。
ここ徳島県南部にて養殖業を営む高畑拓弥さんは、「ミライの学校」の代表理事を務めており、サテライトスクールの仕掛け人のひとりです。
高畑さん「出生率を見ても地方では多くの子どもが生まれ、日本を支えている人材は地方にもいます。それに、日本の一次産業を支えていくにあたり、地方に元気がないのはまずい。そこで教育と産業にアプローチすることにしました」
子どもたちは、みずみずしい牡蠣に興味津々の様子です。大きく育った牡蠣は、サテライトスクール最終日に振る舞われます。ぽってりと丸みを帯びたようなカップの深いフォルムは、見慣れている牡蠣とは一線を画します。
これは、シングルシードという日本では珍しい生産方式を取り入れており、1粒1粒バラバラに育てることで、殻の形成が綺麗になるのだとか。水揚げしたての牡蠣にそのままナイフを入れて殻を開け、自然な塩気を味付けに口に含めば、爽やかなみずみずしさが広がります。その奥に、凝縮されたうまみが弾けます。
このうえなくシンプルながら、実に複層的な味わいのコントラスト。普段は出会うことのない人と、なかなかできない経験が待っているのです。
高畑さん「たくさんの方に参加していただけたことに、ただありがたい気持ちです。家族ぐるみの教育の場になっていると感じています。お父さんやお母さんも知らないことがあるということは、子どもにとってすごく新鮮なんですね。『一緒に学べる存在なんだ』『学びってこんなに面白いんだ』という気付きにつながるわけです」
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