普段見ることができない機体整備や出発準備の様子を無料配信した、これまでにないイベント。ジェットスター CCO代行 兼 コマーシャル本部長の阿部元久、ジェットスター 日本・韓国地区 マーケティング&PR本部 PR・コンテンツ部長の高橋里予、JAL 路線事業本部 国際提携部 兼 JAL公認社内ベンチャー「W-PIT」代表の松﨑志朗が、その企画の目的や制作エピソードなどの裏側をお伝えします。
「コロナ禍でもお客さまに楽しんでいただきたい」という想いで企画
2020年、JALは日本マイクロソフト株式会社の技術協力のもと、お子さまや保護者の方に向けて羽田の整備場でA350をお見せする「リモート工場見学」を配信し、約1万人もの方にご視聴いただきました。そのリモート工場見学の企画を担当した阿部が、ジェットスターに出向。今回はリモート工場見学を進化させた「リモート社会科見学」をジェットスターとのコラボレーション企画として提案。2社が賛同する形でスタートしました。
阿部「2020年の『リモート工場見学』でその価値の大きさを実感しました。長引くコロナ禍で“今できること”を第一に考え、さらにおもしろいオンラインイベントでお客さまに楽しんでいただきたい。そういう想いから、今度はJALとジェットスターでコラボし、安全を守る航空会社として2社が協力してインフラを支えているということをお客さまに見ていただいたらどうかと考えました」
高橋「コロナ禍で飛行機でのご旅行の機会が減った中でも、空港や飛行機をできるだけ身近な存在として感じてもらい、環境が整った際にはぜひ空の旅を楽しんでいただきたい。そんな想いを込めて実施されたという昨年のJALの取り組みに共感したんです。ジェットスターも参加することでより幅広い情報をお客さまに届けることができると考え、コラボレーションすることとなりました」
2社の気持ちがひとつになったからこそ撮影できた感動の映像
プロジェクトチームとして、両社から20~30人ずつが参加。JAL側は、公認の社内ベンチャーチーム「W-PIT」のメンバーが中心となりました(W-PITは、「ワクワク」をコンセプトに異業種共創を通じて新たな価値創造に挑戦しています)。2社で定期的にオンラインミーティングを開催し、構成や演出を検討。構想から配信まで約3カ月もの期間をかけました。
W-PITの詳細はこちら
https://wpit-official.themedia.jp/
高橋「どこに焦点を当てて構成すればより深い内容になるのか、かなりこだわりましたね。2社で同じものを見せるのではなく、JALは通常だと絶対に入れないエンジン工場を、ジェットスターは出発作業を非常に少人数で行っているところが特徴的なので、そこをお見せしたい。そのためには、社内でも整備本部や空港本部など複数部署との調整が必要でした。一つひとつ確認しながら進めていき、時間との闘いになりました」
整備作業をしている格納庫や飛行機の出発作業など、これまで一般に公開してこなかった航空機運航の裏側をギリギリまでお見せしたい。その実現には各所の調整が避けられません。膨大な調整を乗り越えて撮影できたのが、2社の飛行機が同じ格納庫内に並んでいる初公開の映像です。リモートながら、この迫力は臨場感あふれるものとなり、お客さまから大きな反響をいただきました。
松﨑「2020年のリモート工場見学の経験からノウハウがあると思い込んでいたんですよ。ところが、成田空港は申請プロセスなどが羽田空港とは違うんです。自社のことなのに初めて知ることもあり、びっくりしました。成田側の社員にも迷惑をかけてしまいましたが、それでもみんなが目的に賛同してくれてなんとか撮影できました」
阿部「プロジェクトに関わる全員の気持ちがひとつにならないといい画が撮れない。心を合わせて協力したからこそ撮れた映像です」
この日、偶然にもジェットスターのA320型機の周辺で、JALの整備士がジェットスターの整備士に質問しながら整備資格取得のための研修を受けている姿も撮影できました。2社が協力しあっている象徴的なシーンです。
高橋「両社とも安全運航を最優先としながら、フルサービスキャリアとして豊富な設備と環境を備え持つJALと、LCCとして自社での設備などは最小限とし効率的に運航するジェットスターの違いを感じていただける内容になったのではないかと思います」
コラボレーションをきっかけに、お客さまに新たな選択肢を
配信は2020年に引き続き日本マイクロソフトに技術協力していただき、Microsoft Teamsを用いて事前収録した映像を配信し、スタジオでは視聴者からのご質問に整備やグランドハンドリング(空港の地上作業スタッフ)の担当者がライブで回答しました。結果、「飛行機が大好きなので近くで見られてよかった。現地だと人数制限があるだろうけど、リモートならたくさんの人が見られていい」「ジェットスターにはまだ乗ったことがないのですが、今度乗ってみたいです」といったコメントが多数寄せられました。
松﨑「チャット欄に一気にたくさんのコメントが入ったんですよ。こんなにうれしいことはないですね」
高橋「そうですね。たくさんの感想をいただき、やってよかったと思いました。この状況下だからこそオンライン配信という形をとりましたが、結果的に多くの方に見ていただくことができてよかったと思います」
阿部「昨年以上にコメントをいただき、内容の濃いイベントになりました。今後、このアーカイブを活用していきたいと思います」
2社でコラボレーションして取り組むことでお客さまに新たな価値のご提供ができたという手応えもありました。
高橋「ジェットスターをまだ利用したことのない方にも興味を持っていただくいい機会になりました。性質の違う2タイプの航空会社を見ることにより、お客さまには選択肢の幅を持ってご自身に合った空の旅をするきっかけになるのではないかと思います」
社内からも好評、「インクルージョンを体現できた」
また、このプロジェクトを通してお客さまだけでなく両社社員にとっても大きなものが得られたと、3人は口を揃えます。
高橋「プロジェクトを通して協力関係が生まれ、お互いの企業をより身近に感じることができましたし、考え方の違いや、反対に共通する部分などがわかり非常に勉強になりました。正直言うと、以前まではJALにお堅いイメージがあったんです(笑)」
松﨑「お堅い雰囲気ではないですよ(笑)。僕は、ジェットスターは意思決定が早いなあと思いましたね。良い刺激をもらえました」
今後の展開について問うと、「可能性しかない」と語る松﨑。
松﨑「ニューノーマルの時代、子どもたちに航空業界に関心を持ってもらえるよう、教育的観点に力を入れていく必要を感じています。こういう形で我々が交通インフラを支えているということを広く発信していきたい。年1回、恒例のイベントにできればいいですね」
高橋「ジェットスターでは、『空飛ぶ学び舎』としてチャーター機を活用して、パイロットの解説やアナウンス体験ができる航空教育プログラムや、フライトと空港見学を組み合わせた親子ツアーを不定期で実施しています。その一環でJALとコラボできたらおもしろいですね」
機会があれば、JALグループのZIPAIR Tokyoや春秋航空日本ともコラボして、「フルサービスキャリアとLCCの垣根を越えて一緒に日本を盛り上げていきたい」と松﨑は語ります。今回はその第一歩となりました。
松﨑「配信後、JALグループの社員から『イベント、素敵だったね。もっとたくさんのJALグループの社員に知ってほしい』と提案をもらったので、JAL社内のイントラネット(社員限定のWeb)にアーカイブ動画を共有しています。こういった形で社内のエンゲージメントを高めることもできました。よく“ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と受容)”と言いますが、我々は今回インクルージョン(受容)を体現したように思います」
高橋「会社は違えど、みんながひとつのチームになって『いいものにしよう』と同じゴールに向かって作り上げていけたので、とても楽しかったです。企画している側も楽しんで取り組めたので、視聴者にもそれが伝わり、楽しんでもらえると嬉しいです」
阿部・松﨑「それは間違いないですね!」
この取材でも話しながら終始笑いが絶えない3人。JALとジェットスターはプロジェクトを通して築いた信頼関係を、今後もお客さまの安全で楽しい空の旅のためにしっかりと生かしてまいります。
アーカイブ動画はこちら
A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。
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