半世紀以上の歴史があるホノルルマラソンは、参加者を歓迎するハワイ特有の"アロハスピ
リット"に満ちたハートフルな大会として、どなたでも参加しやすく、誰でも楽しんでいた
だける大会を目指しています。時間制限がないことや10kmの距離も用意されていることな
どから、ランニング初心者でも参加しやすく、障がいのある方もご参加いただけます。
本記事では、病気により車いすでの生活を送る母と、知的障がいのある弟と過ごす岸田奈
美さん一家がホノルルマラソンに挑戦した様子をお届けします。

とりあえず、行けるところまで。

画像20: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

歩いて、歩いて。

画像21: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

押して、歩いて。

画像22: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

止まって、濡らして。

画像23: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

とにかく歩いた。一歩でも前へ。
もう動けなくなるまで、少しでも前へ。

何時間も前にゴールして、メダルを首からぶら下げた人たちと、何度もすれ違った。がん
ばれ、がんばれ、と応援してもらった。

画像24: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

アッサリとした爽やかさに、心底救われていた。

気がつけば、怖さとか、恥ずかしさみたいなものは、わたしの中から消えて失くなってい
た。足の痛みでそれどころちゃうのかもしれないけど。

普段からわたしは、どれだけ他人の目を気にしていたんだろう。

どんなに遅くて、最後尾でも。
何度も止まりながら、歩いていても。

画像25: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

弟は堂々としている。

「あかん、良太のこと見れへん」

母が言った。涙ぐんでいた。

「すごいわ。あの子、信じられへんぐらい、めっちゃがんばってる。わたしもがんばる」

弟が見せる奇跡でマイペースなド根性に感激し、涙をこらえながら、母は車いすをこいで
いた。

ごめんな、ごめんな。わたしは心の中で謝る。恥ずかしいとか、そんなこと、全然なかっ
た。今はなんと誇らしいことか。

画像26: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

弟には、弟なりに、走るよりもずっと大切なことがある。ここがハワイでも。見られてい
ても。そんなことはなにも関係なくて。

走らなくてもええんや。前に進んだらええんや。
わたしはこれから先、思い込みやプレッシャーに押しつぶされそうになったら、何度も思
い出すと思う。この背中を。

スタートから4時間40分。

画像27: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

岸田一家、ホノルルマラソン10kmを完走。ってか、完歩。どっちでもええ。そんなもんは
、どっちでも。

ゴールでメダルをかけてもらった。

画像28: 大切なのは走ることより、前へ進むこと(岸田一家のホノルルマラソン参加記)

参加賞という響きのものが、これほどありがたく思ったのは初めてだった。弟のありえな
いがんばりに、母もわたしも、歩かせていたはずが歩かされていた。

これから先、いろいろなことがあるはずだ。つらいことも、くじけそうなことも、家族がば
らばらになることだって。

どんな準備をしていたって、叶わない局面もきっと待ってる。

「でも、まあ、歩けたもんなー」

そういうときに放つ、岸田家の家訓ができた。家訓ってそういうもんじゃないけど、細か
いことはよい。前に進んだ者勝ちだ。

全てのことを「でも、まあ、歩けたもんなー」で乗り越えてゆきたい。そういう大雑把
な希望を、わたしたちはハワイで、手に入れたのだ。

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