人生で一度は、我を忘れて思い切り弾けてみたい! なんて思ったことはありませんか?
そんな方におすすめしたいのが、スペインにある小さな町・ブニョールで開かれる「トマト祭り」こと「ラ・トマティーナ(LaTomatina)」。この記事では、バレンシア在住のライターに、トマト祭りの歴史やお役立ち情報について教えてもらいました。トマトで町中が真っ赤に染まる、一風変わったお祭りに参加し、これ以上ない非日常な海外旅行へ出かけてみませんか?

※本記事の情報は2024年3月時点のものです。最新情報は公式Webサイトでご確認ください

トマト祭り(ラ・トマティーナ)とは?

画像: この通りがトマト祭りの会場になります

この通りがトマト祭りの会場になります

毎年8月にスペイン東部のバレンシア州にある小さな町・ブニョールで開かれる「トマト祭り」こと「ラ・トマティーナ」は、全身がトマトまみれになる、ひたすらトマトを投げ合う奇祭です。

トマト祭りは単体のお祭りではなく、約2週間続く「聖ルイス祭」のプログラムのひとつで、開催されるのは1日のみ。期間中はさまざまなイベントがあり、トマト祭りの前日は、深夜までライブなどで盛り上がります。

画像: iStock/mmeee

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トマト祭りは午前11時頃に「パロ・ハボン」(「石鹸棒」の意味)から始まります。トマト祭りの会場となる通りのほぼ真ん中「プエブロ広場」に石鹸が塗られた長い棒が立てられ、その先端に吊るされた丸ごと1本の骨付きの生ハムを取り合います。棒はつるつると滑るので簡単にはたどりつけません。誰も生ハムを取れないまま終わる年もあるのだとか。

画像1: 写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局)

写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局)

画像2: 写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局)

写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局)

そんな前座で大いに盛り上がった後、正午に号砲が鳴り、いよいよ制限時間1時間のトマトバトルのスタート。まずは何十トンものトマトを積んだトラックが聖ルイス通りから会場に入ってきて、荷台に乗った人が参加者に向かってトマトを投げたり、荷台を傾けてトマトを落としたりしながら進んでいきます。

あっという間にあたり一面はトマトの海に。あとはトマトを拾っては投げるの繰り返しで、道路にはいつしか水たまりならぬトマト汁だまりが出現。ちなみに2023年は1時間に6台のトラックが通り、合計約150トンものトマトが使われました。

トマト祭り(ラ・トマティーナ)の歴史

祭りの起源は1945年。古くからブニョールで8月下旬から9月初旬にかけて開催されていた、町の守護聖人である「聖ルイス」を祝うお祭りの最中、若者同士がケンカになり、近くの八百屋に並んでいたトマトを投げ合ったことが起源だといわれています。

トマト祭り(ラ・トマティーナ)はいつ開催される?

トマト祭りの開催日は毎年8月の最終水曜日。2024年は8月28日にあたります。なぜこの日なのかというと、トマト祭りの始まりとなったケンカの日が8月最終水曜日だったから。単純明快です。

知っておきたいトマト祭りの公式ルール

世にも珍しいワイルドな祭りゆえ、しっかりとルールが定められています。トマト祭り公式パンフレットに明記されている内容を見てみましょう。

(1)トマトバトルは時間厳守で行うこと

画像3: 写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局)

写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局)

トマト祭りが始まるのは正午で、制限時間は1時間。午後1時に終了を知らせる号砲が鳴った後は、トマトを投げることは禁止されています。

(2)瓶や固い物を持ち込まないこと

瓶や缶、ペットボトルなど固くて人を傷つけるおそれのあるものは会場に持って入ることができません。リュックやバッグの持ち込みも禁止されています。

(3)Tシャツを破ったり、投げたりしないこと

ほかの参加者はもちろん、自身のTシャツも破ったり投げたりしてはいけません。

(4)トマトはそのまま投げないこと

画像: iStock/Irina Starikova

iStock/Irina Starikova

トマトを投げる前に手で潰すこともルールのひとつ。そのままでは痛い場合もあるので、必ず潰しましょう。

(5)トラックの出入りに注意すること

画像1: 写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局) ©Amparo Pardo

写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局) ©Amparo Pardo

途中何度かトマトを載せたトラックが来ますが、道も滑りやすくなっているため、接触には十分注意してください。なおトラックの荷台からトマトを投げる人もいますが、それができるのは、抽選に当たった地元ブニョールの人だけとなっています。

(6)セキュリティスタッフの指示に従うこと

ちょっとした不注意が事故につながることもあるので、セキュリティスタッフの指示はしっかり聞きましょう。

参加するときは、まずチケットを入手しよう

かつてトマト祭りは誰でも無料かつ自由に参加できたことから、人口1万人弱の町に約3万人以上が押し寄せるお祭りとなり、安全上の問題が懸念されるように。そこで2013年からは有料となり、チケットを買った人だけが会場に入れるシステムになりました(住民は無料)。現在は町の住民を含め、2万2000人が定員となっています。なお、16歳未満の子どもは参加できません。

2020年と2021年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり中止されていましたが、2018年の参加者を国別に見ると1位はオーストラリア人で12.4%、2位はなんと日本人で10.2%。意外にも地元スペイン人は3位で10.1%と、外国人が約9割を占めていたとは驚きです。また、参加者の平均年齢は20~25歳と若く、男女比は7:3だったそうです。

チケットは公式Webサイトで販売され、値段は15ユーロ(2024年3月時点のレートで約2,500円)。ブニョール観光局によると当日券もあるとのことですが、売り場を探す手間を考えると前もって入手しておいたほうがいいでしょう。インターネットで買ったチケットはプリントアウトして、現地でリストバンドと交換します。このリストバンドがないと会場には入れないのでご注意を。

もし日本語でのアテンドが必要な場合は、毎年バルセロナから出る日系旅行会社の日帰りツアーや、トマト祭りが日程に組み込まれている日本からのツアーをご検討ください。

【チェックリスト】これがあると便利! おすすめ参加グッズ

ここからは、お祭りに参加する前にぜひ揃えておきたいおすすめグッズを紹介します。

真っ赤なトマトが映える「白シャツ」

画像2: 写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局) ©Amparo Pardo

写真提供:Buñol Turismo(ブニョール観光局) ©Amparo Pardo

思い切り楽しむために、赤いトマトが映える白い洋服を着ていくことがおすすめ。捨てることになってしまうので、着古したものがよいでしょう。ビショビショになって透けるので、女性は下に水着を着るのはマストです。

目を守る「ゴーグル」

画像: iStock/donvictorio

iStock/donvictorio

トマト汁が飛び交うバトル中に役に立つのがゴーグル。トマト汁はなかなか手強く、目に入るとかなり痛いです。また、前座の「パロ・ハボン」の最中には会場に建つ家の住人がホースで水をかけてくることも。そのときにも対応できるので効果的です。

首から提げられる「防水ケース」

スマートフォンを持って行きたい人は、首からかけられる防水ケースが必須アイテム。ただし、盗難のおそれもあるため十分ご注意ください。

足を覆う「スニーカーやウォーターシューズ」

ビーチサンダルでの参加はNG。トマトの海で脱げやすく、また人に踏まれてしまう可能性もあるため、足をすっぽり覆うスニーカーかウォーターシューズを選びましょう。

荷物を守る「南京錠」

帰りの着替えなどが入った荷物は有料の手荷物預かり所に預けることができます。たとえ手荷物預かり所でも中身を盗まれないように、念のためバッグのファスナーなどに南京錠をかけておくと安心です。

舞台となるスペイン・ブニョールへの行き方。周辺も満喫しよう

画像: ブニョールの城跡に登る道から、町並みが見下ろせます

ブニョールの城跡に登る道から、町並みが見下ろせます

ブニョールの町は、地中海に面したスペイン第3の都市バレンシアから西に約40km。マドリードのバラハス空港からスペインに入国する場合は、チャマルティン駅から列車で2時間、バルセロナのエル・プラット空港だとサンツ駅から列車で3時間でバレンシアに到着します。空路だと両都市からバレンシアまで1時間弱の飛行です。

また、日本から欧州他都市か中東経由でバレンシア空港に行くことも可能。ブニョールへはバレンシア北駅から1時間に1~2本の間隔でローカル電車が運行しており、所要時間は約1時間です。

ブニョールには小さなホテルが1軒と、日本でいう民宿的な施設が数軒あるだけで、トマト祭りの前日や当日は何カ月も前から満室に。見どころいっぱいのバレンシアに宿泊して、その周辺地域も楽しむのがいいでしょう。最後に、バレンシアのおすすめスポットを紹介します。

キリストの最後の晩餐で使われた聖杯が見られる「バレンシア大聖堂」

画像1: ©VisitValencia(バレンシア市観光局)

©VisitValencia(バレンシア市観光局)

画像: 夏の夜になると、大聖堂周辺は遅くまで賑わいます

夏の夜になると、大聖堂周辺は遅くまで賑わいます

昔は城壁に囲まれていた「バレンシア旧市街」の中には、観光スポットが点在しています。世界遺産の「ラ・ロンハ」、18世紀の貴族の邸宅を利用した「国立陶器・装飾芸術美術館」、17世紀に描かれた天井のフレスコ画が美しい「サン・ニコラス教会」など。その中でひとつおすすめを選ぶとしたら「バレンシア大聖堂」。13世紀に建設が始まり、17世紀まで改築や増築が幾度となく繰り返されたという壮大な歴史を持つ教会です。

画像: ©VisitValencia(バレンシア市観光局) 入場して右奥の礼拝堂に聖杯が展示されています

©VisitValencia(バレンシア市観光局)
入場して右奥の礼拝堂に聖杯が展示されています

日本語のオーディオガイドも付いているので、じっくりと説明を聞きながら堂内を見学することができ、なんとここにはキリストの最後の晩餐で使われたとされる聖杯が展示されています。世界中にこういう聖遺物は多々存在するものの、この聖杯はバチカンのお墨付き! また、ミゲレテの塔に登ると、地上約50mの高さからバレンシアの町を360度見渡せます。

バレンシア大聖堂(Catedral de Valencia)

住所Plaza de la Reina, s/n 46003 Valencia
webCatedral de Valencia 公式サイト(外国語サイト)

食いしん坊なら見逃せない「中央市場」

画像2: ©VisitValencia(バレンシア市観光局)

©VisitValencia(バレンシア市観光局)

海の幸と山の幸に恵まれ、昔から農業が盛んなバレンシアは食材がとても豊富。欧州でも有数の大きさを誇る中央市場は、約8000平方メートルとちょうどサッカーグラウンドほどの広い屋内市場で、さまざまな食品が所狭しと並んでいて見応え満載。腸詰類やカットフルーツ、パンなどを買ってその場で食べることもできます。約100年前に建てられたモダニズム建築の建物も味わいあり。

画像: 食いしん坊なら見逃せない「中央市場」

ちなみにバレンシアはスペイン料理の代表格パエリアの故郷。滞在中にはぜひともご堪能ください。なお、本場バレンシアのパエリアは魚介ではなくウサギ肉や鶏肉が入っています。

中央市場(Mercado Central)

住所Plaza del Mercado, s/n 46001 Valencia
webMercat Central de València 公式サイト(外国語サイト)

バレンシアといえば青い空と青い海

画像3: ©VisitValencia(バレンシア市観光局)

©VisitValencia(バレンシア市観光局)

バレンシアには全長約3kmを超えるビーチが広がり、夏は外国からの観光客も多く賑わいます。パラソルとビーチチェアを借りてまったりするもよし、マリンスポーツに挑戦するもよし、夕暮れの海を見ながら一杯飲むもよし。お好きな方法でビーチライフをお楽しみください。

画像4: ©VisitValencia(バレンシア市観光局)

©VisitValencia(バレンシア市観光局)

ビーチ沿いの遊歩道やF1ヨーロッパGPの市街地コースだったヨットハーバー付近には、パエリアが食べられるレストランもたくさんあるので、あわせて楽しむのもおすすめです。

さてさて、トマトまみれになる決心はつきましたか? 早速トマト祭りとバレンシアを楽しむ旅行計画を始めましょう!

トマト祭り

開催場所スペイン王国バレンシア州 ブニョール
開催日8月の最終水曜日(2024年は8月28日)
webLa Tomatina公式サイト(外国語サイト)

取材・撮影:田川敬子

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