島根県東部を走るローカル列車"一畑電鉄"で結ばれる観光地、松江と出雲大社のちょうど中間に位置するのが今回旅した「平田エリア」です。この地は江戸時代、水運を利用し「雲州平田木綿」の集積地として栄え、木綿業を中心とした商人たちにより物流の拠点として繁栄しました。なまこ壁や町家が並ぶ「木綿街道」を歩きながら、歴史や文化色濃い平田エリアを旅しました。
画像: あなたの知らないディープ島根・歴史の中に新しい物語がある雲州平田「木綿街道」

西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎(実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典(PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。

なまこ壁や格子造の町家が軒を連ねる「木綿街道」を歩く

出雲市平田町にある「木綿街道」は、一畑電鉄雲州平田駅から徒歩15分、出雲空港から車で15分という場所にあり、川沿いに並ぶ古い家々に隆盛を誇った時代の名残を感じさせます。
平田は江戸時代にぎやかな市場町として発展し経済の最盛期を迎え、かつてはこの木綿街道のような大きなお屋敷が平田エリア全体に立ち並んでいました。それらは昭和になると町の都市計画により徐々に近代化され、土地造成や道路拡幅により徐々になくなっていってしまいました。

しかし木綿街道は町の整備や道路拡幅から逃れられたため、かつての平田の姿を留めることができた場所。情緒ある雰囲気に惹かれた人たちが足を運ぶスポットとなっています。
20年以上前から地元の人の手によって町並みの保存、景観や歴史文化を活用する取り組みが行われてきたこともあり、町家や蔵をリノベーションした宿や飲食店も増えています。古さと新しさが隣り合わせにある、魅力的な町へと変貌しつつあるエリアといえます。
この街道をさっそくぶらりと散策してみました。

日本で唯一ここにしかない生姜糖専門店「來間屋生姜糖本舗」は300余年続く老舗。一子相伝で製法を守り伝える伝統菓子を作っています。
出雲市斐川町の出西(しゅっさい)地区でしか栽培できない"出西生姜"のみを使い砂糖とじっくり煮詰めていきますが、生姜の辛味、透き通るような黄色は出西生姜でしか再現できません。生姜糖のかけらを口に含むとくちどけも良く、最後にスーッとした生姜の爽やかさが残ります。

良い醤油の香りに惹かれて訪れたのは「持田醤油店」。また会いに行きたい!と思わせてくれるやさしいおかあさんから木綿街道の歴史をたくさんお聞きすることができました。
蔵自慢の「羽衣さしみ醤油」を使った絶品の焼きおにぎりが食べられます。竹の皮をほどくと香ばしい香り。大きなおにぎりには甘じょっぱい醤油がしみ込んで、どこか懐かしい味わいです。他に、まるでキャラメルのような風味の醤油ソフトやみたらし団子も人気です。

次に立ち寄ったのが2021年11月に開業した「サードバレルブルワリー」。平田エリア初のクラフトビール醸造所です。地域と深い関係性を生みながら盛り上がっていく楽しさ、日常に少し温度の上がるような刺激と感動をテーマに、木綿街道の新しい拠点として異彩を放つスポットです。
20代~30代と若い世代が造り手で、少量多品種で高品質かつバリエーションあるビールを作っています。常時7~8種類の定番商品とコラボレーション商品がデザイン性豊かに並び、タップの樽生を購入することができます。

もともと郵便局だった建物に作られたのが絵はがき屋さん。平田や周辺地域の風景を描いた明るい色彩の絵はがきが300枚置かれ、1枚100円で購入できます。無人なので気兼ねなく入ることができ、訪れた観光地の想い出を1枚のはがきとして持って帰れる気軽さについつい立ち寄りたくなります。
外には出雲弁の神様のお告げ札やおみくじ(いずれも無人)もあり、ふと足を止めたくなるスポットです。

街道沿いには休憩処や店前のベンチなど、静かな時間が過ごせる場所も用意されています。
古い格子やなまこ壁のフォトジェニックスポットで写真を撮ったり、歴史ある町並みでお買い物やグルメを楽しんだりとさまざまな楽しみ方ができます。
町のやさしい空気と穏やかな川の流れに癒されながら、木綿街道を堪能してみてください。

木綿街道(駐車場案内など)

住所島根県出雲市平田町841(木綿街道振興会事務局)
電話0853-62-2631
URLhttps://momen-kaidou.jp/

來間屋生姜糖本舗

住所島根県出雲市平田町774
電話0853-62-2115
営業時間9:00~19:00
定休日不定休
URLhttps://syougatou-honpo.jp/

持田醤油店

住所島根県出雲市平田町807
電話0853-62-3137
営業時間9:00~18:00
定休日不定休
URLhttps://mochidashouyu.amebaownd.com/

サードバレルブルワリー

住所島根県出雲市平田町812
営業時間平日13:00~17:00 土・日10:00~17:00(変動あり)
定休日不定休
URLhttps://3rdbarrelbrewery.com/
Instagramhttps://www.instagram.com/3rdbarrelbrewery/

絵はがき屋さん

住所島根県出雲市平田町820
営業時間9:00~18:00
定休日なし

小さい町の手仕事と伝統「手製本と紙の造形・吾郷屋」「漆芸のわたなべ」「平田一式飾り」

最初に訪ねたのは吾郷直紀さんの工房兼店舗である「吾郷屋」。
吾郷さんは紙選びから裁断、糸の色選択、造本や装丁まで全てを行うノートの制作、紙細工などを行う作家です。
それだけでもすさまじいこだわりを感じさせるのですが、実際に直に見て、触ってみると驚きの緻密さと美しさを備えていることがわかります。
吾郷さんはそのノートにさらに装飾=切り絵を加えています。
例えばそれは、1mm角の色紙を800個埋め込んだモザイク。このカラフルで小さな色紙はカットしたものを単純に貼るのではなく“はめ込み”ます。ノートの台紙にも800個の1mm角をくり抜き、そこに色紙をひとつずつ、根気よくはめ込んでいくのです。はめ込まれているので貼った時にできる凹凸がなく、なめらかな表面に仕上がります。機械や印刷ではない、人の手によって精密に作られたモザイクアートです。
ノートや手帳は触ってみればその良さがわかります。額装されたアート作品などもあり、じっくり時間をかけて見たい場所です。最近では首都圏での展示会にもひっぱりだこで、活躍の場がさらに拡がり続けています。

松江で生まれた漆器「八雲塗」は、島根県の代表的な伝統工芸品です。木地に色を混ぜた漆で文様を描き、そこに天然漆を重ね、重ねた後に磨きながら研ぎ出していくことで絵柄を浮き出させるという手法が用いられます。
使えばつかうほど模様が鮮やかになっていくため長く愛用されることが大切。県内では、菓子器やお盆、椀など、和の道具として日常に溶け込んでいます。
渡部直人さんは出雲八雲塗の工房で25年の修業勤務を経て、ふるさとであった平田で独立、「漆芸のわたなべ」を開業しました。
現在は漆器にさまざまな模様を描く漆芸が中心で、贈答品や記念品としてお店に並びます。

最後にご紹介するのが、平田地区に広がる伝統文化「平田一式飾り」です。大阪など大都市で流行した"見立て"という民間芸術に端を発し、平田地区で独自の発展をしました。"見立て"とは本来の形態を維持主張しつつ、それらを用いて別のものを表現する造形を指します。
各地で行われていた"見立て"は徐々に廃れていきましたが、平田地区には「一式飾り」という名称で人々によって継承されてきました。平田で"見立て"が廃れなかった理由は一式飾りが神事として行われ、神社仏閣に奉納されていたことにより、人々の生活に根付いたからだと考えられています。
一式飾りは、何かの道具を用いて話題になった一場面や神話や歴史の登場人物を作り出す飾りです。作る上で大きく2つのルールがあり、陶器ならば陶器一式、仏具ならば仏具一式と制作に用いるものは「材料」か「用途」か1種類でなければなりません。もうひとつは、つかう道具穴を空けるといった変形を加えてはならないというもの。よって、針金を使って道具それぞれをつなぐための"支え"を作り、その支え同士をさらに針金でつなぎながら大型のものを組み立てていきます。
現在は毎年コンクールが行われ、伝統を伝えていくための活動が行われています。各地でこうした民間芸術が消失していく中、平田一式飾りは多方面から評価され、首都圏の美術館への出品、全国メディアからの取材などにより平田を代表する名物ともなっています。
平田の町なかにはたくさんの一式飾りが飾られているので、散策しながら伝統を感じてみてください。木綿街道内「木綿街道交流館」では一式飾り制作体験も可能です。

吾郷屋

住所島根県出雲市平田町721
電話0853-77-6087
営業時間10:00~17:00
定休日火曜日・水曜日
URLhttps://www.agouya.com/

漆芸のわたなべ

住所出雲市平田町1061 アスティ本町内
電話0853-62-2147
営業時間9:30~18:00
定休日日曜日
Instagramhttps://www.instagram.com/qiyunnowatanabe/

平田一式飾り

URLhttps://www.kankou-shimane.com/destination/20659
〔平田一式飾り体験〕※要予約

木綿街道交流館

住所島根県出雲市平田町841
電話0853-62-2631
営業時間9:00~17:00
定休日火曜日(火曜日が祝日の場合は翌平日)
URLhttps://momen-kaidou.jp/map/spot13.html

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