SDGsや脱炭素が世の中のキーワードになりつつある中、徳島県には地域の課題に向き合い、活動を行う企業があります。その会社は、家具屋として事業を展開する西部木工。本記事では同社の代表・西岡章さんのお話を通して、日本と地域の魅力を継承していくために行っている取り組みについてお伝えします。

職人が減少…… 徳島県阿南市の現状

木材産業で発展をしてきた徳島県ですが、近代の全国的な国産材の需要低迷の影響は大きく、多くの製材所や木工所が廃業を余儀なくされたそうです。

西岡さん「私が子どものときにはたくさんいた職人たちが、今では必死に探さないといけないほど減っており、胸が痛みます」

以前は、家の建具に不具合があると近所にいる職人に頼んでいたそうですが、今では職人が目に見えて減少したため、そういったご近所のやり取りも減ってしまったといいます。

日本の建築は、柱材の約6割・横架材の8割以上が海外からの輸入に頼っている現状を考えると致し方ないことのように感じます。

徳島県の製材所の歴史

画像: 徳島県の製材所の歴史

徳島県の木材産業には、山で伐採した木を、山の山腹から発生する川の上流から川下へ流し、川下の製材所が川から引き揚げ、素材の加工をするというエコシステムがありました。そのため、川岸周辺に製材所が点在するという地理的特徴が生まれたのです。

しかし、その地理的特徴が、徳島県の製材所にとっては痛手ともなりました。

多くの製材所は、那賀川に近い場所にありましたが、近年の大雨により川の整備を余儀なくされました。整備の際に、多くの事業者に移転の打診がありましたが、低迷する産業内で、移転や設備投資に回す資金繰りをすることができず、事業撤廃を決断する製材所も多かったと西岡さんは話します。

その言葉からは、木材産業の市場の変化と環境の変化に対しての、圧倒的な対応不足が見て取れます。

脱炭素・SDGsの旗の元、多くの日本の企業が重い腰を上げて動き出したのは最近のことではないでしょうか。

しかし、温暖化により「豪雨が増える」「異常気象が増える」といったことは、2015年のパリ協定の時期には科学的根拠が示された事実でした。

本来私たちは、SDGsだから取り組むのではなく、自国の産業のレジリエント(※)にもっと目を向けるべきだったといえます。

※レジリエントとは:
「弾力性のある」「柔軟性がある」「回復力のある」という意味の言葉で、ここでは環境に対して柔軟に対応する力・仕組みのことを指しています。

西部木工から見る日本の木材産業の危機

西岡さんは「日本でも有数の木材貯蓄量を誇る徳島県で、多くの製材所が廃業していってしまっていることに危機感を募らせている」といいます。

木材産業の一旦を担う事業の中で、木材が売れなければ製材所が潰れるという現実を見続けてきた西岡さん。そんな彼がこの先にあると考えているのは、業界全体の産業の衰退。

新型コロナウイルスの影響で、アメリカなどの先進国で郊外での新築住宅の需要が増えたことによる、世界的な木材価格の高騰の影響(ウッドショック)が国内にもありました。
輸入木材に依存していた日本の建築業界では、慌てて国産の木材を調達する動きがありましたが、多くの企業が断念するしかなかったといいます。

理由は、いくつかあります。
木材は、伐採後すぐに材として使えるわけではありません。乾燥し、その後木材の部位ごとに切り分け加工を施すことで建築材として使えるようになります。

しかし、既に産業が縮小されている国内の木材産業では、大量の材をさばくには設備が不足しているのです。

そもそも、日本で広まった建売建築の多くが、海外の木材の規格に沿った設計になっています。
国産材のブランディングが高価格帯に設定されていたこともあり、建売建築に対応する在庫を確保しておくメリットが、産業全体にあまりありませんでした。
日本の木材産業が、国内の需要を支える構造にないことが、改めて白日の下に晒されたでのす。

画像: 西部木工から見る日本の木材産業の危機

さらに、現在の日本の現状を肌で感じる立ち位置にいる西岡さんは「職人の技術が失われる危機感も感じている」と話します。

現在、西部木工が抱える熟練の職人は70代。若手だと40代です。職人の高齢化もありますが、若い職人が入ったときに、製品が売れなければ技術を教えることもできません。

またある日、西岡さんが70代の職人の方に休日の過ごし方について聞いたとき、職人の方は「近所の神社にある山車の修繕をしていた」と答えたそうです。

そのとき西岡さんは、職人の技術継承が途絶えたときに、失われるものの多さに気付きました。
神社仏閣などの文化財や観光資源、祭りで使われる山車。誰にも技術が伝わらなければ、修繕すら難しくなることは明白でした。子どもの頃から親しんだ文化を子や孫に残せるかは、自分たち次第なのだと感じたそうです。

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