そんな佐久島を、カメラ片手に仲間とめぐる一日。お気に入りの風景を探したり、思わず笑顔になる一枚を撮ったりと、旅の記憶を写真に残したくなる瞬間がきっと見つかるはずです。
この記事では、佐久島のフォトジェニックな撮影スポットをめぐるモデルコースと、それぞれの撮影のコツをご紹介。何気ないひとときが、旅の特別なワンシーンになる。そんな一日をご提案します。
アート×写真を満喫!おすすめモデルコース
佐久島には、常設展示のアート作品が島内に22点、本土側港に2点と全部で24点。その周辺には、作品鑑賞と併せて訪れたいグルメスポットや、島ならではの風景が広がるビュースポットも点在しています。そんな佐久島を日帰りでカメラ片手に巡るのにぴったりな、おすすめの9スポットをご紹介。
佐久島へのワクワクはココから始まる「知識の蜂の巣」
佐久島の旅は、船に乗る前の「一色港」から始まっています。渡船場から西へ徒歩4分、まずは「佐久島ナビステーション」を訪れてみましょう。

館内で写真スポットとしておすすめなのが、建築家 長岡勉が佐久島アートの3作品目として手掛けた「知識の蜂の巣/長岡勉」。ドーム型の円天井に呼応するように、空間全体がすり鉢状に設計されたこの建物。内部には、ギャラリーやライブラリー、お茶室など、島の文化を象徴するような“ミニチュア文化施設”が迷宮のようにちりばめられています。丸や曲線、直線など、さまざまな形にくり抜かれた空間が複雑につながり合い、不思議と心をくすぐられる構造です。

全景はぜひ「物見台」に上って眺めてみてください。「知識の蜂の巣」という名の通り、蜂の巣を思わせるユニークな構造は必見です。島のアートとリンクした作品が紹介されたギャラリーもあり、佐久島の玄関口として親しまれています。
カメラマン直伝!撮影のコツ

ここでは、「奥行き」と「カタチの連なり」を意識して撮影してみましょう!正面からまっすぐ撮影することで、円の中心が重なり、視線を奥へと引き込みます。円の重なりを意識して、壁と壁の間や一番奥に立ってみると、より空間のスケールや深さが伝わって効果的です。
カメラの位置は目線の高さから少し下に下げて。円の正面をとることで、作品そのものや建築物としての美しさにも寄り添います。

物見台から撮影するなら、もぐらたたきのように、穴のいろんなところから顔や手をのぞかせてみてはいかがでしょうか。
「知識の蜂の巣」長岡勉
住所 | : | 愛知県西尾市一色町小薮船江東176 |
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電話 | : | 0563-72-9607 |
営業時間 | : | 9:00〜17:00 |
定休日 | : | 水曜 |


「知識の蜂の巣」を後にして、いよいよ佐久島へ出発!佐久島行きの船は、一色港から一日に7本出ています。
島に上陸! 最初の目的地は“映えて寝ころぶ”「おひるねハウス」
一色港から船で約20分、佐久島・西港に到着。ここでの移動は徒歩か自転車。港のすぐ近くにはレンタルサイクルのショップがあり、誰でも気軽に利用することができますが、舗装されていない道もあるので、その際は近くに停めて目的地までは徒歩で向かうと安心です。

まず訪れたいのが、佐久島のシンボルともいえる「おひるねハウス/南川祐輝」。9マスで仕切られた黒い額物のような作品は、佐久島の西集落の黒壁がモチーフ。

佐久島の西集落。潮風による家屋の腐食を防ぐために、コールタールを塗布していたことが始まり。

歩きながら島の日常をパシャリ
この作品は、実際にはしごで登って中に入り、ゴロンと横になることができます。光の向きや潮の満ち引きでいろいろな表情を魅せる、海と空とのコントラストを楽しみたい人気スポットです。
カメラマン直伝!撮影のコツ

佐久島の自然とアートが融合した風景を活かすため、あえて周辺に咲く植物を「前ボケ」に入れてみるのがおすすめ。海・空・植物と「おひるねハウス」が一緒に写るように切り取ってみましょう。
カメラの露出(明るさ)は空や海に合わせ、人物は陰に(暗く)なるように。黒色が印象的な作品に合わせて、人もシルエットで写すのがポイントです。植物に合わせてカメラ位置は低く。写真の左側に写る防波堤で写ってみても面白いかもしれません。
作品にグッと寄って、こんな構図もぜひ。“額縁構図”という言葉があるように、この写真では作品そのものを、風景を切り取る「フレーム」として活用しています。
画面の四辺を囲むことで、視線は自然と奥の海と空へと誘われます。ピントはもちろん額縁の中の風景に合わせて。砂浜に降りて、海を見つめる後ろ姿が似合いますね。
「おひるねハウス」南川祐輝
住所 | : | 愛知県西尾市一色町佐久島石垣16 |
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天使の羽に導かれて、かわいくて甘い時間を「カフェ うる」

アート巡りの合間に立ち寄りたいのが、「おひるねハウス」から徒歩2分の「カフェ うる」。店先では、SNS映え抜群の天使の羽アートがお出迎え。L.A.をはじめ世界各地で天使の羽を描いているコレット・ミラー氏によるアート作品は、ついシャッターを切りたくなる場所です。
「COTTON CANDY」1,500円
シェイクをはじめ、ひんやりスイーツが豊富にそろうこのお店でのイチ押しは「CRAZY SHAKE」。イチゴ味の「COTTON CANDY」とチョコレート味の「COOKIE MONSTER」の2種類から選べます。COTTON CANDYはシェイクの上にふわふわのわたあめとキャンディーのカタチをしたマシュマロがのった、フォトジェニックな一品。南国ムード漂う店内でキュートに撮るか、天使の羽を背景にテラス席で開放的に撮るか…。甘くてかわいいひと休みスポットで、一息つきましょう。
カフェ うる
住所 | : | 愛知県西尾市一色町佐久島東側1 |
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電話 | : | 080-5151-4822 |
営業時間 | : | 平日9:00〜17:00、土日祝8:00〜18:00 |
定休日 | : | 不定休 ※雨の日と12月~2月は休み |
web | : | カフェ うる 公式サイト |
歩くほどに澄んでいく、祠とアートの参道の先に「空の水―山」
「カフェ うる」から徒歩15分。舗装されていない道を進んでいくと、弘法様の祠(ほこら)が次々と姿を現します。レンガ造りの歴史ある祠から、アーティスティックに修繕されたものまで、個性が光るものばかり。それらはすべて島の人々が丁寧に手をかけ、大切に守り続けてきた神聖な存在です。掃除道具もおしゃれに用意してあるので、訪れた感謝を込めて掃除をしてみると、きっと心が洗われるはず。


気持ちが整うような澄んだ空気が流れる参道を進むと、森に溶け込んだ鉄のアート作品「空の水―山/青木野枝」がひっそりと佇んでいます。雫をイメージした輪をつなぎ合わせ、祠をかたどったようなフォルムのオブジェは、2008年に制作されて以降、時間をかけてゆっくりと錆びながら表情を変え自然と共存してきました。
森の緑に溶け込む鉄の輪が静寂と調和する幻想的な構図と、差し込む木漏れ日を活かして、他の作品とはひと味違う一枚を残しましょう。
カメラマン直伝!撮影のコツ

背景が木々に覆われているため、被写界深度を浅くして(絞りをあけて)背景をややぼかし、作品にピントが合うように心がけましょう。オートフォーカスが効きづらい環境でもあるので、可能であればマニュアルフォーカスで。作品の隣に佇み、静かに上を見上げながら、森の一部になったような一枚を撮ってみましょう。地面も構図の一部として写し込むことで“森の中に立つ”感覚を写真に留められます。

ほかにはこんな一枚も。作品を真下から見上げて撮ることで、少し違った鉄の輪を見ることができます。背景がふんわりと光って明るいので、作品がシルエットになるのがポイントです。
「森に溶け込み森の一部になったような作品をどう捉えるか」を考えながら撮影すると発見があるかもしれません。
「空の水―山」青木野枝
住所 | : | 愛知県西尾市一色町佐久島大山1-36 |
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海と空と風と。カモメと一緒にゆらり揺れて「カモメの駐車場」
日帰り旅も後半。今度は海に向かって歩くこと約17分。「空の水―山」からたどり着く先は、佐久島唯一の海水浴場「大浦海水浴場」。その砂浜の端にずらりと並ぶのは風見鶏のように風に合わせてクルクル向きを変える60羽のカモメのオブジェです。まるで羽を休める本物のカモメたち、そしてその後ろに広がる穏やかな海を見ていると、思わず深呼吸したくなるような心地よさが広がります。

「風の島」とも呼ばれる佐久島では、東風を「こち」、南風を「まぜ」と呼ぶなど、風にさまざまな名前がつけられています。この作品はそんな風の存在を感じるための風を見る装置として2005年に生まれました。
季節によっては実際にユリカモメがオブジェに並ぶこともあるこの場所で、風を感じながら空と海とカモメの織りなす一瞬を狙ってみてください。カモメの向き、光の差す方向、潮の満ち引きで表情がコロコロ変わるので、何度撮っても新しい1枚が撮れるはず。
カメラマン直伝!撮影のコツ

この作品は、整然と並んだカモメの列がポイント。写真では、その“並び”がしっかり伝わるように、正面からまっすぐカメラを構えましょう。カメラ位置を下げすぎるとカモメ同士が重なって見えづらく、高すぎると間が空いてスカスカした印象になります。程よいカメラの高さを探してみてください。一緒に写るときは、しゃがむか、奥の方に立つとバランスが良くなります。

カモメが空に羽ばたくようなイメージで、空を背景にするのもおすすめ。岩場は最小限におさえ、空とカモメだけの世界をつくることで、また違った見え方になります。撮影する際は、岩場から下りて作品を見上げるような位置からカメラを構えましょう。
「カモメの駐車場」木村崇人
住所 | : | 愛知県西尾市一色町佐久島前田 |
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レトロかわいい古民家で遊び心と涼を味わう「サクカフェ aohana」

お次は「カモメの駐車場」から徒歩10分、ふわふわな氷で人気を集めている、古民家の風情漂うかき氷店へ。果肉入りのかき氷をはじめ、紅茶やコーヒーなどの大人テイストもそろい、幅広い世代に支持されています。

「金魚鉢かき氷」1,500円
ここでのイチ押しはブルーハワイとレモン味のかき氷がガラスの金魚鉢に入った、インスタ映え抜群の「金魚鉢かき氷」。カラフルな金魚のラムネもキュート。別添のバニラアイスと練乳、三河湾の塩で味変を楽しみましょう。

「植木鉢かき氷」1,500円
もう一つのおすすめは「植木鉢かき氷」。その名の通り植木鉢に入ったユニークな見た目と、スコップで掘りながら食べられる遊び心抜群の一品です。ココアパウダー、練乳、みぞれシロップの絶妙なバランスで、最後まで飽きのこないかき氷です。

「オムライス」1,000円
たくさん歩いてお腹が空いていたら、トロトロ卵が食欲をそそるオムライスもぜひ。昔のミシン台を利用したカウンター席やレトロなちゃぶ台など、懐かしい空気にほっと癒されれば、心もお腹も満たされるひと時に。
サクカフェ aohana
住所 | : | 愛知県西尾市一色町佐久島前田45 |
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電話 | : | 080-5151-4822 |
営業時間 | : | 平日10:00~17:00、土日祝9:30〜17:00 |
定休日 | : | 不定休 |
web | : | サクカフェ aohana 公式サイト |
童心を思い出す、木のトンネルの向こう「佐久島の秘密基地/アポロ」
「サクカフェ aohana」から佐久島の南端に向かって歩くこと15分、まるで絵本の世界に迷い込んだかのような木のトンネルが現れます。
トンネルを抜けると視界がぱっと開け、小高い崖の上に現れる黒い秘密基地が。月面着陸をしたアポロ11号をイメージしてつくられたこの大型アートオブジェは、佐久島の東エリアに初めて設置された作品です。
人ひとりがギリギリ通れる幅の入り口を入って階段を上ると、ツリーハウスの中にいるような感覚が味わえます。四角い大きな窓やのぞき窓のような小さな窓があり、そこからいろいろな景色を絵画のように切り取って見ることができます。天気のいい日は海の向こうに渥美半島や三重の神島までを一望することも。

撮影を終えたら、ベンチでひと休み。心地よい風を感じながら穏やかな時間の流れに身を任せてみませんか。
カメラマン直伝!撮影のコツ

渥美半島を見渡す崖の上に建つこの作品。そばには大きく伸びる松の木があります。松の木と建物、そしてその向こうに広がる海を一緒に入れて、少し離れたところから風景画のようなイメージで撮影してみましょう。秘密基地の入り口から海を眺めるように立ってみるとサマになります。

下から見上げて、アポロの2階部分にフォーカス。2階の窓からひょっこりと顔をのぞかせて写ってみると、遊び心のある一枚に仕上がります。
また、アポロの内部にはさまざまなカタチや大きさの開口部があります。その一つ一つを「自然を切り取るフレーム」として意識して撮ると、まるで絵画のような写真に。とっても気持ちの良い海風を感じながら、アポロが切り取った風景にカメラを向けてみてください。
「佐久島の秘密基地/アポロ」POINT
住所 | : | 愛知県西尾市一色町佐久島平古32-3 |
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海の中を歩く桟橋からの景色「イーストハウス」
「佐久島の秘密基地/アポロ」から徒歩15分。佐久島東港から大島へ続く桟橋の途中にある「イーストハウス/南川祐輝」は、「おひるねハウス」を制作した南川祐輝氏が手掛けました。対岸に見える黒の「おひるねハウス」と対照的な白い東屋のデザインが印象的です。

海の真ん中を歩いているような桟橋から始まり、海と空に映える白い東屋まで、どこを撮っても絵になるスポット。2つの白い箱をつなぐ60mの長いベンチがまるでバージンロードのようだと、ウェディングの前撮りスポットとしても人気です。

海がキラキラ光る昼間はもちろん、夕日が落ちる時間帯に見せるドラマチックな景色もおすすめ。白いオブジェがオレンジ色に染まっていく様子は全く違う印象に。最終便(18時台)にも気を配りつつ、日帰り旅の最後に暮れていく佐久島の一日を堪能してみては。
カメラマン直伝!撮影のコツ

「イーストハウス」も、「おひるねハウス」同様に額縁構図が美しい一枚が撮影できます。作品の四角い“抜け”がしっかり真四角に見えるよう、カメラの位置を丁寧に調整しましょう。水平・垂直のラインをそろえるように意識すると、ピシッと整った一枚になります。四角い枠の中に、腰掛けたり、顔をのぞかせたりすると、写真に温かみが生まれます。

画面の中央付近に伸びる白い通路を軸に、まわりの風景、左右の海岸線までを一望。空間全体の「広がり」と「つながり」を意識してみましょう。両手を広げてバランスを取りながら白い通路を渡れば、風景の中に小さなドラマが生まれるはず。
「イーストハウス」南川祐輝
住所 | : | 愛知県西尾市一色町佐久島大島桟橋 |
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仲間とだからこそ楽しい、佐久島の記録をお土産に


「イーストハウス」から、帰りの東港までは徒歩で約4分。あっという間に旅が終わりました。お土産屋さんがない佐久島では、その切り取った写真すべてが何よりのお土産になります。島のあちこちにあるアート作品はそれだけでも見応え十分ですが、仲間とその芸術や歴史に触れ刺激し合いながら撮る写真は、何度でも見返したくなる、“私たちだけの”飛び切りのアートとして残ります。そんな佐久島での1日を過ごしてみませんか。
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