
西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎(実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典(PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
家康を育んだまち岡崎、ビスタラインに導かれ武将の“はじまり”を感じる旅
昨今の歴史ブームの中、徳川家康と聞いて“岡崎”を思い浮かべる人もいるでしょう。この地は、天下人・家康の「はじまりの場所」。彼の生涯を語るうえで欠かせない“原点”です。
家康は1542年、三河国・岡崎城で誕生。戦国の世に生まれ、波乱の幼少期を経て天下統一を果たす道のりは、岡崎から始まりました。江戸に拠点を移した後も、岡崎への思いは生涯消えることがなかったと伝えられています。
まずは岡崎城が建つ岡崎城公園へ。ここは、市民の憩いの場であり、家康の面影が随所に残る歴史公園です。公園内には家康にちなんだ見どころが多く、開運スポットとしても知られています。
岡崎城内は整備が行き届き、年齢を問わず快適に見学できるのも魅力。風格を残しながら、誰にとってもやさしいつくりで、岡崎の歴史や文化にふれることができます。
この岡崎城は、別名「龍城」とも呼ばれています。名の由来は、“龍”にまつわる多くの伝説。そのひとつは、最初にこの地に城を築こうとしたとき、古井戸に棲む龍が現れ「龍神である自分を祀るように」と告げて、井戸から噴き出した水を浴びて姿を消した、という伝説。また、家康が誕生した夜に、城の上に黒雲が渦巻き、風を呼んで黄金の龍が現れたと伝わります。龍は岡崎を守る象徴とされ、市章も宝珠を握る龍の爪がデザインされています。
城内の東照宮「龍城神社」では、拝殿天井に注目を。そこには全長4メートル、幅2.5メートルの木彫りの龍が堂々と姿を現しています。職人の技が細部にまで宿る迫力ある彫刻は、まさにこの地を見守る守護神のよう。龍のまち・岡崎にお参りし、縁起にあやかってみてはいかがでしょうか。
公園内でひと休みしたいときは、食事処の「いちかわ」へ。家康をモチーフにした抹茶パフェは、兜型クッキーが目を引くご当地スイーツ。戦国のロマンを味わう、家康ゆかりのひと品です。
岡崎観光で外せない「大樹寺」は、松平家四代・松平親忠が建立した徳川家の菩提寺。桶狭間の戦いで敗れ、命からがら岡崎に戻った家康は、この寺で自害を決意しますが、住職の言葉に救われ、思いとどまったと伝えられています。
その後、家康の九男、尾張名古屋初代藩主の德川義直が、父をしのんで等身大の位牌を寄進。今では初代家康から十四代家茂まで、歴代将軍の位牌がずらりと並ぶ宝物館(有料)は必見です。家康が運命に立ち向かう決意を固めた地として、心に残る場所です。
さて、題名にもある「ビスタライン」とは、大樹寺から岡崎城へ約3km続く直線の眺望のこと。家光の代、大樹寺の伽藍を整備する際、本堂・山門・総門の中心に岡崎城が望めるよう設計されたのが始まりです。家康ゆかりの景観として、今も大切に守られています。
歴史と現代がやさしく溶け合う岡崎のまちを、家康ゆかりの地をたどりながら、ぜひ歩いて感じてみてください。
岡崎城公園
住所 | : | 愛知県岡崎市康生町561-1 |
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電話 | : | 0564-22-2122 |
営業時間 | : | 9:00~17:00(最終入館:16:30) |
定休日 | : | 年末(12月29日~12月31日) |
URL | : | https://okazaki-kanko.jp/okazaki-park/feature/okazakijo/top |
龍城神社
住所 | : | 愛知県岡崎市康生町561 |
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電話 | : | 0564-21-5517 |
URL | : | https://www.tatsukijinja.or.jp/ |
岡崎公園 隠居曲輪 いちかわ
住所 | : | 愛知県岡崎市康生町561-1 |
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電話 | : | 0564-22-2479 |
営業時間 | : | 平日 11:00~15:00/土・日・祝 11:00~16:00 |
定休日 | : | 水曜日 |
URL | : | https://okazaki-ichikawa.jp/ |
大樹寺
住所 | : | 愛知県岡崎市鴨田町広元5-1 |
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電話 | : | 0564-21-3917 |
URL | : | https://daijuji.jp/ |

松平氏の居城「岡崎城」は、徳川家康(竹千代)が産まれた場所

岡崎城の歴史や岡崎の産業・文化、城下町の暮らしを体感的に学べる展示が充実。5階の展望室からは岡崎市内を360°一望できる

明治期に取り壊される前の岡崎城を、当時の記録や証言を基に精巧に復元した大型模型

徳川家康公のへその緒(胞衣)を納めたと伝わる「胞衣塚」。赤ちゃんの健やかな成長を願う当時の風習を今に伝える

家康誕生の際に龍神が現れたと伝わる古井戸「龍の井」。出世や開運のご利益があるとされ、多くの参拝客が訪れる

徳川家康公を祀る岡崎城ゆかりの神社「龍城神社」

拝殿の天井を彩る迫力ある昇り龍の彫刻

岡崎市のシンボル、市章にも使われている龍が持つ「宝珠」

徳川家の菩提寺「大樹寺」

家康も幼少期から深く関わっていた寺で、家康公の祖先である松平家の歴代当主の墓が祀られている

室町時代後期に建立された貴重な木造建築、国重要文化財「多宝塔」

徳川将軍家歴代の位牌を安置する位牌堂となっている宝物殿

宝物殿には、家康公をはじめとする歴代将軍の等身大の位牌が安置。位牌の前には、将軍の肖像画と生没年や功績などの経歴が記されており、歴史資料としての役割も

家康は身長159cmだったと伝えられ、その姿を模した等身大の位牌は、亡き後もその権威を視覚的に後世へ伝えている

三代将軍・徳川家光が家康の33回忌にあたって奉納した木像

「ビスタライン」は、大樹寺の山門越しに岡崎城天守を一直線に望む景観のこと。

家康にまつわる歴史的建造物を結び、昔の景観を保全しながらまちの佇まいを今に伝えている

徳川家康にちなんだ、見た目も楽しいご利益パフェが「いちかわ」で話題

家康の兜をイメージしたオリジナルクッキーと、西尾産抹茶をたっぷり使ったボリューム満点のご当地パフェ

岡崎城のすぐ北側、岡崎市中心部にある町名「康生町」は、家“康”が“生”まれたことに由来している
巨大な木桶が語る、八丁味噌四百年の物語
岡崎の町を歩いていると、ふと香ばしい香りに足を止めたくなることがあります。漂ってくるのは、三河の風土が育んだ伝統の味「八丁味噌」です。
八丁味噌は岡崎市八丁町で造られています。名前の由来は、岡崎城から西へ八丁(約870メートル)離れた「八丁村」で作られたことによります。
矢作川と菅生川(乙川)に挟まれた八丁村は、水運の要所として栄えました。湿度が高く、味噌の長期熟成に適した環境で塩も手に入りやすかったため、味噌づくりに最適な土地でした。川を使った舟運によって、原料や製品の輸送も盛んに行われていました。
この地では江戸時代から続く2つの老舗味噌蔵が今も伝統製法を守り続けており、大豆と塩だけを使い、木桶で二夏二冬(2年以上)じっくりと熟成させる独特の味わいが特徴です。
味噌蔵のひとつ「カクキュー」の見学に行ってきました。見学は、当日予約なしで参加することができます(団体の場合は要予約)。
「カクキュー」の創業は江戸時代初期。今も昔ながらの製法で仕込み、石積みで重しをして熟成が行われます。円錐状に積み上げた川石が味噌に均等な圧力をかけることで、ゆっくりと時間をかけて熟成が進んでいきます。
また、今や希少となった木桶を使うのも特徴のひとつで、桶内部に住み着いた微生物たちが穏やかな発酵を促し、複雑でまろやかな旨みを与えます。
見学では、八丁味噌の歴史や製造工程、職人の使う道具などについて、ガイドの説明を交えて学ぶことができます。最後には、八丁味噌を使った味噌汁やこんにゃく田楽の試食も。
敷地内にある飲食店「岡崎カクキュー八丁村」では、味噌煮込みうどんや味噌カツなどのメニューを楽しめる他、売店ではカクキューの味噌を使ったおみやげも購入可能。味噌パウダーを使ったソフトクリームは、クリーミーさの中にしっかりと味噌の風味が感じられる、ここならではのユニークなスイーツでした。
そんな八丁味噌をじっくり味わいたくて、グルメ巡りに出かけることにしました。その様子は、次の章でご紹介します。
カクキュー八丁味噌(八丁味噌の郷)
住所 | : | 愛知県岡崎市八丁町69 |
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電話 | : | 0564-21-1355 |
営業時間 | : | 10:00~16:00(見学) 9:00~17:00(売店) |
見学スタート時間 | : | (平日)毎時00分(土日祝)毎時00分・30分 ※12:30の回は当日店頭でお確かめください。 ◎お盆と年末年始のご見学はホームページのお知らせをご覧ください。 |
定休日 | : | 12月31日、1月1日、1月2日 |
URL | : | https://www.kakukyu.jp/ |

創業300年を超える味噌蔵が並ぶ「八丁味噌通り」は、岡崎の食文化を体感できる歴史散歩道

八丁味噌で知られるカクキュー(合資会社八丁味噌)、国の登録有形文化財に登録された本社事務所と史料館を持つ

カクキュー直営の食事処「岡崎カクキュー八丁村」では、八丁味噌をたっぷり使ったグルメが楽しめる

岡崎城から八丁(約870m)離れた場所でつくられ始めたことから、「八丁味噌」と呼ばれるようになった。矢作川と菅生川に挟まれたその土地は湿気が多く、味噌の熟成に適していた

旧国鉄時代に岡崎駅に掲げられていた看板。矢作橋で出会った豊臣秀吉(日吉丸)と蜂須賀小六正勝の逸話が描かれている

当時実際に働いていた職人をモデルにした等身大人形を使い、八丁味噌づくりの歴史と工程がリアルに再現されている

伝統の味と品質を守るため、八丁味噌づくりには木桶が欠かせない。見学では実際に使われている木桶を間近で見ることができ、味噌の熟成中ならではの深い香りも体感できる

江戸時代から続く蔵元ならではの古文書や資料展示も

二夏二冬(味噌を最低2年以上)かけて、静かに眠るようにじっくりと熟成を重ねる木桶が並ぶ、厳かな雰囲気の蔵の中

木桶の上に川石を円錐状に積み、重石とすることで、味噌はじっくりと熟成されていく

見学は予約不要で自由に参加でき(団体は要予約)、最後には八丁味噌の試食も楽しめる

八丁味噌のパウダーがふんわりとかかった味噌ソフトクリームは、クリームのまろやかさと味噌のコクが絶妙に溶け合う
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