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西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
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前編はこちら
リゾートしらかみに乗って移り変わる青森の景色を堪能する。
行きにくいからこそ惹かれる場所ってあると思うのです。今時、世界中どんな場所でもインターネットで見ることが出来るし、車を使えばどんな秘境だって行けてしまう。でもあえてローカル線とバスで行ってみようよ!というのが私の旅のスタイルです。
前日にアプリで確認しておいた電車を目指し弘前駅へ向かうと、「津軽弁」という駅弁コーナー。旅の前から気になっていたご当地お稲荷さんは…、あった!確か第1回旅でも食べたような気がする「お稲荷さん」ですが(笑)、青森のお稲荷さんは「ピンク色」というちょっと想像を超えた話を聞いていたので、実食!実食!
さて今回乗った電車は日本海の海岸線を走る五能線「リゾートしらかみ」。この電車に乗るために青森旅を計画するという方も多く、この日も飛行機で青森まで来てそこからこの電車に乗るためにやってきたという一人旅の方にも会いました。この電車、存分に景色を楽しめるように自席以外に窓の方を向いて座ることが出来る共用スペースも準備されています。スイッチバックしたかと思うと左右りんご畑に囲まれ、今度はぶどう畑、そしてお次は延々と広がる津軽平野の田園風景…と景色を見るのに忙しい(汗)。帰りに乗った新型車両ではバーカウンターの席やボックス席までありました。レンタカーで時間短縮の旅をするのもいいけれど、色んな乗り物を体験するのもまた旅好きにはたまらない時間ですね。
ここからは電車旅!弘前駅を出発してまずは五所川原まで行きますよ!
「リゾートしらかみ・くまげら」でプチトリップ気分です♪
共用スペースは窓に対面でき、また正面も開放的で列車旅を存分に楽しめます。
席はすべて指定席です。
弘前駅では「津軽弁」売ってましたー。
「津軽のおいなりさん」は2個で290円。お手軽価格ですね。
早速電車の中で広げてみる。おお!ピンク。やっぱりピンクだ。食感は道明寺のようなモチモチ。色付けされたもち米ごはんなのです。甘じょっぱくて生姜が効いたおいなりさんでした。
帰りの「リゾートしらかみ・橅(ブナ)」。4両編成。
ボックス席はグループ旅行に楽しそおぅぅぅ!プライベート空間を確保できそうです。この日も老若男女様々なグループの方が利用されていました。
1両をそのまんまバーになっている「おらほ(私たちの地域の)カウンター」。りんごジュース片手にしばし休憩。地元のグルメやお酒だけでなくお土産品なども充実。
りんご畑の中に単線って素敵です。
窓が大きく景色を堪能。広ーい平野が続きます。
千本鳥居の「高山稲荷神社」でフォトジェニックな一枚を。
「高山稲荷神社」は潮が荒い日本海に近く、防砂林として植えられた松林の中にどっしりと構えた本殿が厳かな神社です。広がる庭園に龍の如く曲線を描く赤い鳥居が現れると別世界へと誘われ、摂社末社やずらりと並ぶお狐さまにも歴史の重みを感じます。その風景はとても美しいものでした。
近年じわじわと人気が出ている神社ですが、この日は人も少なく幻想的な風景を独り占めできました。海が近いため海上交通安全や海の鎮めのお参りの方が多く、地域の守り神として崇敬されています。稲荷神社が創建される前に、すでにその前身であった「三王(山王)神社」が祀られていたとされ、その時代は鎌倉時代まで遡ります。歴史的な重厚感もありながらもファンタジックな風景がみられるということで、今注目のスポットです。
さて、神社まで向かう途中、五所川原駅に到着しました。
駅前の古い建物には、国鉄時代の動輪マークが残っていましたよ。
ここからはバスに乗り換え。弘南バス乗り場で往復切符を買ったら少し割引になりました。
本数が少ないので乗り遅れに気を付けて。縦書き漢数字が雰囲気あります。「高山神社入口」までバスに乗ったらそこからはタクシー5分。
高山神社入口バス停です。帰りもここから五所川原までバスに乗ります。
そして大きな鳥居の「高山稲荷神社」へ着いた。やっと着きましたー!
96段の階段を登って本殿へお参りです。
日本海から吹く強い風のため曲がった松の木。木々の間から見えるお狐さんには誰かがかぶせた手ぬぐいが。
立派な拝殿ですね。奉献された灯篭が沢山立ち並びます。
ごぼう締めのしめ縄。五穀豊穣や商売繁盛、また海の守り神として崇められています。
龍の彫刻が施されています。中ではご祈祷などが行われます。古くから特別な場所であり「三王神社」があった場所です。
両側には大きなお狐さんがいます。片方は古来より神聖なものとされている「玉」をくわえており、
もう片側は「鍵」をくわえています。様々な由来がありますが、この「玉と鍵」は花火が上がる時の「たまや~」「かぎや~」の掛け声(屋号)になったとも言われています。
拝殿の中からは本殿が見えました。
格天井には四季の花々。お参りにいらっしゃる方だけでなく神様にも美しいものを見ていただきたいと、京都の宮絵師である安川如風氏によって317枚の花鳥が描かれました。
拝殿、本殿の背後にはもともとこの地に祀られていた「三王神社」があります。こちらも必ずお参りしたいお宮です。
象と獅子、でしょうか。三王神社にもしっかりと彫刻が刻まれていました。海も近く強い潮風が吹く場所ですが、再建されつつも大事に保存されています。
千本鳥居へやってきました。ここが今大人気のスポットなんです。
展望できる場所へ登ってみると、細長い庭に龍のように配置された千本鳥居。エネルギーありますね!
お稲荷さんがずらりと並ぶ景色。
蓮池にかかる太鼓橋を渡ると「龍神宮」。水の神様です。季節によっては桜の景色。神社から日本海までは5~10分。波の荒い領域であることから、海の仕事をする人たちはここへお参りして安全を祈願していたのかもしれません。
千本鳥居は巨大な龍の胴体と考えると、ここはちょうど龍の頭ということにもなります。お参りはもちろんですが、このお庭の散策は心が洗われるようなすがすがしい気持ちになれます。
五所川原でボリューミーなハンバーグはいかが?「珈琲詩人」。
高山稲荷神社からバスで五所川原駅まで戻ってきたらお昼時。地元でも人気があるという、コーヒーとお食事の店「珈琲詩人」でランチをしました。2階建ての広い店内で、中央部分が吹き抜けになり日差しが柔らかに差し込む気持ちの良いお店です。階を分けて分煙されていますし、静かなBGMがかかる店内でゆっくりと時間を過ごすことが出来ます。五所川原で40年の歴史があります。
人気メニューのハンバーグはデミグラスソースか和風ソースをチョイスできます。ハンバーグセットにはメインかと思えるほどのたっぷりのサラダ、カップのスープとごはんがついてきます。ハンバーグにはくるんと巻かれたベーコン。燻製の香りが良く、食欲に火がついて次、次とハンバーグを運ぶ一口を誘います。デミグラスソースは酸味が強めで野菜の味がしっかりします。合い挽きのハンバーグは豚肉が多めでジューシーな食感。足りなくなった場合のソースも運ばれてくるほどに、大きなハンバーグです。
自家焙煎のコーヒーも人気とのこと。元々はジャズセッションなども行われていたようで、店内の真ん中にあるピアノとベースが雰囲気ありました。地元の学生らしき可愛い女性が働いていて柔らかい接客。いつまでも地元で愛されるお店でいてほしいです。
バスの時間に合わせバス停へ戻り、そこから1時間かけて五所川原まで戻ってきました。五所川原ではまずランチ!「珈琲詩人」に入店です。
店内中央が吹き抜けになっているためとても広々と感じます。ピアノやベースが置いてあります。ジャズライブが出来ますね。
2階の様子。階を分けて分煙されています。どの席も日差しが明るく気持ちのいい店内です。
注文したのは人気のハンバーグ。サラダもたっぷり、カップスープと追加のソース付です。
ハンバーグの胴回りには香り高いベーコン。酸味があるソースで想像したよりもさっぱりとしています。
自家焙煎コーヒーも人気。静かな席もありますのでゆっくりできそうでした。
駅から5分ほどの場所。角にあるのでわかりやすいですよ!
立佞武多の館で見上げる!ド迫力のねぷたに感動。
青森県の夏祭り「ねぶた」については詳しく知りませんでした。しかし今回、ちょうど訪問した時期がねぶたの準備の真っ最中であったことからも、市民のねぶた熱の高まりを感じずにはいられないシーンに沢山遭遇しました。青森県には様々な「ねぶた」「ねぷた」があり、立佞武多は五所川原市独特の縦に長いスタイルで、ビルの6階建てにも7階建てにも相当する高さだと言います。
1年に1度、毎年夏に行われるお祭りに使われる立佞武多は、五所川原駅前の「立佞武多の館」で一年中見ることが可能です。館内へ入ると暗く照明が落とされています。
そこで突然ねぷたの中に仕込まれた電気がカッと点きました。その鮮やかなこと~!威勢が良く勇壮で、目の前に迫ってくるさまは3Dメガネをかけているかと思うほどの立体感。動いていなくても感じるのですから、これがお祭りの時だったらどれほどの盛り上がりなのでしょう!モチーフも妖艶だったり気迫あふれるものだったりと、惹き付けられる図柄ばかりでした。日本の文化を直に感じることができ、お祭りの世界に引き込まれる必見のスポットです。
珈琲詩人からもすぐの「立佞武多の館」。周囲の建物に比べてひときわ高い!中は吹き抜けで20mを超えるねぷたが設置されています。
五所川原市内にはねぷた見物の観覧席の準備が始まっていました。街は祭りに向けて盛り上がっていました。
駅前にもねぷたを組み上げる倉庫らしきものが。ここで作るのはいいけれど、どうやって一番上までのぼるのだ…?
さて早速五所川原のねぷたとご対面。おおっ大きいー!
大きいだけではありません。その繊細な絵、立体感。威勢や艶っぽさを感じる表情、躍動感。立体的なので同じねぷたでも見る方向から表情が変わります。これは歌舞伎の祖と言われる「出雲阿国」が題材。
ビルの上階から壁づたいにらせん状の通路を下がりながら見物します。上から、横から、下からといろんな角度で眺めることが出来ます。
やはりこうして見ると高い!「雲漢」と書かれているのは中国語で「天の川」の意味。ねぷたは夏のお祭りですから、こうした言葉が書かれているそうです。
大変細かい…!分担して書くということなのですが、それにしてもとても繊細。そして艶があって漆でも塗っているかのようです。
巨大な創作物なのにそのひとつひとつの絵は緻密という、デザイン的にも技術的にも大変クオリティが高い。モチーフを重ねて独特な立体感を生み出し、飛び出してくるような迫力を生み出しています。
波や水しぶきのような無作為・無秩序な形を持つものまで、木骨でこんな風に表現しているんですよぉ。すごいなあ。
こんな穏やかな表情のものもありました。躍動と静寂、なのでしょうか。
こちらの金魚ねぷたは子供たちが手に持って行列します。「立佞武多の館」は30分くらいあれば見て回れます。
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