今回はそんな新潟県の、下越地方を巡る癒しの旅。公共交通機関やレンタサイクルを使った、心も体もリフレッシュできる旅を紹介します。

西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。

9:00 新潟駅到着。レンタサイクルを借りて萬代橋へ
新潟市半日観光はレンタサイクルで。新潟駅万代口から徒歩数分にある「石宮駐輪場」で自転車をレンタル。信濃川にかかる「萬代橋」を通り、白山神社を目指します。万代橋は昭和初期に造られた三代目。橋のたもとには工法や歴史などを記した様々な看板や碑が建てられていました。

新潟駅前で自転車を借りて、最初に目指すのは「萬代橋」です。

レンタサイクルは、新潟駅万代口から徒歩数分、「石宮公園地下自転車駐車場」で借りられます。初回にかかる登録料200円を支払い、6時間レンタルで300円、それ以上は1時間ごとに100円がかかります。

萬代橋よりもずっと手前(駅方面)にかつての萬代橋の親柱が立っていました。昔の萬代橋は今よりも長く川幅も広かったため、かつては親柱が立っているところから橋が始まっていたそうです。

萬代橋です。現在は三代目の橋で、そのデザイン性や建設当時の構造技術が優れていることなどから、国の重要文化財に指定されています。

信濃川にかかる6連アーチの美しい橋です。川沿いには「やすらぎ堤」遊歩道が整備されており、橋の構造やデザイン、橋全体に施された花崗岩などをじっくり下から眺めることもできます。

萬代橋はかつての照明灯が復元され、等間隔に付けられていました。また欄干にはLED照明がつけられ、夜のライトアップも行われています。夜のとばりが下りて信濃川にリフレクションする姿もまた、新潟の象徴的な橋であることを印象付けることでしょおう。
にいがたレンタサイクル 石宮公園地下自転車駐車場 | ||
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住所 | : | 新潟市中央区弁天1-1-20 |
電話 | : | 025-249-1480 |
web | : | http://www.niigata-sbp.com/ |
9:30 白山神社へ到着。心を落ち着け、旅とのご縁と無事を祈る
「白山神社」は新潟市中央区・白山公園内にある歴史ある神社で、新潟県を代表する神社のひとつ。商売繁盛や金運アップ、子宝・安産など様々なご利益を求めて多くの人が訪れます。
主祭神に名を連ねる「菊理媛大神(ククリヒメノオオカミ)」は、人の縁を結ぶ(くくる)力を持っています。健康や仕事、家族や友情など全てのご縁を結んでくれる神様です。また、男女の仲を取り持ってほしいと、恋愛成就や夫婦円満を願うためにお参りする人も多い神社です。
恋愛結びを祈願したハートの絵馬が飾られている絵馬掛所の上からは、かわいいうさぎファミリーがこちらを見ていました。

萬代橋を後にして、「白山神社」に向かいます。新潟県を代表する神社のひとつです。

新潟は例年になく雪が少ない冬でした。この日は快晴でした。

参道の奥には随神門があり、ここをくぐると本殿が現れます。

白山神社本殿の主祭神は菊理媛大神、伊邪那岐命、伊邪那美命。菊理媛大神は、「括り(ククリ)」と解釈されることが多く、また、日本の歴史書「日本書紀」の中で菊理媛大神は伊邪那岐命、伊邪那美命夫婦を仲直りさせたとされており、縁結びの神様と言われています。

菊理媛大神は、別名「白山比咩大神」と言い、この霊峰白山を守る神を新潟にも勧請して祀られました。境内内にある「白山くくり石」は白山から切り出した石を通して白山の力を頂戴するというものです。この石の前で手を合わせ、また石に手を当てて、白山のパワーを石から感じてみるのはいかがでしょうか。

ハートの絵馬をくくる絵馬掛けの上にはかわいいうさぎの家族がいます。縁結び、家庭円満を祈願して記念に撮影をして帰る人の姿をよく見ました。
白山神社 | ||
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住所 | : | 新潟県新潟市中央区一番堀通町1-1 |
電話 | : | 025-228-2963 |
web | : | http://www.niigatahakusanjinja.or.jp/ |
10:00 白山公園をぶらり散策
白山神社もある白山公園は、明治初期に国が制定して造った日本で最初の公園のひとつ。「人口も多く、景勝地で、人々が多く集まる場所」に作るようにとの布告で新潟にも造ることを許され、国立市民公園「白山公園」が生まれました。
北前船で栄えた豪商・齋藤家の邸宅の一部で、公園内に移築された「燕喜館」は無料で公開されています。
白山公園を整備した「楠本正隆」像、飼い主を2度も助けた「忠犬タマ公」像、梅林や噴水や橋が架かる池などの見どころがあり、自然いっぱいで、訪れる人誰もが憩える公園です。

白山公園は白山神社があった境内地を明治6年、国の公文書により整えられた公園です。

日本初の国立市民公園を作ったのは、新潟県令(現在の県知事)として赴任していた楠本正隆で、公園内に銅像もあります。

「忠犬タマ公」銅像もあります。タマ公は飼い主を雪崩から2度も救った犬ということで、新潟ではハチ公よりタマ公が有名です。新潟駅構内にもタマ公銅像がありますので探してみてくださいね。

白山公園内には豪商であった旧齋藤家が残した邸宅の一部「燕喜館」があります。こちらは無料で見学できます。

つやつやの廊下。こちらは主に客人を迎えるために使われていた建物で、元の家はこの5倍くらいあったとか。

3つの間がつながりながら奥に行くほど格式が高くなる「奥座敷」。今では手に入らないような高級な木材が使われていて、格調高い空間です。
白山公園 | ||
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住所 | : | 新潟県新潟市中央区一番堀通町1-2 |
web | : | https://niigata-kankou.or.jp/spot/16002 |
11:00 古町のカフェ「パルム」でスープとパンのランチ
新潟・古町は商店街や多くの飲食店が並ぶエリア。広くは白山神社なども含めて古町と呼ぶ場合もあります。
商店街を自転車で通りがかると、ふと目に留まったのは小さな看板。その先には細い路地が伸びており、お店はさらに階段を上がった2階にありました。
このお店の名前は「パルム」。この地で45年間営業を続けている、素敵なマダムがオーナーの喫茶店です。暖色の照明があたたかな空間を演出し、あめ色の革張りの椅子や余裕を感じさせる大きなテーブルが、良質な雰囲気をかもし出しています。
ブレンドコーヒーは酸味があるタイプと苦みがあるタイプの2種類。ランチはスープとサンドイッチのセットランチやカレーなどがあります。
店内は70年代から続いてきたことを感じさせる懐かしい雰囲気で、きっと誰もが穏やかな時間を過ごせることでしょう。純喫茶やレトロなお店が好きな方たちにはたまらない空間なはず。

新潟・古町で素敵な喫茶店を見つけました。Kaffaパルム。路地を入り階段を上ったところにある老舗です。

入った瞬間に時間の流れがゆっくりと穏やかになるような、あめ色の空間。使い込まれたカウンターには歴史の中のいくつものストーリーが感じられるような雰囲気があります。

コーヒー専門店としてスタートしたお店でしたが、ランチへのニーズを感じ、提供を始めたそうです。それ以来コーヒーを楽しみに来る常連さんとは別に、ランチ目当てのお客さんが増えたとのこと。

定番ランチ「スープと玄米パンサンドのランチ」は、ふわっとして食べやすい玄米パンにおかずを挟んだサンドイッチと、野菜たっぷりのミネストローネがついたメニュー。他に小さなサラダとコーヒーまでついて750円と、とってもお得で美味なランチでした。

白山神社に続き、ここでも心の癒しを感じられるようなくつろぎの時間を過ごせました。旅先での「ほっとできる時間」がとても貴重。

夜も21時まで営業とは嬉しい。次回の新潟でも絶対行こう。
KAFFAパルム | ||
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住所 | : | 新潟県新潟市中央区古町通6番町987 ミサワビル2F |
電話 | : | 025-228-2050 |
営業時間 | : | 9:30~21:00(但し水曜日は~16:00まで) |
13:30 五頭温泉郷村杉温泉無料送迎バスに乗車。瓢湖へ立ち寄りハクチョウ観察
この日のお宿は五頭温泉郷村杉温泉。今回宿泊した「長生館」は新潟駅前から無料送迎付き。例えば雪の季節でも、不慣れな雪道を運転しなくて良いというのはうれしいですね。しかも途中通過する「瓢湖」にハクチョウが飛来する季節は、この送迎バスで立ち寄ってくれるサービスがあります。立ち寄りを含め新潟駅から長生館までは60分ほどと、市内からも近い温泉です。
新潟・越後平野は「ハクチョウの飛来数日本一」を誇ります。ハクチョウは敵に狙われないように広大な平野(田んぼ)や湖、沼などに降り立つ鳥。瓢湖はそんなハクチョウにとって暮らしやすい湖なのです。
瓢湖はラムサール条約登録湿地で、天然記念物、鳥獣保護区にも指定され、国をあげて野鳥の保護を行っています。野鳥にとって自然豊かで安全な寝床です。
越冬してきたハクチョウは3月下旬くらいまでここに留まり、またシベリアへと戻っていきます。瓢湖は日本で初めて野生のハクチョウに餌付けを成功させた湖で、ハクチョウたちが餌をもらう姿は度々ニュースなどでも取り上げられる、この季節の風物詩となっています。
ぷかぷかと湖に浮かぶハクチョウはとてもかわいく、人慣れしています。他にも鴨だけでも十数種類、またカモメやサギなど多くの野鳥が湖一面に浮かぶ、圧巻の風景が見られます。
また、瓢湖の見どころは野鳥だけではありません。春にはレンギョウや桜並木、初夏から夏にかけてはあやめやハスなど、次々に湖畔を色づかせる花々が咲き乱れる、一年を通して楽しめる湖なのです。

新潟駅へ戻り、この日の宿「村杉温泉長生館」の無料送迎バスに乗ります。新潟駅南口のロータリーに迎えに来てくれます。

温泉街へ行く前に、ハクチョウの飛来地である「瓢湖」へ立ち寄ってくれます。みんなこれがお目当てのひとつでもあります。

瓢湖は多い年では1万羽ものハクチョウが飛来する湖です。人口湖ではありますが、渡り鳥たちの安全な寝床で、かつ餌場でもあり、多くの野鳥が羽を休めています。

鴨はマガモやカルガモ、キンクロハジロなど十数種類が飛来すると言われています。

昼間は鴨がほとんどで、雪がない季節、ハクチョウは近隣の田んぼで食事をしています。夕方になると戻ってきます。

夕方近く、ハクチョウが次々と瓢湖に戻ってきました。餌付けに成功している瓢湖では決まった時間に餌やりがあるのですが、この日はありませんでした。

野生なのにわりと近くまで近づいてくるハクチョウたち。やはり瓢湖のハクチョウはとても人慣れしていると感じます。
瓢湖 | ||
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住所 | : | 新潟県阿賀野市水原313-1 |
web | : | https://niigata-kankou.or.jp/spot/10803 |
14:30 レンタサイクルで「やすだ瓦ロード」「ヤスダヨーグルト」へ
長生館へ到着したら荷物を置いて、さっそく近隣散策へ出かけました。
宿から徒歩5分の「五頭山麓うららの森」は物産の即売所やレストラン、観光案内所を併設した施設。真っ白ですべすべの肌をしたネギや形の良い白菜が安く売られていて、目が釘づけになってしまいました…。ここでレンタサイクルを借りて気になるスポットを目指します。
今回のコースは、とろりとしたヨーグルトで人気の「ヤスダヨーグルト」本社工場とショップがある安田地区まで行ってまた戻ってくるコース。
安田地区は古くから瓦の産地として発展した街で、かつては数十軒の瓦工場が並ぶ場所でした。しかし時代の流れにより瓦が家に使われなくなってきた昨今、瓦の製法はそのままに、アート作品や暮らしの中で使う小物を作る工房も増えてきています。そんな瓦アートを道路脇や各スポットに展示しているのが「やすだ瓦ロード」です。
漆喰に瓦を練り込んで模様にしたり、瓦を積み上げたりと様々な工夫がされたオブジェが展示されています。
特に目がいったのは、壁の上に置かれたかわいい猫のオブジェ。まるで生きているかのような猫のしぐさをそのまま捉えた作品です。実は午前中に立ち寄った白山神社のうさぎの家族も同様に、「村秀鬼瓦工房」の作品でした。村秀鬼瓦工房は名前のとおり、安田瓦の「鬼瓦」を製造する会社。小鬼たちや動物たちの瓦オブジェは鬼瓦の製法で作られており、とても人気の商品なのだそうです。
やすだ瓦ロードには、そのほかにも瓦のモニュメントや総瓦のバス停、休憩どころ「瓦テラス」などがあり、サイクリングしながら目にしたりカジュアルに瓦に触れたりすることができる楽しい道でした。
そしていよいよ「ヤスダヨーグルト」本社工場へ到着です。安田地区は新潟県の酪農発祥の場所です。
ヤスダヨーグルトは、豊かな自然ときれいな水で育った乳牛の生乳を使い、製品づくりの研究を重ねることで独特な濃厚さを持つ美味しい乳製品を作っている会社です。予約をすれば工場見学もできますし、工場横の乳製品を使った様々な商品を扱うショップでお買い物もできます。
新潟県内でしか食べられないスイーツが並ぶ魅力的なショップにはイートインもあって、その場で食べることも可能。ギフトの地方発送もしてもらえますよ。

五頭温泉郷 村杉温泉 風雅の宿 長生館へと到着。荷物を置いたら早速レンタサイクルで安田地区へと向かいます。

宿から歩いて行ける「五頭山麓 うららの森」へ。

うららの森には阿賀野市で育った野菜を購入できる「ゆうきふれあい即売所」があります。阿賀野市は早くから野菜作りに有機栽培で取り組んだ地域。新鮮で立派な野菜がなんともお安く手に入っちゃいます!

お土産屋さんやカフェレストランもあります。

うららの森にある「情報発信館」に申し出ればレンタサイクルを借りられます。

今回のお目当ては「ヤスダヨーグルト」のショップ。ヤスダヨーグルトへ向かう途中「やすだ瓦ロード」を通りました。

瓦の産地でもある安田地区。やすだ瓦ロードには瓦工場が並ぶ傍らに様々な瓦アートが展示されています。

「村秀鬼瓦工房」にある小鬼や猫のオブジェたちは本当にユーモラスで愛くるしいです。

丸三安田瓦工業の前にある、瓦でできた珍しいバス停。安田瓦の鉄色瓦と赤瓦を組み合わせて工夫がなされています。

やすだ瓦ロードの拠点として整備された「瓦テラス」にも立ち寄りました。

若い人でも立ち寄りやすい、すっきりとした外観。おしゃれなカフェスタイルです。広い駐車場もあります。

圧巻なのは建物裏側。傾斜をつけて瓦をより近くで見られるようになっています。屋根を真横から見る経験ってあまりないので、不思議な感覚になります。

瓦テラスの目の前には「安田瓦協同組合」があり、無料で入れる瓦の野外展示があります。

ここでは安田瓦について学べると共に瓦の販売なども行っているそうです。

さてようやく到着!「ヤスダヨーグルト」本社敷地内にあるショップへゴー。

店内にはおなじみのヤスダヨーグルトが販売されています。

ヤスダヨーグルトで使われている種菌を使いパンや焼き菓子を作っている「ベーカリーレーチェ」のケーキを購入。発酵バターの風味の、香ばしく焼かれたベイクドヨーグルトケーキです。
16:45 村杉温泉長生館で温泉と食事を楽しむ
この宿がある村杉温泉の泉質は「放射能泉」。万病に効くとも言われる“ラドン”を含む「天然ラジウム温泉」です。温泉に浸かりラドンを含んだ湯気を吸いこんだり肌から取り込んだりすることで、体内の器官が活性化され身体を整えやすくなると報告されています。
広い敷地の中に23室と離れが2つと言う贅沢な空間の使い方。館内も玄関やロビーが広く取ってあり、お部屋の広さも十分です。
ラウンジからは錦鯉が泳ぐ美しいお庭が見え、散策できるようになっています。客室全てが庭園ビューで、宿自慢のお庭です。そんなお庭の散策は朝の気持ちの良い時間にすることにして、この日は夕食とお風呂を楽しむことにしました。
夜の食事は和食懐石のコース仕立てでした。料理長は東京で誰もが知る有名料亭で修業なさった方で、丁寧な仕事が施された料理が並びます。のどぐろ、越前ガニ、新潟黒毛和牛など、この地域のごちそうの数々を味わいました。

安田地区散策を終えて宿へと戻りました。

この日のお部屋。広々とした純和室。床の間にはスタッフ皆さんで毎日準備するという、きれいなお花が活けてありました。

長生館にある23部屋と離れの2つは全て庭に面しており、四季折々の和風庭園を楽しむことができるようになっています。

長生館の名物のひとつである夕食。個室で用意していただきました。

日本を代表する有名料亭で修業した料理長が作る会席料理。新潟の新鮮な魚介類やのどぐろ、和牛、ずわい蟹などを入れ込んだ豪華な料理でした。

冬季の特別メニュー「ずわい蟹」。殻にぎっしりと詰まった身が甘くてみずみずしいずわい蟹、たまりません!

脂のノリの良いのどぐろ。日本海の幸を満喫しました。
五頭温泉郷 風雅の宿 長生館 | ||
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住所 | : | 新潟県阿賀野市村杉4632 |
電話 | : | 0250-66-2111 |
web | : | https://www.chouseikan.co.jp/ |
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