旅を愛し、旅から得るインスピレーションを仕事に活かしていく各界のプロフェッショナルが集い、経験を共有するトークイベント『THE ART OF TRAVEL〜旅が我らを進化させる〜』が2017年8月下旬に開催された。企画・モデレーターを務めたのは、株式会社HEART CATCHの代表としてベンチャー企業のサポートなどを行うかたわら、テクノロジー・エンターテイメントの最新情報を発信するメディア「SENSORS.jp」の編集長も務める実業家・西村真里子さん。

『進め!電波少年』の企画も、旅の経験をヒントに生まれた」(土屋)

トークセッションの第2部は、「Media / Startup Executives Travel Talk」と題され、各メディアで活躍するキーマンや、ベンチャー企業の代表といったメンバーが集った。次の時代を切り開くエネルギーに満ちた彼らが実践してきたのは、破天荒とも思える旅のスタイルだ。その対話からは、旅が本来持ちうるバイタリティー、そしてアイデアの源泉としての旅路というあり方が見えてくる。

土屋敏男

大人気番組『進め!電波少年』などで知られる日本テレビのプロデューサー。

田邊浩介

NHKエンタープライズで、「8K:VRプロジェクト」や、NHK WORLDのプロモーション企画「DJ Domo」を展開。

清水俊宏

フジテレビ勤務。ニュースメディア「ホウドウキョク」の運営責任者。

網盛一郎

筋肉の動きを測るセンサーが衣服に一体化したスマートアパレル「e-skin」を開発中のベンチャー企業・Xenoma代表。

土屋:日本テレビの『進め!電波少年』で1996年から放送した、お笑いコンビ・猿岩石の「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」は、かつての自分の旅の経験がヒントになっているんです。1990年に東西ドイツロケでヨーロッパに行ったとき、ひとりでパリに泊まったんですが、ホテルの目の前で怪しいイタリア人に出会いまして。イタリアに帰る旅費が欲しいから、ここにあるアルマーニのスーツを買ってくれというんですね。

画像: 日本テレビの土屋敏男さん

日本テレビの土屋敏男さん

土屋:普段はそんなことで騙されたりしないんですが、なぜかそのときは一瞬その気になりまして(笑)。ハッとわれに返って断ったんですが、ふと、旅ってこういうことが面白いな、テレビでやったらどうなるだろう、と思ったんですね。それが猿岩石の企画につながったんです。

清水:ぼくはまさに『電波少年』の影響を受けた世代でして。学生のときに2か月半くらいかけて、横浜からイスタンブールまで、飛行機を使わない旅をしたこともあります。いちばんお金がかかったのが、横浜から下関への新幹線の移動でしたね(笑)。

画像: フジテレビの清水俊宏さん

フジテレビの清水俊宏さん

網盛:ぼくも『電波少年』世代そのものです。もう、大好きでずっと見てました。

土屋:かつては作家の沢木耕太郎さんなどが、旅をめぐる刺激的なコンテンツの代表的な存在でしたよね(バックパッカーを主人公にした紀行小説『深夜特急』シリーズなど)。その後、そうしたコンテンツが世の中に少なくなっているのでは、という思いゆえの『電波少年』でもあったんです。

「バックパッカー時代の危険な旅も、いまは良い経験だったと思う」(田邊)

田邊:最近はNHKのキャラクター「どーもくん」のDJショー「DJ Domo」を展開するうえで海外に出ることが多いんですが、もともと学生時代はバックパッカーとして世界を旅していたんです。アメリカのビート文学の金字塔『路上』の著者、ジャック・ケルアックが好きで。バックパッカーとしてのひとり旅は社会人になったいまから考えても、よい経験をしたなと思います。

画像: NHKエンタープライズの田邊浩介さん

NHKエンタープライズの田邊浩介さん

清水:自分も学生時代、フジテレビに内定をもらった次の日にはメキシコに飛んでいました。履修登録のために一瞬だけ日本に戻ってきて、また南米に出かけて、今度はゼミの発表やテストのために帰ってきて……。テレビ局員は忙しいというイメージがあったからの行動だったんですが、入社2年目には14日間の休みをとって、徹夜で仕事をして朝に成田へ、そこから旅をして朝に成田に戻ってきて、そのまま出社してまた徹夜で仕事、というようなことをしていました(笑)。

西村:ハードですね(笑)。

清水:インドなども含めて本当にいろんなところに行って……ベネズエラでは崖沿いの道を歩いていたら、強盗に襲われたことも。腕時計のBABY-Gは奪われましたが、手元にあった40ドルは死守しましたよ(笑)。

画像: 「バックパッカー時代の危険な旅も、いまは良い経験だったと思う」(田邊)

田邊:ぼくはバックパッカー時代に、世界有数の危険な街といわれていたジャマイカのキングストンに行ったこともあります。レゲエが好きだったこともあって、「そんなに危険でもないだろう」と思って向かったら……その頃はギャングばかりで本当に危なかったです(笑)。でもそれも、いい経験ですね。

「中国は、スタートアップへの注目度が最も熱い場所のひとつ」(網盛)

西村:皆さんいろんなところに行かれていますよね。私が網盛さんと知り合ったのは、毎年ラスベガスで開催される世界最大級の家電見本市『CES(Consumer Electronics Show)』の会場でしたよね。

画像: 株式会社Xenomaの網盛一郎さん。自社で開発した、筋肉の動きを測るセンサーが衣服に一体化したスマートアパレル「e-skin」を着用中

株式会社Xenomaの網盛一郎さん。自社で開発した、筋肉の動きを測るセンサーが衣服に一体化したスマートアパレル「e-skin」を着用中

網盛:そうでしたね。世界中で展示をしていると、ヨーロッパはすごく保守的だなとか、中国はいま、本当にテクノロジー系のギークが多くて反応がいい、とかいうことが見えてきます。上海で大きな展示会が終わって会場の外を歩いていると、「お前のところの製品が気に入った」などといいながら、ビジネスということではなく、普通の若いお兄ちゃんが話しかけてきてくれたりするんです。ベンチャー企業に対する見方がいま、最も熱い場所のひとつが中国かもしれません。

「旅は人とつながることも、つながらないこともできる貴重な時間」(清水)

土屋:旅をしていると、各地で発見がありますよね。ぼくは外国の「なんでもない風景」が印象に残ります。フランスの田舎町で、子どもと買い物に出ているお母さんとか。それは、日本で見る「なんでもない風景」とは、やはり少し異なるものなんですよね。

田邊:ぼくは旅に出る前には、地図をじっくり眺めるんです。いまは検索などで何でもすぐに調べられてしまいますが、そうではなく地図から「ここが街の中心地なんだな」「ここが面白そうだな」「ここは少し危なそうだな」とか、想像や妄想を広げて、それを現地で実際に確認するのが楽しい。こうした感覚は、仕事の企画を立てるときにも似ている気がします。

登壇者の皆さん

清水:ぼくはひとり旅が好きなんです。友だちがいると、何かを見たり、食べたりしても、「綺麗だね」とか「美味しいね」とか、その場で意見を交換しなければいけませんよね。そうではなくて、言語化する必要がなく、純粋に感動が心に刺さった状態、というのも大事だと思うんです。また、ひとりなら、自分の気持ちにとことんワガママに行動できる。そんな時間って、大人になってしまうとなかなかないと思うんです。

ひとり旅なら、現地の人とコミュニケーションをとるチャンスも増えます。人とつながらない経験、つながる経験、その両方を、海外でも日本国内でも、体験してみるのはどうでしょうか。

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

This article is a sponsored article by
''.