東京とハワイの2か所に仕事・生活の拠点を持つ「デュアルライフ」を実践している本田直之氏。1年のうち5か月をハワイ、3か月を東京で過ごし、あとの4か月は日本の地方や、ヨーロッパ、アジア各国を回っている。ベンチャー企業への投資育成を行う会社を経営する傍ら、執筆活動も精力的に行う実業家だ。
多くのビジネスマンに支持された「レバレッジシリーズ」をはじめとするビジネス書や、60か国以上を訪れた経験をもとに、海外で活躍する日本人シェフを紹介したり、ハワイでの過ごし方を指南したりする書籍も好評。著書累計は300万部を突破している。「旅は人生であり、ライフスタイル」と語る本田氏が見出してきた、旅を成功させる秘訣について聞いた。
文:笹林司 写真:西田香織

旅する理由は「好奇心」。新しいインプットを自分のなかに蓄積していく

OnTrip JAL編集部(以下、JAL):これまで訪れた国は60か国以上、都市にすると2百数十都市を超えるとお伺いしました。本田さんが旅する理由、その根底にあるものを教えて下さい。

画像: 本田直之氏

本田直之氏

本田直之(以下、本田):「好奇心」だと思います。端的に言えば、知らない世界を見てみたい。世界には200以上の国があることを思えば、60か国なんてまだまだです。ぼくは「行きたい国、都市リスト」をつくっているのですが、常に増え続けています。旅をしていないと死んでしまう感じです(笑)。

JAL:いまいちばん、行ってみたい国、都市はどちらですか?

本田:イスラエルですね。三大宗教の聖地という特殊な地域で、興味があります。それにいま、いろいろなベンチャー企業も起ち上がっていて、非常に面白いんですよ。

画像: スマホのなかには「行きたい国、都市リスト」をつくっている

スマホのなかには「行きたい国、都市リスト」をつくっている

JAL:知的好奇心の追求は、人間が持つ根源的な欲求かもしれませんね。本田さんの場合、旅によって知らないことを知る喜びの先には、何が待っていますか。

本田:旅をするということは、クリエイティブになることだと思います。旅先で未知のものを見て、新しいものをインプットする。ただし、インプットしたからといって、すぐ何かにつながるわけではありません。徐々に自分のなかに蓄積されて、あるとき、ふと新しいアイデアにつながったり、仕事や人生についての考え方のプラスになったりするんです。

旅のあとはメモを残す。何を見たか、どこに行ったかではなく、「何を感じたか」が重要

JAL:誰しも、旅によってインプットしたものを自らの血肉にして、上手くアウトプットしたいと思っています。しかし、感じたことを忘れてしまうことも多い。どうすれば、本田さんのようにアウトプットができるのか、その方法論を教えてください。

本田:いや、ぼくもやっぱり忘れますよ(笑)。だから、旅で感じたことは、必ずメモするようにしています。きっかけは、マッシモ・ボットゥーラ氏へのインタビュー。彼は、イタリアのモデナにあるミシュラン3つ星レストラン「オステリア・フランチェスカーナ」のオーナーシェフです。彼は旅からインスピレーションを得て料理をつくっているそうで、「旅したあとにメモをとらなきゃダメだ。旅をした理由がなくなる」と話してくれました。

それ以来、帰りの機内では、「旅の感想」や「面白いと感じたものや考え方、方法論」などを、iPhoneでメモしています。何を見たか、どこに行ったかではなく、何を感じたかが重要。写真に感想をタグ付けするだけでもいいと思いますよ。

JAL:本田さんにとって、帰路の機内はおさらいの時間なのですね。では、往路の機内ではどのように過ごされているのでしょうか。

本田:行きの飛行機では、時計を現地の時間に合わせて、その時間に沿って行動します。現地が深夜だったら寝るし、昼間だったら起きておく。そうすると、時差ボケ防止になるんですよ。

旅の大きな目的のひとつは「食べること」。地域や人をより深く知るきっかけに

画像: 日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザーの資格も持つ本田さん。事務所には大きなワインセラーが

日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザーの資格も持つ本田さん。事務所には大きなワインセラーが

JAL:旅先ではどのように過ごすのですか。本田さんなりの旅の流儀があれば、教えて下さい。

本田:ぼくにとって旅の大きな目的のひとつは「食べること」ですね。そもそも美味しいものがない街にはあまり行きたくないです。

JAL:「食」という視点で、特に印象深い国はありますか?

本田:スペインは好きですね。都市で言えばカタルーニャ地方のバルセロナ、バスク地方のサンセバスチャンやビルバオ。特に、バスク地方はこれまで8回くらい訪れています。

たくさんの人がごった返すサンセバスチャンのバル

本田:ぼくが旅先で食べることを好む理由のひとつに、「食」を通じて地域や人を深く知れる、ということがあります。例えばバスク地方の人は、すごく真面目ですね。サンセバスチャンには、小皿料理と一緒にワインを楽しめるバルがたくさんあるんですが、バルではお会計のとき、注文したものを自己申告するんです。狭い店内に人がごった返していて、立ったまま飲んだり食べたりしているので、食い逃げしようと思えばできてしまうでしょう。でも、絶対にそんなことはないし、店側もボッタクリはしないんです。

JAL:サンセバスチャンは人口当たりのミシュラン星つきレストランが最も多い都市といわれ、美食の街とも形容されていますね。

本田:ぼくの場合、バスク地方の三つ星のお店は驚きがあって面白いので、ひととおり足を運びましたが、リピートはしてません。味も実験的なものが多かったりして、正統派の「美味しい」というのとはまた少し違うというか。ミシュランにこだわらなくても、ぼくが世界一好きなレストランである山バスクの「Etxebarri」、海バスクの「Elkano」やバスク料理の「Ibai」、チュレタ(骨つき肉のステーキ)の「Casa Julien」など、カジュアルで何度も足を運びたくなる、世界的にも素晴らしい評価を受けているお店がたくさんあります。いろいろと回るので、旅行中は1日に6食は食べてますよ(笑)。

画像: 本田さんが世界一好きなレストラン「Etxebarri」の、ガリシア牛のチュレタ

本田さんが世界一好きなレストラン「Etxebarri」の、ガリシア牛のチュレタ

JAL:有名店を訪れるのもいいですが、街の美味しいレストランを見つけるのも旅の醍醐味ですよね。ただ、旅慣れていないと、ガイドブックなしで名店を探し当てるのは難しい気がします。本田さんのテクニックを教えていただけますか。

本田:まず、「なんとなく美味しそう」といった勘に頼ってはダメ。ぼくは、現地のシェフに聞くようにしています。1軒目は、事前にリサーチしておいた店を訪れるのですが、そのレストランが美味しかったら、シェフに「どこか良いお店はないかな?」と質問するんです。味にも好みがありますが、自分が美味しいと思える料理をつくるシェフのおすすめなら、信用できますからね。逆に、ホテルのコンシェルジュには、あまり聞かないかも。良いお店を紹介してくれるのですが、やはり誰もが納得する安心、安全なレストランしか紹介してくれませんから。旅慣れてくると、ちょっと物足りないかもしれません。

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