東京とハワイの2か所に仕事・生活の拠点を持つ「デュアルライフ」を実践している本田直之氏。1年のうち5か月をハワイ、3か月を東京で過ごし、あとの4か月は日本の地方や、ヨーロッパ、アジア各国を回っている。ベンチャー企業への投資育成を行う会社を経営する傍ら、執筆活動も精力的に行う実業家だ。
多くのビジネスマンに支持された「レバレッジシリーズ」をはじめとするビジネス書や、60か国以上を訪れた経験をもとに、海外で活躍する日本人シェフを紹介したり、ハワイでの過ごし方を指南したりする書籍も好評。著書累計は300万部を突破している。「旅は人生であり、ライフスタイル」と語る本田氏が見出してきた、旅を成功させる秘訣について聞いた。
文:笹林司 写真:西田香織

早朝の「旅ラン」で、世界遺産を独り占め

JAL:旅先で1日に6食も食べていたら、旅行期間中に太ってしまいそうですね。

本田:旅行先では必ず「旅ラン」をするようにしています。10キロほどを約1時間でゆっくりと走るんです。そうすると、大抵の街は概要がつかめて、俯瞰的に見ることができるようになります。世界遺産などお目当ての場所を目標に走ってもいいですよね。ぼくはあえて、観光だと絶対に通らないような道を走るのがお気に入り。その街の生活や雰囲気が見えてきます。「この街はみんな早起きだな」とか、「この街は明るく迎えてくれるな」とか、「この街の人は目も合わせてくれないな」とか。大きな市場のある街なら、ランニングの最後に寄って朝食をとるのもいいですね。

JAL:旅ランの必需品はあるのですか?

本田:身軽がいちばんなので、最低限必要なものだけを持って走ります。ミルスペック(軍隊の採用基準を満たした製品)の防水・防塵カバーに、スマートフォンとクレジットカード、それに少額の紙幣を入れて。

画像: 本田さん愛用の旅グッズ。左から、旅ラン用の防水・防塵カバーとスマートフォン、カメラ。いちばん右はノイズキャンセリング機能に優れ、機内で眠るときも心地よいイヤホン

本田さん愛用の旅グッズ。左から、旅ラン用の防水・防塵カバーとスマートフォン、カメラ。いちばん右はノイズキャンセリング機能に優れ、機内で眠るときも心地よいイヤホン

JAL:先ほどは食について印象深い国をお尋ねしましたが、旅ランで印象深い国はどこでしたか?

本田:これはいろいろありますね。まずは、イタリアのローマ。石畳で走りにくいのですが、街中が世界遺産だらけ。特に早朝に走ると、日中は観光客でごった返している場所に誰もいないんです。シーンとしたコロッセオは、とても神秘的でしたね。他には、同じくイタリアのフィレンツェも気持ちいい。ベルギーのブルージュ、チェコのプラハやオーストリアのウィーン、スペインのバルセロナも楽しかったです。

地元目線でおすすめするハワイの楽しみ方。観光地の一歩外へ出てみよう

JAL:本田さんはヨーロッパやアジアへの短期滞在の旅だけでなく、1年のうちハワイで5か月、東京で3か月過ごすといったデュアルライフを実践していますね。ハワイの魅力と楽しみ方を教えていただけますか。

本田:日本人に人気なのは、オアフ島ですよね。この島のいいところは、街と豊かな自然の共存。街も楽しめるし、少し離れれば、ダイヤモンドヘッドのような雄大な自然もあります。ぼくのおすすめは、観光のメッカであるワイキキから一歩外へ踏み出してみること。例えば、アラモアナビーチパークはワイキキビーチから車でたった10分ですが、地元の人たちがいっぱいで、風景も雰囲気も全然違います。歩いて行くこともできますよ。また、オアフ島以外の近隣諸島で自然を感じるのもいいでしょう。

JAL:ハワイを何度か訪れると、「日本人だらけで、美味しい物がない」といった感想を持つ人もいますね。

本田:観光地から少し外に出てみれば、ローカル向けの美味しいお店があります。リピーターなら観光視点だけでなく、そういったお店を開拓して、ある意味、暮らすような過ごし方で楽しむと面白いと思います。ぼくがいちばん好きなのは、「Side Street Inn(サイド・ストリート・イン)」というお店。ガストロパブといってバーとレストランを兼ねたような場所です。

画像: 本田さんお気に入りの店「Side Street Inn(サイド・ストリート・イン)」のポークチョップ。ボリューム満点

本田さんお気に入りの店「Side Street Inn(サイド・ストリート・イン)」のポークチョップ。ボリューム満点

JAL:ハワイと日本に拠点を持ちながら世界中を巡る本田さんのライフスタイルは、旅好きにとっては憧れです。インターネット環境が整備され、オフィス以外の場所から仕事をする「テレワーク」の機運も高まっているいま、同じような働き方を現実的に考えている人も多いのではないでしょうか。

本田:誰にもできると思いますよ。少なくとも、場所に縛られる必要はまったくない。でも、工夫次第ですね。自分の理想の生き方を叶える方法を、さまざまな選択肢のなかからクリエイティブに選ぶ必要があります。例えば新しいテクノロジーやサービスの活用法を考えたり、テレワークや多様な働き方を推し進めている会社を自分で探したり。すべては自らの意志による選択だとぼくは思います。いますぐに無理なら、徐々に準備をしていけばいいんです。

世界を見てあらためて感じる日本の良さ。特に地方の独自性はすばらしい

JAL:旅をし続ける本田さんに、あえてお尋ねします。定住するなら、どの国がいいですか?

画像: 世界を見てあらためて感じる日本の良さ。特に地方の独自性はすばらしい

本田:定住することは、まったく考えてないですね。同じところにいたくない、国に身を縛られたくないんです。ただ、拠点を置く場所として、日本を0%にすることは決してありません。こんないい国、他にないですよ。便利だし安全だし、食べ物はすこぶる美味しい。なにより、サービスとホスピタリティーのレベルが高い。飛行機もそうで、ぼくは日系企業のエアライン以外乗らないです(笑)。

JAL:世界を旅することで、日本の良さを知ることができたんですね。

本田:3年前からは、1年のうち2か月は日本の地方を旅しています。旅をしていると、世の中の大きな流れのようなものが、直接肌で感じられて。やっぱりいまは、大量生産・大量消費の物資至上主義から、独自性のある体験や経験を重視する精神主義に、徐々に変わっていっています。これは10年くらい前から、とても強く感じていました。

そこから、海外だけでなく、日本に目を向けたいという思いが芽生えたんです。日本の地方は昔から独自性があって、食や祭りなどの文化が多彩です。これまでは、東京から発信される文化や経済に浸食されていた部分もありましたが、地方がプライドを持って独自性を打ち出していったら、もっと面白いことになるはず。いまはそんな地方の魅力をもっと知りたいと思っています。

画像: 人生=旅。60か国を巡った実業家・本田直之が教える成功の秘訣

本田直之
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQ上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行う。著書にレバレッジシリーズをはじめ、『脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住』『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』『TraveLifeクリエイティブに生きるために旅から学んだ35の大切なこと』『The Hawaii’s Best Restaurants』等。著書累計300万部を突破し、韓国、台湾、香港、中国で翻訳版も発売。
サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA)
明治大学商学部産業経営学科卒
(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイサー
アカデミー・デュ・ヴァン講師
明治大学・上智大学非常勤講師

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