さまざまな雑誌やウェブメディアで活躍するライターの岡本ジュンさん。とりわけワインに関する記事を多く書かれています。ワインを愛する余り、プライベートでも、「生産地でワインを飲む」ことを目的とした「ワイン旅」に行かれるほどのワイン愛好家。国内外を問わず、各地のワイナリーを巡る岡本さんが、そこまでワインにハマった理由とは? そして、「ワイン旅」ではどのような楽しみ方をしているのでしょうか。岡本さん流の「ワイン旅」の醍醐味と、知られざるワインの魅力についてお話を聞きました。
取材・文:麦倉正樹 撮影:有坂政晴(STUH)

ワインに縁がなさそうな国でも「とりあえずワインを頼んでみる」

JAL:「ワイン好き」の方が「ワイン旅」をするとしたら、おすすめの産地はどこですか?

岡本:まずは、好きなワインの産地に行ってみるのが、いちばん良いと思います。私が行った産地のなかでも面白かったのは、フランスのブルゴーニュですね。同じブルゴーニュの土地でも、畑によってできるワインが違うんです。「こういう斜面で、この土だからこそ、あのワインができるんだ」とか、「土壌がちがうからぶどうの味わいに変化が出るんだ」など、いろんなことがわかるので勉強になります。でも、ちょっと楽しみ方がマニアックすぎますかね(笑)?

JAL:たしかに、マニアックな楽しみ方ですが、面白そうです(笑)。では逆に、これからワインに詳しくなりたい「ワイン初心者」の方に、おすすめの生産地はどこですか?

岡本:初心者の方でしたら、まずは有名な生産地に行ってみるのが良いかもしれませんね。海外も、日本も、いまは観光客を受け入れるワイナリーが増えてます。海外でも、現地でアテンドしてくれるワインツアーもありますし。いきなり海外に行くのは不安なら、まずは国内のワイナリーでもいいと思います。実際のぶどう畑を見るだけでもきっと楽しめると思いますよ。

画像: 岡本さんが訪れた山梨のぶどう畑

岡本さんが訪れた山梨のぶどう畑

JAL:ちなみに、「ワイン旅」ではなく、普通に旅行に行った際、ワインを楽しむ方法があれば教えてください。
岡本:旅行先の飲食店で、「とりあえずワインを頼んでみる」のは、どなたにもおすすめしたいです。私の場合、ワインのイメージがあまりない国に行った際も、まずはワインが置いてあるお店を探してみるんですよ。

JAL:なかでも印象に残っている国はどこでしょうか。
岡本:インドですね。訪ねたお店が、かなり怪しげな道の角にあったので、ドキドキしながらお店のドアを開けたのを覚えています(笑)。ワインが置いてある理由を伺ったら、じつは移住してきたフランス人の方が、ワインをつくり始めたというお話を伺いました。ワインのイメージがそこまで強くないインドで、意外な裏話が聞けたので、結構印象に残っています。
ほかにも、タイ、ベトナム、マレーシアなど、あまりワインのイメージがないアジアでも、探せば意外と見つかります。ただ、ワインの味は、すごく美味しいときと、そうでないときがあるんですけど(笑)。

画像: バンコクで訪れた屋台。「屋台料理 × ワイン」も意外におすすめ

バンコクで訪れた屋台。「屋台料理 × ワイン」も意外におすすめ

JAL:やはり、それぞれの国によって個性やクセがあるんですね(笑)。

岡本:でも、それも含めて、話のネタになればいいと私は思っています(笑)。日本でワイン会や食事会に伺う際、旅先で買った現地のワインを持っていけば、それだけで話題につながりますよ。なので、話題づくりのアイテムとしても、ワインは役立つと思います。

ワインにセオリーは必要ない。お店で気軽にワインを楽しむ心得

JAL:海外に限らず、お店でワインを注文する際のコツ、あるいはこれだけは知っておいたほうがいいことはありますか?

岡本:ワインって、いろいろセオリーがありそうなイメージですけど、そういうものは、あまり気にしなくていいと思います。ワインソムリエやワインバーの経営者など、ワインのプロに取材することもありますが、「魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワインとか、そういうセオリーは気にしなくてもいい」とおっしゃる方も結構いらっしゃいますよ。

JAL:ワインのプロの方こそ、ワインのセオリーにうるさそうなイメージがあるので意外です。

岡本:ある生産者の方も、「ご自身の好きな組み合わせで、食事とワインを楽しむのがいちばん大切」とおっしゃっていました。たとえば、こだわりの強いお店に行った際、「その組み合わせは、合わないです」ってスタッフに止められるようでしたら、そのときはやめればいいと思います。でも、そうでない限りは、あまりセオリーに縛られる必要はないと思いますよ。

画像: ワインにセオリーは必要ない。お店で気軽にワインを楽しむ心得

JAL:ワインのセオリーや知識よりも、自分なりの楽しみ方を見つけるほうが大事なんですね。

岡本:はい。そもそも、ワインのセオリーは奥が深く、一般の方にはマニアック過ぎるので、よっぽどワインが好きで勉強家の方でないと、そのセオリーにのっとれないと思うんです。だったら、好きな飲み方で、ワインを楽しんだほうが良いと私は思います。まずは、いろんなワインを飲んでみて、自分がどういうタイプのワインが好みなのかを、知るほうが大事かもしれないですね。

もっと気軽に楽しもう。ますます広がるワインの自由な飲み方

JAL:数あるお酒のなかでも、ワインは敷居が高いイメージがありましたが、もっと気軽に楽しんでもいいんですね。

岡本:もちろんです。最近は、各地でワインの自由な飲み方も広がってきています。いま日本でも、ワイン生産者の方々が主催している『コップの会』が注目を集めていますよね。「自分たちも、家で飲むときはコップでワインを飲んでいるんだから、お客さんも気取らずに飲んでほしい」という想いから発足し、各地でイベントを開催されています。『コップの会』のように、もっと多くの人がワインを気軽に楽しめたらいいなと思います。

JAL:食事との組み合わせだけでなく、飲み方も自由でいいんですね。

岡本:飲み方も、人それぞれで良いと思います。ほんのり甘いロゼワインを、いわゆる「カチ割り」のように氷をたくさん入れて、夏場にグビグビ飲むのが美味しいというワイン仲間もいますし(笑)。そうやって、自己流の新しい飲み方を発見するのも、ワインの楽しみ方のひとつだと思います。

画像: もっと気軽に楽しもう。ますます広がるワインの自由な飲み方

JAL:最後に、岡本さんがいま行ってみたい国を教えてください。

岡本:南アフリカに行きたいですね。ここ最近、「ナチュラル・ワイン」とか「ヴァン・ナチュール」と呼ばれる、自然派ワインが世界の各地で流行っています。南アフリカのワインというと、これまではかなり濃厚でしっかりした味わいのイメージが強かったのですが、最近は、有名なナチュールの生産者の方が何人も輩出されています。少し方向性が変わってきているようなので、そのワイナリーを実際に見に行きたいですね。そして、現地でそのワインを飲んでみたいです。

画像: 生産地で格別なワインを。本場で味わう「ワイン旅」の醍醐味

岡本ジュン(おかもと じゅん)
東京都世田谷区出身。出版社勤務を経て、フリーライター。食を中心に、料理、旅行、ライフスタイル、健康などのジャンルを執筆する。特にお酒に関する取材は15年以上に渡って数多く担当。仕事でワインに関する執筆を行うかたわら、プライベートでも生産地を巡る「ワイン旅」に行くなど、「ワイン無しの人生はあり得ない」というワインLOVER。

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