現在24歳の彼女が、はじめて海外遠征を経験したのは中学3年生、15歳のとき。親元を離れ、チームメイトとともに訪れたイギリスでの経験は、もともと海外に強い興味を持っていた彼女の胸を躍らせたといいます。以来、コンスタントに海外での試合に出場し続け、いまでは月の半分以上を遠征先の海外で過ごしているとのこと。
決して身軽とはいえない車いすでの旅ながら、旅の話をする上地さんの様子は身軽そのもの。試合の日程が詰まっていて、身体的にもハードな日々のなかで、そうした姿勢をキープできる秘訣は何なのか。テニスを通して世界を見てきた彼女だからこそのこだわり、そして車いすで旅することの魅力を聞きました。
取材・文:片貝久美子 撮影:Lori Barbely 編集:原里実、佐々木鋼平
知らないお店を探して、おいしいものを食べるのが一番の楽しみ。
JAL:上地さんが旅のなかで楽しみにしていることは何ですか?
上地:遠征先では通常、試合が終わった翌日には移動というのを繰り返しているので、それほどゆっくりできる余裕はないんです。
でも、そのなかでもやっぱりおいしいものは食べたいなって思いますね(笑)。私、日本食が恋しくなったりしないんですよ。なので、その土地のおいしいものを食べるっていうのが一番の楽しみです。
JAL:世界中に行きつけのお店があったり?
上地:そういうお店もありますけど、どちらかというと知らないお店を探すのが好きです。応援に来てくださる日本人の方やサポートしてくださる方たちに、近くにおいしいお店がないか聞いたりして。
また、海外の選手たちもやっぱり食事は楽しみなので、お互い情報交換してますね(笑)。
荷物は最小限。機内ではリラックスして爆睡しています(笑)。
JAL:「旅のプロ」といえる上地さんですが、コレだけは持っていくという旅の必需品はありますか?
上地:私、空港のチェックインカウンターで「荷物これだけですか!?」って言われるくらい、荷物が少ないタイプなんですよ(笑)。
海外遠征に行きはじめたころは、もしかしたらどこかに行くかもしれないと私服をたくさん持っていたんですが、結局行けないことがほとんどなので、いまはスポーツウェアばかり入ってます(笑)。
でも、そのなかで唯一欠かせないのが大好きな緑茶。試合前やホテルでリラックスするときのために、緑茶のティーパックは必ず持って行きます。
JAL:機内での過ごし方にこだわりはありますか。
上地:私は機内に持ち込む私物もあまりないので、映画を観たり、寝たりして過ごすことが多いですね。時差もそれほど意識せず、リラックスして過ごさせていただいています。
私、環境が変わったから眠れなくなるってことがほとんどないんですよ。空港に到着後、そのまま練習会場に向かえるくらいバッチリ爆睡できるんです(笑)。
JAL:それはすごいですね! 上地さんの強さの秘密がわかった気がします(笑)。
上地:よく言われます(笑)。
車いすだからこそ生まれる現地の人たちとの交流を楽しむ。
JAL:ここまで海外遠征のお話を中心にうかがってきましたが、プライベートでも旅行に行かれることはありますか?
上地:なかなか休みが取れないのでそんなには多くないですけど、モナコ、韓国やタイとかには行ったことがあります。プライベートではじめて行ったのは、高校を卒業した翌年に友だちと2人で行ったオーストラリアでしたね。韓国は大好きなので、もう4回くらい行っています。
JAL:車いすでの旅行は不便なこともあったりすると思いますが、上地さんが旅先を選ぶときに重視していることは何ですか?
上地:そうですね……バリアフリーが進んでいるに越したことはないですけど、私が行くのはわりとそうじゃない国が多くて。
なので、車いすで移動しやすいかどうかというよりも、もちろん一緒に行った人や周りの方に助けてもらいながらにはなりますが、できるだけ自分の行きたいところに行くようにしています。
それこそ、私の好きな韓国もバリアフリーになっていないところが多いんですよ。でも、たとえば街中で立ち止まっていたらサッと荷物を持ってくれたり、担ぎ上げてくれたり、そういうふうにしてくださる方がすごくたくさんいらっしゃるんです。
おそらく健常者の方は、人に頼らないで旅行を終えることも多いと思うんですけど、車いすの場合は現地の人に手伝ってもらって、そこで交流が生まれるっていう。
旅をしているときも旅のあとも、あのとき助けてもらったなとか、あそこで助けてくれた人の話がおもしろかったなとか、そういうのを感じられるのも楽しいと思います。
目の前にいる人がどんなことを考えているのか、もっと知りたい。
JAL:先ほど現地の方においしいお店を聞くというエピソードもありましたが、上地さんの旅では人との交流を積極的に楽しむという感じでしょうか。
上地:積極的にというか、私にとってはすごくシンプルで、ナチュラルなこと。目の前にいる人がどんなことを考えているんだろうとか、その人の意見を聞きたい、もっと知りたいって思うので。
それこそ海外遠征に行きはじめたころは、まだ英語もまったく話せなくて、意思の疎通もままならない感じだったんですけど、それでも「知りたい」って気持ちを出すと、みんなもゆっくり話してくれたりして。
その瞬間がすごく楽しかったという印象があるので、一人でも、言葉が通じないところでも、行ってみたいなって気持ちがあります。
WHEELCHAIR TENNIS
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