「トレス海峡諸島」と聞いて、かなりのオーストラリア通でも「それってどこ?」と首をひねるかもしれません。オーストラリア人に尋ねても「存在は知っているけど行ったことがない」という人がほとんどの“未知なる島々”。
でもこの「トレス海峡諸島」、じつは日本とは昔から深い関わりがあるのです。
本記事では知られざる原石のような島々を、一気に4つもめぐる冒険へご案内。そのうち1つはなんと「外国メディアに初公開」の島です!

※営業時間や価格は2023年8月時点のものです。
※価格は税込み表記です。

画像: 取材・撮影:柳沢有紀夫

取材・撮影:柳沢有紀夫

日本からいちばん近い“遥かなる島々”

オーストラリア大陸の北東端にある「ヨーク岬半島」と、隣国「パプアニューギニア」との間にある幅約150キロメートルの「トレス海峡」。その間に点在している無数の島々が「トレス海峡諸島」です。

日本から訪れる場合は「ケアンズ国際空港」で乗り換え。1日3便ある国内線で“トレス海峡諸島の玄関口”ともいうべき「ホーン島空港」に向かうのが一般的です(所要時間は約1時間45分)。

じつはこの島々、有名なアボリジナル(「アボリジニ」という言葉は蔑称とされ、最近は使われません)とはまた別の先住民のふるさと。メラネシア系の「トレス海峡諸島民」たちです。彼らの文化や伝統に触れるのもこの旅の楽しみの1つです。

画像: 日本からいちばん近い“遥かなる島々”

とある島でのひとコマ。何をしているところかわかりますか? 答えは後ほど。

第2次世界大戦時の遺構が残る「ホーン島」

最初に紹介するのは、トレス海峡諸島の“玄関口”であるホーン島。この島の人口はわずか500人ほどです。それなのに定員100名ほどの飛行機が離着陸できる空港がかなり昔からあります。その理由は第2次世界大戦時、ここに空軍基地がつくられたからです。戦火を交えたのは、オーストラリアと日本。

オーストラリア軍は日本軍からの空襲に備え、高射砲などを設置して対抗したとのことです。

画像1: 第2次世界大戦時の遺構が残る「ホーン島」

その跡が復元され、今では見学ツアーが催行されています。

画像2: 第2次世界大戦時の遺構が残る「ホーン島」

土嚢を積み上げた塹壕の跡です。

画像3: 第2次世界大戦時の遺構が残る「ホーン島」

地下弾薬庫の入り口。中を覗くと床には雨水がたまっていました。このあたりは熱帯なので、当時から雨水の浸入対策は大変だったとのこと。

さてホーン島のもう1つの見どころ。それは「トレス海峡ヘリテージ博物館」です。

画像4: 第2次世界大戦時の遺構が残る「ホーン島」

学校の体育館ほどもない小さな建物に、トレス海峡諸島民の民芸品や第2次世界大戦の遺品などが並べられているのですが、その中でこんな不思議な展示物を発見しました。

画像5: 第2次世界大戦時の遺構が残る「ホーン島」

何かおわかりになりますか? 答えはこのあと訪れる「木曜島」でお伝えします。

【ツアー催行会社】トレス諸島ヘリテージ社(Torres Strait Heritage)

ツアー名インゼアステップス第2次世界大戦ツアー(‘In Their Steps’ WW2 tour)
電話+61-427-903-333
料金数人のグループの場合1人当たり80豪ドル~
※「トレス諸島ヘリテージ博物館」への入場料も含む
※島内の宿泊施設からの送迎付き
※詳細はWebサイトのコンタクトフォームから確認
webhttps://www.torresstraitheritage.com (外国語サイト)

トレス諸島ヘリテージ博物館

住所1 Miskin Street, Horn Island, Queensland 4875
営業時間9:00~17:00
入場料10豪ドル
webhttps://www.torresstraitheritage.com (外国語サイト)

日本人ゆかりの「木曜島」

次にご紹介するのは「サースデイ島(木曜島)」です。先ほどの「ホーン島」はトレス海峡諸島の“玄関口”ですが、こちらは“行政と経済の中心”。とはいえ人口はわずか2,805人(2021年の国勢調査)。面積は約3.5平方キロメートルで、一周8キロメートルほどの小さな島です。

画像1: 日本人ゆかりの「木曜島」

ホーン島からは乗船定員30名ほどの小さな船で約15分。水色というよりもエメラルドグリーンの海の色が鮮やかです。

この島いちばんの名所は「グリーンヒル要塞」。ところどころに説明の看板が立てられていて、さしずめ“アウトドア博物館”といった感じです。

画像2: 日本人ゆかりの「木曜島」

広々とした高台には見どころが満載。そんな展示を見るだけでなく、熱帯の風を感じながらのんびり散策も心地よいものです。「ああ、遠くに来たんだなあ」。そんな気分になれます。

画像3: 日本人ゆかりの「木曜島」

高台の上にあるため島の小さな繁華街やまわりの島々が一望できます。

画像4: 日本人ゆかりの「木曜島」

「要塞」ですから、昔の高射砲も展示されています。

画像5: 日本人ゆかりの「木曜島」

ここは1891年から1893年に築かれたのですが、その仮想敵国はロシアだったとのこと。

さて、ここで先ほどの「ホーン島」の最後で出したクイズの答えを。博物館に展示されているちょっと宇宙服にも似た奇妙な物体。あれは「昔の潜水用ヘルメット」です。酸素ボンベのない時代は、船の上からホースをつないで「手押しポンプ」であのヘルメットの中に空気を送り込んでいたのです。

では、その人たちはなぜ潜水していたのか? これが日本にも大いに関係がある話。なんと今から150年も前に、真珠などを採取するための潜水士たちが日本からこの島に移り住んだのです。その数のべ7,000人。一時は人口1,500人ほどの島の6~7割が日本人だったともいわれています。

そのため、日本人墓地もあります。

画像6: 日本人ゆかりの「木曜島」

生い茂る草の中に建つ慰霊塔と無縁仏の墓。左奥が実際の墓地。ふるさとから遠く離れた島で、どんな思いで眠っているのでしょうか。

島を囲むようにして心地よいビーチがいくつもあります。

画像7: 日本人ゆかりの「木曜島」

ただ、このあたりの海辺は人を襲うこともあるどう猛なイリエワニのすみか。水には入らず、のんびり景色を眺めるだけにしておきましょう。

木曜島のもう1つの見どころは「アイランドスターズカルチャラルエクスペリエンス」。トレス海峡諸島民の少年たちが見せてくれるダンスパフォーマンスです。

画像8: 日本人ゆかりの「木曜島」

ダンスにはそれぞれテーマがあります。「ワニのダンス」は本当のワニらしく見えて、すごい迫力です。

画像9: 日本人ゆかりの「木曜島」

最後にみんなにポーズをとってもらいました。

【フェリー運航会社】トレスストレーツアーズ・レベルツアーズ(Torres Strait Tours - Rebel Tours)

住所Thursday Island, Queensland 4875
電話+61-7-4069-1586
料金ホーン島空港から港までのバス、および港から木曜島の港までのフェリーで30豪ドル
ホーン島と木曜島の港から港へのフェリーのみは12豪ドル
メールinfo@rebeltours.com.au
webhttps://www.rebeltours.com.au/ (外国語サイト)
※事前予約を推奨

グリーンヒル要塞(Green Hill Fort)

住所18 Aubrey Parade, Thursday Island, Queensland 4875
営業時間24時間
入場料無料

【ダンスパフォーマンス催行会社】アイランドスターズカルチャラルエクスペリエンス(Island Stars Cultural Experience)

住所42 Douglas Street, Thursday Island, Queensland 4875
webhttps://www.islandstars.com.au/ (外国語サイト)
※上記Webサイトのコンタクトページから要予約

「秘伝」の真珠採取を垣間見られる「金曜島」

次に紹介する「金曜島」は、人口わずか約20人の小さな島。小さな船で向かいます。

画像1: 「秘伝」の真珠採取を垣間見られる「金曜島」

先ほど紹介した「木曜島」は真珠養殖産業の中心地でしたが、1960年代にタンカーが座礁したことによって油が流出し壊滅状態に。ところが今から40年ほど前に移り住んだ日本人タカミ・カズ氏が、この「金曜島」で真珠養殖場の経営を始めました。

真珠の「種」を貝に入れる技術は「門外不出」とする技術者も多いのですが、タカミ氏は真珠養殖業の未来のために観光客にも公開しています。

画像2: 「秘伝」の真珠採取を垣間見られる「金曜島」

貝から真珠を採りだす手順を説明するタカミ氏。

画像3: 「秘伝」の真珠採取を垣間見られる「金曜島」

人々も熱心に説明を聞いています。

そしてツアーの最中にタカミ氏がふるまう日本食のランチコースも観光客に人気。

画像4: 「秘伝」の真珠採取を垣間見られる「金曜島」

普通のコースはわたしたち日本人には見慣れたものが多いので、少し変わったものを堪能したいなら「ベジタリアンコース」を予約するのがオススメ。これは赤ピーマンを使ったお寿司です。

カズパールファーム(Kazu Pearl Farm)

住所Friday Island, Queensland 4875
電話+61-7-4069-1268
webhttp://www.kazupearl.com/

外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

さて、いよいよ外国メディアに初公開の島を紹介しましょう。その名は人口270人の「ワシッグ島」。トレス海峡諸島の“玄関口”であるホーン島空港から45分かけて向かいます。それも定期便ではなく、「ストレートエクスペリエンス」というツアー会社が催行するチャーター便です。

画像1: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

乗員あわせて定員12名ほどの小さなセスナ機です。

この「ワシッグ島」はいわゆる観光地ではありません。住居こそ現代のものですが、古くからの伝統を今も大切にして暮らしているトレス海峡諸島民たちの“文化と生活を垣間見て体験する”のが、このツアーの目的です。

島民以外は到着時に役場に行って届け出が必要。そのあと島唯一の宿泊施設である「ロワッタロッジ」で荷物を下ろします。

画像2: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

そしていよいよ島内冒険に出発! 2人のトレス海峡諸島民のガイドが時折立ち止まり、道端の草花を手にとっては「この実はそのまま食べてもいいけどすりつぶしてペースト状にするとおいしい」「この葉っぱは痛み止めの薬として使うんだ」などと紹介してくれます。植物園ではなく、周囲に自生している草花です。

画像3: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

自然に生えている野草や薬草を使う彼ら。最近になって浸透し始めた“エコ”や“サステナビリティ”を、トレス海峡諸島民たちはずっと大切にしてきたのだと思い知らされます。

次にわたしたちは伝統的な「土中蒸し料理」を見学および体験させてもらいました。

画像4: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

ヤシの葉を器用に編んで袋状に。根菜類を中に詰め込みます。

画像5: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

しょうゆとニンニクで味付けした豚肉の塊は、大きなバナナの皮に包みます。

画像6: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

土を掘ってつくった炉の上にそれらの食材を置き、その上から大きな葉っぱなどでカバーして蒸し焼きにします。冒頭でお見せした写真はこのときのものです。

おやつは採れたて……というよりも自然に生えている木から落ちたてのココナツの果汁と実。

画像7: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

そしてその日の夕食のメインとなるイセエビを炭火で焼くのは、ツアー参加者の仕事です。こんなに多くのイセエビを豪快に焼くのは、おそらく後にも先にもないでしょう。

夜が明けて、翌朝はヤシの葉を使ったかご作り教室。

画像8: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験
画像9: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

単純そうに見えてじつは意外と複雑な作業で、集中力が必要です。

画像10: 外国メディア初公開の「ワシッグ島」で先住民の文化を体験

他にも、イセエビを獲る銛(もり)の試し投げにチャレンジ! 銛の先端が金属で意外と重く、ねらったとおりの場所にはうまく飛んでくれません。なかなかできない体験の連続に夢中で、時間はあっという間に過ぎてしまいます。

【ツアー催行会社】ストレートエクスペリエンス(Strait Experience)

住所81 Waiben Esplanade, Thursday Island Queensland 4875
webhttps://www.straitexperience.com.au/ (外国語サイト)

海に浮かぶ4つの“原石”

「トレス海峡諸島」の4つの島々。そこには豪華なリゾートはありません。SNS映えする絶景はあっても、アドレナリン噴出の絶叫体験はありません。

ただ4島それぞれには、まったく別々の顔がありました。そしてあなたが訪れるとき、自然にあふれたこの島々は、わたしたちが体験したものとはまったく別の顔を見せてくれるはず。

そんな海に浮かぶ“原石”たちが、あなたを待っています。

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