鹿児島県の南に浮かぶ種子島は、日本の宇宙開発の舞台として、しばしばロケットが飛び立ちます。飛び立つその真下には山と海、豊かな土壌が広がり、実は“食の宝庫”でもあるのです。なかでも西之表市の南部・古田校区は、黒毛和牛や安納芋、お茶など、豊富な魅力があります。JALふるさとアンバサダーで客室乗務員の山本さんが、生産者を訪ねました。
画像1: ふるさとの恵みをめぐる種子島の旅。西之表市・古田校区のおいしい物語

種子島空港から車でおよそ10分。のどかな山あいに広がる西之表市・古田校区は、南国らしい温暖な気候と山岳地らしい寒暖差を備えた地域です。

画像2: ふるさとの恵みをめぐる種子島の旅。西之表市・古田校区のおいしい物語

JALふるさとアンバサダーの山本さんは、鹿児島を拠点に県内の離島路線を運航する日本エアコミューターの客室乗務員です。訪れたのは秋。起伏ある山並みに沿うように植えられた生け垣に、小さなブーゲンビリアが咲き誇ります。こんな鹿児島の離島の風景は、山本さんにとっては慣れ親しんだもの。

画像3: ふるさとの恵みをめぐる種子島の旅。西之表市・古田校区のおいしい物語

澄んだ空気と清らかな湧き水、潮風を含んだ土壌が、家畜や農作物にとって理想的な環境を生み出している背景が脳裏に浮かびます。

海が見える丘の上。誰もが心地いい環境で、すくすくと育つ黒毛和牛

杉牧場

道すがら、山本さんが見つけたのは、サトウキビ畑を背景にした牛の群れ。どこか懐かしく、ゆっくりと時間が流れる光景が広がります。ここ、杉牧場では、黒毛和牛を放牧して伸び伸びとした環境で育てています。

画像1: 杉牧場

「おかげさまでふるさと納税での引き合いが、すごく増えました」

西之表市和牛振興会の会長を務める杉 直樹さんは、自然に生えた牧草に覆われた丘陵の牧草地で教えてくれました。

ふるさと納税の返礼品として、日本中から注目が集まっているのがこの和牛です。

画像2: 杉牧場

海風が香ります。山本さんの前に集まってきた母牛たちは人なつっこく、毛並みもつややか。島の恵みを全身で受けとめているかのようです。この草原は30年以上、耕さず自然のままだとか。牛が草を食べ、フンが土に還り、また草が育つ。まさに自然の循環。海風が運ぶミネラルのおかげで、牛も健康そのものなのです。

海風と共に育つ黒毛和牛。いのちの循環が生む“島の旨み”

橋口牧場

「種子島の牛は、のんびりしているんです」

そう話すのは、古田校区に牧場を持つ橋口 一喜さん。

画像1: 橋口牧場

赤ちゃんから和牛を育てる橋口牧場では、現在合計30頭ほどの母牛と仔牛を育てており、地域のみならず全国の繁殖牛を支えています。島内でもっとも寒暖差がある古田校区で育つ仔牛は環境適応力が高く、島を離れてからも伸びやかに育つのだそう。

画像2: 橋口牧場

「最初は小さくても、そのあとからぐっと大きくなるんです。草をよく食べますからね。市場では“草をよく食べる牛”と言われます。ありがたいですね」と、橋口さん。

よく食べることは、肥育農家が重視する大切な資質だといいます。自家製の草と飼料をバランスよく与え、仔牛は生後3〜4カ月で飼料4kg、草2kgほどをぺろりと平らげ、やがて全国の肥育農家のもとへと旅立っていきます。

画像3: 橋口牧場

「宮崎の出身なのですが、おばあちゃんの家の近くに牛舎があって。この雰囲気はとても懐かしいんです」と、嬉しそうな山本さん。

人なつっこい赤ちゃん牛が、山本さんに興味を持ったのか、近寄ってきました。海風と山の空気に育まれ、未来のブランド牛たちが今日も伸び伸びと暮らしています。

寒暖差が育む“ねっとり甘い”宝物。有機栽培にこだわった安納芋づくり

誠農園

古田校区のとなりに位置する中割校区特有の自然環境は、農作物にも好影響を与えているといいます。たとえば安納芋は、GI登録(※)され、名前の通った種子島の特産品です。なかでもサツマイモ市場全体のわずか0.5%にも満たない有機栽培にこだわっているのが、誠農園の勇元 誠さん。

※特定の地域の気候や風土、伝統などと結びついた品質を持つ産品の名称を登録し、地理的表示(Geographical Indication)を保護する制度

画像1: 誠農園

「サツマイモは一般的に砂地がいいとされますが、安納芋は粘土質の土を好み、香りと甘みを蓄えると考えています。有機認証を取得するのは本当に大変なのですが、それでもおいしい安納芋を届けたい。おかげさまでプロの生産者さんからもお褒めの言葉をいただきました」

2025年11月14日に島内で開かれた「種子島安納いも」の品評会では、誠農園の安納芋が最優秀の金賞に選ばれました。

画像2: 誠農園

一般には流通しない誠農園の安納芋。販路は自社サイトや一部のECサイト、そしてふるさと納税だけです。大量卸ではなく丁寧な直販スタイルで、思いと一緒に届けることにこだわっています。

画像3: 誠農園

ひと口食べた山本さん。「勇元さんの安納芋は40日以上熟成しているから、甘みが乗っていて、ねっとりしていますね」とにっこり。料理が好きなので、シンプルに調理して素材のおいしさを味わいたいと、教えてくれました。

安納芋の焼酎と、ペアリングで楽しみたい奇跡の食材「苦竹」

浜島商店

島では、この安納芋を原料にした焼酎「しま茜」(900ml・1,500円)も人気なのだそう。

画像1: 浜島商店

自然な甘みと軽やかな香りが特徴で、安納芋のちょっと違う楽しみ方として、島で愛されています。

画像2: 浜島商店

「しま茜」とペアリングして楽しみたい島の味覚が、「苦竹(にがたけ)」です。その名前から、さぞ苦い味わいを想像しますが、その真逆といってもいい、驚きの食材なのです。

画像3: 浜島商店

真竹よりも細い若芽で、なんとあく抜き不要。火を入れればそのまま食べられます。最盛期は5〜6月で、地元では天ぷらや煮物で楽しむ春のごちそうです。保存が難しく、ほとんどは島内で消費される希少な味覚です。

画像4: 浜島商店

訪れた浜島商店では、穂先は1kgで1,700円、茎部分は500円ほどで手に入ります。「しま茜」も在庫があれば、ぜひあわせて求めたいものです。

日本で最も早く新茶が手に入る種子島の、幻の品種

川口製茶

お酒のみならず、お茶もあるのが種子島。日本で最も早く新茶が芽吹く場所なのです。毎日必ずお茶を淹れるという山本さんにとっては、興味を引かれる事実でした。

画像1: 川口製茶

例年3月20日過ぎから摘採が始まり、春の訪れを全国に先駆けて告げます。明治期に静岡からの移住者が茶の栽培技術を持ち込み、密林を茶畑に切り開いてきた歴史を、川口製茶の代表・川口 麻紀夫さんが教えてくれました。

画像2: 川口製茶

「霧がよく出る地形が静岡に似ていたんです。茶づくりにとって理想的な環境でした」

朝もやが立ちこめる標高のある土地は、日差しをやわらげ、茶葉を守ります。香り高く雑味の少ない“走り”の新茶は、島の農業を支える存在です。かつては炭焼きが主要産業でしたが、時代とともに茶畑が広がり、いまや一大産地となりました。

川口製茶でしか作られていない幻の品種「えなみどり」の煎茶を、川口さんが淹れてくれました。

画像3: 川口製茶

「旨みの広がりが素晴らしいですね。すっきりとして飲みやすく、とてもバランスがいいように思います」と、山本さん。

画像4: 川口製茶

現在は人口減少が進み、農家はかつての半数ほどになりました。それでも次代につなぐ試みとして、川口さんは輸出を視野に入れた有機栽培に切り替えています。昨年はフランスへ出向き、今年も欧州での商談を予定。世界的な抹茶需要の高まりに合わせ、国際基準のオーガニック緑茶が古田校区で産声を上げようとしています。

古民家を“学び×福祉×観光”で再生。森に抱かれた一棟貸しの宿も

遠藤家住宅・inishie

古田校区で世界に挑もうとしているのは、農産業にとどまりません。島で建築を中心としたクリエイティブ事業を手掛けるLampの一級建築士・岩下 真奈美さんは、国の登録有形文化財となった古民家・遠藤家住宅に出合い、リノベーションを施して宿泊施設に。その価値を地域に開く形で再生しています。

画像1: 遠藤家住宅・inishie

「ただの宿にするのではなく、暮らしの文化を感じられる場所にしたかったんです。島の子どもたちの学び舎としても活用しています」と、岩下さん。

画像2: 遠藤家住宅・inishie

そんな思いに共鳴したのが、nijika株式会社代表の松岡 知佳さん。福祉と観光をつなぐ新しい形として、清掃や環境整備、おもてなしを通じて障がいのある方の就労につなげる仕組みを構想しました。現在はLampと共に一棟貸し宿「inishie」の開業準備を進めています。

松岡さんは、古民家に初めて出合ったときの衝撃を振り返ります。

「森と小川に抱かれたこの場所に一目ぼれしました。ここなら、自然と文化がいきる宿になると確信したんです」

画像3: 遠藤家住宅・inishie

3万坪を超える広大な敷地に、最大10名まで宿泊可能な一棟貸しの宿は、2026年に開業予定。森の遊歩道や小川、星空、朝の小鳥の声――自然に没入するスリープツーリズムを目指すといいます。食事は自炊スタイルで、島の無農薬野菜や肉、こだわりの器、自然由来の調味料を用意し、“暮らすように泊まる”体験が待っています。

島の恵みをふるさと納税で。黒毛和牛と安納芋を、海風に吹かれて楽しむ

旅の終わりに選んだ食事は、海が見える草原でのバーベキュー。眼下に広がる青い海、ゆるやかな丘、吹き抜ける潮風。のんびり草をはむ牛たちの姿が遠くに見え、島のリズムに身を委ねる豊かな時間が流れます。

画像1: 島の恵みをふるさと納税で。黒毛和牛と安納芋を、海風に吹かれて楽しむ

炭火にのせたのは、古田校区で育った黒毛和牛。牧草の香りが際立ち、すっきり甘い脂の旨みがじんわりと広がります。やわらかさと、どこか素朴な力強さ。その味わいに、思わず手を止めて景色を眺めてしまうほどでした。

もうひとつの主役は安納芋。炭のそばに置くと、皮の内側から蜜がにじみ、ホクホクとしたフレッシュな甘さが舌の上でほどけていきます。芋の甘さとふくよかな香りが重なり、遠くで波が寄せる音まで、静かに心に残ります。

画像2: 島の恵みをふるさと納税で。黒毛和牛と安納芋を、海風に吹かれて楽しむ

実は、この黒毛和牛も安納芋も、どちらもふるさと納税の返礼品として届けられる品です。旅先で出合った味を、今度は自宅のキッチンや庭先でゆっくり味わう。そんな楽しみ方ができるのは、ふるさと納税ならではの魅力です。

JALふるさと納税(西之表市)

暖かい冬と、少しばかり早い春の訪れ。種子島の旅の記憶は、また次へ

炭の匂い、山の向こうから吹く風、ゆるやかな時間。旅のすべてを一緒に持ち帰ることはできなくても、一口ごとに旅の景色が鮮やかに蘇るはずです。

種子島には乗務で何度も訪れている山本さんにとっても、忘れられない思い出になったようです。

「こんなに素晴らしい場所だとは知りませんでした。とくに食材が豊富で、次に訪れたときにどんなおいしさが待っているか、今から楽しみです」

ほどなく、本土よりもいくぶんか暖かい冬が訪れます。春の訪れもまた早く、古田校区では2月に河津桜が満開を迎えます。夜間にはライトアップも施され、賑わいを呼び込むのだとか。いつかまた島を訪れるまで、海と草原のあいだで味わった温かなひとときが、きっと胸の奥で思い返されることでしょう。

関連記事

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

This article is a sponsored article by
''.