実は宮崎が近海カツオ一本釣り漁獲量日本一！ “カツオのまち”で旬を味わうグルメ旅

※価格は税込み表記です。

農業遺産にも登録。宮崎の近海カツオ一本釣り漁業とは

カツオ一本釣り漁業は、読んで字のごとくカツオを竿一本で釣り上げる漁のこと。効率的に大漁を狙えるまき網漁ではなく、一本釣りを採用する大きな理由は品質を落とさずにカツオを獲れるから。

カツオは一網打尽に獲ると網の中で暴れてぶつかり合い、体温上昇による身焼けなどを起こして味が劣化しやすい魚です。その点一本釣りであれば干渉がなく、傷もつきません。

また、カツオだけを狙うので他魚種の混獲がなく、乱獲になりにくいこともポイント。海洋環境にやさしいサステナブルなこのカツオ漁法を、日本で最も盛んに行っているのが宮崎県です。

宮崎で獲れるカツオの歴史とおいしさ

宮崎におけるカツオ漁の歴史は古く、平安時代中期に編さんされた書物『延喜式』には「堅魚（カツオ）の貢納地に日向（ひゅうが）」との記載が。また、一本釣り漁は江戸時代中～後期に紀州藩（和歌山県）から飫肥（おび）藩（宮崎市中南部～日南市）に伝わったといわれ、現在最もカツオ漁の盛んな地域が日南（にちなん）市です。

日南市は、沖合の日向灘やその近海に黒潮が流れ、カツオをはじめとした魚の名漁場となっています。漁師はこの恵まれた環境下で長年一本釣りを行い、さらにその漁船造りのため、地域では船材に適した飫肥杉の人工造林が取り組まれてきました。

林業を活用した伝統漁業は農林水産省によって評価され、2021年に「日南かつお一本釣り漁業」は日本農業遺産に認定。地元ではこうした称賛を受けて、カツオによるまちおこしにも積極的に。

特製のタレに漬けたカツオの刺身をご飯にのせてダシやお茶をかけて味わう郷土料理「かつおめし」や、漬けカツオを自分で炙って食べる新ご当地グルメ「日南一本釣りカツオ炙り重」といった料理のメニュー化を励行したり、各地で消費をPRするイベントを開催したりと、宮崎県のカツオ熱は年々高まっています。

なお、日南におけるカツオ料理はそのまま刺身で食べるのがポピュラー。一方で、表面を炙るカツオたたきはそこまで食べません。理由は、漁港が近くカツオの鮮度が良いため炙る工程が不要だったからです。

一般的にカツオはアシ（鮮度の劣化）が早いといわれますが、一本釣りの新鮮なカツオを味わえる日南ではたたきが浸透しなかったともいえるでしょう。この記事ではあえてひと手間加えたカツオの地元グルメを紹介していますが、もし現地でカツオを味わう際は、刺身でもご賞味を。

地元ならではのカツオの楽しみ方を知る

ここからは、県内のカツオ聖地・日南の有名店や催しを紹介。食事にお土産にと、ぜひ活用ください。

地元名物を一度に味わえて大満足。「びびんや」のカツオ炙り重

戦後、日南ではじめた食堂を二代目が油津港のレストランへと業態転換し、さらに三代目が同港正面への移転を機に1998年に開業したのが「びびんや」。「びび」とは日南の方言で魚を意味し、地魚を使った郷土料理を100種類以上提供しています。

三代目店主は東京の和食店で修業した経験をもち、目利きも包丁さばきも一流。天ぷらや海鮮フライなど選べるメインに、刺身、うどん、茶碗蒸しなどが付いた人気の「びびんやセット」（1,900円）や、すり身を麺に仕立てた郷土食「魚（ぎょ）うどん」（750円）などもここだけの一品ですが、ぜひ味わいたいのが「日南一本釣りカツオ炙り重」（1,500円）です。

こちらは日南市が地元の飲食店と2010年に開発した新ご当地グルメで、2種類の味付けの漬けカツオを七輪とともに供する重箱膳です。同店ではカツオ酒盗やワサビなどを使ったオリーブオイルダレと、ゴマ油が香るコチュジャンダレの2種を用意。さらにチキン南蛮やミニ魚うどんといった郷土食もセットで、味も量もおトクさでも大満足の内容です。

カツオは生で食べられる、獲れたての身をあえて漬けにして提供。まずはそのまま、次に炙ってお重ご飯と、ラストはカツオダシをかけてお茶漬け風にと、多彩な食べ方で楽しめます。

古くからの日南名物、魚うどんがセットなのもうれしいポイント。かまぼこともはんぺんとも違う、ふっくらもちっとした新食感で、丸く食べごたえのある太麺とダシの効いたつゆとの相性も抜群です。平日の開店前から行列ができる人気ぶりですが、それだけの価値がここにはあります。

びびんや

創作美食と郷土飯に舌鼓。「かつを専門店」の炭火焼きとかつを飯

JR日南線「油津駅」から徒歩3分と、電車でのアクセスも至便な居酒屋が「日南酒処 かつを専門店」。その名の通り、カツオ料理に特化したメニュー構成となっており、定番に郷土食、創作料理と20種類以上がバリエーション豊富にそろっています。

開業は2021年。共同経営者のひとりがカツオ漁師の家柄であり、いわば漁師直系店なので良質かつ鮮度抜群なカツオをリーズナブルな価格で提供できるのです。そんなプロの店でまず紹介したい傑作が、「ゴロゴロ肉鰹の炭火焼き」（写真は中サイズ1,250円）。

こちらは宮崎名物の鶏炭火焼きをイメージし、カツオを炭火で炙ったオリジナルメニュー。炙ることでカツオ本来の力強いうまみをいっそう引き出し、炭火焼きによって肉のような香ばしさに。おいしいカツオに食べ慣れた地元住民からも「新感覚の味」「まるでステーキみたい」と高評価で、同店一番のおすすめメニューとなっています。そしてもう一品紹介したいのが「かつを飯」（750円）。

この料理は全国各地に漁師飯として存在しますが、日南では漬けとカツオのダシ茶漬けで味わうのがポピュラー。新鮮で味の濃いカツオは九州の甘い醤油漬けダレと好相性で、ダシをかけても主張がしっかり。同店には地元の芋焼酎をはじめお酒も豊富なので、ぜひ豊富なカツオつまみとともに晩酌を。

日南酒処 かつを専門店

日南カツオのお土産なら漁港前の「港の駅めいつ」で

日南市に数カ所あるカツオ漁港の中でも基地的存在となっているのが目井津港。漁獲高で日本一になった竜喜丸が停泊している漁港前にある美食スポットが「港の駅めいつ」です。

物産館とレストランのほか、目井津公民館なども併設された地域のコミュニティとなっており、多くのお客さんでにぎわっています。鮮魚や加工品が市価より安く買えるとあって地元住民からの信頼も高く、品ぞろえは間違いなし。

物産館では惣菜や弁当といった日常食のほかに山海の恵みや加工品も充実しており、日南土産を買うにもおすすめ。もちろんカツオを使った商品は多彩なラインナップで、常温、冷蔵、冷凍と形態もさまざまです。

中には「港の駅めいつ」のオリジナル商品もあり、それが「かつおご飯だれ」（702円）、「かつおカレー」（500円）、「かつおめしチップス」（350円）です。特に人気が高いのは「かつおめしチップス」で、年間1万個以上も売れるのだとか。

味の想像がつかない「かつおめしチップス」。食べてみると、チップスは厚みがあってサクふわっとした独自の食感。九州らしい甘じょっぱい醤油風味で、食べ進めるとカツオの魚介風味が豊かに感じられます。容量も88gと想像以上にぎっしり入ったボリュームで、満足できるおいしさでした。かつおめしをチップスにするとは、おそらくここだけの味でしょう。日南を訪れた際はぜひ「港の駅めいつ」にお立ち寄りを。

港の駅めいつ

カツオ漁船の見学や一本釣り体験を楽しむ

カツオの聖地・日南市では不定期でユニークなイベントも開催しています。たとえば、カツオ漁船の内部を船頭さんの案内で見学したり、実際の釣り竿とカツオの模型で一本釣りを疑似体験したり、港や町を散策してカツオ料理を食べたり。スケジュールなど、詳しい情報はWebサイトをご確認ください。

宮崎県日南市南郷町

日本一だから味も種類もピカイチ。カツオを巡る日南旅へ！

日南はパワースポットの「鵜戸（うど）神宮」や、イースター島公認のモアイ像で有名な「サンメッセ日南」など観光スポットも豊富ですが、地元グルメを探すなら日本一の一本釣りカツオは味わいたいところ。ぜひこの記事を参考に、カツオを巡るグルメ旅も楽しんでください！

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