とはいえ、生活を大きく変える決断には不安がつきもの。まずは気軽に現地を訪れたり、経験者の話を聞いたりして、イメージを具体化するのが一番です。今、2地域居住を推奨する自治体では、地域のさまざまな魅力や暮らしのリアリティを感じることができる機会を提供しています。OnTrip JALでは、そんな各地の「2地域居住」の魅力を取材。さまざまなエリアの情報を、連載記事で紹介しています。
2地域居住についてもっと知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
https://ontrip.jal.co.jp/_tags/2地域居住
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今回ご紹介するエリアは、福岡県・宗像市。宗像市は、福岡市と北九州市のちょうど中間に位置する人口約9万7,000人の街です。福岡市の中心部から電車でわずか30分というアクセスの良さに加え、海と山が織りなす豊かな自然のある街は、新たな生活の場として十分に魅力的です。また、2017年に『「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群』が世界遺産に登録されており、深い歴史と文化が息づいていることが感じられる街でもあります。
今回は、宗像市にUターンし、デザイナーやプロデューサーとして地元のさまざまな地域創生活動に取り組んでいる谷口竜平さんとそのご家族に、宗像市を案内していただきました。
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祖父母から受け継いだ実家をシェアハウスにしたり、7,200坪の広大な里山にツリーハウスを作ったり、離島で仲間と会社を立ち上げ、宿泊施設を運営したり。土地の魅力と資源を生かしたプロデュースを続けている谷口さん。奥様は編集者でもある沙恵さん、5ヶ月の息子・岳(たける)くんの3人家族です。「宗像では広い土地に家を建てることが夢ではありません。自分の庭でBBQも当たり前なんですから!」と地元の良さを語ります。
巨大団地が、緑あふれる居住区へ生まれ変わる
九州最大級の団地として知られた「日の里団地」は今、50年の時を経て再開発が進んでいます。古くなった棟を解体し、大きな緑地を新たに造成。その中に64棟の戸建住宅を建てることで、人と緑が寄り添うエリアとして生まれ変わるのです。この未来型住宅エリアの完成は2022年の予定。今、着々と工事が進められています。
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谷口さんがまず紹介してくれたのは、この団地再開発のディレクターである東邦レオ株式会社の吉田啓助さん。「自然があって、気持ちがいい空間の中で生活できるのが最大の魅力です。家ごとに小さな庭があるのではなく、大きな緑地が中心にあって、住民みんながそこでBBQをしたり、ボール遊びをしたりできるようになります。家を建ててから庭を作るという従来の発想とは逆なんです」と、エリアの特長を教えてくれました。
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敷地内には戸建エリアのほかに、人々が集まってコミュニケーションが取れる生活利便施設エリア「さとづくり48」も計画されています。建物は1棟だけ残された団地(旧48号棟)。この5階建ての建物をリノベーションし、1階に地ビール醸造場と販売を行うブリュワリー、DIY工房、そして保育園、2階には障がい者福祉施設など“暮らし”を考えた施設が入居することになっています。今後、宗像の食材が味わえる施設も企画されているとのこと。
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注目したいのが、1階に登場する「ブリュワリー」です。宗像市は昔から日本酒づくりが盛んに行われてきました。その原料となる米はもちろん、実は麦の栽培も多いとのこと。ここでは宗像産の大麦を使ったクラフトビール「さとのBeer」が味わえるようになります。
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さとのBeer(330ml)
気になるその味は、癖がなく、すっきりとした飲み心地。これはベルギーの農家が冬に仕込み、暑い夏にグビグビと飲んでいたセゾンビールを意識したもので、宗像産の大麦がその特徴に合っていたのだとか。ホップを多めに使用し、フルーティーさが際立つ飲みやすい地ビールです。これを、緑あふれる庭で飲んだら……幸せな気分になりそう。地元で活躍されている方々の似顔絵が描かれ、印象的なデザインです。
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ここに自分の家を持ったら、家具を作ったり、手入れをしたり、創作活動をしてみたくなるかもしれません。その気持ちに応えてくれるDIY工房も入居予定です。ジグソーパズルのようにつながる椅子の制作も気軽にトライ。アメリカ産の大型木材3Dプリンターで、お好みの家具を作るなど、これまで興味があっても手をつけられなかった「ものづくり」の時間を日常に取り入れることも容易です。
問い合わせ先:宗像市 都市再生課
電話 | : | 0940-36-9777 |
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日本家屋を利用した趣ある建物で、家族と味わう手打ち蕎麦
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谷口さんが次に紹介してくれたのは、かつて唐津街道としてにぎわいを見せていた「原町(はるまち)」です。この地では、歴史的な景観の継承のために古民家の修繕などが行われています。昔懐かしい建物が今も多く残り、古い街並みが守られている場所です。
その中の名所のひとつが「街道そば たからい」です。築150年以上という造り酒屋の屋敷を生かした日本家屋の中で、こだわりの手打ち蕎麦を味わうことができます。
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一番人気メニューは「蕎麦三昧」1,650円(税込)で、温かい蕎麦と冷たい蕎麦から選べます。写真はごまだれ、とろろ、つゆの3種類が楽しめる冷蕎麦。蕎麦がきの包み揚げに味ごはん、デザートに抹茶と蕎麦ぜんざいがついており、蕎麦の香りと美味しさを十分に楽しむことができます。
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この店は沙恵さんもお気に入りの場所。「座敷は畳になっているので、子どもと一緒でもゴロンとできて安心です。個室もあるから、子育て中のママ友と集まるのもいいですね」。 友人同士はもちろん、家族でもゆっくり会話が楽しめそうです。
街道そば たからい
住所 | : | 福岡県宗像市原町163 |
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電話 | : | 0940-36-0302 |
営業時間 | : | 11:00~17:00、18:00~20:00(18:00以降は要予約) |
定休日 | : | 火曜 |
ふかふかの土で育った、体に優しい低農薬みかん
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ランチのあとは谷口さんおすすめの農園へ。今もホタルが見られるという小さな清流の先に、みかん畑が広がっていました。ここでは「もぐらみかん」と呼ばれるおいしいみかんが栽培されています。
今回は3代目の川上耕太さんに畑を案内していただきました。「このみかん畑は父の代から45年以上、除草剤を使わず、雑草も刈り取って緑肥にしています。できるだけ、自然にも人間にもやさしい農業を続けていきたいのです」。そんな想いから育てられた土は、昆虫もミミズもいっぱい。それを食べるモグラもいっぱいいるため、土が掘り返されてフカフカになっていました。
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その土から生まれるみかんの味は、甘みと酸味のバランスが良い、昔懐かしい味として愛され続けています。みかんだけでなくライムやお米も低農薬栽培。みかんは学校給食に利用されています。夏を除いて、約12種類の柑橘類を収穫。「安全なものをこだわって作っている農家が宗像にあるのも魅力ですし、若い人が後を継いでいるのもうれしいですね」と谷口さん。宗像市の若い力が街を育てています。
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川上農園
住所 | : | 福岡県宗像市大穂475 |
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電話 | : | 0940-36-2713 |
web | : | 川上農園 公式サイト |
宗像市のおいしい食材が集結。地元の人も愛する直売所
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続いては市場へ。大根、水菜、生姜に隼人ウリ。宗像市がどれだけ食材豊かなのかを実感できるのが産直市場「かのこの里」です。午前中にはかなり売れてしまうほどの人気ぶり。店内には生産者マップが掲示されているので、作り手の顔を見ながら買い物ができ、食育にもつながりそう。地産地消を掲げた直売所だけに、学校給食にもここの野菜が利用されています。
野菜はもちろん、果物、花、肉、魚、味噌や醤油などの加工品まで、メイドイン宗像の商品がずらり。さらに驚くのが、その値段です。沙恵さんが今晩の食材に……と手にした鶏肉は、なんとひとパック100円台!野菜類も家計にやさしい値段でした。
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おすすめされたのが「あかもく」と呼ばれる地元産の海藻。ネバネバとした食感でポン酢と味わうと最高なのだとか。
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宗像産の大豆を使った豆腐や、地元の醤油蔵がつくるバリエーション豊かな醤油などもあります。宗像市の離島・地島(じのしま)特産の椿油は、炊き込み御飯に少し入れるだけで香り高い仕上がりに。川上農園の「もぐらみかん」はこちらでも販売されていました。まさに宗像市が誇る「おいしい!」が集結した直売店です。
とれとれプラザ かのこの里
住所 | : | 福岡県宗像市原町153-1 |
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電話 | : | 0940-36-7665 |
営業時間 | : | 8:30~17:00 |
定休日 | : | お盆と年末年始 |
公園に図書館、プラネタリウム。子育て家族にうれしい複合施設
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最後は谷口さんご家族と一緒に公園へ。宗像市の市花は「カノコユリ」で市木は「クスノキ」なのですが、そこから名づけられたのが、「宗像ユリックス」という複合施設です。ここは、緑が広がる芝生広場を中心に図書館やコンサートホール、プラネタリウム、流水プールの「ゆ~ゆ~プール」に、温水プールやトレーニングジムなどがある「アクアドーム」といった施設が集まる、一日中過ごせる場所です。
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特に3万平方メートルもある広大な芝生広場は、週末になるとたくさんの家族が訪れ、かけっこしたり、ボールを転がしたりする風景が広がります。谷口家はよく、折り畳み可能なテントを張って中でゴロゴロして遊んでいるそうです。空気もおいしくて、のびのびと遊べる公園になっていました。
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教育にも手厚いことで知られる宗像市には図書館が4つもあるそうです。そのうちのひとつがユリックスにあり、館内には幼児向けのコーナーも。靴を脱いで親子で読書タイムを楽しむことができます。
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もうひとつおすすめしたいのがプラネタリウムです。美しい星空を再現するドイツ・カールツァイス社製とあって、その映像の美しさには驚かされます。ドームの直径は12m、座席数は80席とちょうどよい広さ。ここでは子ども向けのプログラムに加え、天体と宇宙についての学習、臨場感あふれる音響装置で音楽に合わせて映像が楽しめるリラクゼーションと、3つのプログラムが用意されています。
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「子どもを持ってはじめて気づいたのですが、子どもも大人も一緒になって体験できるのがいいですよね。ユリックスは、子育てに対するソフト面がとても充実していて、こんな場所での子育てってほんといいなぁと実感しています」と、谷口さんも笑顔を見せていました。
宗像ユリックス
住所 | : | 福岡県宗像市久原400 |
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電話 | : | 0940-37-1311 |
営業時間 | : | 9:00~22:00 |
休館日 | : | 月曜(月曜が祝日の場合は翌平日)、お盆、年末年始 |
図書館
営業時間 | : | 10:00~18:00 |
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休館日 | : | 月曜(月曜が祝日の場合は翌平日)、毎月最後の木曜日、お盆、年末年始 |
プラネタリウム
料金 | : | 大人440円、小中学生210円、幼児(4歳~)140円 |
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上映時間 | : | プログラムごとに上演時間が異なります。詳しくは下記webサイトでご確認ください。 |
web | : | 宗像ユリックスプラネタリウム 公式サイト |
働く環境も支援体制も整った、コワーキングスペース
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ここまで、宗像市の暮らしを充実させるスポットを紹介してきましたが、2地域居住では「働く場所」も重要な要素のひとつ。そこで、JR赤間駅と直結したコワーキングスペース「fabbit宗像」をご紹介しましょう。
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個別のオフィスや会議室、多目的ルームなどがあり、会員になると24時間、年中無休で利用できます。また宗像発の地方創生を目指し、創業経験者を中心とした地元サポーター12名が運営に協力しているのも特徴。そのひとりが、谷口さんです。宗像で仕事をしながら、自分らしい生活を送りたい人にも、便利でうれしい支援体制が整っています。
fabbit宗像
住所 | : | 福岡県宗像市栄町2-1 赤間駅第二自転車駐車場2階 |
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電話 | : | 0120-753-361 |
web | : | fabbit 公式サイト(fabbit宗像) |
全国展開するfabbitの詳細はこちらの記事をご覧ください。
JR博多駅から電車で30分、福岡空港からは40分という近さにありながら、自然豊かで食が豊富な宗像市。子育て世代がイキイキと生活している姿に、この街の新しい未来を感じずにはいられません。住みやすい場所で充実した仕事に就き、この街で子育てしたくなるのもうなずけます。ライフスタイルを見直したくなったら、まずは行動。気軽に宗像市を訪れてみませんか。
宗像市
https://www.city.munakata.lg.jp/
※2025年1月10日に一部内容を更新しました
他のエリアの情報はこちら
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平日は都市部で仕事をし、週末は地方で豊かな自然に触れ合いながら静かに暮らす。そんな魅力あふれる2地域居住を通じて、地域の魅力をお伝えします。
掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。