世界中でここにしか見られない固有種の生き物にあふれ、世界自然遺産の登録候補地ともなっている奄美大島。手つかずの自然の豊かさから「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。
奄美大島のいちばんの魅力は、この豊かな大自然と、そして観光客をも温かく迎え入れてくれる島の人々(地元では島っちゅと呼びます)。都会の喧騒を離れて、南の島に癒しを求める方々にぜひともおすすめしたい、奄美大島の魅力をご紹介します。
文・写真:勝朝子 編集:原里実(CINRA)

亜熱帯植物の森で、ここにしかいない生き物に出会う

金作原原生林

奄美大島が多様な生き物に恵まれているその理由は、約1,000万年前まで遡ります。当時ユーラシア大陸の一部だった奄美大島は、地殻変動を繰り返すなかで島として切り離されました。そのあと氷河期や天敵などにより、大陸側ではいくつかの種が絶滅。環境の異なる奄美大島では、生き残った生物が独自の生態系を育むこととなったのです。

島のちょうど中央のあたりに広がる金作原(きんさくばる)原生林は、まさに奄美の生物多様性の宝庫。奄美大島に行かなければ絶対に見られない、たくさんの固有植物や動物たちと出会えます。

画像: 森のなかでは、大型シダ植物のヒカゲヘゴが空を覆う

森のなかでは、大型シダ植物のヒカゲヘゴが空を覆う

金作原原生林を訪れる際は、ぜひガイドツアーを申し込んでみてください。「この植物が花を咲かせるとこうなる」「この木の枝がこんなふうに曲がっているのはなぜか」「この鳴き声の主の鳥は」など豊富な知識で案内してもらえると、目に飛び込んでくる珍しい動植物もいっそう面白さを増します。

奄美群島には、奄美群島エコツーリズム推進協議会が認定した「エコツアーガイド」の制度があり、ウェブサイトから旅の目的に合ったガイドさんを探すことができます。

画像: 今回の取材では「観光ネットワーク奄美」にガイドを依頼

今回の取材では「観光ネットワーク奄美」にガイドを依頼

「原生林」とは、人の手がほとんど入ったことのない森のこと。ですが道は通っているので、トレッキング気分で安全に自然観察を行うことができます。多くのツアーは、島の中心市街地の名瀬で集合し、ガイドさんの車で移動。集合から解散まで約3時間の行程です。

もっと自然観察を楽しみたい人には、夜の生き物の観察ツアーも魅力的です。国の特別天然記念物に指定されているアマミノクロウサギに始まり、アマミヤマシギやルリカケスなどの野鳥、アマミイシカワガエル、アマミトゲネズミなど、一人ではなかなか見つけることの難しい珍しい動物たちに、ガイドさんの導きで出会うことができます。

画像: 奄美大島と近隣の徳之島にしか生息しないとされるアマミノクロウサギ

奄美大島と近隣の徳之島にしか生息しないとされるアマミノクロウサギ

おまけの情報を一つ。ガイドさんたちはお店情報も詳しいので、おすすめの料理店を聞いてみるのも裏テクニックですよ。

金作原原生林
住所鹿児島県奄美市名瀬大字朝戸 金作原
観光ネットワーク奄美
定休日なし
営業時間9:00~18:30
webhttp://www.amami.com
住所鹿児島県奄美市名瀬幸町19番5号

どこまでも続く青にため息。南の島の「天然プール」

あやまる岬

奄美大島の自然の魅力は、森だけではありません。南国の島ならではの珊瑚礁と、水平線まで続く青のグラデーションが広がる、海の美しさも自慢です。少し潜れば珊瑚や熱帯魚が見られるビーチもたくさん。

奄美が誇る10の景勝地「奄美十景」の一つに数えられているのが、島の北東側に突き出た岬、あやまる岬。丘の上の展望台から眺める太平洋は圧巻です。

画像: あやまる岬から見下ろす景色

あやまる岬から見下ろす景色

さらにおすすめしたいのが、丘を降りたところに広がる天然プール。観光客にはあまり知られていませんが、潮が引いたときにだけできる海水のプールなんです。低いコンクリートの壁で海と仕切られており、浅くて安全なため、地元の子ども連れファミリーには御用達のスポットです。

画像: あやまる岬の天然プール。潜ってみると熱帯魚もいる

あやまる岬の天然プール。潜ってみると熱帯魚もいる

丘の上に2018年5月にオープンしたばかりの、「みしょらんカフェ」にもぜひ立ち寄ってみてください。コーヒーやソフトクリームはもちろん、奄美の名物料理「鶏飯(けいはん)」も食べられます。観光案内所も兼ねているので、見たいもの、食べたいものなどスタッフに気軽に相談してみましょう。

画像: スタッフの深田睦月(ふかだむつき)さん

スタッフの深田睦月(ふかだむつき)さん

天然プール(あやまる岬観光公園内)
住所鹿児島県奄美市笠利町大字須野
遊泳期間7月20日〜8月31日
営業時間8:30〜16:30
みしょらんカフェ
定休日年末年始
営業時間9:00〜17:00(16:45オーダーストップ)
webhttps://ayamaru.amamin.jp
住所鹿児島県奄美市笠利町須野682

島のお母さんが営む居酒屋で、名物・黒糖焼酎をたしなむ

むさし屋

あやまる岬から車で約15分。地元の笠利町で集まりがあるときには必ず候補に挙がるのが、アットホームで飾らない雰囲気のみんなの台所「むさし屋」です。女将の川畑和乃(かわばたかずの)さんは、訪れる人々をいつもやさしく迎えてくれる島のお母さん。メニューの相談はもちろん、島でおすすめのスポットもアドバイスしてくれますよ。

画像: 女将の川畑さんとお店のスタッフ

女将の川畑さんとお店のスタッフ

島の人が大勢で行くときは必ず頼むのが、とんかつがトッピングされた大盛りのチャーハン「むさし屋スペシャル」。奄美の名物料理も、トビンニャと呼ばれる地元産の貝の塩ゆで、アオサやモズクの天ぷら、島らっきょうなど豊富に揃います。

なかでも筆者のおすすめは「油そうめん」。奄美の家庭料理で、そうめんと野菜炒めを和えたものです。それぞれの家によって具も味つけも千差万別ですが、共通しているのは「優しさ」。「むさし屋」の油そうめんは、豚と野菜の癒し系です。

画像: 優しい味わいの島料理、油そうめん

優しい味わいの島料理、油そうめん

奄美群島でしか製造されていない黒糖焼酎も、多くの種類を取り揃えています。甘そうな印象の名前ですが、蒸留の過程で糖分は除かれています。スッキリした飲み口のものから、木樽熟成でラムのような香りのものなどバラエティー豊かなので、ぜひいろいろと試してみてください。

画像: むさし屋
むさし屋
定休日不定休
営業時間11:30〜13:30、17:00~23:00
住所鹿児島県奄美市笠利町外金久79-1
電話0997-63-1525

漁師のお父さんが、鮮度と味にこだわる店

番屋

続いてご紹介するのは、笠利町から市街地の広がる名瀬に向かう途中、龍郷町の「番屋」。自分の親や親戚が来たらどこに連れて行こう? そんなときに思い浮かぶお店です。

「番屋=漁師小屋」というお店の名前にも表れているように、店主の岩崎勝(いわさきまさる)さんは70代の現役漁師さん。素材の鮮度と料理の味つけには定評があるお店です。妻の恵子(けいこ)さんが獲れたての魚を料理し、息子の恵一(けいいち)さん夫婦が切り盛りする店内は、味にうるさい地元の方でいつも賑わっています。

画像: 番屋
画像: 岩崎恵一さんご夫婦

岩崎恵一さんご夫婦

メニューを開けば、海鮮丼やお刺身定食、ちょっと豪華にイセエビ定食など、どれも気になって目移りしてしまうラインナップがずらり! なかでも、ここに来たらぜひ食べていただきたいのがアラ煮定食(1,100円)。お刺身を取ったあとの頭や尻尾、中骨の部分を甘辛い醤油で炊いてあります。

画像: ボリューム満点のアラ煮定食

ボリューム満点のアラ煮定食

酢の物と奄美名物のパパイヤ漬け、そして奄美の郷土料理「マダ汁」と呼ばれるイカの墨を入れた真っ黒な汁椀がつきます。このマダ汁、見た目は真っ黒で地味ですが、美味しいかつおだしにイカ墨のコクが加わり絶品なのです。デトックス効果もあるらしいので、ぜひ一度トライを。

番屋
定休日水曜日
営業時間11:30〜14:30、17:00~20:00(日曜日は昼のみ)
住所鹿児島県大島郡龍郷町龍郷8-2
電話0997-62-2125

島土産のセレクトショップには、地ビールから大島紬までずらり

Frasco(フラスコ)

番屋からさらに名瀬方面へ向かうと、途中の大勝集落にお土産のセレクトショップ「Frasco(フラスコ)」があります。奄美の特産品を扱う通販サイト「がじゅMarine」を運営する牧統大(まきとうまさる)さんと、妻の英里奈(えりな)さんのお店です。

画像: 牧統さんご夫婦

牧統さんご夫婦

お店に並んでいるのは、お二人がつくり手とじっくり対話しながら、こだわって選び抜いた商品だけ。「Frasco」はただのお土産物屋さんではなく、奄美大島の魅力を外の人に伝えるセレクトショップなのです。

伝統産業の奄美大島紬グッズに始まり、お菓子、地ビール、そして地元の職人さんとコラボしたオリジナル商品まで盛りだくさんの品揃えです。筆者のおすすめは、島の特産品タンカンを使ったジュースと、大島紬のポケットチーフ。

画像: Frasco(フラスコ)

タンカンは、2月から3月頃にかけて旬を迎えるオレンジの一種です。甘みと酸味のバランスが良く、濃厚な味わいが人気。旬の季節にはぜひフレッシュなものを食べていただきたいですが、ジュースなら通年で手に入ります。

大島紬は約1,300年もの永きにわたり受け継がれてきた、奄美の伝統工芸品。絹の糸を紡ぎ、染め上げ、織り、大変な手間暇をかけてつくられる高級品の大島紬は、「着物の女王」とも呼ばれます。それを「もっと手軽に現代の生活のなかで使ってもらいたい」と考案された商品が、ポケットチーフです。ぜひ一枚お土産にして、本物を身につけてください。

「Frasco」ではレンタサイクルも提供しています。晴れた日は高い空の下、のびのびと島を自転車で探検するのも一興。電話での事前予約が必要なので、まずはお問合せを。

Frasco
定休日水曜日
営業時間9:00〜18:00
webhttps://frasco.amamin.jp
住所鹿児島県大島郡龍郷町大勝3114-2

2016年版「JTB地域パワーインデックス調査」によると、奄美大島への来訪者の「人」に対する満足度は、なんと全国平均の約2.5倍。人とつながると、旅は何倍も面白くなります。そのためには、ぜひまず島っちゅに声をかけてみてください。

奄美の島っちゅは、島のことが好きで好きでたまらない人たちばかり。島に来てくれた人に、もっと島を好きになってもらいたい、また何度でも来てほしい。その一心で、親切にいろいろなことを教えてくれるはずです。

ガイドブックに載っていない島っちゅのとっておきを教わりながら、癒しの島・奄美大島を探索してみませんか?

勝 朝子

ウェブクリエイター、ITサポーター、奄美大島紬のポケットチーフ「フィックスポン奄美」代表。東京出身。縁あって奄美大島出身の夫と結婚。以来毎年奄美大島を訪れ、2012年奄美大島に移住。奄美の自然、人、文化、食べ物が大好きで、島の隅々まで日々探検中!(奄美黒糖焼酎語り部 第88号)

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