紅葉で彩られる秋の京都は格別の美しさ。幻想的なライトアップ、歴史が紡ぐ文化遺産との競演など一期一会の感動をもたらしてくれます。秋は過ごしやすい気候で、観光にもベストシーズンです。
本記事では、数ある京都の紅葉名所から11カ所を厳選。2023年の見頃時期とあわせてご紹介します。京都でしか見られない美しい紅葉を楽しんでください。

昼と夜で変化する表情を楽しむ 。ライトアップも美しい紅葉スポット

京都は至るところに紅葉狩りの名所がありますが、紅葉は日中だけではなく、ライトアップされた夜の姿も美しいもの。ここでは、昼と夜で2度楽しめる紅葉スポットを厳選してご紹介します。昼夜で異なる美しさを見比べてみてください。

北野天満宮の深紅に染まる紅葉を心に刻む

画像1: 提供:北野天満宮

提供:北野天満宮

北野天満宮は、学問の神様・菅原道真公を祀る全国天満宮の総本社で、「天神さま」と呼ばれ親しまれています。創建以来、学問や芸能の神様として信仰され、その御利益を求めて地元の人だけでなく、全国からたくさんの参拝客が訪れるほど。

国宝にも指定されている御本殿は、豊臣秀吉公の息子である豊臣秀頼公が造営したもので、豪華絢爛な桃山建築を今に伝えています。

京都随一の梅の名所としても人気ですが、秋の紅葉も見事。

画像2: 提供:北野天満宮

提供:北野天満宮

2023年11月11日から12月3日には、毎年恒例の夜間ライトアップが行われます。豊臣秀吉公が築いた史跡御土居で公開されるもみじ苑が幽玄な雰囲気に様変わり。色とりどりに染まる約350本の紅葉が朧げな光に照らされ、人々を魅了します。

画像3: 提供:北野天満宮

提供:北野天満宮

ハイライトは、もみじ苑内に流れる紙屋川を覆うように彩る紅葉と、朱塗りの鶯橋の競演です。紙屋川の水面には艶やかな紅葉が映り込み、視界いっぱいに錦秋の世界が広がります。

紅葉狩りを楽しんだあとは茶店にて温かいお茶とお菓子が楽しめます。楽しかった紅葉狩りを振り返りながら、ほっと一息ついてください。

北野天満宮

住所京都府京都市上京区馬喰町
電話075-461-0005
拝観時間7:00~17:00
※時期により変動
紅葉公開日時10月28日(土曜)〜12月3日(日曜)
9:00〜16:30(16:00受付終了)
拝観料大人1,200円、小人600円(茶菓子付き)
アクセス市バス「北野天満宮前」下車 徒歩1分
webhttps://kitanotenmangu.or.jp/
紅葉の見頃予想11月中旬~12月上旬
2023年の
ライトアップ
2023年11月11日(土曜)〜12月3日(日曜)
日没〜20:00(19:30受付終了)

東寺で国宝・五重塔と紅葉の競演を目に焼き付ける

画像: iStock/lkunl

iStock/lkunl

京都駅の近くにある東寺(教王護国寺)は、日本最古の密教寺院であり、世界遺産にも登録されています。

東寺といえば、約55mの高さを誇る五重塔がひときわ目を引く存在です。
現存する木造建築としては日本一の高さで国宝にも指定されている五重塔は、徳川3代将軍家光によって再建されました。

毎年紅葉の時期に行われる秋の特別公開では、五重塔の初層が公開され、通常非公開の内部を見ることができます。

画像: iStock/Jii1959

iStock/Jii1959

京都を象徴するようなこの五重塔がより輝きを放つのが、夜のライトアップです。赤や黄色に染まった約200本もの木々に囲まれ五重塔が夜空に浮かび上がり、より一層美しい姿に。

どこを切り取っても絵画のように美しい秋の東寺ですが、五重塔の前にある瓢箪池を入れて写真に収めてみてください。そこには、深紅に染まった紅葉と五重塔が池に映り込み、別世界のような光景を残すことができるはず。

秋のライトアップは開門前から行列ができることもあるので、時間をずらして入場するのがベターです。

東寺

住所京都府京都市南区九条町1
電話075-691-3325
拝観時間8:00~17:00(受付終了16:30)
拝観料五重塔、金堂・講堂 800円
ライトアップ 1,000円
アクセス近鉄「東寺」下車 徒歩10分
webhttps://toji.or.jp/
紅葉の見頃予想11月中旬~12月上旬
2023年の
ライトアップ
2023年11月1日(水曜)〜12月10日(日曜)
18:00〜21:30(21:00受付終了)

存在感ある紅葉と水面に映る風景、そしてオーケストラの音色との競演は圧巻

画像: 提供:東本願寺

提供:東本願寺

同じく京都駅近くでおすすめの紅葉ライトアップが、「渉成園(しょうせいえん)」で実施されます。渉成園は、地元の方たちから“おひがしさん”と呼ばれ親しまれる「東本願寺」から徒歩5分の飛地境内地(とびちけいだいち)にある庭園です。1641年(寛永18年)に江戸幕府の第3代征夷大将軍・徳川家光から寄進された地で、茶道や庭園設計にも精通していた武将・石川丈山によって作庭されました。1936年(昭和11年)には、文人趣味にあふれる仏寺庭園として国の名勝に指定されています。

2023年、渉成園では夜間参観を実施。園内は色とりどりの光でライトアップされ、園内にある色づいた楓やイチョウの存在感がより一層際立ちます。そして、広さ1,700坪の「印月池(いんげつち)」に映し出される庭園風景との美しい競演は見事。荘厳な雰囲気に圧倒されることでしょう。

ライトアップ期間中の2023年11月10・11日には、夜間コンサートも開催。オーケストラの音色と共に、厳かなその空間と風景に浸ってください。

渉成園(東本願寺飛地境内)

住所京都府京都市下京区下珠数屋町通間之町東入東玉水町
電話075-371-9210(参拝接待所/9:00〜17:00)
拝観時間3~10月 5:50~17:30
11~2月 6:20~16:30
拝観料無料
※庭園維持寄付金:500円以上
アクセスJR「京都」下車 徒歩7分
webhttps://www.higashihonganji.or.jp/
紅葉の見頃予想10月下旬から12月上旬
2023年の
ライトアップ
2023年10月28日(土曜)~12月2日(土曜)
17:00~22:00(最終受付 21:30)
※庭園維持寄付金:800円以上

高台寺で趣向を凝らしたライトアップと出合う

京都を訪れたら、風情たっぷりの街並みが残る祇園にも足を運びたいもの。祇園はほかのエリアに比べて比較的コンパクトなので、いくつかの紅葉スポットを歩いて回ることができます。

画像: 高台寺で趣向を凝らしたライトアップと出合う

その中でも独創的なライトアップで人気を集めているのが高台寺です。建立は慶長11年(1606年)。豊臣秀吉の菩提を弔うため、正室のねねによって建立された境内は、気品高く優雅な雰囲気を感じられます。

高台寺では史跡名勝の「高台寺庭園」含め境内全体を毎年趣向を凝らしライトアップします。

大名茶人・小堀遠州が作庭した高台寺庭園には、秀吉ねね所縁の品や部材が堂宇に使用されるなど見どころが数多くあります。

高台寺庭園内には「偃月池」と「臥龍池」の2つの池があり、中でも臥龍池では周りを囲むように木々が赤や黄色に色づきます。静かな水面に紅葉が映りこむ様子はまさに幻想的。息をのむ美しさです。

もうひとつの庭、方丈前庭「波心庭」は、立砂や砂紋で構成された枯山水庭園。大正元年に再興された方丈に相応しい繊細でアーティスティックな印象で、秋の夜にはここでプロジェクションマッピングが行われます。

2023年は10月21日から12月10日まで秋の特別夜間拝観が予定されています。

全く異なる2つのライトアップを堪能できる高台寺で、それぞれの魅力を味わってみてください。

高台寺

住所京都府京都市東山区下河原町526
電話075-561-9966
拝観時間9:00~17:00
※夜間特別拝観は17:00〜22:00(拝観受付終了は21:30)
拝観料大人600円、中高生250円、小学生以下無料
※子ども5人に1人は必ず大人(有料)の同伴が必要
アクセス市バス「東山安井」下車 徒歩7分
webhttps://www.kodaiji.com/
紅葉の見頃予想11月下旬~12月上旬
※混雑状況により入口前で列ができる場合が多くございます
2023年の
ライトアップ
2023年10月21日(土曜)~12月10日(日曜)

嵯峨野トロッコ列車で紅葉のトンネルをくぐる

画像1: 嵯峨野トロッコ列車で紅葉のトンネルをくぐる

京都の紅葉は神社仏閣だけではありません。嵐山方面へ足を運ぶなら、観光列車に乗って紅葉の大海原を旅するのもひとつの楽しみ方。

嵐山にある京都きっての景勝地・保津峡は、秋になるとオレンジや黄色、赤のグラデーションに染まった世界に包まれます。

この保津峡の大自然を肌で感じることができるのが嵯峨野トロッコ列車です。嵯峨野トロッコ列車はJR山陰本線の旧線を活用したレトロな観光列車。嵯峨嵐山から亀岡まで、保津峡を縫うように駆け抜けます。

片道約7.3kmの道中には、保津峡の大自然やトンネル、橋などの絶景ポイントが多数。ユニークな話を盛り込んだ列車アナウンスもお楽しみください。

画像2: 嵯峨野トロッコ列車で紅葉のトンネルをくぐる

夜のライトアップでは、約1,000本の紅葉が900基ほどのライトにより照らされ、闇夜にたくさんの紅葉が浮かび上がります。きらめく紅葉のトンネルや、水面に映える逆さ紅葉など、昼間とは違った神秘的な世界が広がります。

見どころを通るときは速度を落としてゆっくりと走行してくれるので、写真撮影もばっちりです。

画像3: 嵯峨野トロッコ列車で紅葉のトンネルをくぐる

2022年10月15日から12月29日までの期間、紅葉のライトアップとイルミネーション が予定されていて、16:30以降の列車を「光の幻想列車」として運行されます。

紅葉シーズンはチケットが売り切れになりやすいのでご注意を。JR西日本京阪神エリアの一部のみどりの窓口や旅行代理店では乗車1カ月前から購入できるので、早めの購入をおすすめします。

嵯峨野トロッコ列車(トロッコ嵯峨駅)

住所京都府京都市右京区嵯峨天龍寺車道町
電話075-861-7444
運行時間9:02~16:02(10:02が始発の場合あり、季節により臨時列車運行)
運賃片道880円
アクセスJR「嵯峨嵐山」下車 徒歩1分
webhttps://www.sagano-kanko.co.jp/
紅葉の見頃予想11月下旬
2023年の
ライトアップ
2023年10月中旬から12月予定
※詳しい運行日は公式Webサイトをご覧ください

京都旅の大定番、世界遺産・清水寺で秋色に染まる渓谷を一望

画像1: 提供:清水寺

提供:清水寺

京都で最も多くの観光客が訪れるお寺が、清水寺です。
奈良時代、延鎮上人が観音像を刻み、清らかな水が湧き出るこの音羽山の地に小さな庵を結んだのがそのはじまり。のちに初代征夷大将軍・坂上田村麻呂の寄進によってお寺に改められました。

おすすめの紅葉狩りの楽しみ方は、1,000本ほどのもみじが林立する本堂前の錦雲渓をさまざまな角度から眺めること。まずは、仁王門をくぐって壮麗な三重搭を仰ぎ見つつ、本堂へ。崖にせり出すように造られた舞台は、「清水の舞台」として有名です。眼下には紅の雲海を思わせる眺望が広がります。

画像2: 提供:清水寺

提供:清水寺

本堂にお参りしたら、石段を下りずに釈迦堂、阿弥陀堂を経て、舞台と紅葉を望むフォトスポット・奥の院へ。紅雲に浮かび上がる本堂正面と三重搭を同時に望める、境内南端の泰産寺子安搭もお見逃しなく。

子安搭の次は、お寺の由緒ともなった音羽の滝の清水で喉を潤しましょう。観音の金色水で、長寿の円名水として信仰されています。

清水寺は早朝6時から開門しており、開門直後に訪れるのもおすすめ。紅葉の見ごろの時期なら日の出時刻は6時半前後。音羽山の方向からの日の出と紅葉のコントラストを見ることができれば、その日を清々しい気分で過ごせるはずです。

画像3: 提供:清水寺

提供:清水寺

夜になると、例年幽玄の世界を醸し出すライトアップが行われています。清水の舞台が黄金に輝き、雅やかな雰囲気が漂います。

今年は11月18日から30日まで実施される予定です。

清水寺

住所京都府京都市東山区清水1-294
電話075-551-1234
拝観時間6:00~18:00
※夜の特別拝観期間(11月18日~11月30日)は21:00受付終了
拝観料400円
アクセス市バス「清水道」下車 徒歩10分
webhttps://www.kiyomizudera.or.jp/
紅葉の見頃予想12月上旬
2023年の
ライトアップ
2023年11月18日(土曜)〜11月30日(木曜)

古今集にも詠まれた「もみじの永観堂」で多彩な紅葉と対峙

画像: 古今集にも詠まれた「もみじの永観堂」で多彩な紅葉と対峙

哲学の道のほど近く、永観堂は平安時代から「もみじの永観堂」と讃えられてきた京都屈指の紅葉の名所。山裾にそびえ立つ多宝塔を擁した秋の景色が、時代を越え人びとを惹きつけてきました。古今集にも詠まれた「岩垣もみじ」は、今も境内東側で見られるといいます。

境内には約3,000本もの紅葉が群生しているため、どこに目を向けても紅葉と対峙できるのが魅力。そぞろ歩きながら、諸堂と紅葉、庭園と紅葉、放生池と紅葉など、永観堂と紅葉の競演を楽しみましょう。放生池に映り込む紅葉は、風のない日なら水鏡のように見えて幻想的です。

極彩色の阿弥陀堂に祀られる、ご本尊「みかえり阿弥陀」への参拝もお忘れなく。その昔、永観堂の名の由来となった僧・永観が修行をしていたところ、阿弥陀如来が須弥壇から降りて来て、永観を先導して修行をはじめたそうです。驚いてその場に立ちつくした永観に、「永観、おそし」と声をかけたという逸話が語り継がれています。後ろを振り返った珍しいお姿で、その表情は慈悲に満ちあふれています。目を閉じて手を合わせれば心がすっと鎮まることでしょう。

ライトアップも人気で、2023年は11月3日から12月3日まで行われる予定です。

※紅葉時季の拝観順路は一方通行です

永観堂

住所京都府京都市左京区永観堂町48
電話075-761-0007
拝観時間9:00~16:00(受付終了)ライトアップ17:30~20:30(受付終了)
※昼夜入替制
拝観料600円
秋の特別寺宝展期間(11月3日~12月3日)は1,000円
ライトアップ600円
アクセス市バス「南禅寺・永観堂道」下車 徒歩3分
webhttp://www.eikando.or.jp/
紅葉の見頃予想11月下旬~12月中旬
2023年の
ライトアップ
2023年11月3日(金曜)〜12月3日(日曜)

東福寺で紅に染まる圧巻の渓谷美に息をのむ

画像1: 東福寺で紅に染まる圧巻の渓谷美に息をのむ

JR奈良線または京阪の東福寺駅から10分ほど歩いたところに位置する東福寺も、紅葉の名所として名高いお寺。

鎌倉時代、摂政九條道家が奈良の東大寺と興福寺から名をとって建立した東福寺は、室町時代には京都五山に列せられる禅寺として栄えました。禅宗最古の三門(国宝)や、そびえ建つ大伽藍が威容を感じさせます。

画像: 通天橋からの眺め

通天橋からの眺め

画像2: 東福寺で紅に染まる圧巻の渓谷美に息をのむ

ビュースポットは、約2,000本の紅葉が群生する渓谷・洗玉澗(せんぎょくかん)に架かる、臥雲橋、通天橋という名のふたつの橋。赤や黄に染まる紅葉のパノラマが視界いっぱいに広がる景色は、圧巻のひとことです。橋を渡ると真紅の雲の上を歩いているかのような心地になります。通天橋の下では、せせらぎの音を傍らに渓谷を散策することもできます。

例年、11月中旬からの見ごろの時期は開門前から行列ができるほどの人出ですが、渓谷のスケールと比べれば、人の多さも気にならなくなるから不思議です。おすすめの時間帯は、空の青さが際立つお昼ごろ。橋の上では安全面への配慮から写真撮影が禁止されているので、しっかりと目に焼き付けて楽しみましょう。渓谷は撮影できるので、こちらでぜひ綺麗な紅葉を写真に残してください。

例年紅葉の時期には夜間拝観が行われ、境内がライトアップされます。2023年は11月18日~12月3日の期間に完全予約制での実施となります。

画像: 本坊庭園

本坊庭園

渓谷からの絶景を堪能した後は、ぜひ本坊庭園にも立ち寄ってください。昭和の作庭家であり、現代でも根強い人気を誇る重森三玲によるデザインで、方丈の四方を趣向の異なる4つの庭園が囲んでいます。

柱石で北斗七星を描く東庭、砂紋と石組が大海原を思わせる南庭、四角く刈り込んだサツキを配した西庭、苔と石を市松模様に組み合わせた北庭で、三玲が追求し続けた「永遠のモダン」が体現された名庭です。北庭でもささやかな紅葉が見られるので、ぜひ足をのばしてみては。

東福寺

住所京都府京都市東山区本町15-778
電話075-561-0087
拝観時間11月11日(土曜)~12月3日(日曜)まで8:30~16:30(受付終了16:00)、以降は~15:30(受付終了)
拝観料通天橋・開山堂600円(11月11日~12月3日は1,000円)
本坊庭園500円
共通拝観券1,000円(11月11日~12月3日を除く)
アクセスJR・京阪「東福寺」下車 徒歩10分、または京阪「鳥羽街道」下車徒歩8分
webhttps://tofukuji.jp/
紅葉の見頃予想11月中旬~11月下旬
2023年の
ライトアップ
2023年11月18日(土曜)~12月3日(土曜)
17:30~19:30(受付終了19:00)

混雑を避けて楽しめる京都の穴場紅葉スポット

有名な紅葉の名所にも、穴場や知られざる楽しみ方が潜んでいるものです。ここからは、混雑を避けられる時間帯や意外と知られていない、とっておきの名所をご紹介。ゆったりと贅沢な気分で楽しめる紅葉名所にご案内します。

いにしえの景勝地・嵐山で自然に溶け込み心身を浄化

画像1: いにしえの景勝地・嵐山で自然に溶け込み心身を浄化

古来、天皇や貴族も愛した風光明媚な嵐山は、京都随一の紅葉の名所です。
嵐山を象徴する、渡月橋と嵐山や小倉山の山並みが織りなす景色は、どの季節でも絵になります。とりわけ秋はその美しさが際立つ季節。錦秋という言葉がぴったりな色彩のグラデーションが広がります。

鎌倉時代、舟遊びをしていた亀山上皇がその風光を愛で、「くまなき月の渡るに似る」と詠ったことが渡月橋の名の由来。そんなエピソードにも嵐山らしい風雅を感じます。

西側に山が連なる嵐山エリアは、太陽が山の向こうに隠れてしまうと少し薄暗くなってしまいます。そこで、おすすめしたいのは朝の時間帯。お寺のように開門時間を気にする必要はありませんので、早起きして渡月橋へと向かいましょう。大堰川を吹き抜ける風は澄みわたり、朝の光を受けた水面はキラキラと輝いていて、思わず深呼吸したくなるような爽やかさが広がっています。

画像2: いにしえの景勝地・嵐山で自然に溶け込み心身を浄化

常に人で溢れている嵐山エリアにも、知る人ぞ知る穴場があります。渡月橋の北詰(橋の北側)から川沿いに上流へと歩いていくと、喧騒が次第に遠のき、静寂に包まれます。対岸にはビルやお店など近代的な建物はなく、車もほとんど通りません。ここから一望する翡翠色の川と秋化粧を施した山々は、いにしえの人びとを魅了した風景そのものといえるかもしれません。

京都郊外の亀岡からスタートする、約2時間の保津川下りも良いでしょう。スリル満点の舟旅のゴール地点は渡月橋の手前。ゆらりと進む舟から眺める橋もまた趣があります。

ほかにも、渡月橋界隈には人力車が待機しているので、足休めに利用してみてはいかがでしょうか。歩くときとは異なる目線での紅葉観賞も乙なものです。

嵐山

住所京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町付近
アクセス嵐電「嵐山」下車 徒歩2分
紅葉の見頃予想11月下旬〜12月上旬

風趣が満ちる詩仙堂で、白砂に映える紅葉と心静かに向き合う

画像: 風趣が満ちる詩仙堂で、白砂に映える紅葉と心静かに向き合う

叡山電車の一乗寺駅から東へ、坂を上っていくと15分ほどでたどり着くのが、洛北の名刹・詩仙堂(丈山寺)です。徳川家康に仕えた武将であり文人の石川丈山が、隠居後に終の住処として建てた草庵です。

山門をくぐった先に佇む書院の中央には、江戸時代の絵師・狩野探幽による中国の三十六詩仙肖像画が掲げられた詩仙の間があり、詩仙堂と呼ばれる所以となっています。

画像: 書院からの眺め

書院からの眺め

書院前の端正な石庭を縁取るようにサツキのまるい刈り込みが連なっており、山肌の紅葉が鮮やかに映えます。いちばんの美景スポットは、上座である床の間の前あたり。鴨居や柱が額縁となって切り出す景色は、一幅の絵画のよう。ひさしが作り出すやわらかな陰影の中で心静かに座していると、鹿おどしが奏でる竹の音や小鳥のさえずりも聞こえてきて、いつしか五感が潤っていきます。

書院からの景色を堪能したら、丈山自らが設計した庭園を散策。四季折々の草花が咲き継ぐ風趣ある庭で、秋には秋明菊やススキを楽しむことができます。

平日はゆったり拝観できますが、休日は混雑しがち。開門直後か閉門前に訪れるに訪れると、比較的ゆったり散策できるそうです。

詩仙堂

住所京都府京都市左京区一乗寺門口町27
電話075-781-2954
拝観時間9:00~16:45(受付終了)
定休日5月23日
拝観料500円
アクセス叡山電車「一乗寺」下車 徒歩15分
webhttps://kyoto-shisendo.net/
紅葉の見頃予想11月中旬

新旧のアートと紅葉がコラボする京都最古の禅寺・建仁寺

画像: 新旧のアートと紅葉がコラボする京都最古の禅寺・建仁寺

花街祇園のメインストリートである四条通から、京情緒香る花見小路の石畳を南へ歩いてわずか1分ほどの地にある建仁寺。北門をくぐって境内に一歩入れば花街の華やぎが一変し、静謐な空気が漂います。

こちらは、日本に禅とお茶の文化を伝えた臨済宗の開祖栄西禅師により創建された、京都最古の禅寺。稀代の絵師・俵屋宗達が江戸初期に描いた躍動感あふれる「風神雷神図屏風」(国宝)を所有していることでも有名です(現在は京都国立博物館に寄託し、寺内には高精細複製画を展示)。

白砂や苔をもちいて仏の世界をあらわす禅寺特有の端然とした枯山水庭園や、桃山画壇の巨匠・海北友松らによる襖絵、法堂の天井一面に描かれた大迫力の双龍図など、境内の随所で新旧のアートに出合えます。

画像: 大書院から庭越しに望む小書院 ※現在修理中のため拝観することができません

大書院から庭越しに望む小書院
※現在修理中のため拝観することができません

紅葉の本数は多くはありませんが、ここだけの粋な観賞法があります。小書院と大書院を回廊で結んだ、四方正面の潮音庭の紅葉を楽しむ方法です。

苔むす潮音庭には仏様をあらわす三尊石が配され、数本の紅葉が刻一刻と表情を変えながら凛と立っています。小書院には、染色画家・鳥羽美花氏によって型染めの技法で描かれた襖絵「舟出」があり、大書院側から庭越しに小書院を見ると、色づいた紅葉と「舟出」が重なって見えて、唯一無二の美を奏でるのです。

お寺の方によると、「平日のお昼ごろや閉門前の16時台は比較的ゆっくり拝観してもらえるのでは」とのこと。例年の見ごろは11月下旬から12月上旬で、散りもみじも風情があります。

建仁寺で紅葉とアートを観賞した後は、祇園で京懐石の夕食をいただくのがいちおしのコース。旅のひとときがより思い出深いものになりそうです。

建仁寺

住所京都府京都市東山区大和大路通四条下ル小松町584
電話075-561-6363
拝観時間10:00~17:00
定休日11月15日の午前中
拝観料600円
アクセス京阪「祇園四条」下車 徒歩7分
webhttps://www.kenninji.jp/
紅葉の見頃予想11月下旬~12月上旬

神社仏閣と紅葉がおりなす美しい景色、風流なライトアップなどさまざまな表情の紅葉に出合えるのが、秋の京都旅の醍醐味です。欲張っていくつもの場所を訪れるのもいいですが、同じ場所を訪れて、日中と夜の変化を楽しむのもまた一興。紅葉シーズンに向けて、気になるスポットをチェックしてみてください。

※2023年10月10日に一部内容を更新いたしました

関連記事

掲載の内容は記事公開時点のもので、変更される場合があります。

This article is a sponsored article by
''.