宇宙を身近にする、JALの新たな挑戦
JALは、これまで世界中の空を結んできました。いまや上空1万メートルの世界は私たちにとっても、お客さまにとっても身近な場所といえますが、そのさらに上にある“宇宙”という未知の領域へ、JALのプロダクトが旅立っていたことをご存じでしょうか。
2024年、JALは初となる宇宙事業専門の組織「事業開発部宇宙グループ」を新設しました。これまで培ってきた航空関連の知見を生かし、宇宙を身近に感じていただくための、新しい挑戦をスタートさせています。

その一環として誕生したのが、全国の宇宙関連施設を巡って証印(スタンプ)を集める「JAL STAR PASSPORT(以下スター・パスポート)」です。全国の就航空港で販売するスタンプカードを集める、JALオリジナルの「御翔印帳」が好評ですが、いわばその“宇宙版”というべきもの。全国16カ所(2026年8月時点)の宇宙関連施設で販売する証印を集め、ファイルにコレクションするという趣向です。
証印がもらえるスポットは、「JAL STAR PASSPORT」のWebサイトからチェック!

※本画像はきぼう有償利用制度を活用して取得
この第一弾となる特典が、購入した方の中から抽選で選ばれた300名のお客さまのお名前を、JAXAのきぼう有償利用制度を活用して実際に宇宙に届けるプロジェクトです。お名前を掲載した特別なパスポート「JAL ASTRO PASSPORT」が作られ、2025年10月、国際宇宙ステーション(ISS)に向けて種子島から打ち上げられました。

油井亀美也宇宙飛行士により「きぼう」日本実験棟内で特別なスタンプが押されたのち、地球に帰還するというミッションです。
足かけ3年、想いを形にした「スター・パスポート」の軌跡
長尾「このプロジェクトが産声を上げたのは2023年9月のこと。ISSでのプロジェクトが完了するまで、足かけ3年におよぶ長さになりました」

こう語るのは、事業開発部宇宙グループの長尾秀斗です。独自性と親しみやすさを両立するため、ネーミングひとつをとっても吟味を重ねました。
長尾「開発当初は、『御星印帳』や、宇宙との往復をイメージした『コスモラリー』といった案もありました。お客さまに宇宙への旅をより身近に感じていただくにはどうすべきかチーム内でも何度も議論を重ねて、最終的にスター・パスポートという名前に辿り着きました」
JALにとって、自社で企画した製品を宇宙へと持っていくのは今回が初めての試みです。2030年に退役が決まっているISSの歴史に、JALとしての足跡を刻むための、重要なマイルストーンでもありました。
安全審査の高いハードルを超える、パートナー企業の職人による技術
宇宙へモノを持っていくためのハードルは、航空機とは比べものにならないほど高いものです。ISSへの搭載に必要となるJAXAやNASAによる安全審査をクリアするため、長尾をはじめとするチームは、素材や印字の成分表を提出し、極めて緻密な計量基準や有害性チェックに挑みました。
特に大きな挑戦となったのが、パスポートに押印するためのスタンプです。ISS内は空気が常に循環しているため、インクの揮発物質が空気浄化システムに影響を与えないか、厳格な確認が必要とされました。

長尾「この課題に対し、全面的に協力してくださったのがシヤチハタさんです。ご賛同いただいた担当スタッフさまのご尽力により、インク量を最適化した特別な『Xスタンパー』に仕上げていただきました。このパートナーシップがなければ、この時点で挫折していたかもしれません」

また、パスポート本体も日本の職人によって特注で仕立てられました。無重力に近いISS内では、本を開いたまま固定して押印作業を行うことが難しいため、軽量で適切なサイズ感の専用クリップも用意。万が一、宇宙でスタンプが出ない場合に備えたバックアッププランとなるシールまで携え、万全の体制で宇宙へと送り出されたのです。

しかし、宇宙のミッションに予期せぬ事態はつきものです。パスポートがISSに滞在している期間中、担当を予定していた宇宙飛行士が予定を早めて地球へ帰還することになりました。

長尾「JAXAの担当者さまと迅速に打ち合わせを重ね、限られた時間の中で必要な撮影の全工程を完遂。無事に油井宇宙飛行士にクリップでページを開いた状態で押印いただき、写真やビデオの撮影を成功させることができました」
地球への帰還。そしてJAXAでのパスポート受け渡し
そして迎えた2026年6月22日、JAXAの施設で、宇宙パスポートの引き渡しが行われました。
静かな緊張感が漂う会議室で、JALとJAXA、双方の代表のあいさつが交わされた後、いよいよ約1年ぶりに現物の開封(アンボックス)の瞬間を迎えました。

長尾「以前にビデオ越しでは確認していたものの、実際に1年ぶりに本物をこの目で見たときは、手袋をはめるのも忘れてしまうほど興奮しました。宇宙の過酷な旅を経て戻ってきたとは思えないほど、折れひとつなく、美しい状態を保っていたことにも驚きました」

指定のページを開くと、そこには宇宙空間で確かに押印された、鮮やかなミッションマークのスタンプが刻まれていました。微小重力下での作業を支えた特注クリップや、今回は出番のなかったバックアップ用のシールも、無事に役割を果たした証として誇らしげに並んでいます。JAL初の宇宙到達プロダクトを目の当たりにし、チームの笑顔に深い達成感が感じ取れます。

引き渡しが完了した後は、今回の宇宙の民間利用ミッションに関わったメンバーの記念として、特別なサインボード(ミッションボード)への記入が行われました。

長尾「このサインボードは、ISSの『きぼう』日本実験棟に関連したミッションプロジェクト関係者が記念に記入している特別なものです。一般公開されない貴重なボードに、足かけ3年のプロジェクトに関わった人々の努力と、未来への願いを込めてJALの名前を刻むことができ、誇らしい気持ちです」

最後に、施設の玄関前にあるJAXAロゴの前での記念撮影が行われました。長尾の手には、宇宙を旅してきた「JAL ASTRO PASSPORT」が。その表情には、大きなマイルストーンを達成した安堵と、次なるフェーズへの決意が満ちあふれていました。
地球に還ったパスポートのこれからと、次なるJALの挑戦
今回帰還した宇宙パスポートの特典は、無事にお客さまのもとへと届けられました。
このプロジェクトを通じて、お客さまからは「宇宙に興味を持ち、普段見ないロケット打上げの生配信動画を見るようになった」「日本各地にある宇宙関連施設に足を運ぶのが楽しみになった」といった、嬉しいお声をいただいています。

長尾「単なるグッズ提供にとどまらず、誰かの心に宇宙への新しい扉を開く、宇宙体験の裾野を広げるような取り組みに舵を切れたことが何よりの成果だと感じています。お客さまが私たちの試みをきっかけに、宇宙を身近に感じてくださったことこそが、JALがこの事業に挑んだ意義ですね」
さらに、2026年10月以降には、羽田空港近くにあるJALの工場見学施設「JAL SKY MUSEUM」で、スター・パスポートやXスタンパーの現物の一般展示を予定しています。工場見学に訪れるたくさんのお客さまに、間近で宇宙のロマンを感じていただける機会となるはずです。

かつて見上げるだけだった空は、誰もが旅できる日常に変わりました。その挑戦の一翼を担ってきたJALにとって、今回の挑戦は宇宙という未知の領域を日常に近づける第一歩。空から宙へ。上空1万メートルの先へと経路を定めたJALのフライトは、まだ始まったばかりです。
JAL STAR PASSPORT
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