旅で得られる感覚とは、どのようなものでしょうか。「楽しかった」「リフレッシュできた」「また行きたい」など、心の琴線に触れたものや情緒的な感想が多いかもしれません。しかし「人生を変えるヒントに出会えた」という実感とともに感動を得られる旅があるとしたら、興味が湧きませんか。JALが始めた「旅アカデミー」で香川県三豊市を訪れた15人からは、実際にそんな言葉が聞こえてくるのです。

本州より少し短い梅雨が過ぎ去り、薄曇りの7月の空は湿気の名残もあるものの、透明度の高い瀬戸内の海。都市部から訪れるゲストにとってみれば、異次元の美しさに映ることでしょう。この日集まった15人は、「地域で自分を生かす“せとうちローカル副業”入門 〜もうひとつの居場所と役割をつくる〜」に参加する方々です。

画像: istock/SAND555

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JALパックでは「旅アカデミー」と題し、各地のユニークな取り組みや実際に活躍している人々に触れ、人生のヒントがみつかる旅と学びを掛け合わせた地域体験プログラムを行っています。そのひとつが今回。香川県三豊市は人口6万人を切る小さな町ですが、ウユニ塩湖のような写真が撮れる浜があるとSNSで話題を集め、観光客が急増。そんななか、地元の若手と地域外のイノベーターがタッグを組み、新たなプロジェクトが続々誕生しています。

この旅は、ユニークな取り組みに触れ、プレイヤーたちと交流し、居住地とは別の場所で“もうひとつの人生”を見つけるためプログラムなのです。実は今回の参加者は、この場が「はじめまして」ではありません。過去3回の座学を実施していて、対面やオンラインで顔を合わせています。その模様を、少し振り返ってみましょう。

過去3回の座学をおさらい。三豊市を盛り上げる最前線のプレイヤーたち

プログラム1:ローカルビジネス副業入門&ワーク

アイデアの考え方を学ぶ初回クラスで、「活性化するローカリズムのなかで、いかにビジネスを成立させるか。そのツールはもう揃っているんです」と快活に語るのが、全国各地で活躍し、今回の案内人も務める古田秘馬さん。飲食から教育まで、プロジェクトがプロジェクトを呼び、参加者が雪だるま式に増えた、三豊市における共生の取り組みの旗振り役です。

画像: プログラム1:ローカルビジネス副業入門&ワーク

アイデアを次々と実現させるこの町の参入障壁がいかに低く、チャレンジができる舞台なのか、それにより自治体にどんな活気が湧いているのかを楽しく解説。またどんなプロジェクトが成功するのかといったコツを交えて、2拠点生活を両立させた人生の進め方“身の丈資本主義”を学びました。

プログラム2:東京で働いていた私が、地域に飛び込んだきっかけ

第2回は、瀬戸内ワークス代表の原田佳南子さんが講師。大手旅行代理店を経て、「地域そのものを盛り上げ、観光客を増やしたい」という思いに駆られ、独立。2018年からうどんを楽しむ宿「UDON HOUSE」の運営を契機に三豊市に関わり、現在は佐賀県と三豊市の2拠点生活をしています。

都市部に人が流れる時代に、地方の農業を守るアグリツーリズムをベースにした地域性を体験するステイプログラムを設計。人がいないという地方の現実と、地方に興味があるという人たちのマッチングプラットフォームとして、「ニッポン就職課」という取り組みを始めます。自分自身を主役にやりたいことを実現するため、人口が減る社会で自らルールを作り、夢を実現する醍醐味を訴えました。それとあわせて、実際に地域を体験した注意点やリアルな分析も惜しみなく伝えてくれました。

プログラム3:もう一つの居場所、移住ではないローカル副業

移住のみならず2拠点でビジネスを行うプレイヤーが登壇しました。三豊市地域活性化起業人(副業型)の白川東馬さんは、香川にゆかりがあり、縁があって古民家を手に入れたことから、三豊市で仕事をすることに。今年1月にNPO法人ハコスイグンをスタート。副業制度を駆使しながら、三豊市の観光のDX化や宿泊施設「箱家」の運営などを“リターンのある推し活”と定義します。活用できる制度や収入、得られるスキルなど、メリットをたっぷり教えてくれました。

画像: プログラム3:もう一つの居場所、移住ではないローカル副業

また、東京でコンサル系の仕事をする池澤秀さんは、地方創生にまつわる仕事で三豊市に関わることになったそう。プロジェクト終了後も三豊市で家を借り、定期的に滞在。居住費や移動費といった具体的なお金の話を交えて、市役所の仕事や地域での個人ビジネスに、どのような感覚で関わっているのかも教えてくれました。

いざ、香川へ。うどんから始まる学びの旅

いずれの講座でも質疑応答が活発に行われ、参加者の2拠点生活に対する熱意が感じられました。そして満を持してのフィールドワークと位置付けているのが、今回の旅です。

画像1: いざ、香川へ。うどんから始まる学びの旅

まずは市内の人気店・三好うどんで腹ごしらえ。名物のとり天ぶっかけ(500円〜)、肉かま玉(600円)を多くの参加者がオーダーしました。うどん県と呼ばれるだけあって、さすがのコシとおいしさ。揚げ物はサクサクのできたてです。

三好うどん

住所香川県三豊市高瀬町比地1583-1
電話090-1000-7908
営業時間10:00〜14:00
定休日日曜・祝日
画像2: いざ、香川へ。うどんから始まる学びの旅

年齢や居住地を問わず、学びを得られる場所として地元の人々が集うのが、瀬戸内・暮らしの大学みとよキャンパスです。ここでは自己紹介とイントロダクション。みなさんリアルでの初顔合わせの方もいるなか、和気あいあいとした雰囲気で始まりました。地域のプレイヤーがリレー形式で取り組みをプレゼンしていきます。

画像3: いざ、香川へ。うどんから始まる学びの旅

地域に愛される「スーパー今川」の3代目・今川宗一郎さんは、事業承継ではなく創造したいという思いから、株式会社ウルトラ今川を設立。「ダメだったらアルティメット今川を作ろう」という決意で、宗一郎珈琲、宗一郎豆腐、鮨酒場南、とり常など飲食店を矢継ぎ早に開業します。

宗一郎さん「僕らは、新しい商店街を作りたい。ないなら自分たちで作ろうという感覚なんです。色々やっていますが、すべての事業を町に投資しています。理想の暮らしを想像して、足りないピースを起業で補う。これが身の丈資本主義です。また地域の魅力を発信するローカル外交官を増やして、地域の肯定感を外から変えていくことも大切です」

画像4: いざ、香川へ。うどんから始まる学びの旅

一方の小玉祥平さんは、小さいころから勉強が好きでたまらなかったそうで、教育は、解くことから問うものへ変えていくべきだと閃き、面白い授業を作って広めていく活動を始めました。三豊市に請われて中学生に授業を行うなか、地域の人たちと意気投合して移住。教育委員会としてアイデア溢れる部活を提案し、放課後の探究活動を奨励しています。

小玉さん「純度の高い大人が集まるだけでなく、誰でも純度が高く育つ町を作りたいんです」

ローカルで循環するラグジュアリーな宿泊施設と、ローカルに拠点を作る“ベーシックインフラ”という考え方

画像1: ローカルで循環するラグジュアリーな宿泊施設と、ローカルに拠点を作る“ベーシックインフラ”という考え方

次に訪れたのが、3棟だけの贅沢な宿泊施設「URASHIMA VILLAGE」。浦島伝説の残る海岸の切り立った崖の上に、自然に溶け込むように建てられた美しい建築は、古田さんが地元企業や住民を中心に出資を募り、地域内で循環するビジネスのあり方を模索して作られたもの。

画像2: ローカルで循環するラグジュアリーな宿泊施設と、ローカルに拠点を作る“ベーシックインフラ”という考え方

県産の建材を使い、伝統的な工法で作られた内外装は、多島美の美しい景色と相まって息を吞む絶景の宝庫です。久しぶりに訪れた親族が泊まる宿として、またビジネスミーティングや会食にも使える汎用性も備えた拠点として、使い勝手の良い画期的な施設といえます。

URASHIMA VILLAGE

住所香川県三豊市詫間町大浜乙171-2
電話0875-24-8866
webURASHIMA VILLAGE 公式サイト

三豊市に新たな宿泊施設が生まれた背景には、SNS効果での観光客の急増があります。「まるでウユニ塩湖のような写真が撮れる」と一躍話題になったのが、父母ヶ浜です。地域の有志による清掃活動によって景観を保たれてきた遠浅の海岸には、キッチンカーや飲食店が増えました。その口火を切ったのが、今川さんが作った宗一郎珈琲。

画像3: ローカルで循環するラグジュアリーな宿泊施設と、ローカルに拠点を作る“ベーシックインフラ”という考え方

ここを切り盛りするのが、こうだいさんです。就農しながらアルバイトで生計を立て、古着屋のオープンを目指す若者です。

画像4: ローカルで循環するラグジュアリーな宿泊施設と、ローカルに拠点を作る“ベーシックインフラ”という考え方

この仕組みについて、「半農半ローカルを推奨しています」と説明してくれたのが、瀬戸内ReFarmingの横山裕一さん。仕事や住まい、コミュニティをサポートし、ここに来れば生活を担保する、“ベーシックインフラ”を提案しています。週3回、朝3時間の農作業研修を受けることで、生活の基盤すべてを提供するという斬新な仕組みです。

宗一郎珈琲

住所香川県三豊市仁尾町仁尾乙203-3(父母ヶ浜海岸内)
営業時間13:00〜18:00ごろ
定休日不定休
web宗一郎珈琲 公式サイト
画像5: ローカルで循環するラグジュアリーな宿泊施設と、ローカルに拠点を作る“ベーシックインフラ”という考え方

他の土地ではまずお目にかかれないようなスポットと熱意に触れるなか、やがて日も落ちてきたところで、商店街を散策することになりました。

画像6: ローカルで循環するラグジュアリーな宿泊施設と、ローカルに拠点を作る“ベーシックインフラ”という考え方

自分の描いた絵を保管できるコミュニティ・アートバンクや、ホテルに改装予定の病院、焼き鳥店や屋台村、レストランなどに改装予定の民家を見て回ります。驚くべきは、これらは同時並行ながら、色々な人が中心となって進むプロジェクトであること。多様な背景を持つプレイヤーの熱意が集積する土地であることがうかがえます。

食べながら、飲みながら、学びながら。夕食は交流会を兼ねて

画像1: 食べながら、飲みながら、学びながら。夕食は交流会を兼ねて

軒先に灯りが灯るころ、「いつのまにか、ブルワリーを立ち上げることになりまして」と冗談めかして語るのが、三浦功喜さん。

画像2: 食べながら、飲みながら、学びながら。夕食は交流会を兼ねて

もともと大手飲食チェーン店の財務担当で、コロナ禍のワーケーションの一環で三豊市を訪れ、そのまま定住。「みんなでブルワリー」をオープンしました。東京に比べて開業資金は圧倒的に安く済み、あれよあれよと話がまとまり、今や地域の交流拠点のひとつに。今回の夕食・交流会の会場にもなりました。

画像3: 食べながら、飲みながら、学びながら。夕食は交流会を兼ねて

ブルワリーでの交流のさなか、「教育の取り組みを進めるなか、子どもたちはもちろん、シニア層の移動手段がないという根本的な問題に突き当たりました」と語るのが、夕食に参加した田島はやてさん。乗り合いタクシーサービスや交通空白地域へのサービス提供などを試行錯誤し、移動需要そのものを創出するための町作りを目指しています。シニア向けのツーリズムや、シニアの役割と楽しみが生まれる拠点「喫茶まごころ」などを運営。さらに地域に若者を呼び寄せ、生活そのものも“試乗”できる運転免許合宿のプログラムも提供しています。

このような地元の熱意に触れながら、コミュニケーションと杯を交わす豊かな時間が更けていきました。

みんなでブルワリー

住所香川県三豊市仁尾町仁尾丁198
電話0875-89-1877
営業時間17:00~22:00
定休日火曜
webみんなでブルワリー 公式サイト

“空き家王子”が手掛ける魅力的な施設が、続々誕生しています

画像1: “空き家王子”が手掛ける魅力的な施設が、続々誕生しています

翌朝、まず訪れたのが「DEMI1/2」という雑貨店。喜田建材という地元で100年続く木材・建材企業のショールームも兼ねています。その理由について、「お客さんとの接点を作りたかったんです」と語るのが、“空き家王子”の異名を取る島田真吾さん。

画像2: “空き家王子”が手掛ける魅力的な施設が、続々誕生しています

雑貨やインテリアも販売していることは、将来のお家づくり顧客へのアプローチと位置付けているそう。

DEMI1/2

住所香川県三豊市詫間町詫間890-1
電話090-4504-8630
営業時間9:30〜18:30
定休日不定休
webDEMI1/2 公式サイト

昨日訪れた「URASHIMA VILLAGE」の用地探しを契機に地域の空き家(空き地)を自分の足でくまなく探しはじめ、価値の掘り起こしや、時には物件を買い上げてリノベーションし、魅力的な販売物件や宿を次々に作っています。

画像3: “空き家王子”が手掛ける魅力的な施設が、続々誕生しています

さらに、喜田建材が行うゲストハウス「泊rutto」で得た知見と不動産、リノベーションの経験を活かし、暮らしの大学では「ゲストハウスオーナークラス」というクラスを主催。資金計画から物件取得、オペレーションまでのすべてが学べるクラスも実施。共創する仲間を作る取り組みもしています。さらに地元を訪れるコンテンツを作るため、いりこだしのラーメン店・伊吹いりこセンターも開業。香川県でも大人気になるほどの支持を集めているのだとか。

画像4: “空き家王子”が手掛ける魅力的な施設が、続々誕生しています

続いて訪れた「RACATI」も、地元で100年続く家具メーカー・モクラスが始めた、チョコレートの専門店。バックヤードはサウナ機器のショールームになっています。

画像5: “空き家王子”が手掛ける魅力的な施設が、続々誕生しています

人気はソフトクリーム(500円)。サッパリとした甘みで、ココアの風味が濃密で芳純。大人を唸らせるおいしさです。

RACATI

住所香川県三豊市詫間町詫間6781-1
電話0875-83-6652
営業時間10:00〜18:00
定休日水曜

続々誕生する、珍しい宿泊施設の数々

画像1: 続々誕生する、珍しい宿泊施設の数々

喜田建材とモクラス、それぞれが「泊まれるショールーム」というコンセプトを掲げたゲストハウスが「積凪」です。

画像2: 続々誕生する、珍しい宿泊施設の数々

贅沢な一棟貸しのヴィラが2棟あり、いずれも広々としたリビングダイニングにプールがあり、サウナまで付いています。

積凪

住所香川県三豊市詫間町積586-1
電話080-2976-4641
web積凪 公式サイト
画像3: 続々誕生する、珍しい宿泊施設の数々

こんなゲストハウスとは対照的に、古民家を改築したゲストハウス・箱家も人気です。当初は「自分の住む家をたまに誰かに貸すという理由で始めたのが、ほとんど埋まってしまって、今新たに家を探しています」と冗談めかすのが、オーナーの白川東馬さん。

画像4: 続々誕生する、珍しい宿泊施設の数々

第3回の座学でも語ってくれましたが、副業として運営する宿泊業の成功例として、海の見える静かな空間が地域でひときわ存在感を放ちます。

箱家

住所香川県三豊市詫間町詫間890-1(チェックイン場所)
web箱家 公式サイト

「人生で最高の大人の修学旅行でした」。参加者が感動を口にした、旅の後味

画像1: 「人生で最高の大人の修学旅行でした」。参加者が感動を口にした、旅の後味

ランチタイム。材木用の倉庫を居抜き物件として活用した、広々としたレストラン・サンカフェでいただくのは、本格的なイタリアンです。直輸入した本格的なピザ窯からナポリ風のピッツァが焼き上がりました。

画像2: 「人生で最高の大人の修学旅行でした」。参加者が感動を口にした、旅の後味

パリパリでモチモチとした香りの良い生地の上には、香川由来の地ものの食材。レモンやいりこがたっぷりと入っていて、ついつい頬がほころぶおいしさで、会話もはずんでしまいます。

サンカフェ

住所香川県三豊市仁尾町家の浦326
電話0875-82-3711
営業時間11:00~19:00(L.O.18:00)
定休日月曜
webサンカフェ 公式サイト

最後は、「UDON HOUSE」でのラップアップ。原田佳南子さんが2018年に立ち上げ、そこからのムーブメント発祥の施設で、参加者が口々に感想を述べてくれました。異口同音に語っていたのが、「こんなに気付きや出会いがある旅になるとは思わなかった」ということです。

画像3: 「人生で最高の大人の修学旅行でした」。参加者が感動を口にした、旅の後味

一般的なツアーや旅行では、旅が終わって訪れる感慨は、どれも近しいものになりがちかもしれません。しかしこの学びの旅は、圧倒的な情報量があり、参加者それぞれに違った見方や人生のヒントを与えてくれるものとなりました。

画像4: 「人生で最高の大人の修学旅行でした」。参加者が感動を口にした、旅の後味

それぞれの人生に小さな転機を与えられた旅は、人生という長い旅路のなかでも忘れられないマイルストーンになるかもしれません。「人生のなかで最高の、大人の修学旅行でした」という参加者の言葉に、うなずく顔ぶれが印象的でした。

画像5: 「人生で最高の大人の修学旅行でした」。参加者が感動を口にした、旅の後味

熱意と創意に圧倒される瞬間の連続は、休暇を学びに費やすような意識の高い一部の層だけのためのものではありません。誰にでもおすすめでき、誰もが得がたい気付きを求められる、豊かな旅となったのです。「思いのほか役立ち、思いがけない感動がある」。それが旅アカデミーの魅力のひとつといえるでしょう。

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