元旦の恒例となっているJALの人気ツアーといえば「初日の出 初富士フライト」。2024年も実施されますが、目玉のひとつとして、通常は北海道・上川地区だけでしか入手できない希少な日本酒「神川」をお一人さまに1本プレゼントします(20歳未満の方には日本酒以外をご用意)。この名酒はどんな風土から生まれ、どんなこだわりをもって造られているのでしょうか。蔵元を訪ねました。
画像: 「神川 純米大吟醸」。フライト当日には、オリジナルラベルのボトルが特別デザインの升とともにプレゼントされます

「神川 純米大吟醸」。フライト当日には、オリジナルラベルのボトルが特別デザインの升とともにプレゼントされます

※価格は税込み表記です

“神々の遊ぶ庭”に生まれた前例なき物語

訪れたのは、北海道の旭川空港から車で1時間弱の場所にある上川町。「カムイミンタラ」(アイヌ語で「神々の遊ぶ庭」という意味)とも呼ばれる美しい景観が見事な大雪山を望み、年間平均気温が約5.5℃と涼しくのどかな町です。

画像: 視界の奥には大雪山連峰

視界の奥には大雪山連峰

そんな北の大地に2016年(醸造開始は2017年)、異例ともいえるストーリーを背景に誕生したのが「上川大雪(かみかわたいせつ)酒造」。日本酒(清酒)の新規蔵は、伝統産業保護などの観点から製造免許の交付が行われておらず、新規参入はできません。ただし例外のひとつが、既にある酒造の免許を継承すること。

画像: 「上川大雪酒造」の製造拠点のひとつが「緑丘蔵(りょっきゅうぐら)」。この施設内で酒造りが行われています

「上川大雪酒造」の製造拠点のひとつが「緑丘蔵(りょっきゅうぐら)」。この施設内で酒造りが行われています

この方法で、三重で休眠していた老舗蔵の酒造免許を移転し、北海道の地に約20年ぶりに新設したのが「上川大雪酒造」。この試みは過去に前例がないことから話題となり、今では同蔵を手本にした取り組みも増えています。

画像: 「緑丘蔵」の裏には、万年雪を冠する大雪山系の湧水を源流とする小川が流れます

「緑丘蔵」の裏には、万年雪を冠する大雪山系の湧水を源流とする小川が流れます

画像: 仕込み水のクリアなおいしさにも感動

仕込み水のクリアなおいしさにも感動

酒造りの大切な要素といえば、産地の風土です。上川大雪酒造「緑丘蔵」の仕込み水は、酒造りに理想的な約7℃の天然水を使用。また、北海道特有の清らかで雄大な自然に恵まれ、広大な農地では酒米も盛んに作られています。

新年を祝うフライトにこそ特別な一本を

今回「神川」を「初日の出 初富士フライト」のプレゼントにできた背景には、これまでのJALとの取り組みが強く関係しています。最初に「上川大雪酒造」の日本酒が採用されたのは2019年。国内線のファーストクラスで「純米大吟醸 彗星」を提供して以来、好評を博してきました。

画像: 「上川大雪酒造」の酒米は、北海道産の酒造好適米のみを採用。現在は、「吟風」「彗星」「きたしずく」の3品種を使い分けています

「上川大雪酒造」の酒米は、北海道産の酒造好適米のみを採用。現在は、「吟風」「彗星」「きたしずく」の3品種を使い分けています

「神川」とのコラボレーションを担当した、JAL旅客推進部 国内線グループの半澤誠地は、次のように話します。

半澤「新年早々にせっかくご搭乗いただくわけですから、何かお客さまにプライスレスなプレゼントを差し上げたいと考え、地元以外では入手困難な『神川』を思いつきました。地域限定銘柄ということもあり、実現は難しいと思っていましたが、当社の想いをお伝えしたところ、『1年に1度の新年をお祝いする特別なフライトなら』ということで最終的に快諾を得られました。非常にうれしく思っています」

酒造りは自然との共創。時間との対話

「神川」のこだわりをより知るべく、JAL客室乗務員の福成さんが酒造りの一部を体験しました。

仕込み体験は、蒸した酒米を放冷機に移す工程からスタート。その後、麹室(こうじむろ)で蒸し米に黄麹菌を植えて麹を造ります。この日の麹室は33℃で、湿度は50%。外気が12℃だったこともあり、最初は室内環境の違いにびっくり。

画像: 一度に最大350kgのお米を蒸すことが可能。この蒸し米を放冷機でほぐしながら、用途に応じて最適な温度に冷まします

一度に最大350kgのお米を蒸すことが可能。この蒸し米を放冷機でほぐしながら、用途に応じて最適な温度に冷まします

画像: 麹室では、ふりかけた麹菌が米全体に付着するよう手で混ぜ合わせていきます

麹室では、ふりかけた麹菌が米全体に付着するよう手で混ぜ合わせていきます

次は、蒸し米に水と麹と酵母を加えた「酒母(しゅぼ)」造り。このあとさらに蒸米、麹、水を加え、しっかりかき混ぜることで発酵が促されて醪(もろみ)となっていきます。

画像: 一般的に醪の仕込みは3段階に分けて行われ、4日間かけてじっくり仕込んでいきます

一般的に醪の仕込みは3段階に分けて行われ、4日間かけてじっくり仕込んでいきます

次は仕込蔵へ移動し、発酵から20~25日ほど経った最終段階の醪を確認。仕込蔵の中は9℃のキリッとした空間でしたが、室内には甘くフルーティーな吟醸香がただよい、どこか心地よさも。

画像: タンク内の醪。酵母の働きによってアルコールを生成するのと同時に生まれる炭酸ガス(二酸化炭素)が、表面に見える泡の正体です

タンク内の醪。酵母の働きによってアルコールを生成するのと同時に生まれる炭酸ガス(二酸化炭素)が、表面に見える泡の正体です

最終的に、醪のアルコール度数は16%程度まで上昇。その後圧搾機で日本酒と酒粕に分け、ろ過や火入れや加水などを経て瓶詰め、出荷へ。なお、あえて最終工程をせずに瓶詰めする「無濾過生原酒」というプリミティブなタイプもあります。

画像: 仕込蔵にて。酒米や、その田んぼ、精米歩合(米を磨く割合)など、細かく造り分けられたさまざまな酒質の醪が静かに呼吸をしていました

仕込蔵にて。酒米や、その田んぼ、精米歩合(米を磨く割合)など、細かく造り分けられたさまざまな酒質の醪が静かに呼吸をしていました

北海道の恵みで北国の美食に適した酒を醸す

福成さんの仕込み体験はここまで。終了後、杜氏の小岩隆一さんに「上川大雪酒造」のこだわりなどを聞きました。

画像: 右が杜氏の小岩さん。麹室における混ぜ合わせ(床もみ)のラストは、米の麹菌が活性化しやすいよう中央に積み、上から布を掛けて保温します

右が杜氏の小岩さん。麹室における混ぜ合わせ(床もみ)のラストは、米の麹菌が活性化しやすいよう中央に積み、上から布を掛けて保温します

小岩さん「まず、仕込み水や酒米は北海道の素材を使用しているということです。北海道のお米は『ゆめぴりか』や『ななつぼし』など、全国的に有名な銘柄がたくさんありますよね。そもそも北海道はお米の収穫量が新潟県に次ぐ第2位で、全国有数の米どころ。近年は酒米でも良質な北海道原産品種が、造り手の間でも人気になっているんです。

また、私自身も北海道出身ですから、地元の食や農業のブランド力を高めたいですし、地域貢献の役に立ちたいという想いもあります。そのうえで、お米の魅力をより生かすために醸造用アルコールは添加せず、造る銘柄はすべて純米酒のみ。さらには北海道の美食に適した、『飲まさる(ついつい飲んでしまう)酒』を造っていきたいと思っています」

画像: 「吟風」の蒸し米。地元の酒米を使うことは、配送の観点でも地球に優しく理に適っていると小岩さんは言います

「吟風」の蒸し米。地元の酒米を使うことは、配送の観点でも地球に優しく理に適っていると小岩さんは言います

「上川大雪酒造」にはさまざまな酒質の銘柄がありますが、「神川」が地域限定である理由は、実際に上川町まで足を運んでほしいという願いが込められているのだとか。

小岩さん「私たちの設備やリソース的に、大量生産できないという理由もありますが、それ以上に『神川』は、この上川町に来る目的のひとつでありたいと思っています。窓越しであれば酒蔵の見学(10月~7月。積雪の多い時季は見学不可の場合あり)もできますし、併設しているギフトショップでは試飲もできますので、上川へお越しいただいた際はぜひ蔵にもお立ち寄りいただきたいですね」

画像: 「緑丘蔵 Gift Shop」。なお、同店の「神川」は展示用ボトルなので、販売店はスタッフに聞いてみましょう

「緑丘蔵 Gift Shop」。なお、同店の「神川」は展示用ボトルなので、販売店はスタッフに聞いてみましょう

緑丘蔵 Gift Shop

住所北海道上川郡上川町旭町25-1
電話01658-7-7380
営業時間10:00~16:00(夏季)、10:00~15:00(冬季)
定休日不定休(詳細はショップにお問い合わせください)
webhttps://kamikawa-taisetsu.co.jp/ryokkyu/

“上川100%”を目指す、酒蔵の乳酸菌で作るチーズ工房

「上川大雪酒造」は、日本酒の製造や販売のほかにグループでチーズ工房やリストランテも運営しており、上川町を中心に北海道の食を盛り上げています。その一軒、「緑丘蔵」から車で3分ほどの場所にある新設のチーズ工房「KAMIKAWA KITCHEN」を訪ねました。

画像: 「KAMIKAWA KITCHEN」。昭和初期に建てられた赤レンガ倉庫を改築した、温かみのある建物が目印です

「KAMIKAWA KITCHEN」。昭和初期に建てられた赤レンガ倉庫を改築した、温かみのある建物が目印です

「KAMIKAWA KITCHEN」の立ち上げは、「上川大雪酒造」の運営元が町の地産地消拠点「上川町たべもの交流館」の指定管理者になったことがきっかけです。町内の生乳を使ったチーズを作って発信していくために、交流館をリノベーションしてチーズ工房となりました。

画像: 店内にはイートインスペースもあり、ピッツァをはじめとする軽食を楽しむこともできます

店内にはイートインスペースもあり、ピッツァをはじめとする軽食を楽しむこともできます

開業は2022年の11月。当初は週末のみの営業スタイルでしたが、2023年のゴールデンウィークから木曜~月曜営業へと拡大し、今に至ります。そんな同店最大の目標は、上川町内で搾った生乳100%のチーズを、日本酒造りの過程でできる乳酸菌によって作ること。

画像: 名物は、熟成タイプのセミハード「カミカワチーズ」(50g 450円、100g 850円、フレーク550円)

名物は、熟成タイプのセミハード「カミカワチーズ」(50g 450円、100g 850円、フレーク550円)

通常ルートの生乳は、他地域から集まったミルクと一緒に牛乳へと加工されるため、町内産100%というのはきわめて希少。「神川」同様に、ここでしか味わえないおいしさが「KAMIKAWA KITCHEN」にはあるのです。

画像: 乳酸菌は数種を使い分けるため、商品によっては食べ比べて味の違いを楽しむこともできます。しかも、うれしいことに試食OK

乳酸菌は数種を使い分けるため、商品によっては食べ比べて味の違いを楽しむこともできます。しかも、うれしいことに試食OK

チーズにはフレッシュな「カミカワ モッツァレラチーズ」(540円)と「プレス モッツァレラチーズ」(100g 700円)もあり、乳製品では2種類のヨーグルト(各350円)やクリームチーズケーキ(プレーン、苺/各320円)なども。また、生地から捏ねて注文ごとに焼き上げるピッツァ(1,200円~)などのフードもあり美食満載。お土産探しはもちろん、食事にもおすすめです。

※現在、酒蔵乳酸菌チーズは販売しておりません

KAMIKAWA KITCHEN

住所北海道上川郡上川町北町189-3
電話01658-7-7201
営業時間10:00~16:00
定休日火曜、水曜

美しき雪峰とランドスケープを愛でる北海道イタリアン

もう一軒は、「緑丘蔵」から高原へ車を走らせること15分弱。大雪山連峰を望む丘の上に四季の花々と木々の緑が生い茂る「大雪 森のガーデン」、この美しいランドスケープにとけ込むオーベルジュ「フラテッロ・ディ・ミクニ」を紹介します。

画像: 標高約600m。日中は峰々の勇姿が、夜は満天の星たちがゲストを神秘的な世界へといざないます

標高約600m。日中は峰々の勇姿が、夜は満天の星たちがゲストを神秘的な世界へといざないます

同店は2013年の七夕に開業。北海道増毛出身のフレンチの巨匠・三國清三シェフと北海道イタリアンの第一人者・堀川秀樹シェフが“世界に通じる北海道料理”をテーマに監修し、キッチンでは両人の下で腕を磨いた宮本慶知(よしとも)シェフが陣頭指揮をとります。

画像: 「ミシュランガイド北海道2017特別版」では一つ星を獲得。同店と宮本シェフはJAL国内線ファーストクラスの機内食を監修したことも

「ミシュランガイド北海道2017特別版」では一つ星を獲得。同店と宮本シェフはJAL国内線ファーストクラスの機内食を監修したことも

料理はランチ(3,850円~)とディナー(8,250円~)ともに2つのコースがあり、上川産を中心に北海道が誇る山海の旬をクリエイション。なお、すぐ下にあるヴィラのゲストはここでディナーやモーニングを楽しめます。

画像: インテリアは、北海道のナラやトドマツを使った世界的に名高い「旭川家具」がベース。窓の向こうに広がる大雪山連峰の借景や、オープンキッチンのライブ感も魅力です

インテリアは、北海道のナラやトドマツを使った世界的に名高い「旭川家具」がベース。窓の向こうに広がる大雪山連峰の借景や、オープンキッチンのライブ感も魅力です

ほかにも、「大雪 森のガーデン」には同店監修の料理に加え、酒蔵の酒粕を使ったジェラートやカレーライスが人気の上川大雪カフェ「緑丘茶房(りょっきゅうさぼう)」も。庭園や森の散策なども楽しめるので、直接自然と触れ合いたい人にもおすすめです。

フラテッロ・ディ・ミクニ

住所北海道上川郡上川町字菊水旭ヶ丘
電話01658-2-3921
営業時間ランチ11:30~14:00
ディナー18:00~20:00
※前日までに要予約、予約は2名~
定休日火曜
webhttps://fratello-di-mikuni.com

初日の出フライトや旅で、上川の魅力を体験しよう

広大な北海道は地域ごとに多彩な自然の恵みが楽しめますが、上川町もここだけの絶景と美酒美食に満ちています。ぜひ「初日の出 初富士フライト」でその魅力にも触れていただきたいほか、本稿を参考に“神々の遊ぶ庭”へもぜひ足を運んでみてください。

2024 初日の出 初富士フライト ~空の上から初日の出を楽しもう!~

※2023年12月26日に一部内容を更新いたしました

画像: JAL初日の出フライトで提供!大雪山麓で造られる「神川」が“幻の名酒”である理由とは?

JALの舞台裏

A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。

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