ATとは、「自然」「アクティビティ」「異文化体験」の3つの要素のうち、2つ以上を組み合わせた旅行スタイルのこと。より本質的には、「自然や現地の方とのふれあいを通してその土地を深く知ることで、価値観や考え方に変化が起きる」という意味を持ちます。
3要素すべてがそろう釧路には、どんな体験が待つのでしょう。JALふるさと応援隊で北海道出身の山崎さんが、現地を訪れました。
※価格は税込み表記です。
思わず見とれる美しさ。鶴居村でタンチョウ観察
たんちょう釧路空港から車で約40分のところにある鶴居村は、その名の通り1年を通じて“タンチョウが居る村”。特に冬は、たくさんのタンチョウが越冬のために道内各地から集まってくるので、最も見ごろの季節といえます。
この日はタンチョウを観察するために、日が昇る前の暗いうちに出発。湧き水が豊富な鶴居村には冬でも凍らない川があり、タンチョウたちのねぐらになっています。
特に音羽橋周辺は、たくさんのタンチョウたちと幻想的な冬景色のどちらも見られる絶好のスポット。じっと目を凝らすと、雪裡(せつり)川の浅瀬に70羽ほどのタンチョウがいました。1本足で立ち、もう1本の足を羽の中に入れて丸まって眠っています。
この時期の気温は-10~20℃。これに対し、川の水温は4~5℃。北海道アウトドアガイド資格を持つJAL釧路支店・千里支店長によると、「水温のほうが高いので、タンチョウたちにとっては足湯をしているようなもの。温かいのでしょうね」。
タンチョウをひとめ見ようと、橋には多くの人が集まっていました。早朝の水辺はかなり冷え込むので、しっかり防寒対策をすることが大切。千里さんからの「手袋とネックウォーマー、耳まで覆える帽子は必須。特に足先が冷たくなるので、靴用カイロを使うといいですよ」というアドバイスのもと、事前準備はバッチリです。
日が昇り明るくなってくると、タンチョウたちの動きも活発になります。川の周りを散歩したり、魚や虫をつついたり。つがいで仲睦まじく行動する様子にもほっと心がなごみます。
周囲の木々に、オジロワシやオオワシがやってきました(写真右上)。
タンチョウが「コッコッ」と鳴き始めたら、飛び立つ合図。固唾をのんで見守る中、タンチョウはわずかに前傾姿勢になったかと思うと羽を広げ、走りながらふわっと飛び上がりました。周りの人々からも歓声が上がります。
家族で行動する習性があるタンチョウ。あるタンチョウのファミリーが給餌場へと飛び立ったものの、うち1羽が強風で不安を感じたのか岸に舞い戻りました。それを見てすぐにほかのタンチョウたちも戻ります。千里さんは「タンチョウを観察していると、夫婦の愛情、親から子への愛情の深さを感じる場面が多くあります」と教えてくれました。
音羽橋
住所 | : | 北海道阿寒郡鶴居村雪裡原野北7線東 |
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もっと近くでタンチョウを見られると聞き、二大給餌場である「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」「鶴見台」へやってきました。
ここでは冬期の餌不足解消のため、トウモロコシなどの餌をタンチョウに与えています。多いときには300羽以上のタンチョウが集まるそう。「こんなに近くでたくさんのタンチョウが見られるなんて!」と山崎さんも大興奮。雪とタンチョウ、どちらも真っ白で美しく、このままポストカードにして飾っておきたくなるような風景です。
真っ白なタンチョウたちの大群の中、“灰一点”で目立っている鳥がいました。マナヅルです。体が灰色で、目の部分が赤いのが特徴。鹿児島県出水市での越冬が知られていますが、北海道では珍しいそう。千里さんは「群れからはぐれて迷い込んだのでは。タンチョウたちと共に行動しているようです」と話します。
鶴見台では、日本では滅多に見られないと言われるカナダヅルの姿も。カナダヅルはタンチョウに比べて小さく、全身が灰褐色。写真家たちの間では、マナヅルとあわせて「マナカナ」と呼ばれて話題になっているそう。タンチョウたちと同じように餌をついばんでいました。
先ほどのねぐらだけでなく他のねぐらからも次々と飛来してきました。羽を広げた姿は優雅で迫力があり、山崎さんは「すっかりタンチョウにはまってしまいそうです」と話していました。
鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ ネイチャーセンター
住所 | : | 北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南 |
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電話 | : | 0154-64-2620 |
開館時間 | : | 9:00~16:00 |
開館期間 | : | 10~3月 |
休館日 | : | 火・水・木曜休館(ただし祝日を除く)、12月26日~1月1日、3月31日 |
入館料 | : | 無料 |
web | : | https://tancho.marimo.jp/ |
鶴見台
住所 | : | 北海道阿寒郡鶴居村下雪裡 |
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北海道でしか出会えない、森の守り神
鶴居村から標茶(しべちゃ)町へと車で移動。車を降りて林の中に入って行きます。
「ほら、あの木」と千里さんが立ち止まりました。洞の中にいたのはエゾフクロウ。「かわいい!」山崎さんの声が弾みます。アイヌ語で「クンネレッカムイ」=夜に鳴く神と呼ばれ、守り神とされているエゾフクロウの体は、白っぽい羽毛に茶色の縦縞模様。木と同化して見えるので、慣れていないと見つけるのが難しいかもしれません。
夜行性なので昼間は寝ていることが多く、まるでひなたぼっこをしているかのようなのどかな表情。肉眼でも見えますが、双眼鏡などを持っていくほうが良さそうです。
このあたりにはエゾフクロウの巣が幾つかあり、春になって巣穴から顔を出すヒナもとってもかわいいのだとか。山崎さんは「ずっと見ていても飽きないです」と何度もスコープで観察していました。
静寂の釧路湿原で冬カヌー。野生生物の日常に触れる
「次は、水辺から釧路湿原を見てみましょう」という千里さんの案内で、釧路川支流にあるアレキナイ川でカヌーを体験。山崎さんは「冬でもカヌーに乗ることができるのですか?」と驚きを隠せません。アレキナイ川は水深が浅く流れも緩やかなので、この時期でもカヌー体験が可能なのだそうです。
塘路湖のふもとにあるカヌーポートで、北海道アウトドアマスターガイドの斉藤松雄さんからレクチャーを受けます。ライフジャケットを着用し、パドルの持ち方を習ったら、早速出発。
「冬の釧路湿原ネイチャーカヌー」は、釧路川との合流地点まで行き、引き返してくる1時間ほどのコースです。ガイドが同乗し、周囲の自然について解説してくれます。辺りは静まり返っていて、聞こえるのは風の音だけ。オブジェのような木々が視界に入ってきました。
「冬は、けあらしや霧氷など、幻想的な風景が見られます。ダイヤモンドダストもキラキラ輝いて綺麗ですし、川岸の薄氷にフロストフラワーが見られることもありますよ」と斉藤さん。「カヌーと聞くと夏のイメージでしたが、冬の景色もとても魅力的ですね」と山崎さんもうなずきます。
川幅がそれほど広くないので湿原との距離が近く、野生動物を発見しやすいのもポイント。岸からエゾシカの親子がじっとこちらを見ていました。「オオワシやオジロワシ、トビ、タンチョウなども見られますよ」。貴重な一瞬を見逃さないように、注意深く周囲を見渡します。
山崎さんもパドルを漕いでみることに。ガイドが舵取りをしてくれるので、カヌー初体験の人も安心です。「進むごとに見える景色が変わって、とても楽しいです!」と、はしゃいだ様子の山崎さん。自分の手で、神聖なる自然の世界へと入り込んでいく感覚。これが単なる「トラベル」ではない「アドベンチャートラベル」の醍醐味なのかもしれません。
冬カヌーのおもしろさに目覚めた山崎さん。「ガイドさんがいろいろ教えてくださったおかげです。知らなかった鳥の名前や昔の釧路川のことも知ることができました」と話していました。
釧路マーシュ&リバー
住所 | : | 北海道釧路郡釧路町字トリトウシ88-5 |
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電話 | : | 0154-23-7116 |
料金 | : | 冬の釧路湿原ネイチャーカヌー 大人1名7,000円(2名以上参加の場合) ※1名の場合はプラス3,000円、4名以上はグループ割引あり。傷害保険は別途1名500円 |
web | : | https://946river.com/ |
釧路市内でお土産探し。名物グルメ&ドリンクでひと休み
釧路市内へと戻り、「フィッシャーマンズワーフMOO(ムー)」でお土産探し。海産物やお菓子、珍味、お酒などさまざまなジャンルの品物がそろっているので、きっとお気に入りが見つかるはず。眺めながら歩くだけでも楽しい場所です。
温室植物園「EGG」には、クスノキやヤマモモなど5mを超える高木をはじめ、約40種類の樹木が植えられています。冬でも緑を感じることができる癒しの空間です。
ひと休みするなら、「EGG Café」へ。ひがし北海道・浜中町の工房の特製チーズを使ったホットサンドやスープなどのフードメニュー、ドリンク類をキッチンカーで販売しています。
山崎さんが注文したのは、「くしろ夕日クリームソーダ」(580円)。オレンジピンクのグラデーションが綺麗で、写真映えする一杯です。標茶町北川牧場「ミルキークラウン」のアイスは、牛乳の味が濃厚なのが特徴。爽やかなソーダはもちろん、同店オリジナルブレンドの「夕日珈琲」とも相性がいいのだとか。
羽田空港と成田空港の国際線ファーストクラスで提供されている「厚岸ウイスキー」の新作ハイボールが楽しめるのも、密かな人気だそうです。
フィッシャーマンズワーフMOO(ムー)
住所 | : | 北海道釧路市錦町2-4 |
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電話 | : | 0154-23-0600(釧路河畔開発公社) |
web | : | https://www.moo946.com/ |
EGG Café
住所 | : | 北海道釧路市北大通1-2 屋内植物園EGG内 |
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営業時間 | : | 11:00~17:30 ※場合によって営業時間変更の可能性あり |
定休日 | : | MOOの定休日に準ずる |
web | : | https://www.instagram.com/egg_cafe.kushiro/ |
世界三大夕日のひとつ、釧路の夕日。一期一会の奇跡の時間を味わう
釧路観光で外せないのが「夕日」。世界中を航海する船乗りたちが釧路港で見て感動したことから広まったといわれ、インドネシアのバリ島、フィリピンのマニラ湾と並ぶ「世界三大夕日」として称賛されています。
MOOを出てすぐ、夕日の名所「幣舞橋(ぬさまいばし)」でスタンバイ。頭上の空がほんのりピンク色になってきたら、カウントダウンの始まりです。
河口へと沈んでいく太陽をうっとりと眺めます。この日の夕日は白っぽいオレンジ色。季節や気候によって色が異なるので、毎回新鮮な感動があるのだそう。太陽から水面へと光の帯が伸びて神秘的な雰囲気に包まれていました。
太陽が沈むと、橋の上にたくさんいた人たちが一気に減ってまばらになりました。でも、実はここからがマジックアワーと呼ばれる時間。
ブルー、ホワイト、オレンジ、ピンク…幾つもの色が混ざり合い、釧路港の空が刻一刻とドラマチックに表情を変えていきます。橋上に建つ「四季の像」や周囲の建築物のシルエットが異国情緒を生み出していました。
幣舞橋の高架下から撮影。橋のフレームに港と空が収まり、アートな一枚に。橋の周りを散歩しながらお気に入りの撮影スポットを探してみるのもおすすめです。
こちらは幣舞橋の北側「ぬさまい広場」にある「Cool KUSHIRO」のモニュメント。夜になるとライトアップされ、インパクト抜群のフォトジェニックなスポットです。
幣舞橋
住所 | : | 北海道釧路市北大通1 |
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地元の方と楽しむ釧路の食文化「炉端焼き」
夕食は、観光クリエイターの原田カーナさんの案内で炉端焼きのお店へ。囲炉裏を囲んで炭火で焼き上げた魚介を食べる「炉端焼き」は釧路が発祥とされ、市内には多くのお店が点在しています。
訪れたのは「くし炉 番小屋」。地元の方にもファンが多いお店です。のれんをくぐると、そこには昭和の世界が。やわらかな灯り、魚が焼ける香ばしい匂い、「パチパチ」「ジュー」と食欲を誘う音。囲炉裏を囲むようにカウンターが設けられ、旬の魚やおばんざいが並びます。
原田さんにおすすめを聞き、ホッケ、ツブ、イカといった焼き物と刺身を注文。目の前にずらりと並ぶ海の幸に、「どれもすごくおいしそう」「何から食べるか迷いますね」とふたりに笑みがこぼれます。
「おいしい!」とふたりの声がシンクロしたホタテ。北海道の味覚を食べ慣れているはずのふたりをうならせる、抜群の味と食感です。「肉厚で食べ応えがあり、ぷりっぷりですね」と笑顔の山崎さん。原田さんも、「新鮮な海産物がそろうだけでなく、最高においしい状態で提供したいという思いがあったからこそ、炉端焼きの文化が釧路で浸透したんですよ」と応えます。
その後も、お料理をいただきながら今日のできごとや感動を伝える山崎さん。さまざまな観光プロジェクトにも携わる原田さんが、地域の中から見た釧路の魅力を語ってくれました。冷えていた体はすっかり温まり、会話も盛り上がります。旅先で地元の人々と交流する時間も、かけがえのないひとときです。
くし炉 炉ばた 番小屋
住所 | : | 北海道釧路市末広町4-9 フジビル1階 |
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電話 | : | 0154-25-0033 |
営業時間 | : | 17:00~22:30(L.O.22:00) |
定休日 | : | 不定休 |
盛りだくさんだった釧路エリアの旅。山崎さんは「インドア派だったのに、釧路の自然や人々に魅せられていつのまにかのめり込んでいました」と、自分自身の意外な一面に出合ったようです。
旅を通していつもと違う刺激を受け、新たなものに興味を持ったり、行動が変わったり。ATの魅力は、旅の間だけではなく、帰ってきてからも実感できるものなのかもしれません。
釧路・阿寒湖観光公式サイトでも、「原生の自然と生命の恵みを感じとる旅」をテーマに釧路のATが紹介されていますので、ぜひご覧ください。
SUPER FANTASTIC Kushiro Lake Akan(釧路・阿寒湖観光公式サイト)
https://kushiro-lakeakan.com/adventure-travel-ja/
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