
西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎(実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典(PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
西の原、三瓶観光リフト、さんべ温泉で癒される自然満喫の1日
島根県大田市へは、出雲縁結び空港から車で約1時間、山陰道の開通でアクセスも便利になりました。鉄道なら山陰本線を利用し、日本海の絶景を楽しみながらのんびり旅もおすすめです。
大田市は、自然と文化が息づく場所。日常を離れ、心と体を整える旅にぴったりです。四季折々の美しさが広がり、訪れるたびに新しい発見があります。
その町のシンボルが、大山隠岐国立公園に属する「三瓶山(さんべさん)」。四季折々の美しさと、豊かな自然に抱かれた癒しのフィールド。複数の峰が連なる山体が広がり、山のふもとには草原が広がります。
やわらかな新緑と高原の風が心地よい「西の原」は、軽めのハイキングにぴったりの季節でした。
「三瓶観光リフト」に乗れば、標高854mの頂上まで空中散歩。遠くに広がる中国山地の稜線や、牧草地、ぶどう畑が視界に広がります。
からだを動かした後は「山の駅さんべ」へ。三瓶山を望む絶景テラスで、地元パンを使ったお食事メニューやハーブティーをゆっくり味わえます。持ち込みもOKで、休憩だけでも立ち寄れる気軽さが魅力です。
三瓶の草木を使った「和精油づくり」などの、自然とふれあう体験も充実。三瓶を五感で楽しめます。
テラスからのんびり景色を眺めていると、E-Bikeで駆け抜けるグループが目に留まりました。これは「さんべツアーズ」主催のツアー。電動アシスト付きの自転車で、起伏のある道も快適に巡れます。風を感じながら、三瓶を隅々まで深く味わえるアクティビティです。
ここ数年大人気なのが、「天空の朝ごはん in 三瓶」です。日の出1時間前に集合して、まだ暗いうちにリフトを使って山頂へ上がり、徐々に明るくなってゆく空を眺めながら地元の人気店が提供する朝食をみんなで味わうイベント。コーヒーショップやレストラン、石見銀山のドイツパンのお店が協力し、魅力的な朝ごはんを用意しています。
登山やハイキング、朝の空気をたっぷり吸い込んだあとは、三瓶温泉でゆったりと身体を癒す時間もおすすめです。三瓶温泉の湯は、鉄分と塩分を豊富に含んだ“ぬる湯”。湯あたりがやさしく、身体の芯まで温まると評判で、湯上がりのぽかぽかとした心地よさが長く続きます。島根県は「美肌県」としても知られ、素肌の美しさ日本一に何度も選ばれてきた土地。その源には、こうした自然の恵みがあるのかもしれません。
静かな山あいの温泉で、日常の喧騒を忘れて、ほっとひと息。そんな時間も、三瓶の旅ならではの贅沢です。
夏は避暑地や星空観察、秋は紅葉、そして冬は雲海。いろいろな楽しみ方ができる三瓶で、アクティブな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
山の駅さんべ
住所 | : | 島根県大田市三瓶町池田3294 |
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電話 | : | 0854-83-2053 |
営業時間 | : | 火・水・金 10:00~14:00 土・日・祝日 10:00~16:00 |
定休日 | : | 月曜日・木曜日 12月~3月下旬は冬季休業 詳細はURLのカレンダー参照のこと |
URL | : | https://yamanoekisanbe.net/ |
三瓶観光リフト
住所 | : | 島根県大田市三瓶町志学1640-2 |
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電話 | : | 0854-83-2020 |
営業時間 | : | 8:30~16:30 往復利用の場合は16:15最終受付 |
定休日 | : | 12月~3月下旬は冬季休業 |
URL | : | https://www.ginzan-wm.jp/purpose_post/sanbechairlift/ |
さんべツアーズ(天空の朝ごはん、E-Bikeツアー、星空観察会予約窓口)
住所 | : | 島根県大田市三瓶町志学2072-1 |
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電話 | : | 0854-83-2011 |
URL | : | https://www.sanbe-sou.jp/ |

大山隠岐国立公園にそびえる名峰・三瓶山。標高1126mの男三瓶をはじめとする6つの峰で構成される

多くの人が登山やトレッキングで山頂を目指す

「西の原」にあるログハウス風の「山の駅さんべ」でひと休み

店内からもテラスからも三瓶山とその麓に広がる草原が見わたせる

老舗の羊羹が山のおやつとして新登場、登山の行動食として手軽なスタイルに

セイタカアワダチソウのアロマオイル。摘んで、蒸して、香油に

さんべ米粉パンに地アイス乗せ。くろもじの花のハーブティーも一緒に

もちもちのパンは、特注。自家栽培のエディブルフラワーなどで華やかに

ここで、〔さんべツアーズ〕のE-Bikeガイドツアーに出会いました。風を感じながら景色を楽しむ、特別な旅が味わえる

日帰り入浴や温泉旅館の予約窓口は、「さんべ荘」。前述のサイクリングツアーや星空観察会、天空の朝ごはんの窓口は、「さんべツアーズ」となっている

駐車場にある無料足湯

さんべ荘は将棋の王将戦が開かれることでも有名。タイトル戦なども行われる将棋ファンの聖地

館内男女合わせて16種類のお風呂があり、露天風呂は全て源泉かけ流し

三瓶温泉は鉄分と塩分を含むぬる湯で、じんわりと温まる

三瓶山東の原から約15分、パノラマ眺望を楽しめる「三瓶観光リフト」

三瓶の山なみ。左から孫三瓶、子三瓶、男三瓶
「水は語る。」三瓶山の湧き水を通して食の恵みを感じる時間
三瓶山の裾野に広がる大地を静かに潤す伏流水。これは火山活動が育んだ恵みです。
降り注いだ雨が幾重にも重なる火山灰の層をゆっくりととおり抜ける過程で、不純物を取り除かれ、澄んだ伏流水となって再び地上へと姿を現します。三瓶の人々はこの自然の恵みに寄り添い、生活に取り入れ、そして大切に守り継いできました。
そんな伏流水が、三瓶の風土を語るうえで欠かせないいくつかの景観を生み出しています。まず訪れたのは、山あいにひっそりと広がる農園「わさび田かじか農園」。車では見過ごしてしまうような道路沿いの斜面に、突然現れる段々畑。清らかな水が上段から下段へと流れる石組の田んぼに、在来種のわさびが育てられています。
在来種のわさびは品種改良されたわさびと比べて小ぶりですが、風味、辛味、香りの全てが際立ち、粘りがありながら水っぽさがなく凝縮された濃厚なうまみがあります。栽培には三年かかりますが、その分だけ深い味わいを育みます。季節はちょうど花が咲くころ。可憐な白い花が咲き誇る下で、種取りの準備が始まっています。収穫された種はまた田んぼに植えられ、こうして種をつないでいくサイクルが続いています。
三瓶はそば処としても知られ、「三瓶在来種」のそばを味わえる地です。打ち立ての香りとしなやかな喉越しが特徴で、仕込みから茹でまで伏流水をつかうことでその味がいっそう引き立ちます。そばに添えられる薬味としてのわさび、また生わさびをすりおろしてのせる「わさびごはん」も名物のひとつです。
三瓶温泉の源泉に位置する「さんべ温泉そばカフェ 湯元」は、そばと温泉の両方が楽しめる一軒。製粉からこだわり、十割で打つ香り高いそばを味わったあとは、源泉かけ流しの温泉で心も体もゆるやかにほぐされていきます。
食後に立ち寄りたいのは、一杯のコーヒーにこだわる小さなカフェ「and people」。店の外には清らかな小川が流れ、周囲には静かな自然が広がっています。
コーヒーは、何より水の良さが際立つ飲み物。三瓶の伏流水で淹れる一杯は、雑味がなく澄んだ味わいで、豆本来の香りとコクを引き立てます。丁寧に応対してくれる店主に相談すれば、好みに合わせた豆を選んでくれるのも嬉しいところ。気に入った豆はおみやげとして購入でき、旅の余韻を自宅でも楽しめます。
三瓶の伏流水にまつわる食を味わう中で、この水を大切に守り続けてきた人々の思いはもちろん、土地の恵みに根ざした原料の良さや、昔ながらの在来の味を受け継ぎながら暮らす人々の姿にふれることができました。
それは、この自然の恵みに寄り添って生きる三瓶の暮らしを、ほんの少し垣間見るような時間でもありました。
わさび田かじか農園
URL | : | https://www.sanbe-sou.jp/2025/04/12/post-295/ ※国民宿舎さんべ荘の体験ツアーサイト |
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さんべ温泉そばカフェ 湯元
住所 | : | 島根県大田市三瓶町志学ロ1730-11 |
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電話 | : | 0854-83-2215 |
営業時間 | : | 11:00~15:00(そば) 15:00~17:00(カフェ) 夜営業は要予約 |
定休日 | : | 火曜日・金曜日 |
URL | : | https://www.ginzan-wm.jp/purpose_post/soba_cafe_yumoto/ |
and people
住所 | : | 島根県大田市三瓶町小屋原270 |
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営業時間 | : | 10:00~17:00 |
定休日 | : | 水曜日・木曜日 |
URL | : | https://www.instagram.com/and_people20/ ※Instagramから、営業スケジュールの確認をお勧めします。 |

自然の中で育てる天然わさび「かじか農園」。見学とわさびランチのツアーを行っている

三瓶山の清らかな伏流水で育つわさび田を管理する景山さん

道路沿いからも見えるだんだん畑

山の斜面にもわさびが青々と育つ

足下も一面のわさび

山からの恵み「伏流水」が湧き出している

季節はちょうど花盛り。可憐な白い花が咲く。この後種取りが行われ、種がつながっていく

頭の上には広葉樹が広がり、自然に日影を作る。これによりわさびが葉焼けを起こすことがない

在来種の根茎は小ぶり。風味や辛味が凝縮されている

わさび田の中でテーブルを広げてランチタイム

とれたてのわさびを早速すりおろす

炊きたてのごはんと山の水で味わうお茶漬け

三瓶エリアでは在来種そばの実を使った「三瓶そば」が名物

訪問したのは「さんべ温泉 そばカフェ湯元」

三瓶そばにはわさびごはんがセットになるのが定番。香り高いすりたてわさびが食べられる

そばを楽しんだあとは、湯元(源泉)から湧き出す新鮮なお湯にゆっくりと浸かって

食後に立ち寄りたい、こだわりのコーヒーを提供するカフェ「and people」

コーヒーのカップを片手に、静かな時間が流れる店内でひと息

おみやげ選びも楽しい、ぬくもりある店内
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