
西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
前編はこちら
自然が作り出した奇跡の絶景に会いに行く。ローソク島遊覧船。
隠岐島に来る人たちにとってメインイベントの筆頭に挙げられるであろう、ローソク島遊覧船。
隠岐島は火山噴火で隆起したため、マグマが固まった火成岩でできています。マグマは冷え固まる時に柱状になることがあり、これを柱状節理といいます。この岩石が波に洗われ削られて、今のローソクの形になったといわれています。それにしても和ろうそくのように先が広がった形で頂上には芯のような形も見え、まさに日本海の奇岩です。
ここに太陽が重なるとローソクに火がともったように見えるということで、この時間に合わせてローソク島遊覧船が毎日(4月~10月の間)出航、日没時間により出航時間が異なります。遊覧船は前日までの要予約です。また船着き場は2カ所あり当日どちらから出航するか決まるので、隠岐の島町観光協会などに問い合わせてください。
海の真ん中にそびえる奇岩、ローソク島を観に行きます。夕日が重なるとこんな感じで火が灯ります。
ローソク島遊覧船、乗り場は2つ。この日は赤崎岸壁からの出発です。
とってもキレイな船でした。この日は波が高めでしたが大きな船だと安心です。団体客の皆さまと一緒になり、満席となりました。
出発。船のどちら側に座ってもローソク島を見られるように船を操縦してくれます。外洋に出てローソク島に到着するまでも、周辺の説明をしてもらえて楽しいです。
海から見る隠岐の島もいいものです。縦の筋になっているのは火山噴火で生まれた「柱状節理」。ローソク島もこの一部からでき上がったものです。
洞窟もたくさん。崩れたり波で浸食されたりした結果、自然にでき上がった芸術です。
ローソク島へ到着!信じられないくらいちゃんとローソクの形。夕日がぴったり芯のところに来るまで周辺を遊覧しながら待ちます。
この日は太陽が雲に隠れてしまっていたので…昨年2017年の夏に私が撮影した、夕日が重なったローソク島の写真を。自然が作り出した海に突き出すローソクの芸術を見るだけでも、行く価値がありますよ。
ローソク島遊覧船・福浦港からすぐ近くのアットホームな民宿「井の本」。
夕暮れになってローソク島遊覧から帰ってきたら、そのまま福浦の民宿井の本にチェックイン。実は私が初めて隠岐の島へ行った20年くらい前?にもこのお宿へ行っていたということを島入りしてから気づきました。お魚の夕食がすごくて驚いたことを思い出しました。福浦さんご一家のお宅にお邪魔している感じ。すごく豪勢なお料理に使われるお魚は、福浦さんが全て釣ってきたものです。
食事をしていたらおかあさんが「蛍を見に行かない?」と誘ってくれました。向かったのは宿から5分ほど、奥に清水が流れている山肌です。家の光が一切なく漆黒の闇の中、スマホのライトを頼りに歩きます。するとふわふわと蛍が飛び交う場所へとやってきました(写真がなくてスミマセン)。
田んぼのあぜ道などで見たことはありましたが、森の中の木の高いところでキラキラと光る蛍は初めて。クリスマスイルミネーションみたいに木の枝でチカチカする隠岐の蛍。
感動的な時間でした。
この日の宿泊は「民宿井の本」。しずかな漁港の脇に立つお宿です。
楽しみだった夕食が、大変豪華でした~!
民宿井の本のおとうさんが釣ってきてくれたお魚。きれいなお刺身。島根を代表するお魚の飛び魚、弾力あるハマチなど。
隠岐と言えばサザエ。これを食べないと隠岐に来た気がしない。
そして初めて食べた尾頭付きの「ツヅリ」は上品な白身でした。深海にいる高級魚なんだそうです。
煮付けは赤ボッカ。とろりとしてコラーゲンがたっぷりなことがわかる。味付けも美味しい。程よい甘さでごはんが進みます。
お魚がおいしいのは当たり前ですが、おかあさんがお料理上手と評判の井の本では、実はグラタンやコロッケなどの家庭料理もおいしいと話題なんです。この日も自宅で採れた玉ねぎを使ったコロッケが、もう本当に本当に美味しかったです。
お吸い物はカメノテ。「ガオー!」って感じのカメノテ、あまり見たことがない人もいらっしゃるかもしれません。岩場などにくっつく貝の種類でちょっとグロテスク?爪みたいに見えるところは食べないで、指で持っているところを剥いて食べます。磯の香りたっぷり。
お部屋から海が見えるのが、とてもいい。
蛍を観に行った帰り道。都会で暮らしていると暗闇に慣れない…。隠岐の夜は本当に真っ暗で、それゆえ蛍の美しさもひとしおでした。
朝の福浦港さんぽ。岸壁からのアジ釣り体験
朝起きて、福浦の海岸は雨の後の青空が見えていました。隠岐の海は白い砂浜はないものの、その透明度はなかなかのものなんですよ。
隠岐の島は「釣り人の聖地」とも謳われるほど釣り客も多い島。ということで民宿井の本さんにお願いして釣り体験。アジを狙ってみましたが…、うっ…うん、素人には無理だったみたいです。でも上からアジが見えていたので本当なら簡単に釣れるはず、でした(笑)
福浦の港は朝からとても静か。可愛い猫たちもくつろいでいました。
福浦の集落。港に続く道はどこも細道で雰囲気があります。
隠岐の島は瓦の家も多いです。黒瓦に混じり赤瓦の家も多く、島根らしくて嬉しくなります。
朝の福浦。前の日雨だったわりには透明度ありました。
これくらい透明だと、魚が泳いでいるのも良く見えます。
ローソク島遊覧船の福浦からの乗り場。こちらにはトイレや休憩所もあります。
湾になっているので波もなく静か。朝の漁に出ていく船の音と鳥の声しか聞こえません。最高の朝です。右側の島は「弁天島」。ちょうどこの日はこの島にある神社のお祭りでした。
ちょうどチヌ釣りをするおとうさんと一緒になり。大物狙い。
民宿井の本でお願いすると餌付きで竿のレンタルができます。
>兄弟でしょうか、島ネコの寛ぎ。昨日はカラスと魚の取り合いをしていたたくましい子。

福浦には旧福浦トンネルがあります。かつては通り抜けられたのですが崩落の危険性があるとのことで現在は通行禁止となってしまいました。手彫りで造られたトンネルで途中の明かり取りもあり、自然の地形を利用して作られています。新福浦トンネルが昭和63年にできるまでは普通に使われていました。
民宿井の本は相撲一家。20年に一度の屋根の葺き替えで隠岐古典相撲が行われる「水若酢神社」も併せてご紹介
民宿井の本の屋根には大きな柱が2つ。
これは隠岐の島町で行われる「隠岐古典相撲」で勝った者のみが与えられる名誉の柱です。
島の記念行事がある毎に開催される相撲大会は、夜通しかけて取り組みが行われます。熱い戦いが繰り広げられ、関わるもの誰もが切望する最高位“大関”を目指します。よって子どもの時から、隠岐では相撲が盛んです。今でも隠岐では角界の八角部屋が夏合宿を行うことで有名で、毎年小さな飛行機にすし詰めになった力士たちの写真がSNSなどで大きく取り上げられます。
大関を出した家の軒先には大きな柱を飾り、周囲からは一目置かれる存在になります。
民宿井の本を最後にする朝。朝ごはんもおいしかったー。
海藻「あらめ」。これも隠岐っぽい。隠岐に来ると何度もこれを食べます。
民宿井の本の玄関軒下には大きな柱が2本。これは「隠岐古典相撲」での最高位・大関になった証。こちらでは2代にわたって大関を出したお宅なんですね。
この隠岐古典相撲が行われる神社が「水若酢神社」です。
水若酢神社内の土俵。島にはあちこちに土俵があり相撲が盛んです。
水若酢神社の屋根の葺き替えの際や、島の記念行事がある毎に開催され、夜通し300番の取り組みが行われます。島内各地域から力士を選出して行われるので、地域を背負っての真剣勝負です。
真剣な戦いとは裏腹に、島民の皆さんにとってはお祭りのような楽しみの一つでもあるでしょう。私も一度観に行きたいと思っているんです。そして砂かぶり席で塩を撒かれてみたい(対戦の前に大量の塩が撒かれることで有名です)。
水若酢神社本殿。玉若酢命神社と同じく分厚い葺き方の「隠岐造」。かなり本殿の近くまで行けるのでじっくり見ることができます。
水若酢神社近くの隠岐グルメ。五箇創生館「喫茶木かげ」の隠岐そばと、ばくだんおにぎり
水若酢神社のすぐ裏手にある喫茶木かげの「隠岐そば定食」をいただきます。
隠岐そばは隠岐グルメのひとつです。焼きサバで出汁を取りぶっかけスタイルでいただきます。そばは出雲そばにも通ずる太くて黒いそば。そば粉100%なためでき上がりは短く切れています。
またばくだんおにぎりは醤油をつけた岩海苔で握ったおむすびです。この大きなおにぎりが2つ、さらに2種類のおかずと地元の漬物がついたランチ定食。
水若酢神社とセットで訪れてほしいお店のひとつです。

隠岐のグルメが食べられる「五箇創生館・喫茶木かげ」をご紹介。水若酢神社からすぐ近くです。
隠岐の島町のお祭りや文化などをパネル、映像などで学べる施設。
食事ができるスペース、広い!天井も高くて気持ちがいいです。
現在隠岐4島で開催されている「ご島地グルメスタンプラリー」冊子にスタンプを集めると抽選で、豪華景品プレゼント。その該当店のひとつです。島のグルメが当たるということで、中にはサザエやアワビも!ただし私は全て集められず…。
隠岐そば。このお店はそば湯も一緒に入る「釜揚げスタイル」。私は大好きなんですが、かなり好みがわかれる食べ物でもあるかもしれなくて。
焼いたサバで出汁を取るため、サバのほぐし身を見つけた時の「当たり感」すごいです。そして十割のおそばはつなぎがなく短く切れていて、「お茶漬け」のようだとも表現されます。
ばくだんおにぎり。ボリュームすごい。お醤油をつけて岩海苔で握ったおにぎり。中の具は梅干しなど普通の具ですが今回は昆布が入っていて中も外も海藻でした。これも素朴で美味しい。
2つのおかずと1つのお漬物。お漬物はご近所で作られていて市販されていないという「どっさり漬け」10種類の野菜が入った漬物でした。ここでもやはり「あらめ」。ひじきのような味付けをしますがひじきよりも幅があり歯ごたえもある海藻です。
あらめは「京見屋分店」にも売っていましたし、隠岐の商店ならだいたいどこにでも売ってます。
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