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西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
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私の故郷、出雲にある出雲大社。毎年10月を全国的に「神無月」と言うのに対し、出雲地方では「神在月」と呼びます。旧暦の10月10日(2017年は11月27日)に行われる神迎神事の際、出雲に集まった全国の神様は神迎の道を通り、出雲大社へと進まれます。今回は出雲大社、出雲の歴史を学べる歴史博物館、そして神様をお迎えする神迎の道を中心に観光地、食、おみやげなどをご紹介します。
出雲市の旅はやっぱりここから縁結びのお社「出雲大社」
昨年(2016年)まで続いた60年ぶりの「平成の大遷宮」は全ての社殿の修造を終え第一期を終了しました。これには、「原点回帰・よみがえり」の意味があります。引き続き始まった二期事業により境内施設の充実に向けた工事が始まっている出雲大社ですが、未だにありがたいことに沢山のお参り客の方に来ていただく人気のスポットになっています。
出雲大社の神様は縁結びの神様である大国主神です。恋愛・結婚だけでなく、仕事や友人、健康など様々な縁を結ぼうと、日本全国から多くの人が訪れます。私にとっては子供の頃よく訪れた場所。家族や親せきと、また学校の遠足で度々来たことがある思い出の場所です。今回はその見どころを写真のキャプションでご紹介していきます。
出雲大社へ参拝です。美保神社との両参りを実現させてご利益いっぱい。出雲大社の参拝方法は「2礼4拍手1礼」です。
出雲大社には4つの鳥居があり、こちらは二の鳥居、木造です。この場所を勢溜(せいだまり)と言います。
勢溜から見る神門通り。勢溜に向かって上り坂になっていることがわかります。奥に見えるのは一の鳥居。鉄筋コンクリート製です。
二の鳥居越しの一の鳥居。神社好きが喜びそうな撮影スポットです!
境内参道今度はぐっと坂道になります。つまり勢溜が一番高い場所にあるということです。
参道途中にある「祓社(はらえのやしろ)」。お参りする前に穢れた自分を清める場所です。
三の鳥居。鉄の鳥居です。ここから社殿までは松の参道となりますが、松の木保護のため、また中央は皇族や祭祀の際に使う道として、通常は両脇の道を使うことになっています。
松の参道。大正時代くらいまではこの松並木の両側は水田でした。松の木には樹齢400年というものも残っています。
出雲大社。あいにくのお天気でしたが裏山からは出雲の枕詞「八雲立つ」のとおり、雲が湧き出ていました。
いよいよ最後の鳥居、四の鳥居。銅の鳥居で4つの中で最も古く、江戸時代中期に毛利家から寄進されたものです。国の重要文化財。
銅鳥居には銘文があり、「素戔嗚尊」の文字が見えます。ここに書かれていることを解読すると、現在大国主神を祀っている出雲大社が、銅鳥居が建てられた時代には素戔嗚尊を祀っていたということがわかります。
こちらが出雲大社拝殿です。ご祈祷などを受ける際に入る場所です。「平成の大遷宮」により本殿の修造を行っていた際には神様は現・拝殿にお移りになり、ここが仮本殿となりました。とかくしめ縄で話題になる出雲大社ですが、拝殿のしめ縄は須賀注連縄保存会により島根県雲南市で作られたものが奉納されています。
さて土砂降りになってきましたので一度退散。こちらは出雲大社の八足門、奥に見える大屋根が本殿です。
八足門は国の重要文化財、本殿は国宝です。出雲大社の社紋は二重亀甲剣花菱。金色に輝いてます。
大遷宮により60年ぶりに屋根の葺き替えが行われました。屋根に使われた「檜皮葺き」は檜の皮を重ね、竹の釘で打ち付けていく工法です。
こちらは本殿の両脇にある「十九社」。日本全国の神様が出雲へいらっしゃる時にお泊りになる宿所です。こちらは東側にあるので、東十九社と言われ出雲を挟んで東側の国からやってくる神様たちがお泊りになります。
出雲大社の裏側には「素鵞社(そがのやしろ)」があります。ここには素戔嗚尊が祀られています。
彰古館。木造2階建て、重厚感ある建物で登録有形文化財に指定されています。中には出雲大社境内の模型や資料などが収められています。
そして大きさ日本最大級というしめ縄をかけているのが神楽殿。主にご祈祷や婚礼が行われる場所です。来年に向けかけ替えが行われるのではないかという話です。架け替えの際はクレーン車を使って4トンとも5トンとも言われる重さのしめ縄を持ち上げます。
境内では色んなものが売っていますが、私が購入したのはこちら「出雲大社由緒略記」。コンパクトスタイルで出雲大社の歴史やいわれがまとめられています。
最近増殖中のうさぎ(笑)境内のあちこちで見かけることが出来ます。が、せっかく見るならこれがいい。千家国造館前にある夫婦うさぎ。
古代出雲の国の歴史、出雲大社の謎にも迫る「島根県立古代出雲歴史博物館」
「出雲の歴史は古い。」と言うのは簡単ですが、“なぜそう言えるのか”がわかるのが出雲大社の近隣に位置する「島根県立古代出雲歴史博物館(通称、歴博)」です。こちらも写真のキャプションで紹介していきますが、歴博の圧巻の見せ場は358本の銅剣です。この銅剣が見つかったのは1984年、出雲市斐川町の荒神谷遺跡から発掘されました。当時私は小学生で、連日ニュースニュース、大人たちがざわざわしていたのを覚えています。さらっと年齢がバレる告白をしましたが、とにかくこの展示は鳥肌が立つくらいに好きです。
また歴博の展示の中では、太い柱を使った巨大神殿の姿をした、かつての出雲大社の巨大模型の展示に興味を持たれる方も多いと思います。しかし私は慶長期、江戸時代が始まって間もない頃の出雲大社の模型が大好きです。「出雲大社に三重塔があったなんて!」「出雲大社が朱塗りだったなんて!」と神社と寺が信仰上ひとつになっていた当時の人々の宗教観と、今の出雲大社が頭の中で重なり合ってとても楽しいです。
島根県立古代出雲歴史博物館へやってきました!
まず入口から入ってすぐには「宇豆柱」。2000年、伝説だと思われていた巨大神殿の柱が実際に地中から発見されました。これらは、巨木丸太3本を束ねて1本とした柱により、48メートルもの高さの高層神殿を建てていた可能性を示唆しています。
そして展示室の中ではその高層神殿の模型を見ることが出来ます。こんなに大きな建物が実在していたとは驚きです。
この模型は各分野の研究者が予想した出雲大社社殿の図。それぞれ高さや形が異なり、どの模型が実際に建っていた社殿に最も近いのかはわかりませんが、夢が広がります!
こちらが私の好きな慶長期の出雲大社の模型。本殿の形は今の「大社造り」と同じ様子ですが、まず全体的に朱塗りであることが寺様式を反映させているように感じます。
三重塔。出雲大社は江戸時代(寛文7年)の造営の際に、仏塔などを排除し神道の形へと整えました。その際、造営に使うため兵庫県養父市の「名草神社」のご神木を譲り受けたことへのお礼として、この三重塔を提供しました。今でも名草神社境内で三重塔を見ることが出来ます。
本殿右に2つの社、左に1つ、は今と同じ!今と同じもの探しするのが楽しい模型です。
古事記。日本最古の歴史書です。古事記には上・中・下巻があり、上巻のほとんどは神話で、出雲で起こった様々な物語が書かれています。
出雲国風土記。地域の伝承や言い伝え、また特産品や暮らし、地名起源や地理などを記すように命じられ、各地でつくられたのが「風土記」です。それぞれの国でつくられたはずですが現代にはほとんど残っておらず、現在残っているのは出雲国、播磨国、肥前国、常陸国、豊後国のみ。その中でも、特に出雲国風土記は、ほぼ完本に近い状態として残っています。
出雲国風土記は「巻物」であったと考えられています。この冒頭の部分は出雲の人ならだれもが知ってる「国引き神話」のお話です。
荒神谷遺跡から発掘された銅剣。壁一面の展示は本当に見事です!
これだけの銅剣を古代の人が一体何に使ったのかは…、謎です。358本、全てが国宝です。
こちらは、荒神谷遺跡から直線距離で3.4キロの場所にある加茂岩倉遺跡(雲南市)から出土した銅鐸。これは鳴らすものであったようです。これらの銅鐸も全て国宝です。
亀の絵がある銅鐸。
鹿を描いた銅鐸。
裏道とは言わせない!こっちが表参道「神迎の道」でグルメと工芸、芸術を堪能
出雲大社からまっすぐと伸びる「神門通り」。お土産屋さんや飲食店がずらりと並ぶ名物通りになりました。数年前までは誰も歩いていないようなさみしい通りだったのですが、今や賑わいを取り戻し、歩道も拡張され石畳が敷かれて、歩いて散策しやすくなりました。しかし出雲大社のレポートでも、周辺上布はやっぱり「だけじゃない!」をテーマに取り上げてみたいと思います。
神門通りは正面にある通りなのでここが本通りのような感覚になるのですが、実は出雲大社に参拝するための本来の表参道は海へと続く「神迎(かみむかえ)の道」。この道は神様がお通りになる道でもあり、特別な道です。旧暦の10月10日、出雲大社から西へ行ったところにある「稲佐の浜」に全国の神様たちがいらっしゃり、神迎神事が始まります。
浜でお迎えした後は神々を出雲大社までお連れするのですが、その時に通るのが神迎の道です。出雲大社と共に暮らしてきた大社町というエリアで、黒瓦の民家が立ち並ぶ中、旅館や飲食店が混じりあい、静かで落ち着きのある街です。
今回はこの神迎の道で購入できる伝統工芸品「たかはしの祝い凧」と地元の人間なら食べたことがない者はいない「俵まんぢう」、ソース後がけが美味しい「きんぐの大社やきそば」、出雲大社の勘定方を務め、また酒蔵を経営していた商家・手銭(てぜん)家の「手銭記念館」をご紹介します。
松江城周辺、美保関、出雲大社周辺をまわった今回の旅。まだ訪れたことのない方にとってはマニアックなご紹介になってしまったかもしれませんが、「初めてなのに2回目みたいな旅」というのもたまにはいいものですよ。ぜひ私の故郷、島根県に遊びに来てくださいね。
神迎の道にある「祝い凧たかはし」へやってきました。飾り凧を作る工房です。
鶴(赤)と亀(黒)が一対でひとつの字凧。グラフィック的でカッコいい。外国の方にも喜ばれそうです!
出雲大社でお祝いがあった際、氏子が揚げてお祝いをした凧でしたが、一度絶え、それを復刻させて今に至ります。左右対称でない、デザイン性ある形へと変化し、引き出物や新築祝いなどの贈り物としてよく購入されるそうです。
![画像: 精霊流しの代わりに車を付けて道を引いたという歴史がある、じょうき。こちらもとても可愛いです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783489/rc/2019/12/24/4685f24913d1a31a8cb78590980210ab2e867586.jpg)
精霊流しの代わりに車を付けて道を引いたという歴史がある、じょうき。こちらもとても可愛いです。
俵まんぢう大鳥居店。祝い凧たかはしさんのすぐ先にあります。
滑らかな白あんが入ったカステラ生地のおまんじゅう。いくつでも食べられます!
中にはお茶も用意されており、イートインできます!1個から買えるのでその場で食べることも出来ますよ。
手前えびす様に奥大国様。大国様は出雲大社の大国主神の事。俵の上に乗っている姿は子供の頃から親しみがあり、私にとって俵まんぢうと出雲大社は容易に結びつきます。子供の頃から大好きです。
瓦屋根のお店です。
神迎の道を歩いていると見かけるコチラは「潮汲み」というこの辺り一帯の風習です。毎月1日、神迎の道を通り稲佐の浜へ向かいます。そこで海水を汲んだら周辺のお宮を順に訪れ、笹にその海水をまとわせて振り清めて回ります。民家にこの潮汲みの竹筒がかかっていたらそういう意味がありますよ。
神迎の道のグルメ、きんぐへやってきました!
ここでは登録商標も取得した「大社焼きそば」があります!なんと、ここの焼きそばはソースかかっていないんです。実はこのやきそばはソース後がけ。自分好みにソースを掛けます。しかし野菜もたっぷり、ラードの香りが食欲をそそります。
ベーシックなソースと辛いソースの2種類を好みでかけ分け。お皿の上でブレンドしたっていいんです。
その「後がけ」だったからこそ!の新しい食べ方、「大根おろしとポン酢」というまかないメニューがあるというので実食。大根おろしのとコクのあるポン酢でさっぱり。麺の小麦の味わいとラードの香りがさらに引き立ちました!次回からポン酢大根も追加しよう。
さてこの旅最後に訪れたのは、手銭(てぜん)記念館。チャコールと白のコントラストが美しい土蔵が並ぶ一区画。ここには元々酒屋で、後に出雲大社の勘定方も務めた手銭家があります。
大社からいただいた米で酒を作りそれをお神酒として奉納していたという手銭家。
松江藩関係者や藩主が出雲大社へお参りする時の御用宿のひとつとしての役割も担っていた家柄。所蔵する500点あまりの品を、企画展や季節ごとの入れ替えにより展示しているとのことです。
代々決して美術品コレクターではなかったそうですが、おもてなしをするために買い集め、また実際に使っていた食器などを見ると、出雲でもこれだけ風流な作風を持つ器やセンスある工芸品を使っていたのだ!という新しい発見があります。
蔵を展示室にし、足音すら反響するような静かな中でじっくりと見る作品。高台を見ることが出来るよう工夫された展示。
華やかな模様でむしろ現代風にも感じる「八雲塗(明治時代)」の盆。少しオリエンタルにも感じる素晴らしい作品でした。
海老の茶碗。お祝い事などにも良さそうな可愛い絵柄。ひとつひとつが実際に使われていたと思うと、想像も膨らみますしなんとなく親近感もあります。
酒蔵だった場所を使った展示なので天井も高く落ち着いて鑑賞できます。
手銭記念館では出雲の文化そのものを取り上げる参加型の企画や、出雲地方の工芸品を扱った特別展など、様々な企画やイベントを行っています。
手入れされたお庭も見学できるので、ぜひご覧になってくださいね!
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