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西村 愛
2004年からスタートしたブログ「じぶん日記」管理者。47都道府県を踏破し、地域の文化や歴史が大好きなライター。
島根「地理・地名・地図」の謎 (実業之日本社)、わたしのまちが「日本一」事典 (PHP研究所)、ねこねこ日本史でわかる都道府県(実業之日本社)を執筆。 サントリーグルメガイド公式ブロガー、Retty公式トップユーザー、エキサイト公式プラチナブロガー。
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出雲大社との両参りで運気アップ!美保関「美保神社」
松江市から足伸ばしスポットとして今回紹介したいのは美保関(みほのせき)。島根半島の最東端です。美保関にはえびす様を祀る美保神社という神社があります。
皆さんは「えびす」と聞いたら何を思い浮かべるでしょうか。東京の駅名?ビール?でしょうか。神社の世界では恵比寿さんは事代主神という神様であり、商売繁盛や海上安全の神として崇められ、ここ美保神社は全国に3385社ある事代主えびす社の総本宮、つまりトップなのです。
出雲大社と共にお参りすると、よりご利益があると考えられています。これは、出雲大社の神様である大国主神が美保神社の事代主神と親子であり、神話の中でも多くの関わりを持つからです。出雲大社の大国主神は別名「大国(だいこく)様」と言われていることから、この2社を合わせて“出雲のえびすだいこく”と呼ぶこともあります。
美保関は漁師町。かつては北前船が寄港し風待ち港として栄えました。古事記の神話にも登場する場所です。
美保関にある美保神社。その歴史は古い歴史書にも登場します。事代主神とその母神である三穂津姫命(出雲大社の神様である大国主神の息子と奥さん)が祀られています。
大屋根の拝殿の奥には本殿が2つ。出雲地方に多い「大社造り」ですが、独特の形を持つため「美保造り」とも呼ばれます。事代主神は音楽の神様でもあるため、拝殿では奉納コンサートが開かれることもあります。
こちら神社で授かる福種銭。中には10円玉が入っていて、これは大事に持っておくのではなく使ってしまうのだそう。そうすることで福の種が世界に撒かれるという意味。
隋神門のところにふさふさの紙垂(しで)。ふたりの神様ですから2つです。
竹にしめ縄がかかっている不思議なスポット、御神竹。
本殿。決して派手さはないものの朱に塗られた飾(かざり)や、どっしり構えた屋根を持ちます。千木(屋根上の交差板)の形の違いにも注目です。その形で手前が事代主神(男神)、奥が三穂津姫命(女神)だなとすぐわかります。
絵馬はよーく見ると釣り竿と糸にぶら下がった鯛の絵馬。事代主神(えびす様)は鯛釣りがお好きなのです。皆さんもぐいっと願いを釣り上げましょう!
神社の紋の不思議。両脇には神様それぞれの紋。しかし金色に輝く菊の御紋は…。日本書記によると、事代主神の娘、孫娘が天皇家に嫁いだということで、この紋を入れることを許された皇室ゆかりの神社なのでした。
美保神社の朝御饌祭(あさみけさい)で観た巫女舞
もし朝の時間が空いている方は美保神社の「朝御饌祭」を拝観すると良いですよ。神様へ供物(食事)をお供えするお祈りが、毎日朝8時30分から行われています(祭事の際は時間変更あり)。
祝詞を唱えた後雅楽演奏と巫女舞を奉納します。古式ゆかしく簡略化されていない古来の姿のまま伝えられた儀式が、こうして現代にも見ることが出来るという事実にピリッと身の引き締まる思いです。静かに雨が降る中、神楽鈴がシャンシャンと響きます。心落ち着く朝の厳かな時間でした。
8時30分から行われる朝御饌祭を拝観しました。毎日行われているお祈りで、誰でも見ることが出来ます。
広い拝殿の中で祝詞が始まりました。
その後雅楽演奏が始まります。
巫女の舞。玉串と鈴を持ち厳かに、優雅に舞います。
拝殿の奥には御饌(みけ・朝ごはん)が供えられています。両脇の御幣など全てが1対となっていることがわかるかと思います。
シャン、シャンと鳴る鈴の音。霊験あらたかな空気に包まれ、朝からすがすがしい気持ちになれました。
少し雨も降ってきましたが、空気がきれいになって視界もクリアに。
まさに質実剛健、古式ゆかしい神社です。
神社を後にすると、目の前には鳥居越しの美保関の海が広がっていました。
青石畳通りと美保館、美保関の街を歩きます
趣きのある街としてファンも多い美保関。古くからの漁港で、北前船の寄港地でもあった街。ここにあるのが美保神社を出たところからすぐの「青石畳通り」です。江戸時代に海の石を敷き詰めて作った、いわゆる“舗装道路”。うっすらと青く濡れる石もそうですが、この路地感がすごい!絶妙なカーブと道幅に、300年前の人々の往来を想像して強く印象に残りました…。両脇の建物の雰囲気もノスタルジックで溢れています。
今はもう一本海側に、車も通れる埋め立て道路が出来ましたが、昔はこの青石畳通りが美保関の本通り。この道の海側(写真では右側)にある家々や旅館からは釣り糸を垂れて魚釣りができたのだとか。小泉八雲も美保関を気に入り訪れていたほか、与謝野鉄幹・晶子夫妻や高浜虚子など文豪も来ていた場所です。
美保関の街には青石を敷き詰めた通りが筋になって広がります。これは海石を使って作った江戸時代後期にできた舗装道路です。
雨に濡れるとなお一層青く見えます。今でも手直ししながら住民が大事に使っている道です。
青石畳通りに面した歴史的な旅館「美保館」。国の登録有形文化財指定を受けています。
海を見渡せる宴会場。昔はここから釣り糸をたらして魚釣りを楽しんでいたのだとか!
使い古され、人の手が触れたところがツルツルになってもなお未だ現役。丁寧に手直ししながら保存されている本館です。
しおかぜラインを通って美保関灯台へ。秋には美保神社からバスが運行!
島根半島の先の先、可愛いレトロな灯台があるのが地蔵埼。ここまで行くと断崖絶壁!日本海を一望でき、はるか隠岐諸島まで見渡せるという絶景スポットです。
美保関灯台は、約120年前に建てられた山陰最古の灯台です。ここにはカフェがあり、夜にはイカ釣り漁船が遠く星のように美しく見えるスポットなのだそう。その名も「いさり火カフェ」で、名物の特製いか丼を。わさわさと海苔の海を越えたらそこにはいか!山陰のいか!オススメです。
灯台の近くには鳥居があり、ここには「地ノ御前」「沖ノ御前」と書かれています。鳥居の向こうには海が広がるばかり。しかしよく見ると海の真ん中に小さな祠があります。実はここは美保神社の飛び地境内で、沖ノ御前ではえびす様が鯛釣りをしたと語り継がれています。
さすがえびす神社のトップオブトップ美保神社。海上の安全を見守ってくれているのですね。12月初頭までの週末は美保神社前から美保関灯台までの直行バス「ゑびすライナー」が運行されるのでチャンスです。運行日程や時間など、詳しくは美保関観光協会の公式サイトでご確認くださいね。
ぽってりとしたフォルムの可愛い灯台。こんな愛らしい姿なのに「世界の歴史的灯台100選」に選ばれるという優秀な子なんです!
灯台内にある「美保関灯台ビュッフェ」。ここからは広い広い海を一望。お天気の日には隠岐の島まで見えるロケーション。夜にはイカ釣り漁船の灯りを見ながら食事が出来るデートスポット(夜営業の「いさり火カフェ」は期間限定)。このカフェでランチをいただきます!
ぷりっぷりのイカを使った特製いか丼!
日本海のイカ最高!ほんのり甘めのお醤油味に仕上げた極上の新鮮丼です。
灯台の先には美保神社の飛び地境内。鳥居の場所が地の境目。
お天気が悪くて残念なのですが、海上には沖ノ御前という岩場があります。ここはえびす様が鯛釣りをしたという伝説のスポットです。
赤い屋根は元々灯台守の宿舎。ここに詰めて夜な夜な海の警護をしていたのですね。それにしても見事なまでの曇天コレクターなアタシ…。今回も忠実に雨オンナキャラを守り切りました(笑)
島根じゅうの民芸や雑貨を集めたセレクトショップ「YUTTE」でお買い物
美保関から松江へ戻り、いよいよ次の目的地・出雲へと向かう前に立ち寄りました。民芸や工芸、自然派の食品、オリジナルてぬぐいなどを扱うYUTTEです。引き出物などのギフトを扱うところからスタートし、2016年に店舗オープン。民芸に関わるイベントや企画に携わってきた感性を生かし、日常でさりげなく使いたい、置きたい器、雑貨、お土産を揃えています。
店内も城下町松江のしっとりとした空気をはらんだかのような、洗練かつ柔らかな雰囲気を備えています。今後はギャラリーを併設する予定もあるのだとか。どこか温かく、手になじむものばかり。きっとお気に入りが見つけられると思います。
島根のお土産を買うならYUTTE。松江だけでなく島根県内の工芸、器、雑貨、食品などを集めたセレクトショップ。
「出雲ビル」という歴史ある古いビルの1階にあります。
独創性あふれ、創作を盛り込んだ器が多い地域。袖師窯の器。
白磁工房の小さなボトル。ひとつ、またひとつと欲しくなってしまう!
原材料にこだわった加工品、お茶や調味料なども扱っています。
安来市にある「天野紺屋」の特注品、YUTTEの手ぬぐい。藍で染め抜かれたロゴ入り。
整然と並んだ棚の上のものひとつひとつに、作り手の思いや努力が詰め込まれています。それらをわかりやすく伝えていくハブとなるお店がYUTTEなんです。
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