丸亀からの歴史島旅。島の大工が作った立派な家々が並ぶ古い街並み「笠島地区」。
丸亀市の本島汽船フェリー乗り場から船に乗り込みます。
途中、船の上からも瀬戸大橋が良く見えます。大型船が行き来する景色もとてもきれいです。
本島に到着したら早速自転車をレンタル。港を出てすぐの待合所で手続きができますよ。
瀬戸大橋がきれいに見えるスポット「新在家海岸」。海岸まで降りることもできます。
右に瀬戸大橋を観ながら笠島方面へ。
笠島港から見る景色にも、青く澄んだ海が広がります。
笠島の古い街並みは重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。江戸時代から昭和初期までの古い民家や建物が残されています。
昔のままの姿をとどめる木造家屋。道は細く、網の目のように入り組んでいます。
瀬戸芸のアート展示も行われていたのでたくさんの観光客で賑わっていました。なまこ壁が見える風景。
本瓦葺きの家々。
北欧インテリアブランド「フリッツ・ハンセン」とコラボレーションしているという、築100年以上の古民家を改修した無料休憩所へも立ち寄りました。
港町として栄えた笠島は、現在半数以上が空き家になっているそう。今後はどう利用していくかが課題なのかもしれません。
丸亀駅からフェリー乗り場までは徒歩10分ほど。フェリーチケットは乗船20分前から発売となります。目的地「本島」までは片道35分の海の旅です。
本島は、岡山県と香川県のちょうど真ん中あたりに位置する、周囲16キロの瀬戸内海の小島です。1日あれば見て回れる大きさと、瀬戸大橋を真横からパノラマに楽しめるロケーション、また独特の深い歴史が特徴で、国内はもとより海外からも多くの観光客が訪れます。
ここ本島には、国・県・市指定の文化財が目白押し。また「笠島のまち並」は重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建)にも指定されています。
移動手段としては、島の入口に用意されているレンタサイクルと、コミュニティバスがあります。
本島は瀬戸芸の展示会場なので、期間中は作品鑑賞の観光客が増えるのですが、そうでない時は猫がのんびりと日向ぼっこするのどかな島。島内小学校や中学校が並ぶ道沿いでは、地元の小・中学生が作ったアートの展示などが行われていて、微笑ましいおもてなしを受けることができます。
島で最も人気のエリアである笠島地区までは海沿いの道から行きました。途中、瀬戸大橋の絶景を眺められ、気持ち良い潮風を受けながらサイクリングが出来ます。
笠島は香川県で唯一、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。島の北部にあり、小さな港を中心に街が構成されていて、細い路地に沿って江戸時代以降の古い建物が残されています。かつては城があり、その城の城下町として作られた街なのです。路地が細く複雑なのは、海の方向から来た敵を襲撃するためです。
伝統的な町屋建築が並び、どこを歩いても絵になる景色です。時代の面影を残す路地歩きをしながら、当時の本島の繁栄に思いを馳せました。
瀬戸内で栄えた海の覇者「塩飽水軍」史跡巡り。
塩飽水軍関連の史跡巡り、スタート。最初は「塩飽勤番所跡」。
中は資料館になっています。ここは寛政10(1798)年に建てられた歴史ある建物で、万延元(1860)年に改築され、昭和47(1972)年まで市役所市庁舎として使われていました。
織田信長の朱印状。ここには「塩飽の船が堺港(大阪府)に入港するときは、他国船はその周囲を開けて塩飽の船を通すこと。」と書かれています。つまり塩飽船は船の周囲の海面を占有する権利を持っていました。
豊臣秀次朱印状。塩飽勤番所跡で展示されている朱印状はその他、秀吉、家康などからのもの計7通。名武将たちが塩飽水軍を重要視していたことがわかる貴重な資料です。
「咸臨丸」の模型。咸臨丸は「日米修好通商条約」批准のため、使節団を派遣する際の護衛艦として随行しました。乗組水夫50人のうち35人が塩飽出身者でした。
塩飽勤番所は当時の事務室や年寄の詰め所などの部屋があります。また左縁側の前には罪人を調べる「おしらす」や、現在は休憩所として開放される「牢屋跡」なども見られます。大屋根はむくり屋根の本瓦葺き。「勤番所」と呼ぶ建物は全国を見てもここだけで、国の史跡にも指定されています。
「入江四郎左衛門の墓(供養塔)」。ほとんどの人の名前に名字がなかったこの時代、塩飽を統治した役人「年寄」は塩飽の中で最高権力者であったため、名字を与えられました。入江四郎左衛門が瀬戸内海に散らばる塩飽の島々を司り、水軍を率いて幕府に貢献したことは、塩飽衆が領地権を保証する朱印状を受けるに至った大きな功績です。
本島中学校の校庭脇にずらりと並ぶ、年寄「宮本家の墓」。宮本家は海外交易でも活躍した年寄の家系で、年寄が入札制になるまで、200年近く世襲により年寄役を務めていました。中央部の一番背の高い墓が初代で、それ以降の代は親よりも大きくしないという風習により、小さな墓石となっています。
島内を周る間に通る保育所、小学校、中学校には手作りの絵画やアートが飾られています。可愛くも微笑ましいお出迎えを受けました。
島らしく「ブイ」を使ったアート。本島中学校にて。
泊地区の「木烏神社」。海に面した石の鳥居は両側が上へと丸く盛り上がったような独特の形。塩飽年寄の宮本家により寄進されました。
神社拝殿。島内で一番大きな社殿です。
造りも大変立派です。波に揉まれる龍神の彫刻の上には大根とおぼしき彫刻も。
本殿の創建は今から300年ほど前。飛檐(ひえん)垂木が屋根の美しい反りを形作っています。
江戸時代の芝居小屋「千歳座」。当時の塩飽繁栄の象徴ともいえる常設の小屋。旅芝居の一行を招いて興行を行ったり、地元の若者が毎晩練習を重ね、芝居上演を開催していました。
島内にはたくさんの猫たち。人慣れしていて、触らせてくれる子もいます。
いよいよ島の西側「生ノ浜」」方面の夫婦倉へ。アップダウンが激しい道は、途中ほぼ何もないのですが海がきれいです。こちら方面へ行く場合は、電動アシスト付きは必須です。
生ノ浜へ到着。海が青すぎて言葉が出ない…。波の音と木々を揺らす風の音だけが聞こえます。秋になったというのにこの透明度。この日は30度近くまで気温が上がったので、もしかしたら海に入れたかもしれません…!
「夫婦倉」。廻船業を営んでいた長尾家所有の蔵で、地元大工によって造られました。中は2階建てで外壁はなまこ壁という、蔵にしては豪華な造り。正面から見てもぴったり左右対称の二連式蔵。地元の人の話によると、「こんな蔵が海辺にたくさん並んでいたんじゃないかな。」とのこと。当時の島の繁栄ぶりを今に残す貴重な遺構です。
塩飽勤番所にて「塩飽水軍の島本島へ いっぺん来んかな」をいただきました。島の歴史がきちんとまとまっており、とても読み応えある本でした。
塩飽衆は海に点在する領土である島々を収めるための役所を置きます。これが「塩飽勤番所」で、塩飽の政治の中心でした。現在は資料館になっていて、塩飽歴史観光の目玉です。ここには朱印状や古文書など、塩飽に関する貴重な資料が展示されています。
大小28の島々からなる塩飽諸島はどこの藩にも属さず、「人名(にんみょう)制度」という独特の制度で運営されるようになりました。名(みょう)とは領地のことで、「人名」と称される650人が領主となり、それぞれの島を集団で守り、さらにその中から選ばれた4人が「年寄」として全島の政務、管理を行っていました。「年寄」は塩飽の最高権力者で、島のために働き、交易などで島に繁栄をもたらしました。島のあちこちに残る「年寄の墓」には背の高い立派な墓石が置かれ、今でも島民に敬われています。
「木烏神社」は海が見える神社で、特異な形をした石鳥居が迎えてくれます。ここには島で一番大きな拝殿と「千歳座」と呼ばれる芝居小屋があります。特にこの千歳座は塩飽の繁栄の象徴です。
拝殿には手の込んだ彫刻細工が見られます。一方、千歳座は一見何の変哲もない倉庫か納屋のような造りをしています。これは、庶民が遊びに興じることを良しとしない時代背景にあったと考えられています。島民は廻船業や大工仕事のために都会へ行くことも多く、演芸に接する機会も多かったため、神社内に小屋を建て芝居を楽しんでいました。
回転する「回り舞台」、雨戸を開くと無柱の11メートルもある大きな舞台が現れる仕掛けなど、この舞台は中に様々な仕掛けがあります。舞台としての完成度の高さ、塩飽大工の建築水準の高さが評価され、市指定の文化財になっています。
島の西部にある「夫婦倉」も見学しに行きました。途中アップダウンが激しい場所もありましたが、倉の前に広がる「生の浜」の美しいこと!ほとんど人がおらず、瀬戸内海の美しさを独り占めできました。
「夫婦倉」はこの地で家庭燃料の薪廻船業を営んでいた長尾家の土蔵です。地元の大工棟梁によって建てられたもので、中が2階建ての、なまこ壁が美しい二連式の珍しい蔵です。
これもまた、塩飽の優れた船の操縦術がもたらした富を表すもので、今に残る歴史的遺構となっています。
本島と世界をつなぐ情報発信基地、「Honjima Stand」。
港近くの海が見えるカフェ「Honjima Stand」でひと休み。
北欧家具などを取り扱う丸亀市のインテリアショップ「CONNECT」が手掛けるカフェです。笠島にあった「フリッツ・ハンセン庵」もCONNECTが手掛けるプロジェクトのひとつ。北欧・デンマークの文化発信基地としての意味合いもあります。
目の前の海、そして行き交うフェリーの姿を眺めながら景色と食事を楽しめます。遠くには瀬戸大橋も見えます。
人気の「スモーブロー」はデンマーク流のオープンサンド。ライ麦パンの上に特製ソース、その上にはたっぷりのオーガニック野菜、そして海老と卵が乗り、粉雪のようなチーズがトッピングされます。
ホットドッグには地元の魚のフリットが豪快にはさまれています。島内の3分の1は漁業従事者という本島ですが、島の魚を食べられるお店が少ないということで、ぜひ魚料理を取り入れたいと生まれたのがこのホットドッグです。
Honjima Standは2018年11月、定食屋さんの跡地にオープンしました。「海を見ながら美味しいビールを飲めるカフェ」がコンセプト。このカフェを通して、本島の歴史や文化にひとりでも多くの人が触れ、そしてそこから本島との関わりを持つ人が増えていけばという想いが込められています。
ここを目指して本島へ渡りたいくらい、居心地よいカフェでした。
島の玄関口ともいえるエリアにある、本島港近くのカフェ「Honjima Stand」。
ここは、北欧のデザイナーズブランドを扱うインテリアショップ「CONNECT」が運営するカフェです。
室内からもテラス席からも瀬戸大橋を臨み、海を見ながらビールを飲んだりバーベキューを楽しんだりすることができます。
人気メニューは、デンマークのオープンサンドイッチ「スモーブロー」。またボリュームのあるホットドッグに挟まれているのは、島内の漁師さんが釣り上げた魚を使った自慢のフリットです。
CONNECTと本島の関わりは、CONNECTが自社で取り扱うデンマーク家具の買い付けをきっかけに、デンマーク王立アカデミーの学生の留学受け入れを行ったことが始まりです。
その学生たちが本島に滞在したことで、学生たちを通じて次第に島の人々との関係性が生まれ、島の美しさや歴史深い本島の良さに触れ、また島の「空き家問題」や「人口減少」などの問題を知ることになる中、何かしら島の力になれればと2018年11月Honjima Standをオープンさせました。現在はそのデンマークの学生たちと共に、島内にゲストハウスも建築中です。
CONNECTが島で行うプロジェクトは、デザインの力を通して島を訪れる人たちに気軽に島の歴史と文化に触れてもらい、そこから人と島とのつながりを生んでいくことを目的としています。そしてHonjima Standもまさに社名の「CONNECT」を体現させていく、島と世界をつなぐ発信拠点となっています。
後編はこちら
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