台北観光の夜のお楽しみといえば、「士林夜市(シーリンイエシー)」での食べ歩き。しかし、台北の夜市の中でも最大級の規模であるがゆえに、一体どこが人気店なのか、どこがおいしいのかがわからないという方も多いはず。そこで、現地をよく知る台湾在住ライターのおふたりに、食べ歩きするなら知っておくべき名店を教えていただきました。
文・写真:青木由香、大西稚恵

※1元=約4.9円(2024年7月時点)

現地在住ライターがおすすめする食べ歩きグルメ5選

出来立て熱々をみんなでシェア「豪大大雞排」のフライドチキン

「豪大大雞排(ハオダーダージーパイ)」は、日本でも人気が出た巨大フライドチキン・大雞排の屋台。明るい時間帯から毎日行列ができることで有名で、士林夜市に来たら食べずには帰れないメニューのひとつ。カリカリに揚げられた衣と、約30cmもある大きくてジューシーなお肉が特徴です。肉の下味は漢方のスパイスをブレンドした漬け汁ながら、薬膳の香りが苦手な人もまったく問題なし。万人に食べやすい味付けで、その証拠に行列には、現地に住む人たちだけではなく海外からの観光客の姿も多く見られます。熱々をその場でかぶりついている日本人観光客からも、「おいしい~!」という声が聞こえてきます。

約30年前、台中で営業開始(当時は別の店名)。台湾で一番初めに巨大フライドチキンの販売を始めた店と言われています。約20年前に士林夜市に店を出した際、現在の「豪大大雞排」に改名し、すぐに人気屋台になりました。現在は、アジア、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど海外にもたくさんの支店を構え、台湾国内に12店舗も展開しています。

画像1: 出来立て熱々をみんなでシェア「豪大大雞排」のフライドチキン

行列が苦手な人は、週末や台湾の祝日を避けるか、まだ明るい早めの時間に行くことをおすすめします。とはいえ、一回でまとまった量を揚げているので、揚げ上がると列の長さはグッと短くなります。少しだけ待てば、持てないくらい熱々の揚げ立てが買えるというメリットもあります。順番が来ると、店員さんがスムーズに注文をさばき、個数とチリパウダーの有無を聞かれます。

画像2: 出来立て熱々をみんなでシェア「豪大大雞排」のフライドチキン

チリパウダーをかけなくても、台湾の胡椒をふりかけてくれます。大きいので2、3人でシェアするのがおすすめ。フライドチキン好きなら、豪大大雞排は素通りできません。

画像3: 出来立て熱々をみんなでシェア「豪大大雞排」のフライドチキン

豪大大雞排(ハオダーダージーパイ)基河店(ジーフーディエン)

住所台北市士林區基河路115號
電話昼 02-2995-7978
夜 0989-175-607
営業時間月~木・日曜 15:30〜23:30
金・土曜 16:00〜24:00
価格「大雞排」90元

じっくり焼き上げたグリルエリンギ「燒烤杏鮑菇」

画像1: じっくり焼き上げたグリルエリンギ「燒烤杏鮑菇」

エリンギは、食感がアワビに似ていることから中国語で杏鮑菇(シンバオグー)と呼ばれ、台湾人の大好物。日本のエリンギに比べるとサイズはかなり立派です。エリンギは夜市でも人気の食材のひとつとなっています。揚げた料理もありますが、最近人気なのはバーベキューのように焼いたもの。

「燒烤杏鮑菇(シャオカオシンバオグー)」は、焼きエリンギという意味で、そのまま商品名を名前にした屋台です。台湾人のグルメブロガーたちが、士林夜市で「必ず食べるべき屋台」と軒並み紹介しているだけあって、平日でも長い行列ができる有名店。お客さんの列に並行して屋台が何ブースも連なっています。焼き網がまるで線路のように続き、待ちながら焼いている様子を見て楽しめるのです。列が長くなればそのぶん稼働する網も増えていく。他の人気屋台でも見ないこのスタイルのおかげで、それほど長く待たずに済むのです。

画像2: じっくり焼き上げたグリルエリンギ「燒烤杏鮑菇」

じっくり丸焼きにしたエリンギは、噛むとジュワッと汁が滲みます。エリンギの焼き上がりに刷毛で塗られる甘醤油ダレは、見た目の印象ほど濃い味ではありません。仕上げにトッピングする調味料が味の決め手。わさび、ピリ辛、白胡椒、レモン塩胡椒、のり、クミン、黒胡椒、カレー、ローズソルトの9種類の中から2種の調味料を選べます。ひとつの容器の中でピザのハーフアンドハーフのように味付けしてくれるのです。

画像3: じっくり焼き上げたグリルエリンギ「燒烤杏鮑菇」

数あるエリンギを扱う屋台の中でもこの屋台が人気なのは、材料の品質の良さにあります。エリンギが立派で新鮮なのは言わずもがな。トッピングの調味料にすらこだわりが見られます。クミン味やローズソルトがあるのも珍しいのですが、レモン塩胡椒味は有機レモンを使用。一般的な屋台では化学調味料が使われていることが多いので、このこだわりは嬉しいですね。

画像4: じっくり焼き上げたグリルエリンギ「燒烤杏鮑菇」

そして、清潔であることも人気の秘訣。やはり屋台といえど衛生面を意識している店は人気が高く、この点も観光客には嬉しいところ。夜市の屋台は、油を使ったメニューが多いので、ヘルシーな焼き物であることも得点が高いのです。

画像5: じっくり焼き上げたグリルエリンギ「燒烤杏鮑菇」

燒烤杏鮑菇(シャオカオシンバオグー)

住所台北市士林區大南路98號
営業時間月~金・日曜 17:00〜22:30
土曜 16:30〜22:30
価格「燒烤杏鮑菇」240g 120元

季節の台湾フルーツをふんだんに使ったフワフワかき氷「花藏雪」

画像: 芒果雪霜

芒果雪霜

台湾のかき氷といえば、味の付いた氷をフワフワに削って作る雪花冰(シュエホワビン)とザクザクタイプの剉冰(ツオビン)ですが、「花藏雪(ホアツァンシュエ)」では雪花冰タイプのかき氷を味わえます。士林出身の店主。母親がこのエリアでかき氷店をやっていたことから、「いつか自分もここで快適な空間を作りたい」と思い、2017年にお店をオープンさせました。

8月末~9月上旬頃まで味わえるマンゴーかき氷「芒果雪霜(マングオシュエシュアン)」は、濃厚な甘さが特徴の愛文マンゴーを台湾中南部の屏東、台南、南投などから仕入れています。新鮮なマンゴーの果汁で作った氷の上に、大粒のマンゴー果肉とクリームがのります。

画像: 西瓜小涼球

西瓜小涼球

同じく夏季限定のスイカかき氷「西瓜小涼球(シーグアシャオリャンチョウ)」は、さわやかな味わいで、10月中旬頃まで楽しめます。冬になると台湾産のイチゴが登場します。

画像: 珍珠奶茶

珍珠奶茶

画像1: 季節の台湾フルーツをふんだんに使ったフワフワかき氷「花藏雪」

かき氷は約12種類。フルーツ系以外も充実していて、一年を通して楽しめるタピオカミルクティーかき氷「珍珠奶茶(ヂェンヂュウナイチャー)」は、台北の老舗茶葉問屋「林華泰茶行(リンホアタイチャーハン)」から仕入れたセイロン紅茶を使うこだわりよう。練乳がつきますが、全体的に少し甘めなので、まずは練乳なしで味わってみてください。

画像2: 季節の台湾フルーツをふんだんに使ったフワフワかき氷「花藏雪」

花藏雪(ホアツァンシュエ)

住所台北市士林區大北路27號
電話02-2883-3807
営業時間13:00~21:00
価格「芒果雪霜」220元、「西瓜小涼球」160元、「珍珠奶茶」140元

行列必至。コスパ抜群の上海焼き小籠包「鍾家上海生煎包」

生煎包(シェンジエンバオ)とは、日本でいう上海焼き小籠包のこと。店によって皮の厚みが違いますが、「鍾家上海生煎包(ヂョンジアシャンハイシェンジエンバオ)」の皮は分厚いのが特徴で、店頭で手際よく包み上げていき、包んだそばから蒸し焼きにしています。食材は新鮮なものにこだわり、作り置きはしません。直径1mはあろうかと思われる鉄鍋に、ふっくらとしたかわいいフォルムの焼き小籠包がぎっしりと並べられています。水を加えてジュワーッと蒸し焼きにし、煎りつけながら白ゴマをふって仕上げます。

画像1: 行列必至。コスパ抜群の上海焼き小籠包「鍾家上海生煎包」
画像2: 行列必至。コスパ抜群の上海焼き小籠包「鍾家上海生煎包」

メニューは2種類のみです。看板メニューの鮮肉包(シエンロウバオ)は、豚肉の餡にネギ、エシャロットを包んでおり、肉汁は少なめであっさりした味わいです。シャキシャキのキャベツがたっぷり入った高麗菜包(ガオリーツァイバオ)は、キャベツの甘みに加えてシイタケ、エシャロットの旨みがふんわり広がります。

台北市内には似た店名の店がありますが、支店はありません。ミシュランのビブグルマンに何度か紹介されたことにより、夕方になるとすごい行列ですが、明るい時間帯に行くとあまり並ばずに済みます。かき氷店「花藏雪」から徒歩1分ほど、黄色い看板が目印です。

画像3: 行列必至。コスパ抜群の上海焼き小籠包「鍾家上海生煎包」

鍾家上海生煎包(ヂョンジアシャンハイシェンジエンバオ)

住所台北市士林區小東街38號
電話02-8861-2713
営業時間15:00〜21:00
価格「鮮肉包」「高麗菜包」いずれも16元

釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」

画像1: 釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」

今は台北市内にもいくつか専門店があるエビ釣りですが、1970年代に台湾南部の屏東県でタイエビ=泰國蝦(タイグオシア)の養殖に成功したことで、台湾南部から徐々に広がっていったそうです。約30年前、台南出身の店主が北部ではまだ少なかったエビ釣りを士林夜市で始めたところ大成功。今や士林市場の名物のひとつになっています。

画像2: 釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」
画像3: 釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」

店主にエビを上手に釣るポイントをお聞きしたところ、小ぶりのエビの尾に釣り糸を引っ掛けるそうです。釣り上げる際にエビが動いて糸が切れてしまうので、そこは慎重に釣り上げ、ピンクのバケツに入れます。30分ほどで3匹釣れました。釣れたエビは、塩を振って、その場で焼いてくれます。

画像4: 釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」
画像5: 釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」

エビ釣りは、町中の専門店でも楽しめますが、夜市の屋台は至近距離でエビを狙えるので難易度は低い印象。エビ釣りデビューにぴったりです。エビ釣り屋台の隣には金魚すくいもあり、現地に住む子どもたちが楽しんでいました。

画像6: 釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」
画像7: 釣って、焼いて、食べる!台湾ならではのエビ釣り体験「士林迷你釣蝦」

明るく親切な店主が迎えてくれます。子どもから大人まで幅広い世代の人が楽しめるエビ釣り、ぜひ一度トライしてみてください。

士林迷你釣蝦(シーリンミーニーディアオシア)

住所台北市士林區基河路101號(士林市場内225、226番)
※2024年7月現在は工事中のため士林市場内197番にて営業中
営業時間17:00〜23:00
価格釣り竿 7本 100元

100年以上の歴史。士林夜市の基本情報

士林は、淡水河の支流のひとつである基隆河と陽明山に挟まれていることから、かつてはさまざまなエリアへ農作物を運ぶ拠点となっていました。やがて士林慈諴宮(シーリンツーシエンゴン)前にそれらを扱う市場ができたことが成り立ちとされています。

そんな士林夜市の基本情報をご紹介します。

アクセスはMRTの「劍潭駅」か「士林駅」を利用

台北の中心となる繁華街から少し北部にある「士林夜市」。台北メトロ(MRT)淡水信義線(ダンシュェイシンイーシエン)の「劍潭(ジエンタン)駅」1番出口を出て大通りを渡ると屋台が並んでいます。北から南下する場合は、「士林(シーリン)駅」2番出口へ。どちらの駅構内にもトイレ、コインロッカー、モバイルバッテリーのレンタルスタンドが設置されています。

画像: 劍潭駅1番出口

劍潭駅1番出口

画像: 劍潭駅の目の前にできた臺北表演藝術中心(タイベイビャオイエンイーシュウヂョンシン)

劍潭駅の目の前にできた臺北表演藝術中心(タイベイビャオイエンイーシュウヂョンシン)

ちなみに台北市内の移動には、交通系ICカードの悠遊カードがあると便利です。

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主に3つのエリアで構成されています

士林市場を中心に、周辺にはさまざまな屋台や店舗が集まっています。エリアによってラインナップが異なりますので、時間があるようであれば全体をぐるっと巡ってみることをおすすめします。

(1)士林市場

1階はゲームや雑貨販売、地下1階はグルメ街です。2024年7月現在、地下1階は改修工事中のため営業していません。当初の予定では2024年6月にリニューアルオープン予定でしたが、工事が延びて2024年10月に再開予定となっています。

(2)士林慈諴宮周辺

士林慈諴宮は、別名「士林媽祖廟(シーリンマーズウミャオ)」と呼ばれ、天上聖母を主神として祀っています。周辺には人気屋台が並び、賑わっています。

(3)ショップエリア

ファッションやスイーツ、ドリンクスタンドなど、さまざまな店舗が並んでいます。

画像: 主に3つのエリアで構成されています

士林夜市を満喫するために知っておきたいこと

おすすめの時間帯は17時頃

士林市場や周辺の屋台は夕方から夜にかけてオープンします。18時から21時頃は混雑傾向にあるため、少し早い17時頃の訪問がおすすめです。士林夜市周辺は、朝市をはじめ日中からオープンしているショップや行列店もあるので、一日中楽しめます。士林夜市は不定休のお店が多い点だけ注意しましょう。

注文時にはメモやスマートフォンを活用

メニューを指さしするか、メモに食べたいメニューを書いて注文をします。翻訳アプリをスマートフォンに入れておけば、メニューをカメラで読み取るだけで日本語に翻訳してくれるので便利です。

夜市に持って行ったら役に立つもの

士林夜市を快適に楽しむために、以下の持ち物を準備しておくと役立つでしょう。

ペットボトル飲料夜市散策は喉が渇くので、すぐに飲めて仕舞えるペットボトルの水やお茶があるといいでしょう。夜市内にはドリンクスタンドもありますが、ストローを挿すタイプが多いため、持ち運ぶのであればペットボトル飲料も別に用意しておくのがおすすめです。
少額の紙幣と硬貨両替所はないため、小さなお金を多めに持っておきましょう。悠遊カード(台湾の交通系ICカード)を使える屋台もあります。
ウェットティッシュポケットティッシュでは落とせない油やタレを使った食べ物が多く、何かと手がベタつくので常備しておきましょう。
ポケットティッシュトイレにティッシュが不足している場合があるので、持っておくと安心です。
ビニール袋(ゴミ袋)夜市内にはゴミ箱が設置されていますが、近くで見つからない場合があるため、持参するといいでしょう。
ジッパー付きポリ袋食べきれない場合の持ち帰り用に重宝します。ジッパー付きだと汁漏れも安心です。
両手があくバッグ荷物は最小限にして、両手があくショルダーバッグがおすすめです。リュックサックの場合、人が多い場所では前に背負うとよいでしょう。
エコバッグ食べきれない場合の持ち帰りや、雑貨などを購入したときにまとめるためにあると便利です。
雨具士林夜市は人が多く混雑するため、折りたたみ傘よりレインコートが安全です。

夜市散策の注意点

(1)酒類はコンビニなどで調達

夜市でも酒類を提供している場所はありますが、数が限られ手に入りにくいので、お酒とともにグルメを楽しみたい方は事前にコンビニなどで調達してから向かうことをおすすめします。

(2)トイレの場所はあらかじめ確認しておく

士林市場内にトイレが設置されているので、あらかじめトイレの場所を確認しておくと安心です。

(3)事前に待ち合わせ場所を決めておく

士林夜市は非常に広い夜市です。家族や仲間などと一緒に訪れる際には、はぐれた場合の待ち合わせ場所をあらかじめ決めておきましょう。

(4)スリや置き引き対策を

人が多い場所では、スリや置き引き被害が発生しています。貴重品は体から離さないよう、ショルダーバッグに入れておくと安心です。また、ボトムスの後ろポケットに財布やスマートフォンを入れると狙われやすいため注意しましょう。

最近は日本でも台湾のグルメが楽しめる機会が増えましたが、やはり本場で楽しむ味は格別。ネオンや屋台の熱気、味だけでなく五感で楽しめる「夜市」。現地ライターお墨付きのグルメを目当てに、食べ歩きを楽しんでください。

初回投稿日:2019年8月30日
※2024年7月29日に一部内容を更新いたしました

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