教えてくれたのはJAL客室乗務員の二人

左:矢野さん、右:中野さん
教えてくれたのは、JALの客室乗務員である中野さん(写真右)と矢野さん(写真左)。中野さんは2020年入社で現在は国内線・国際線の両方を担当しています。矢野さんは2024年9月にキャリア入社し、現在は主に国内線を担当、2025年8月から国際線デビューを果たしたばかり。それぞれ異なるキャリアステージの二人から、客室乗務員の働き方について教えてもらいました。
そもそも、客室乗務員ってどんな働き方なの?
客室乗務員の働き方の基本は「4勤2休」のシフト制。定時が決まっているわけではなく、担当するフライトにあわせて1日の出勤時間・退勤時間が変わります。シフトは毎月月末に翌月の1ヵ月分が発表され、4日間勤務して2日間休むサイクルで回っていますが、これはあくまで基本パターン。国際線の場合など、行き先によって大きく変わることがあります。

中野さん
例えば、アメリカの西海岸ですと1泊3日で行って3日間お休みになったり、東海岸ですと2泊4日で行って3日間お休みになったりします。シカゴやニューヨーク、ロンドンなどは5日間で行く場合もあり、場所によって4勤2休のサイクルが変わることもあります。
また、現在JALには約7,000人の客室乗務員が在籍していますが、一般的な会社と違い部署のようなものはありません。その代わり、「ファミリー」と呼ばれる30人前後のチームがあり、1年ごとに担当路線が決まっているといいます。
中野さん
現在の私のファミリーはニューヨークとヘルシンキ担当で、月1回はどちらかに必ず行っているようなスケジュールになっています。
矢野さん
私のファミリーはロサンゼルスとパリ担当ですが、私自身はまだ国際線を飛び始めたばかりですので、これから搭乗予定です。
客室乗務員の仕事は“空の上だけ”じゃない
私たちが客室乗務員を目にするのは飛行機の中だけですが、実は地上でも重要なお仕事があるそう。例えば、年に2~3回程度、ファミリーメンバーの「心合わせ」を行うミーティングがあります。

矢野さん
朝から夕方まで1日かけて、いろいろな議題について話し合います。私たち客室乗務員は、通常1フライトあたり4〜14人程度で乗務をしているのですが、ファミリー以外のメンバーとフライトすることも多く、初めて会うメンバーとフライトのチームになることも珍しくありません。そのため、各人が普段のフライトで得た知識をファミリーに共有したり、ファミリーフライト(ファミリーメンバーのみの乗務)での振り返りをしたりしています。
その他にも、年1回の健康診断や定期訓練も大事な地上でのお仕事。定期訓練では安全の知識をリマインドし、筆記と実技のテストを受けます。
中野さん
受からなければ次の日から乗務できません。お客さまの安全を守るためにも、全員が真剣に取り組んでいます。
また、日々の業務の中では急な欠員に備えた「スタンバイ」業務も月に数回あるそう。5時間ずつ、24時間体制の待機するお仕事で、もし代打要員として電話がかかってきたら、30分以内に家を出なければならないという責任重大なお仕事です。
矢野さん
スタンバイは自宅が多いですが、オフィスに出社して行うスタンバイもあります。スタンバイ中は特に行動の制限はありませんが、連絡が来たらすぐに準備をする必要があるため、自宅や待機室で、自己啓発に努めたり、本を読んだりして時間を有効活用しています。
私たちの知らないところで、客室乗務員のこうした業務が、毎日の空の旅を安全に予定通り運航させるための支えになっているんですね。
【1ヵ月スケジュール】客室乗務員のリアルな生活リズム
ここからは、二人の実際の1ヵ月スケジュールを見てみましょう。国内線メインの矢野さんと国際線メインの中野さんでは、働き方が大きく異なります。
矢野さん(国内線メイン)のとある1ヵ月

矢野さん
1日・2日にあるDHというのは『デッドヘッド』のことです。JALの客室乗務員は基本的に拠点が東京になっていますので、例えば羽田や成田以外の空港から乗務する場合、その空港まではお客さまと同じようにお座席に座って移動します(1日目)。また、どこかにステイした後に羽田から乗務がスタートする場合にも、DHでいったん羽田に移動することがあります(2日目)。ちなみに、このDHの時間も勤務時間に含まれています。

中野さん(国際線メイン)のとある1ヵ月

国際線には「ステイ」という現地での滞在時間が多くあるのが特徴です。これは客室乗務員の休息時間として設けられていて、勤務扱いながら基本的には自由に過ごすことができます。
中野さん
国際線がメインになりますと、ステイが多くなります。ステイ中も勤務扱いですが、基本は休息の時間として過ごしています。
【1日の流れ】客室乗務員のある日のタイムスケジュール
1ヵ月のスケジュールがわかったところで、1日の流れについても教えてもらいました。1日のフライト数やフライト時間など……国内線と国際線では大きく異なるようです。二人の実際の1日を詳しく見てみましょう。
矢野さん(国内線)のとある1日
●「羽田→千歳→羽田→千歳(ステイ)」乗務の日

矢野さん
この日は羽田⇄千歳間を3レグ、そしてステイがあった日です。『レグ』とは航空業界用語で「1区間のフライト」を指します。例えば羽田→千歳→羽田→千歳という流れの場合“3レグ”で、地方にそのままステイすることになります。一方、羽田→千歳→羽田の日帰りの場合は“2レグ”で、羽田に帰ります。国内線では時差がありませんので、4勤2休のサイクルは基本的に崩れません。
到着後1時間もせずに次の便の乗務があることに驚きです。また、この日は羽田と千歳の往復ですが、日によっては「千歳→羽田→伊丹→羽田」など3都市以上を回るフライトになることも。まさに“空を飛び回りながら”お仕事をしています。
中野さん(国際線)のとある1日
●「羽田→シカゴ」乗務の日

中野さん
国際線では出発の約2時間前に出社してフライトのチームでブリーフィングを行い、長距離フライトに備えます。到着日はそのまま休息をとりますが、翌日は1日休養日なので、朝起きて散歩やジム、観光、買い物に行ったりすることもあります。
この日は約11時間にもおよぶフライト。このような長時間の乗務では、客室乗務員も適宜休憩をとっています。安全で快適な空の旅をお届けするために、休息をとることも大事な仕事です。
中野さん
お客さまにお食事を提供した後に私たちも食事をいただき、その後は交代で休憩をとります。実は、飛行機内に仮眠をとるスペースも用意されているんです。一番長かったフライトはパリ便で、火山噴火の影響で迂回が必要になり、フライト時間が15時間になりました。出社からホテル到着まで含めますと、20時間近い勤務になることもあります。
【オフの日の過ごし方】客室乗務員のリフレッシュ方法
日々忙しく、いろいろな場所を飛び回っている二人。オフの日も旅行に行ったりするのでしょうか?最近のリフレッシュ方法について教えてもらいました。
矢野さんの場合:プライベートでも旅行好き

プライベートで行ったハワイ旅行

プライベートで行ったハワイ旅行
矢野さん
地方でステイがあっても、やはりお仕事ですので旅行ではありません。元々旅行が大好きなので、お休みの日はプライベートで飛行機に乗って旅行に行っています。その土地のおいしいものを食べたりするのが好きです!
趣味のおいしいもの巡り
趣味のおいしいもの巡り
ちなみに、最近は沖縄に友人と旅行に行ったという矢野さん。
矢野さん
沖縄行きのフライトに乗務することが多く、いつもお客さまがすごくワクワクしていらっしゃるのを拝見して羨ましく思っていました。なので、行き先は沖縄へ。JAL系列のホテルに宿泊して、オーシャンビューのお部屋でリラックスできました。

プライベートで行った沖縄旅行
中野さんの場合:家族との時間を大切に
母と行ったライブ

母と行ったライブ
中野さん
私はそれほどアクティブではないので……まず休息をとることが多く、近場でショッピングなどを楽しんでいます。あとは、実家が遠方にあるので月に1回ぐらいは家族に会いたいと思っていて、帰省したり家族旅行に行ったりしています。先日も実家に帰って母とライブに行きました。
家族旅行で行った沖縄
家族旅行で行った沖縄
家族旅行で行った沖縄
休日ショッピングの1コマ
まだまだ気になる!客室乗務員に関する素朴なギモンを一問一答

フライトやスケジュール以外にも、客室乗務員の生活や日常にはまだまだ気になることがたくさんあります。ここからは、そんな素朴な疑問を一問一答形式で聞いてみました。客室乗務員ならではの仕事中の工夫など、リアルな声をお届けします。
Q. 時差ボケ対策はどうしていますか?
矢野さん
まだ国際線に慣れていない部分もあるのですが、仮眠をとる場合には、本睡眠の時間を逆算して、寝すぎないようにこまめに睡眠をとるようにしています。
中野さん
私はいつも現地の時間で生活しようと思っていて(笑)、自分が眠くなったら休むという感じです。
Q. ステイ先に必ず持参するものはありますか?
矢野さん
絶対に着慣れているパジャマを持っていきます。自分の柔軟剤の香りが安心しますし、ホテルの温度調整が難しい時もありますので、風邪を引かないよう寝具は必ず持参しています。
中野さん
自分の香りがついたタオルを持参しています。枕に敷くと熟睡できるんです。また、入浴剤も持参してお風呂に入るようにしています。睡眠の質を上げる工夫はいろいろしていますね。
Q. ステイ中の過ごし方は?
中野さん
人によってさまざまですね。観光などを楽しみにしている者もいれば、休息に充てる者もいます。例えば、ハワイでは、海に入るために水着を持っていったり、ヘルシンキではサウナを体験したりと、その土地ならではの過ごし方を見つけているようです。
ヘルシンキステイ中に食べたサーモンスープ(中野さん撮影)
矢野さん
国内ステイの場合は、ステイの時間があまり長くないのですが、それでもその土地のおいしい物を食べたり、温泉に入ったりして楽しんでいる者も多いです。
Q. 好きな路線はありますか?
中野さん
ヨーロッパ線で北極圏を通る時にオーロラが見えることがあるんです。お客さまも楽しみにしていらっしゃって、『何時にオーロラが見えますか?』と尋ねられることも。見ることができた時はお客さまと一緒に盛り上がって見ています。
機内から見えたオーロラ(中野さん撮影)
矢野さん
国内線では富士山ですね。飛行高度や雪の有無で見え方が全然違うんです。外国のお客さまも多くご搭乗されるのですが、ご案内するとすごく喜んでくださいます。
Q. 長期休暇はとれますか?
中野さん
シフト調整前に有休希望を出せば、もちろんお休みをとることは可能です。皆さまが長期休暇をお取りになるような年末年始やお盆期間は難しいかもしれないですが、時期をずらして長めのお休みをとる乗務員もいます。
矢野さん
客室乗務員ならではの点として、シフトが基本4勤2休のサイクルで回っているので、ある程度次月のお休みの日を予想できるんです。そのため、有休希望をそのお休みの前後に出すことで、3連休や4連休にする小ワザがあります(笑)
Q. 客室乗務員はずっと客室乗務員なのですか?
矢野さん
ジョブポスティングという挙手制で地上業務に異動することもできます。1年半から2年、広報や教育・訓練を担当する部署で勤務することもあります。
大変さとやりがい、どちらも詰まった客室乗務員という仕事

客室乗務員は、不規則なスケジュールや時差との戦い、長時間勤務など大変な面もありますが、世界各地を飛び回り、お客さまの旅を支えるやりがいのある仕事。
空の旅を支える客室乗務員の働き方を知ることで、次回のフライトがより特別なものになりそうです!
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