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2019年8月、JALの国際線ビジネスクラスでご提供するアメニティキットを更新しました。日本発の便ではパリのブランド「MAISON KITSUNÉ(メゾンキツネ)」、日本着の便ではファッションとライフスタイルにまつわるあらゆるモノやコトを発信し続けている日本を代表するセレクトショップ「BEAMS(ビームス)」のキットをご用意。おかげさまでこれらのコラボレーションはお客さまからご好評をいただいています。企画からデザイン、生産に至るまで、アメニティキット開発の舞台裏をご紹介します。
画像: MAISON KITSUNÉやBEAMSとコラボ。年間50万セットを生産する、国際線アメニティキット作りの舞台裏

「SNSを中心に予想以上の反響をいただき、嬉しく思っています。アメニティキットの企画は、まずは組んでいただけるブランドを探すことから始まります。エアラインやホテル向けのアメニティキットを企画・製造する会社が海外に複数存在し、彼らが海外のブランドとの橋渡しをしてくれます。私どもから口説いてほしいとお願いすることもあれば、彼らから提案いただくこともあります。MAISONKITSUNÉさんには、私どもから彼らを通じてアプローチしました。

また、以前は海外ブランドのみとコラボレーションしていました。しかしアメニティキットを通じて日本の良さを発信できたら面白いのではないかと考え、2018年の2月より西陣織の老舗である龍村美術織物さんとコラボしたキットの提供を開始。今回のBEAMSさんとのコラボはその第2弾ということになります。

BEAMSさんとのコラボに際しては、アメニティの企画・製造会社の役割を龍村美術織物とのコラボを実現していただいた髙島屋さんの法人事業部に担っていただきました。大変ありがたいことにご担当の方がJALのファンでいらっしゃって、熱意と愛情をもってご対応くださっています」

画像: 商品・サービス企画本部 開発部 客室サービスグループ マネジャー 岡澤賢哉

商品・サービス企画本部 開発部 客室サービスグループ マネジャー 岡澤賢哉

こう語るのが、商品・サービス企画本部の岡澤賢哉です。アメニティキットには、機内で快適に過ごしていただくためのアイテム、具体的には歯ブラシや耳栓、モイスチャーマスク、リップクリーム、ティシュペーパーなどが入っています。以前はこれらのアメニティをお客さまにピックアップしていただく方式でご提供していましたが、ブランドとコラボしたポーチに収納してキット化することにより付加価値を持たせたのが現在のアメニティキットです。JALではアメリカ線、ヨーロッパ線、オーストラリア線のファースト/ビジネスクラス限定グッズとして提供しています。旅の思い出やお土産に持って帰られるお客さまも多くいらっしゃいます。

今回JALがコラボレーションしたMAISON KITSUNÉは、パリを拠点にファッションや音楽、アートなどの活動を行うクリエイター集団で、クリエイティブディレクターを日本人の黒木理也氏がつとめています。また1976年に創業したBEAMSは、日本のファッション業界を牽引してきた実力派セレクトショップ。いずれも若い世代からの支持を集めています。

アメニティキットの選定は、1~2年ごとに更新する一大プロジェクト

「ファーストクラスやビジネスクラスをご利用いただけるお客さまの中心世代は40代以上で、JALのサービスを深くご存知であり、大変ありがたいことにJALが好きとおっしゃっていただける方も多いのです。しかし、もっと若い世代の方にもJALに興味を持っていただくきっかけになればと考え、MAISON KITSUNÉさん、およびBEAMSさんにコラボレーションをお願いすることにしました。プロジェクトの途中からファッションに敏感な和才もチームに加わり、デザインから社内プレゼン、対外発信まで、感性を活かして仕事をしてもらいました」(岡澤)

画像: 商品・サービス企画本部 開発部 客室サービスグループ 和才加奈

商品・サービス企画本部 開発部 客室サービスグループ 和才加奈

「私はもともと客室乗務員なのですが、アメニティキットをお座席に置いて帰られてしまうお客さまもいらっしゃり、残念に思っていました。でもMAISON KITSUNÉさんやBEAMSさんのキットなら、お持ちかえりになって、ご家族や職場の方にプレゼントしていただけるのではと思ったのです」(和才)

JALのアメニティキットは、これまでファーストクラスでは、LOEWE、PORSCHEDESIGN、ETRO、ビジネスクラスでは、TUMI、ZERO HALLIBURTON、ETRO、龍村美術織物とコラボレーションしてきました。各ブランドとのコラボ期間は1~2年で、ポーチの色やデザインを数ヶ月ごとに変更しています。

画像: アメニティキットの選定は、1~2年ごとに更新する一大プロジェクト

「アメニティキットのコラボレーション先は、搭載する2年ぐらい前から検討を開始するのですが、ラブコールを送っても首を縦に振ってくれるブランドばかりではありません。私どもとブランド側の思いが合致しないとコラボレーションは実現しないのです。また、思いは合致しても、タイミングが合わず実現しないことも少なくありません。例えば、ブランド側は新商品の販売のタイミングに合わせて提供を開始したいと考えているのに、私どもはその時期にはまだ前のブランドとのコラボが続いていて……というような状況です。結果、圧倒的にふられることが多いというのが実情です。最終的にコラボ先のブランドが決まるのは提供開始の約1年前です」(岡澤)

ブランドの個性を尊重しながら、違和感なく使っていただけるものを

こうして決まったブランドとのコラボレーション作業のなかでもっとも気を遣うのは、ポーチのデザインです。男女どちらが使っても違和感のないように、またお客さまがどうお感じになるかを考え、ブランドと綿密に連携して進めていきます。

画像1: ブランドの個性を尊重しながら、違和感なく使っていただけるものを

「まずMAISON KITSUNÉさんですが、第1弾と第2弾のデザインはあえてシックなものにしました。ブランドをご存じないお客さまにも、違和感なく使っていただきたいと考えたのです。ただ、裏地はMAISON KITSUNÉというブランドを感じていただけるデザインにしました。迷彩風の柄にキツネや富士山といった日本的なモチーフをちりばめ遊び心を加えました。第三段からは、ポーチ自体に、MAISON KITSUNÉのアイコンであるトリコロールを使用することを考えています。素敵なデザインですので、ぜひ楽しみにしてください」(和才)

一方のBEAMSは、季節感を感じていただけるよう、春夏秋冬に合わせた4柄を展開。それぞれの季節の洋服のコーディネートをイメージしており、表面はトップス、マチをボトムスに見立てています。底面にも生地素材をモチーフとしたデザインが施されており、BEAMSらしさが感じられます。

画像2: ブランドの個性を尊重しながら、違和感なく使っていただけるものを

「BEAMSさんは幅広い層のお客さまに支持されるセレクトショップです。人それぞれがBEAMSというブランドについて異なるイメージをお持ちです。その中で、BEAMSらしさを感じていただけるデザインとは何かという議論からスタートしました。今回の商品開発には当時同社の取締役 社長室長でクリエイティブディレクターを務められていた窪 浩志さん(現:取締役 開発事業部 本部長兼クリエイティブディレクター)が直接デザインを手掛けてくださいました」(岡澤)

このように企画開発されたポーチの製造と内容品を入れてアメニティキットとして組み立てる作業は、多くの場合、海外で行われます。ブランドとJALが求める品質を担保できているのかの確認と、指定倉庫までのロジスティクスの手配、納期の管理は、調達本部の小佐井大輔が担います。

画像: 調達本部 総合調達部 物品調達グループ マネジャー 小佐井大輔

調達本部 総合調達部 物品調達グループ マネジャー 小佐井大輔

「開発部が仕様を決定した後、我々調達本部が発注から納品までの管理を行います。全てがサンプル通りの仕上がりになっていれば問題ないのですが、数量も多く海外製造ということもあり、一筋縄ではいきません。MAISONKITSUNÉさんとのコラボ製品については、現地に赴き、ポーチ自体の品質や、アメニティキットとして組み立てる際に異物が混入するリスクがない作業環境であるかなどの確認を行ってきました。特にコラボレーションの象徴であるブランドロゴの再現性を細かく見てきました」(小佐井)

海外の工場で、年間50万セットを生産

ファーストクラス用のアメニティキットは年間におよそ5万セット、ビジネスクラス用のアメニティキットは50万セットを調達します。ポーチのみならず、内容品も開発部が仕様を決定し、調達部が発注から納品までを管理します。

「内容品のパッケージのデザインは、世界を舞台に活躍される佐藤オオキさん率いるデザインオフィスnendoに手掛けていただきました。内容品はアイテムごとに製造メーカーが異なるため、パッケージの色を指定してもなかなか色が合わずに苦労していました。nendoさんのご提案は、同一系統の色ではありながら、意図的に異なるトーンを指定することにより、その差異をデザインすることで逆に統一感を出せて、また、トーンの相違でアイテムを識別できるというものでした。そして、アイテムの名称自体をデザインする洗練された印象のパッケージになりました」(岡澤)

内容品についても、毎回同じではありません。ブランドのデザインをあしらったアイテムや機能を持つアイテムを取り入れるなど、工夫を凝らしています。

「内容品に、乾燥しがちな機内でも快適にお過ごしいただけるようモイスチャーマスクがあります。これは日本ならではの製品で、海外では製造されていません。また、過去に『花王めぐりズム 蒸気ホットアイマスク*』を入れていた時期がありましたが、これも日本でしか作られていない製品でした。結果、日本で製造された内容品を海外へ送り、海外で製造されたポーチや内容品と一緒にアメニティキットとして完成させ、再輸入するという物流が発生します。過去には、海外で製造されたポーチと内容品を輸入し、日本で製造される内容品と合わせて日本国内でアメニティキットを完成させるという物流も試みましたが、コストを追及した結果、現在の物流に落ち着いています。大変ではありますが、勉強になりますね」(小佐井)

さらには、内容品にリップバームなどの化粧品類に該当する製品が入る場合には、ライセンスを持つ専門業者に輸入代行を依頼。この場合には日本円での取引になりますので、為替変動に応じた取引額の調整も発生します。

「ブランドや仕様が変わるごとに、まったく別の作業が発生するわけです。そこが難しさでもあり、面白さでもありますね。素材から縫製、ジッパーひとつに至るまで、何もかも違いますから。苦労の分、キットが無事に指定倉庫に納品され、スケジュール通りにお客さまへの提供が開始されると、達成感を覚えます」(小佐井)

今後は環境にも配慮。アメニティキットも空の旅の一部

「よくお乗りになるお客さまからは『新しくなったね』とか『集めているんだ』といったお声をいただきます。そういったお客さまが喜ぶ顔を思い浮かべながら、次の商品開発に向けた検討を開始しています。ポーチを持ち帰って二次利用していただくに際してはマチがあった方が使い勝手が良いのではないか、使用されたアイマスクをシート上に置いていかれる方も多いのですが、ブランドのロゴを入れたら、ポーチと一体感が出て、ポーチ同様に持ち帰って二次利用していただけるのではないかなど、コストと睨めっこしながら考えています」(和才)

画像1: 今後は環境にも配慮。アメニティキットも空の旅の一部

アメニティキットも、空の旅の一部。JALがベストを尽くすべきサービスの一環なのです。

「アメニティキットに限った話ではありませんが、商品開発を担当していると、お客さまの期待をいい意味で裏切り続けなければいけない、次期商品のサービス開始時期から逆算した仕様の決定期限が近付いているのに決まらないなど、常にプレッシャーが付きまといます。また、ブランドに対する評価は個々人の嗜好により異なりますので、コラボレーション先のブランドについて、社内関係者全員の理解を得るのは容易ではありません。しかしリリースしてみれば、お客さまに好評であり、またSNS上でも好意的にとらえていただいています。おかげで次も挑戦できる土壌ができたと考えています。

そしてこれからの取組みにおいては、環境配慮の視点も欠かせません。衛生担保のために使用している石化由来の包装資材を今後どうしていくべきかなどもあります。何よりも、持ち帰りたいと思っていただける商品を作らないと、全てゴミになってしまうわけですから」(岡澤)

画像2: 今後は環境にも配慮。アメニティキットも空の旅の一部

すでに次のコラボレーション先についても、検討を開始しています。よりお客さまに喜んでいただけるデザインはどういったものか。これまでよりもっと使いやすく、環境に配慮できる余地はないか――。コンパクトにまとまったアメニティキットですが、ここには熱意と工夫がたっぷり詰め込まれているのです。

*現在、「花王めぐりズム 蒸気ホットアイマスク」はアメニティキットには入れておりません。中長距離線のファースト/ビジネス/プレミアムエコノミークラスにて、乗務員がお客さまのご希望に応じて提供しております。

JALの舞台裏

A350導入の裏話や機内食のメニュー開発など、JALの仕事の舞台裏を紹介します。

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